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Chapter 005_火魔法研究会

「コレット!うた上手いのね!」


時は下って午後5時過ぎ

私達5人(ルクス君は「部活に入るつもり無いから…。」といって帰ってしまった・・・)は部室棟の中を歩いていた。


・・・え?疲れていたんじゃないのかって?

そんな、まさかぁ・・・フォニアはまだ若いんだから!疲れてなんかいないよ!!

・・・はぁ。



「…音程もリズムも完璧。」

「ほんと!即興(そっきょう)だったのに…思わず聞きほれちゃったよ!」

「・・・コレットちゃんのお家で聞かせてもらった時も言ったけど・・・本当に凄い!」

「えへへ。ありが…と。」



き、気を取り直して部活見学!!


先輩たちに熱烈歓迎されながら、

私希望の馬術部→アラン君希望の槍術(そうじゅつ)部→そしてコレットちゃん希望の合唱部を巡った私達は部活巡りの最後に→ナターシャちゃんとチコ君希望の“何とか(まだ名前を聞いていない)同好会”の部室へと向かっていた。


因みに、一口に「部活」と呼んでいるけど、この学園には・・・


①部活

②同好会

③愛好会

④その他非公式の集会


・・・という、4種類の課外活動の場・・・集会・・・がある。

各集会の違いは異世界島国と同じような物かな。


課外活動は学園の成績には影響しないけど、入っていると同級生はもとより先輩・後輩と仲良くなれるし、過去問や使わなくなった教科書を貰えたり、卒業後の就職活動で有利だったり、OB・OGの先輩に可愛がってもらえたりと、特典が多い。



「やっぱり合唱部に入るの?」

「うん!そうしようか…な。」


「先輩も優しそうだったし…いいんじゃないかな?」

「・・・歌ってるコレットちゃんは、とっても楽しそう!」

「…生き生きしてた。」

「えへ…へ…」


とは言っても、入部する一番の理由は・・・やっぱり、楽しいから!

強制じゃないけど・・・どこかの部活に入部する人が大半だとか。



「フォニアちゃんも馬術部に入る…の?」

「・・・たぶん。」

「競馬部もあるけど…?」

「・・・でも、チェスは競走馬じゃないから。」


私も今日行った馬術部は面白そうだったし、チェスを遊ばせてあげられるから・・・入ろうかなぁ。

と、考えている。






「…ついた。」

「・・・う?」「おっ!」「う…ん?」


そんなこんな。5人でワイワイお喋りしているうちに目的の・・・チコ君とナターシャちゃんが興味あると言っていた同好会の“部室”に着いたようだ。

部室棟3階の端っこにあるボロボロの木戸。黒ずんだ扉に吊り下げられた看板には、こう書かれている・・・



「・・・ひ」

「ま?」

「ほ…」

「…う」

「研究会っ!!…さあ、行くわよぉ!!」


・・・

・・






「し、失礼しまー…す…」


この学園には【魔法研究会】という300年近い歴史がある、すごい同好会が存在する。

歴史もさることながら、毎年、国王軍に魔法兵を輩出する本当にすごい同好会なんだけど・・・

入学日どころか入試日の朝から校門で待ち構え、休み時間の度に大挙して勧誘に来る“しつこい”人たちはお断り。もし、また来たら部室に魔法を打ち込むと脅して帰ってもらった苦い経験がある。


同じような人たちの集まりだと困るなぁ・・・と思いつつ、部室に入るナターシャちゃんの後に続くと・・・



「ぐー…」

「…あらっ?」


夕日に染まる小さな部室に2人の女の子が・・・テーブルに隣あって座っていた。



「すぴ~…」


奥にいる女の子は赤茶の癖毛を垂らしながらテーブルに頭を乗せて気持ちよさそうに寝ている



「・・・あ。」

「あら魔女ちゃん!さっきぶりね!!」

「・・・こんにちは。先輩。」


そしてもう1人は見覚えのある女の子だった



「え?…知り合いなの?フォニア?」

「・・・講義でお世話になった先輩。」

「飛び級した講義だ…ね…」


研究室で気怠(けだる)そうに参考書を(めく)りつつお菓子を頬張っていたのは、講義に途中参加した私に席を譲ってくれた“あの”お姉様だった。



「チャオ~!…そういえば、あの時は急いでて自己紹介も出来なかったわね。私はエルミール。…エルミール・ディシャンって言うの!3年1組でーす!よろしくね!!…あなた達のお名前。教えてくれるかしら?」


3年生・・・という事は、エルミール先輩は私達より2歳上の13歳か、14歳・・・


いつも思うけど、リブラリアの人って早熟だよね。

エルミール先輩は背も高いし・・・170cm弱はありそう・・・胸もある。

13歳でこのスタイル・・・犯罪である。



「は、はい!ナ…ナターリア・アブリコーヴァと申します先輩!!あ、あたし達は全員、1年1組です!!…よ、よろしくお願いしますっ!」

「チコ・デ・ペドロ。よろしく…」

「コレット・ミシュレです…よ、よろしくお願いしま…す。せんぱ…い…」

「アラン・ルノーです。先輩!」

「・・・フォニア・シェバリエ・ピアニシモです。」


全員の瞳を見ながら自己紹介を聞き、各々に挨拶を返してくれた先輩は、その後・・・



「…それで?あなた達…こんな所に何しに来たの?」


そんな事を聞いてきた。



「そ、それはもちろん!火魔法研究会に興味があって…」


ナターシャちゃんのその答に、当の先輩は



「…?」


キョトーン・・・という顔になった後・・・



「あ、あなた達…変わってるわね…」


顔を(しか)めて、そう言った


・・・

・・











「やーやー我こそは火魔法研究会が(あるじ)!!タチヤーナ・セレヴィスカヤにあるぞぉ!!」

「「「「…」」」」「・・・」


エルミール先輩曰く、

自分は火魔法研究会の会員ではなく、隣で寝ているタチヤーナ先輩の“ただの”お友達で・・・

ここにはお喋りをする為に来たんだけど、当のタチヤーナ先輩が寝ていたから暇つぶしに参考書を読んでいた・・・との事。


でも・・・部室に自分専用のロッカーを持ち、戸棚の奥や棚の上など見つけづらい場所から茶器を取り出してお茶を振る舞ってくれた“勝手知ったる”エルミール先輩が、会員じゃ・・・ない?



「ちょ、ちょっとターニャ!何よ、その自己紹介…というか口上(こうじょう)は!?…後輩ちゃんたち引いてるわよ!」

「ありゃ!?」


そしてこの、自称・非会員エルミール先輩に起こされるなり机に飛び乗り、決戦前の口上を述べた・・・紫からピンクまで、とりどりの赤い瞳をした・・・この人こそ。火魔法研究会の会長様だという。



「…さては、ターニャ!今日の戦史Ⅱで習った古戦記から変な影響受けちゃったわね!?」


口上にしたって古典みたいだなぁ・・・と思っていたけど、そういう経緯があったのか・・・



「へ、変な影響だって!?…そ、そんなんじゃないやい!私はただ、新入生に楽しんでもらおうと…」

「はぁ!?…みんなの顔を見なさいよ!ほらっ!…苦笑いしか出ないわよ!」

「ひ、酷いやエミー!!」

「いいから普通に話しなさいっ!…そんなんじゃ、せっかく来てくれた入会希望者を逃がしちゃうわよ!?それでいいの?」

「いくない!!普通にしますっ!」

「…よろしい。…やればできる子なんだから、しゃんとなさい!」

「しゃーん!!!」


とりあえず、2人は仲良し・・・という事は分かった。






「た、タチヤーナ先輩!」


キャッキャする先輩達に(おく)せず切り込んだのは、我らがナターシャちゃん。



「何かねチミィ!?」


ナターシャちゃんの挙手に気付いたタチヤーナ先輩は、すかさず“しゃーん!!!”と切り返した



「この研究会はどんな活動をしているんですか!?」


至極全(しごくまっと)うな質問をしたナターシャちゃんに、タチヤーナ先輩はというと・・・



「…え?」


え・・・?



「…せ、先輩?」

「むむむ…」


6.2秒フリーズしてから「むむむ…」と考え込み・・・



「…た、助けてエミー!!」


3.8秒後に、そう叫んだ











「はぁぁ~………ゴメンなさいね。みんな。」


タチヤーナ先輩の救難要請を受けたエルミール先輩は、ため息交じりに話し始めた・・・



「この研究会はターニャが1年生の時に立ち上げたのだけど…会員はターニャ1人だけだし、今まで活動らしい活動はして無いの…」


まさかのペーパーサークルだった。

いや、でも・・・



「で、でも!火魔法研究会は“同好会”ですよね…?」

「こ、顧問の先生…は?」

「…活動しないと消される。」


この火魔法研究会は学報にも載っている“公式の同行会”らしい。

コレットちゃんが言う通り顧問の先生が付いているはずだし、チコ君が言う通り学期ごと(前期と後期の2学期制)に活動報告を提出しないと廃部にされてしまう。

それなのに存続しているという事は・・・?



「これもなにも、ロザリーちゃんのお陰だよぉ…」

「ロザリーちゃん…?」


ロザリーちゃんとは?

ナターシャちゃんの疑問に答えたのは・・・



「はぁ~…ロザリー・ディシャン。この同行会の顧問で…魔法科の講師………私の実の姉よ。」


額に手の平を当てて下を向き、深い溜息を吐いたエルミール先輩だった・・・



「えっと…つまり?」

「ロザリーちゃんが忖度(そんたく)してくれてるの!」


そ、忖度!?

堂々と言う事ではないのでは!?



「お姉ちゃんは生徒に、とにかく甘いのよ…」

「魔法の実技では手取り足取り教えてくれるし!テスト失敗しちゃっても絶対救済してくれるし!!顧問だって…3っつも4っつも兼ねてるからね!」

「それじゃあ本人の為にならない。って言っているんだけどねぇ…」

「エミーは厳しいよぉ!ロザリーちゃんみたく“ゆるふわ”でいこうよぉ~!!」

「はあぁ~っ………」


エルミール先輩の溜息は深かった。

なんか・・・お疲れ様です・・・



「まあ、でも、ほら!」


未だに机の上にいるタチヤーナ先輩はそんなエルミール先輩の横にしゃがみ込み(机の上でしゃがんだから、見えちゃってるんだけど・・・)、その頭を撫でつつ私達に向き直り・・・



「今年から、ちゃんと活動できそうだもん!もうロザリーちゃんを困らせたりはしないよっ!!」


期待を孕んだ満面の笑みで唱えた・・・




























でも



「・・・私は入らない。」

「わ、私もちょっと…が、合唱部が忙しい…し!」

「槍術部が…」


「えぇっ!?みんな入ってくれるんじゃないの!?!?…ひ、酷いや酷いやっ!!」

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