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Chapter 001_入学式

『パチパチパチ…』


カレント2,182年。治月の月5日。天気は晴れ。



「・・・ふぅ。」

「お疲れさ…ま!」


新入生代表の挨拶を終えて席に戻ると、

隣のコレットちゃんが笑顔で迎えてくれた。



「なによっ、ため息なんてついちゃって…情けないわよ!フォニア!」

「…入場の時は手が震えていたくせに」

「なぁんですってぇ!!」

「ちょ、ちょっと2人とも!副学園長様が挨拶しているんだから。静かに…」


その隣には入試で仲良くなったナターシャちゃん。チコ君。

そしてアラン君が並んでいる。


みんなとはあの後、試験の合間のお昼を一緒にして、お互いの2次試験を

見学して、入学式までの間にショッピングに出かけ・・・


今ではすっかり仲良しだ!



「はぁ…それにしても長いわねぇ…。ねぇ。いつまで続くの?コレ…」

「…次、陛下の挨拶で最後。」

「式の後は、いよいよクラス発表だ…よ!」

「き、緊張するね…」

「・・・」


リブラリアは・・・もちろん。家柄も影響しないでもないけど・・・

実力主義社会であるが故、就職する時に学園での成績がモノを言う。

学園にはクラス替えのシステムがあるけど・・・実際の所、上のクラスに

上がるのは難しいらしく、1年生で決まったクラスが5年生まで継続される

のが殆どなんだそうだ。


だからみんな、将来が決まると言っても大袈裟じゃないクラス発表が

気になるのだろう・・・






『パチパチパチ…』


「あ。終わってた…」

「ナ、ナターシャちゃんも拍手しない…と!」

「えぇ〜…何言ってたか、全っ然っ!聞いて無かったのにぃ…?」

「…失礼。」

「は、ははは…」


もっとも、副学園長の花向けの言葉は異世界と大差ない・・・

検索すれば出てくる定型文だったけどね。



「ああ゛〜!次で最後かぁ!!」


陛下がひな壇に上ったのを見たナターシャちゃんは、椅子の上で

小さく背伸びをした。


すると…



「…うふふっ。私の挨拶で最後だから、もうちょっと我慢してね。」


ヒナ壇に向かいながら微笑む陛下が、コチラを見てそんな事を言った。



「っ!?…///」


慌てて背筋を伸ばすナターシャちゃん。

陛下ったら・・・



「…怒られてやんの」

「ぐっ…」

「あ、あはは…」

「み、みんなも静か…に…」

「・・・」


そして陛下は「ふふふ…」と微笑みながら、よく通るあの声で・・・




「新入生のみんな!チャオ〜!!…ご機嫌麗しゅうございますかぁ?」


外国からの来賓も居るというのに・・・

いつものノリで陛下は演説を始めたのだった。



「みんなも知っての通り、今年の入学式はエディアラ王立学園始まって以来の特別な…綴られる…モノとなりました。その理由は特別な新入生を迎えたからです!それは…」


そこで陛下は、会場をくまなく見渡して・・・



「…それは、1,232名の入学生。あなた達全員の事よ!」


・・・大きな身振りと共に、そう唱えた


「いい?あなた達は全員、特別よ!!みんなの未来は輝きに満ちているわ!可能性は無限大よ!!…そうじゃなきゃ、お父様とお母様が高いお金を払ってまでして、あなた達を学校になんて通わせてくれないハズでしょ?この後発表されるクラス分けや…それ以外の事でも…ちょっと思い通りにならなかったからって諦めちゃダメっ!“唱えよ!さらば現れる!(リブラリアの諺・・・というか格言)”の言葉通り、とりあえず頑張ってみなさい!そうすればきっと、いい事あるって!」


「それに、“唱えよ!さらば現れる!”って言葉はつまり“唱えないと、現れない”という意味でしょ?だから…この学校で!大きな声で沢山唱えなさい!!ちょっとくらいの失敗なら、先生達が何とかしてくれるわ!だから安心して…あなた達は、ただ、前を!上を!!小麦のように目指しなさい。そして大きな実を結びなさいっ!!」


「短い学園生活を楽しいものにできるか…つまんないモノで終わらせちゃうかは、あなた達の心がけ次第…言葉次第っ。だから…精いっぱい背伸びして!喉が枯れちゃうくらい大きな声を上げて!!」


「…学べよ!!子供たちっ!!」


・・・

・・





入学式が終わり会場から出ると、そこでは・・・



「いよっし!!1組とったどー!!」

「ない…名前が無いぃ!!」

「よ、4組…何と言う事だ…」


大きな紙が貼られたパーテーションが並べられており、

会場を出た生徒たちで賑わっていた。


どうやら、異世界と同じような方法で組発表がされている様子・・・



「発表されてるわ!行きましょ!!」


ナターシャちゃんの言葉を受け、私達も人並みに突入する



「…あ、あったぁ!!やったよぉぉぉ!!!フォニアちゃぁあん!私、無事に1組合格だよぉぉ!!」

「・・・やったねコレットちゃん!」


最初に声を上げたのはコレットちゃん。

どうやら、無事に1組に合格したようだ!



「…予想外」

「ふ、ふぅ〜…。こ、これで何とか、兄様に文句言われないで済むかな…」


2人もコレットちゃんと同じ場所で自分の番号を見つけたみたい。どうやら、1組合格のようだ。

あとは・・・



「…ちっ。」

「・・・う?番号・・・なかった?」


組み分けの紙を前に舌打ちしたナターシャちゃんに、そう訊ねると・・・



「失礼ね!ちゃんとあるわよ…ほらっ!」


そう言うナターシャちゃんの指さす先には、教えてもらった彼女の受験番号と・・・



「ト…3トロワ!?す、すごいナターシャちゃ…ん!!」

「…予想外」

「1,000人以上いる受験生の中で3番目なんて…凄いじゃないかナターシャちゃん!!」

「・・・ナターシャちゃんさすが!!」


組み分け表には入学試験の成績順に出席番号も書かれている。

ナターシャちゃんは学年3位の実力者・・・という意味だ。


座学の試験では不安そうなことを言っていたのに・・・すごい!



「…ありがと、コレットとアラン。チコは五月蠅いわよ!でも…一番許せないのはフォニア。あんたよ!!!プリモのあんたに言われたってナンニも嬉しくないわ!何が「さすが」…よ!?」


私は・・・陛下の推薦で1組が保証されていたせいで、

やる気も微妙になって・・・ま。楽しい学校生活送られればいいか。

・・・みたいな軽いノリで試験を受けちゃったんだよね。


真剣な皆には悪いけどさ。

私だってモチベーションとかいろいろあるんだよ・・・



「・・・う?私・・・プリモ?」


だから・・・プリモになるなんて思っていなかったから・・・



「なっ…なによそれっ!!自分の番号見てないの!?」

「・・・そ、それは・・・」


だから・・・正直、組み分け発表にも興味なくて・・・



「いーわよ、いーわよ!!どーせあなたなんて…魔女“様”のあなたにとっては…学園の組なんて、階位(席番のこと)なんて興味ないんでしょ!?」

「・・・そんなつもりじゃ!」

「ふんだっ!」


失言だった・・・



「・・・・・・ごめん」
















「ふーん…。君が万象の魔女…フォニア・シェバリエ・ピアニシモ…ちゃん…か。」

「・・・う?」


下を向いていた私に不意にかけられた言葉。

振り返ると・・・



「初めましてマドモアゼル。ルクス・ポンセと申します。…お会いできて光栄に存じます。ご機嫌良うございますか?」


サラサラの綺麗なブロンドに、輝く金の瞳を携えた男の子が

そっと跪いて手を取り・・・



『…っ』


「・・・・・・・・・う!?」


はぁ!?

うぅ!?にゃ、にゃにを!?!?



「フォ、フォニアちゃん!?」

「おや?その髪、その瞳…ひょっとして君はラエンの…」

「ふぇ!?わ、わた…し!?」

「そう君!コレット・ミシュレちゃん…かな?」

「そ、そうだけど…」

「やっぱり!!…初めましてこんにちは!今日からよろしくね!」


私が呆然としているその横でルクス君はコレットちゃんに近寄り、

私にしたのと同じように跪いて・・・



「ひゃうううぅっ〜!!」


あ、アレはまぁ・・・あ、挨拶として無くはないんだけど普通はしない。

しない!しない!!


そ、そりゃぁ・・・これまでにもロリコン帝王とか、何処ぞの公爵に

された事あるけど・・・あ、あれは社交界での付き合いでだし!

年離れてたし!!


なにしろ、それは・・・そ、その・・・た、多分に・・・こ、こう・・・

こ、これ以上は言えない!!



「はわゎぁわぁわぁぁぁ〜!!フォニアちゃーん!!」

「・・・コレットちゃん!!」


真っ赤になって飛んできたコレットちゃんと手に手を取ってくっ付き合う。

多分、私も・・・



「おや?…ははは。これはこれは…」


なんだその反応は!?

乙女をバカにしてるのかー!!



「ちょっ、ちょっと何よアンタ!!誰!?っつか、あたしにはしないのか!?」


そう言いながら私達の前に飛び出したのはナターシャちゃん。



「誰って…名乗ったじゃないか?…君もされたいの?じゃあ名ま…」

「要らんわボケェ!!恥を知れ伊達男!!入学式そうそうナンパしてんじゃねーぞ!!」


いいぞ、もっとやれ!!



「…初対面でアレは失礼。」

「そ、そうだね。親しい仲ならともかく…」


そうだそうだぁ!!


総攻撃を受けたにも関わらず、ルクス君は余裕の笑みを浮かべ・・・



「…ははは。失礼だったら詫びるよ。けど、これから同じクラスで親しくなる仲だろう?今のはちょっとした…これからよろしく。という…挨拶さ。」

「同じクラス…?」


ナターシャちゃんのその問に、ルクス君は笑みを浮かべながら

小さな紙片を取り出して…



「そうだよ。試験番号1,018番。…1組セコンドとはボクのことさ。」

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