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Chapter 034_別れの朝

カレント2,181年 恵土の月10日。天気はシトシト小雨・・・



「・・・それじゃあ、みんな・・・ばいばい。また・・・ね・・・」


今日、私の家族はルボワへ帰る。

けど私は、お引越しの準備の為にもう数日ノワイエに滞在して・・・その(あと)は、学園のある王都エディステラへ向かう事になる。

ルボワとエディステラは直線距離で1,300km以上も離れている。汽車を使って急いだとしても15日以上。

次に家族に会える日は、少なくとも数年・・・先の話になるだろう。



「…頑張るのよ。フォニアちゃん…」

「・・・はい。頑張ります。お母様・・・」

「む、無理しちゃ…ダメよ?で、でも…き、嫌いでもっ、ブロッコリーもちゃんと食べるのよ?女の子なんだから、めんどくさがらずに毎日お着替えしなきゃダメよ?髪のお手入れもちゃんとするのよ?お部屋もお片付けしなきゃダメよ?変なモノ買って無駄遣いしちゃダメよ?それから…」

「・・・んふふっ。お母様っ。私にはローズさんがいるから・・・」

「…誠心誠意お嬢様のお世話をさせていただきます。ご母堂様、どうか、ご心配なさらずに…」

「あっ…っ…ロ、ローズさん…わ、私の…じ、自慢の娘をよろしく…ね?お願いねっ!」

「はい。願われました………」

「っ…フォニア…しっかり…しっかりね!」

「・・・っ・・・はいっ!!」


滞在中にお父様からコッソリと、

私が内戦に参加すると綴った手紙を読んだお母様が泣いていた・・・

という話を聞かされた。


口では自由に生きろとか言うし・・・実際そう思ってくれている

のだろうけど・・・その実、お母様は嫉妬深くて心配性だ。


実家に帰ってから今日までベッタリだったし、さっきみたいな・・・

アレはダメ、コレはコーシロって話も

何回聞いたか知れない。


愛って重いね。

そして・・・あったかいね・・・・・・



「お姉様。ロティア…うぅん。わ、私…私も!すぐお姉様に追い付くからね!だ、だからそれまで…げ、元気でいてね!約束だよっ!やくそく…して…ね…?」

「・・・ん!約束する。だからロティアも元気でいるのよ?勉強も頑張るのよ?・・・や、約束よ。」

「う、うんっ!…約束だよ!!」


お姉ちゃんお姉ちゃん。と、私の後をついてきていたロティアなのに・・・

彼女は大きく成長していた。まだ(つたな)さが残るとはいえ、

作法に(のっと)った挨拶をしている姿とか、お姉ちゃんぶって

ティシアに言い聞かせている所とか。彼女の頑張りと背伸びが(うかが)える。


子供の成長って早いね・・・なんて。

年増な事を考えたり。



でも、そうは言ってもやっぱり・・・久しぶりに会った彼女は、

相変わらずのお姉ちゃんっ子だった。

みつ編みにしたり、言葉遣いを真似たり、同じ事をしたいと言ったり・・・


反則だよぉ・・・



「ねさまぁ!!や〜ぁあっ!行っちゃヤー!!」

「・・・っ・・・テ、ティシア。お父様とお母様の言う事をよく聞いて、元気でいい子でいるのよ?」

「や〜あぁぁぁーー!!」

「・・・そ、そんなに・・・な、泣かないでっ・・・」

「や〜あぁ〜!!ねさまぁぁ!!」

「・・・っ・・・っっ」


末っ子のせいか、可愛がりの両親やお姉ちゃんぶるロティアのせいか

知らないけど・・・ティシアは言動も行動も少し幼い。


そんなティシアに昨晩からずっと泣き付かれている私の身にもなって欲しい。

ちょっとくらい泣いたって・・・いいじゃない・・・



「こ、こらティシア!お姉様の邪魔しちゃダメだろ!!」

「あ゛あ゛ああぁぁぁ〜っ!!や゛っ、やあ゛あ゛あぁぁぁ〜ぁ!!パパンのいじヴァぶーーーっっ!!!」


私に縋って泣いていたティシアを無理矢理引っペがして抱き上げたお父様は

泣き叫ぶティシアを抱えながら私の目をまっすぐ見つめ・・・



「…いいかフォニア。何度も言うようだが…お前はオレの。家族の。ルボワの、ノワイエの誇りだ!どうしようもなかったオレに生き甲斐と自信をくれたのはお前だ!オレの子に生まれて来てくれて本当にありがとう!!」


頭を下げた・・・



「お、お父様!?や、止めてください!!・・・お礼を言うのは私の方なのに・・・」


頭を上げてもらおうと、慌てて駆け寄ると・・・



「わ・・・」


しゃがんで、ティシアと纏めて強く抱き締められた・・・



「…」「・・・」

「ねさまぁ!!」

「お、お父様っ!ロティ…わ、私もっ…」


更にロティアが後からくっついて来て、雨やら涙やら鼻水やら汗やらで、

ぐちゃぐちゃになってしまう・・・



「ふふふっ…は、母も仲間に入れてよっ…」


トドメにお母様が私達を柔らかく包んでくれた。



「・・・ひぐっ・・えぐっ・・・」


寂しさと愛しさ。切なさと温かさ。不安と希望・・・

いろんな思いの重ね合わせで、

私はただ、泣く事しか出来なかった・・・



「フォニア…し、しっかりな!」

「ねさまぁぁ〜!!」

「お姉しゃまっ!お、おねぇしゃまぁっ!!」

「フォニアっ…っっ…」

「・・・ぅっ・・・ぅんっ・・・うんっ!!・・・ひっぐ・・・」


・・・

・・











「・・・ひぐっ・・・ひぐっ・・・」

「…よし…よし……。…またルボワに会いに行きましょうね。お嬢様…」


あのあと・・・

いい加減にしろとお祖父様に怒られたお父様達は馬車に乗り込み、

護衛に名乗り出てくれたロクサーヌさんとジャメルさんと共に


ルボワへ帰っていった・・・



「・・・ひぐっ・・・ひぐっ・・・」

「…よし…よし……。…これは悲しいお別れではありませんよ?お嬢様がもっと成長する為の。ちょっとばかりの寂しさですよ…」


お祖父様に抱えられてお屋敷に戻った私は、そのままお風呂に入れられて、

着替えさせられて、温かいカボチャのポタージュを飲まさせられた。


その間、ローズさんはずっと・・・ずっと私の隣にいてくれた。

ずっと慰めてくれた・・・

決して「泣き止め」とは、言わなかった・・・



「・・・ひぐっ・・・えぐっ・・・」

「…よし…よし……」


「・・・えぐっ・・・ぐぐっ・・・」

「…よし…よし……」


「・・・っ・・・ぅぐっ・・・」

「…よし…よし……」



・・・

・・

















『クー…』


「…うふふっ。お腹…空きましたね?」

「・・・///」


「…今日の晩御飯は、ハムとお野菜たっぷりのパスタサラダと、とろとろコーンスープと、ふわふわの白パンと、ウナギのポワレと…メインに。トロトロお肉のビーフシチューですっ。」

「・・・・・・・・・美味しそう・・・」


「デザートはあまっあまっ!な、山葡萄のタルトですっ!」

「・・・・・・じゅるり・・・」


「お茶はいかがいたしましょう…?タルトにはアンキが合うのですが、ウナギとビーフシチューに合わせてしまうと重たいですよね…。…もちろん。ご希望とあらばお食事中に銘柄を替えてご用意できますが?」

「・・・ディキャンがいい。」


「ディキャン…ですか?」

「・・・ディキャンはバランスがいいから、何にでも合うの。」


「なるほどっ!さすが…魔女様が贔屓(ひいき)にされているだけはありますねっ!」

「・・・んっ。」



「さぁ、お嬢様。お顔を拭いて…ご飯にしましょう!」

「・・・んっ!!」






きっと、この別れの先には綴られた世界の、まだ綴られていない

真っ新(まっさら)なページが待っている・・・


・・・そう、信じて



「・・・いただきます!!」

林檎です。


本話にて 2nd Theory:新人魔女編 完結です。お疲れ様でした XD


1st Theoryに比べて短い2nd Theoryではありましたが、内容的には濃かったと思います。

魔法も沢山出せて、書いている私は楽しかったですが、皆様はお楽しみ・・・頂けましたでしょうか?

心配です。


さて、次話より 3rd Theory:学園編 が始まります!

2nd Theoryで頑張ったコレットが本話でもかなり頑張ってくれます。


他にも名前だけだった人物や、懐かしいあの人、初登場も沢山出ます。


あと、ずっと出せずにいた錬金術のお話もあります!


もちろん戦いの方も・・・ふふふっ ;)



引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。

ご評価、ブクマ、ご感想いただければ嬉しいです。

・・・よろしくね :)

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