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Chapter 030_魔女のランチ

「いっただっきまーす!!」

「・・・い、頂きます・・・」


カレント2,181年 星火の月3日。天気は晴れ。


戦後処理を行う他の領地の騎士団の皆様を残して、

国王軍、ラエン騎士団、そしてノワイエ騎士団は

一足早く帰路に就いた。


そんなある日・・・ラエン駅にて。

明日の朝出発する特別列車で王都に帰る予定の陛下から・・・



「万象のき→み↑!…一緒にランチしよっ!」


と、お誘いを受けてしまったので急遽、お宿の食堂で玉前昼食会に

参加する事となった。


因みに陛下のお相手は私一人だけである。

いちおう、礼儀上断ったんだけど・・・この日は却下された。



「…うぅんっ///美味しいぃ!!キャンプ飯もいいけど、やっぱり椅子に座ってゆっくり食べるご飯は格別ねっ!…ほらほらぁ!万象の君も遠慮しなーい!!」

「・・・は、はい。では・・・もにもにもに・・・」

「…どうどう?美味しい?」

「・・・んっく。・・・はい、とても。」

「ふふふっ…やったねぇっ!!…さぁさぁ、遠慮しないで!どーんどん食べてっ!!」

「・・・はい。」


陛下に出される料理はすべて王城から連れてきた専属シェフが作っている。

今日のランチは設備が整っているお宿の厨房で作られたのだから

美味しくないはずがない。


普通に、究極で至高の料理である。



「あーんっ!もぐもぐもぐ…」

「・・・もにもにもに・・・」


広い食堂を借り切って2人だけの食事・・・



「姫様。次のお皿を…」

「ありがとぉー!」


「…お嬢様。ほっぺにソースが…いま取って差し上げますね。」

「・・・んー・・・」


・・・魔法のように消えゆく料理を取り替えるため、侍女さん達が

ひっきりなしに出入りしているため騒々しかったりする。



「…ふふふっ。万象の君も沢山食べるわね!」

「・・・もっくん・・・陛下も。」

「魔力がいっぱいの証ねっ!」


魔力の源は、食事。と言われており、【魔法は食事から】・・・なんて

(ことわざ)まで存在する。


子供の私が大人7人前の食事をペロリと食べてしまうのも、

陛下が私以上にご飯を食べるのも、魔力を沢山消費するといつも以上に

お腹が空くのも・・・きっと、その“せい”なのだろう。



けど実のところ、それを証明する客観的証拠は存在しない。

これまで何百人という人を診断魔法で診てきたし、ベルナデット様の

ご厚意で人体解剖も見学させてもらったことがあるけど、

リブラリア人の体には魔力を生み出したり蓄えるための

特別な臓器なんて無かった。


というか、そもそも魔力が何なのか理解できていないのだから、いくら調べても

そのメカニズムを知る事は出来ないのかもしれない。


過去に1度。(イレーヌに被検体になってもらって)診断魔法の最中に

魔纏術で魔力を巡らせてもらった事もあるんだけど・・・結果としては

“魔力の流れ”や“増減した”という事が“何となく”わかった・・・

・・・わかった?という程度。


魔力が体の何処からやってきて何処へ行ってしまうのか?すら、

分からなかった。


けど、魔法が近くで行使されると、その“気配”みたいなものを

感じ取る事が出来る・・・


“まほー”は不思議でいっぱいだ・・・



・・・

・・






「ふぅ〜…満足まんぞくぅ!」

「・・・ご馳走さまでした。」


デザートも食べ終えると、そのまま、お茶とお菓子を交えた

談話となった。


陛下は食事中。あまり多くは話しかけて来なかったけど・・・



「…ふぅ。…ねぇ、万象の君?」

「・・・はい。」


わざわざ食事に誘ったくらいなのだから

何か有るのだろう・・・



「先ずは…そうね。学園の事。」


学園の事・・・?



「万象の君…いえ、この場合はフォニアちゃん…と呼んだ方がいいかしら?エディアラ王国国王の名義でフォニアちゃんを特待生に推薦したいと思っているわ。入学にかかる費用と学費、寮費は卒業まで免除。クラスは成績優秀者しか入れない1組の席を開けさせるわ。試験は受けてもらわないといけないけど…最悪、名前だけ書いてくれれば合格にしちゃうから安心して。…王国民でもある貴女に、ぜひとも入学して欲しいと思っているの。…どうかしら?」


凄い好待遇・・・

私はもともと学園に入るつもりだったけど、他国の学校に入学する

という選択肢も、無くは無いから。今のうちに・・という事だろうか?


もちろん。私にとっては・・・



「・・・願ってもない事です。」

「そう!それは良かったわ!!…他にも、貴女の学園生活を出来る限りサポートしてあげるから何かあったら言ってね!」


陛下の推薦があるなら問題はないだろう。


もちろん、ちゃんと試験は受けるよ。

名前を書き忘れないように注意しないと・・・



「…で。2つ目のお話だけど…レオノール?」

「はっ…」


陛下の後ろに控えていたレオノールさんが

名前を呼ばれて『スッ』と前に出て・・・



「・・・う?」


お話って・・・レオノールさんから?



「まず…万象様にお願いです。侍女殿に御控え願いますか?」

「・・・う!?」「えぇっ!?」


控えろ・・・要するに、退席しろという意味だ。



「ここからは機密事項ですので…」

「わ、私は…」


そう言ったローズさんは悲しそうな瞳で私を見つめた。

いや。そんな悲しそうな顔しなくても・・・



「・・・ローズは私の唯一の家人でありマチェニフスカ家から引き抜いた身元も経歴もはっきりした人物です。私の体調とスケジュールの管理もしてもらっているので、どのようなお話を頂こうとも彼女にその内容を伝えないわけにはいきません。故に、彼女を控えさせろと仰るなら・・・私自身も拝聴致しかねます。」

「お、お嬢様っ…」


いや。そんな嬉しそうな顔しなくても・・・



「…そうですか。分かりました。」


答を聞いたレオノールさんはアッサリとそれを了承した。


・・・ま。

ローズさんが私の執事みたいな事もしているというのは知っている筈だから、

レオノールさんとしては「もし漏れたらお前が責任を持て」という意味

で聞いてきただけだろう。



「おい。お前たち!」


レオノールさんが部屋を見回しながらそう言うと、

残っていた侍女さんや騎士さんも会釈してから部屋を出ていった。


最終的に部屋に残ったのは、クッキーの山を崩している陛下と私。

陛下の隣に立つレオノールさんと、後ろで控えているアリスさん。

あと、私の後ろのローズさんの・・・5人。



「では…」


それを確認してから、レオノールさんはゆっくりと唱え始めた・・・



「…来年から国王軍に新しい部隊を編成する計画があります。」


今の言葉だけで、だいたい予想ついちゃったんだけど・・・



「部隊の名前は…」

「ま〜…万象の君なら分かると思うけどっ!」

「…魔弾兵隊です。」


だからっ!

なんでみんな【魔弾】って呼ぶの!?

【スナイパー】だって言ってるでしょ!!



「万象の君にはその部隊の指導をして欲しい…というか、万象の君が指導してくれない限り。この部隊はお蔵入りね。」


最初にそれ言うってズルくない?



「魔弾はこれまでにない、戦略的に非常に有効な技であり是非とも我が軍に導入したいと考えております。既に選抜も始めておりますが…しかし。現状、万象様以外この技を扱える者がおりませんので…」


既に選抜始めているって・・・もう、確定事項じゃん!?

これ、たとえ断っても王命とか出されたら抵抗できないんですけど・・・



「でもでもぉ!条件さえ整えば出来る者が現れるんじゃないかなぁ…って。ね!?」


そりゃあ・・・理論上は可能なのだから

“いつか”はできる人が現れると思うけど・・・



「姫様のおっしゃる通り、行使する魔法の階位は高くありませんし我が軍にも優秀な…単独で多属性を操り、アンサンブルも・・・デュオや、トリオまでできる者も少なからずおります。」


え!?いるんだ・・・

さすが国王軍。世界中から優秀な人材を集めているだけある。



「ですから、是非とも万象様のお力添えを頂きたく…」

「国王軍の演習地は王都の郊外なんだけど、ちょぉっと他の国にはナイショでやりたいから王都の地下にある秘密の広場でやるつもりよっ!行き来には当然、学園までお迎えを出すから…万象の君も通えるでしょ?」


くっ・・・初めから逃げ道を固めておくとはキタナイ。

さすが魔女、きたない・・・



「万象様には部隊の…顧問の席を用意させて頂きます。…こ、顧問と言っても勿論。立場上は部隊長以上です!!」

「もちろん食事も…お茶とお菓子も用意させてもらうわ!お給料も兵隊長(なみ)を約束するわ!あと特権として…王立図書館を全層、自由に出入りできるようにしてあげる。」


お、王立図書館の自由拝観!?

エディアラ王国の王立図書館ともなれば、

大図書館(グランリブラリア)に勝るとも劣らない蔵書を誇るだろう。


み、見たい・・・



「…もちろん。万象様は未成年故、強制は致しません。しかし、その時は…」

「…悪いけど、万象の君と侍女ちゃんに監視を着かせてもらうわ。当分…いいえ。もしかしたら一生…ね。」


えっ・・・



「万象様がわが軍にご協力いただけなかった場合に考えうる、一番恐ろしい事は…他国にその技が流れてしまう事です。」

「これは万象の君が攫われないようにする為でもあるの。分かってね…」

「・・・」

「…」


学園は“王立”の名が示す通り王国直轄(ちょっかつ)だから幾らでも監視することが出来る。

この人たちはその上、私生活でまで私を縛ろうというのか・・・



「勿論それは、ご賛同“いただけなかった”場合に限ります。」

「万象の君がオッケーなら、そんなストーカーみたいなことはしないわっ!安心してね!」


これ、脅しじゃん。

自分でストーカーって言ったじゃん。



「ふふふっ…。万象の君なら、どうすればいいか、分かるわよ…ねぇ?」


これがヒナ様のやり方か・・・

林檎です!


お昼寝を我慢して・・・改訂!!

よろしくね!

(23/10/22 15:35)

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