表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/476

Chapter 028_魔女の帰郷

「・・・ね、ねぇローズさん。変じゃ無い?」


カレント2,181年星火の月27日 天気は晴れ。

領都ノワイエまで騎士団に同行していた私は、そこから更に伯父様に馬を借りて

故郷ルボワを目指した。


ルボワまであと数分・・・と、迫った所で

ローズさんに尋ねてみると・・・



「ふふふっ…お嬢様はいつだってバッチリ花丸グーですよっ!お嬢様の身嗜みは貴女の薔薇が毎日責任を持って整えさせて頂いております!…もうっ。これで何度目のご確認ですか??」


ふふふ…と私に微笑みながら、そう言った。

さらに・・・



「…叙爵式ではあんなに堂々とされていたのに…こんな時は緊張なさるのね?」


護衛としてここまで同行してくれたロクサーヌさんも笑顔でそう言った。

みんな、そうは言うけど・・・



「・・・だ、だって・・・」


だって、本当に久しぶり・・・内戦で遅くなったこともあり、ほぼ4年ぶり・・・

の。我が家なんだもん・・・


お母様とお父様は大人の魅力で素敵になってるだろうし、

デシさんは相変わらず優しく微笑んでくれると思うし、

ロティアだって成長してる筈だし、

末の妹であるティシアにいたっては初めましてだし!?



「大丈夫ですってばっ!みんな、成長したお嬢様を歓迎してくれますし…お帰りって言ってもらえますよ!」

「・・・そうかな?」

「…もちろん。みんなフォニア卿を褒めてくれる!」

「・・・そうかなぁ?」


2人に励まされながらもウジウジと髪をイジっていると、向かう先から

蹄の音が聞こえ・・・



「せーんぱーい!!おっじょーさまー!!」


土埃を上げながら物凄い勢いで馬を駆けるジャメルさんがこちらへ向かってきた。

ジャメルさんは私の帰郷を(しら)せる為に、先に街に向ってくれていたんだけど・・・



「・・・う?」


・・・なんで全力疾走?



「…どしたジャメル!?」

「何かあったのですか!?」


その様子に驚いたロクサーヌさんとローズさんが訊ねると



「…え?」


キョトーン・・・とした表情になり、そして・・・



「…特に何もないですけど?」

「「はぁ?」」

「早駆け完了で~す!みんな、お嬢様の到着を待って集まっ…」


すれ違いざま、そう言い残し・・・って!?

なんで“すれ違う”の!?



「ってわぁーっ!?ヴェ、ヴェルツ行き過ぎ!!と、止まれぇっ!!」

『ヒ―ヒュブブブブブッッ!!』

「うわぁぁーっ!!」


少し先で馬を急停止!!

反作用力でツンのめった上、ヴェルツ(ジャメルさんの馬。グレーの毛色で

まつ毛の長い、利口な男の子。)が首を下げたものだから・・・



「ヴェルツゥ――――っっ!!」

『ヒュブブ…』


勢いで手綱を離したジャメルさんは、立ち止まったヴェルツの首を

スロープのように下り、そのままゴロゴロと地面を転がっていったのだった・・・



「…」「…」「・・・」


その様子を立ち止まって見守っていた私達は・・・



「ぺっ、ぺぇ~…あぁ…砂食べちゃった…」


なんて言っているジャメルさんをしり目に・・・



「…ヴェルツ。おいで。」

『ヒュブッ!』


ロクサーヌさんのその声を聞いて、主人を置いて

嬉しそうに駆け寄るヴェルツと共に



「…え!?ちょっ!?!?…先ぱーい!おじょーさまぁー!お、おいてかないでー!!…ヴェ、ヴェルツの薄情ものーー!!」


そのまま街に向かったのだった・・・



「…」「…」「・・・」『…』


何やってんの?あの人・・・???
















「フォーニアー!!」

「イレーヌー!!」


街門から一番に駆けて来たのは、大親友のイレーヌだった!


ローズさんが操ってくれている馬からピョンと飛び出した私も

彼女に駆け寄り



「お帰りっ!」

「ただいま!!」


思いっきりハグッ!!

ふわふわの巫女服に微かな消毒液の香り。

あの時のまま、巫女服の裾にコッソリ付いてるワインの染み・・・


あぁ・・・記憶の通りのイレーヌだ!!



「…あれ?あんた縮んでない?」

「・・・そんなわけ無い!ちゃんと背は伸びたもん!!・・・3センチ」

「そんなの誤差のうちよ!」

「・・・うるさいもん!!」

「相変わらずねぇ〜!」

「・・・イレーヌも相変わらず。失礼しちゃう!」

「あ~らっ、ごめあそばせ〜…ふふふふっ!」

「・・・んふふっ!」


イレーヌと冗談を言い合っていると・・・



「フォニアちゃーん!」

「・・・デュランさん!ひょっとして、その子・・・」


ギルドでお世話になったデュランさんは小さな男の子を抱えていた。

もしかして・・・



「ふふふっ!私の子よ〜!…どう?かわいいでしょ〜!?」

「・・・かわいい!!」


デュランさんからイレーヌにバトンタッチされた子供は予想通り、2人の子供のようだ!

イレーヌと同じ髪色の、優しそうな男の子!

私がこの街を出てから産まれた子だから、まだ2歳半・・・もうすぐ3歳になるはず。



「…ほら、ロラン。お姉ちゃんに抱っこして貰いなさい。」

「…う〜?」

「・・・ロランちゃん!こんにちは!」

「……わ。」


イレーヌから受け取って、思いっきりハグっ!

ちっちゃくてかわいい〜!!ホッペぷにぷに~!!



「…だ〜れ?」

「・・・んふふ。お姉ちゃんはフォニアって言うのよ。あなたのお母様のお友達っ!」

「…ままんの?」

「・・・ん!」


「ふふふっ…よかったわねロラン!サリエル様に抱っこしてもらえて~…」

「しゃりえる…?」

「・・・う~・・・イレーヌも知ってたか。・・・言わないでよ。」

「ふっふっふっ~!知らないわけ無いでしょ~!!…後で治癒院にも顔出しなさいよ!シャルちゃんに巫女ちゃんたち…もちろん巫女長も!あなたに逢いたがっていたわよ!」

「・・・ん!」

「マスターもセリアちゃんもお待ちかねだよ!ギルドにも来てね!!」

「・・・もちろん!!」


あまり人見知りしないロランくんを抱いたままイレーヌやデュランさんも交えてお喋りしていると、不意に・・・



「フォ〜ニアちゃん!」

「・・・わ?」

「だーれだっ!?」


後ろから目隠しをされた!?

この声はもちろん・・・



「・・・ジュリーさん!」

「うふふっ!せ~か~いっ!…おっ帰りぃ!!!」

「お帰りフォニアちゃん!!」

「・・・アベルさんも!・・・ただいま!!」


さらにその奥から・・・



「…お帰り!」

「お帰りなさい!フォニアちゃん!!」

「・・・ジルさんとナタリーさんも!・・・ただいまっ!!」


東門同盟全員がお迎えに来てくれたみたい!



「ねーねー、フォニアちゃん!!うちのアルも抱いてあげてよぉっ!」


アベルさんはジュリーさんとの間に生まれた子供・・・アル君を抱いていた!



「・・・ん!勿論!!」

「やったぁ!魔女様のご利益がありますよーに!!」


ロラン君をイレーヌに返して振り返ると、アベルさんは中腰になって・・・



「ほぉら、アル!魔女のお姉ちゃんに抱っこしてもらえ!」


私にその子を預けてくれた。



「まじょ…?」


アルベール君はロラン君よりちょっと大きな男の子。

もちろんこれが初対面だけど、とっても素直に抱かせてくれた!



「・・・んふふっ。こんにちは。アル君!」

「フォニアちゃん。うちの子はアルベールよ!」

「・・・アルベール君!」

「…マジョ?おねーちゃん…魔女?」


小首をかしげつつ私の顔をじ~っ・・・っと見つめ、まじょ魔女マジョとくりかえるアルベール君。

か、かわいぃ~///



「フォニア様っ!!うちの子も是非抱いてあげて下さい!!」

「・・・う!?アネットさん!お久しぶりです!!わ~っ!かわいい子!!おめでとうございます!」

「うちの子もお願いします魔女様っ!!」

「・・・ん!もちろん!」

「フォニアちゃん!!ヒッさしぶり―!!」

「・・・お久しぶりです!!・・・今度またお肉買いに行くね!!」」


「フォニア様!!あ、握手を…」

「・・・う!?・・・は、はい・・・」


「魔女様ぁ!!唱えてぇ~~!!!」

「・・・それは、ちょっと・・・」


次から次へとやって来る市民の皆様や冒険者さん達。


と、とても相手しきれないよぉ~!!

なんて思っていたら



「…ほらっ、散れっ!フォニア卿がお困りだろう!!」


人垣を分けて数人の騎士団の人がやって来た。

その真ん中にいるのは・・・!



「…お久しぶりです。フォニア・シェバリエ・ピアニシモ様。…ご帰還。喜びに堪えません。また、ご拝顔の栄誉を賜り幸甚に存じます。ご機嫌ようございますか?」


ウィンクしながら最敬礼で迎えてくれたのはルボワ市の衛兵隊長二コラさん!



「・・・お久しぶりですっ!二コラ・シェバリエ・ファロ様。こちらこそ、再会の喜びに言葉もありません。また、ご繁栄のことと心よりお喜び申し上げます。・・・本日はご厚情あるお出迎え頂き誠にありがとうございます。お陰さまで快調です!」


私も、思いっきりのカーテシーをキメる・・・と!



「「「「「お帰りなさい!フォニアちゃん!!」」」」」


集まったみんなが、声を揃えてお出迎えしてくれた。

もちろん私も!



「・・・ただいま!みんな!!」


みんなの声援に笑顔で応えた!

林檎です。


お菓子食べながら見直して。

ちょっとだけ改訂!

・・・よろしくね

(23/10/14 13:55)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ