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Chapter 026_コレットの戦い①

「ねぇ、フォニアちゃ…ん。」


終戦10日後。

領都エヴァーナでは戦後処理が続いているけど、いつまでも

各領の騎士団を派遣させておくコトもできない。また、遠方の領地からの

援護部隊も到着し始めたので・・・

内戦の序盤から出払っていたラエン騎士団とノワイエ騎士団には

帰還命令が下ったのだった。



「・・・う?」


ノワイエ領はラエン領の東にある。

帰路は領都ラエンまで全行程同じ・・・というわけで、

ノワイエに帰る私は必然的にコレットちゃんと一緒に過ごす事になった。


私達二人はいつも一緒で・・・

一緒に馬車でお喋りしたり、二人して御者台に乗せてもらったり、

ローズさんとロクサーヌさんにお願いして馬で並走してもらったり、

たまに手を繋いで歩いたりもした。


ご飯は勿論2人で食べたし、夜は1つのベッドで眠った。



入学試験はどんな問題が出るんだろうね?とか、

どの部活に入る?とか、

私がみつ編みにした経緯とか、

コレットちゃんは結かないの?とか・・・


そんな他愛もない話を一日中して過ごした。



「あの…ね。あの日のお話し…聞いてほしい…の。………エヴァーナで戦った時のお話…し…。」


そして今夜は彼女と過ごす最後の夜。

風にくすぐられたラエン湖の微かな波音と、虫の声が響く、

静かな夏の夜だった・・・







「・・・ん。」


あの日、私が駆けつけるまで西門で何があったのか・・・ある程度

予想はできたけど、細かい経緯とかは聞いていない。



「・・・もちろん聞くよ。」

「うん…あ、あの時…」


コレットちゃんは私の手を強く握りしめ、

話し始めた・・・


・・・

・・





















……

………


「ウ、ウォーターカーテン!…きゃぁ!!」


私の唱えた水帳魔法(ウォーターカーテン)は、敵兵が放った火球魔法を防いだものの、

水の壁に火球がぶつかり爆発。その衝撃で、私は吹き飛ばされてしまった…



「コレットォ!大丈夫か!?」

「う、うん…」


慌てて駆け寄ったお父様に助け起こしてもらいながら前を向くと、

先ほどの爆発で生まれた(かすみ)の向こうで…



「でりゃぁぁ!!」

「よくもお嬢様をぉ!!」


敵兵の隙をついて、騎士団のアイロスさんとオレリーさんが攻撃をしかけていた!



「ぐあっ!!」

「よし、いいぞっ!アイロス!オレリー!!」


敵兵はアイロスさんの振り下ろしたロングソードを剣で受け止めたものの、

続けて放たれたオレリーさんの横薙ぎを受けて血を吹き出し、倒れた。



「あっ…!」


その血しぶきは私にも届き、お母様から頂いた紺色の魔女服を

赤く染めた…



「あか…い………」


血…人の血だ…

オレリーさんの攻撃を受けてピクリとも動かなくなった

あの人の…



「コレット、大丈夫か?」


あの人と、あの人の血で染まったスカートを交互に見つめて

小さく震えた私の肩を抱いたお父様は、心配した声でそう告げた。



「…は、は…い……」


本当は全然、大丈夫なんかじゃなかった。

でも…



「でやっ!!」

「ぐはっ!!」

「アイロスっ!!くっ…」


闘いは、私を待ってなんてくれなかった。

城門から現れた新手が槍を突き、アイロスさんをっ



「『礫よ 穿て』グラベルアロー!!」

「きゃぁー!?…がはっ!?あっ…がぼっ…っ…」


さらに、至近距離から礫矢魔法を受けたオレリーさんは

その衝撃で跳ね橋から吹き飛ばされ、水音と共に

声も小さくなっていった…



「あっ…あぁ……あ、あいろす…さんオレリーさ…ん…」


私はもう、恐くて…恐くて…

恐く…て…



「コレット!?しっかりせんか!!」

「…っ…は、は…い…っっ…」

「くっ…」


「だっ、団長!!今のうちに…はやくっ!」

「ぐっ!!!こ、コレット様…おはやくっ」


お父様には肩をゆすられ…

目の前では私を庇って数人の騎士さんが敵兵の相手をしてくれていた。

けど敵兵の方が数も多く、苦戦を強いられていた。


震える私は、皆のお荷物でしかなかった…



「…コレットいいか!お前はここでじっとしているんだ!」

「…っ…ひ、…」

「すまん……っ、気合を入れんか!ラエンの騎士たちよっ!!ここが踏ん張りどころだぁぁぁ!!」


お父様はそう言うと、跳ね橋の上へ…敵兵のもとへと向かった。



「「「「「うおおおぉぉぉぉーー!!!!」」」」」


その声を聞いた騎士さん達は声を上げ、押されつつあった戦線を

どうにか維持し…徐々に押し返していった…



『ガキンッ』

「くっ…」

「ま、負けるかぁ!!」


剣と剣が触れ合う音



「がはっ…」

「はぁ、はぁ…だ、団長!!ただ今っ!!」

「さ、させるかっ!!」

「くっ…そがぁ!!」


泥と血で汚された大地



「ファイアーボール!!」

「う、ウィオーターボール!!」


雨と、火と水で(けぶ)る大気



「…っ………」


これが。、これが戦場………


私は…私は甘かった。

フォニアちゃんがあっけらかんとしていたから、

私にも出来るって…そう思っていた。

でも…



「ぐはっ…」

「はぁ、はぁ…て、手こずらせやがっ…「ファイアーボール!!」なっ!?がはぁぁぁ!!!」

「くたばれぇぇぇ!!!」


でも、現実は違った。


戦場は

うるさくて、

汚くて、

熱くて冷たくて、

生と死が入り乱れていて…


とにかく恐ろしかった。



「…あ……っ…」


私はただ、その光景を唖然と見つめていた。

城門の向こう…遠くから不安げに戦いの様子を見守っている市民と同じだった。

私は…戦いになど。参加していなかった…



けど、そんな時…






『カイモーンッ………』



南門がある方向から、微かに声が…戦いの終わりを告げる声が聞こえ



「なぁっ!?」

「せいっ!…き、聞こえたかっ!!南門が開門したぞっ!!」

「そ、そんな…は、早すぎる!?」


戦場には動揺が拡がり…



「えぇい!往生際が悪いぞエヴァーナの騎士たちよ!!さっさと投降せんかっ!!」

「ま、負け…」

「よ、よし…よしっ!!」

「こ…ここまで…だと…っ…」


敵味方共に、戦いの手が緩んだ。


戦いは終わっ………

















「レド・バレット!!」


そのひと唱えは、気を緩めた全員の隙を突いた



「グボァッッッ!!!」

「「「「「団長っ!?」」」」」「お父様っ!?」


目の前で仰向けに吹き飛ばされる…お父様!?



「お、お前らっ!!ボサっと突っ立ってんな!!逃げるぞ!!」

「「「「「ファリフ様っ!?」」」」」


城門から現れたのは…


戦いの前に人相書きを見せられたジャコブさん…いや、

ファリフだった!!



「うをっ!?まだいんのかよっ!?斬れ!唱えろっ!!」

「「「「「イエッサー!!」」」」」


ファリフの登場で、敵兵は勢いを取り戻し…



「覚悟ぉ!!」

「ギャッ!!」


「食らえっ!」

「キヤァァ!!」


「よーし!いいぞお前ら!!」


次々と、ラエンの騎士を倒していった…



「あ、あぁ…」

「ぐっ…がっ……こ、ゴレッとっ…」

「お、お父様!?」


そんな中、私の目の前まで吹き飛ばされたお父様は、

こちらに視線を向けるコトなく



「に、に゛…にげ…にげろぉぁぁ!!」

「お、お父様!?」


真赤な脇腹の染みを更に拡げながらも、剣を支えに無理矢理立ち上がっ…



「うおぉぉぉぉーーー!!ファリフゥゥッ!」

「あぁん?」


お父様の叫び声に気づいたファリフはお父様に視線を向け



「…ちっ。まだ生きてやがったか。」

「く、は、ははははっ!あいにくなぁ!」

「…ったく。相変わらず、しぶてぇ野郎だぜ。」

「互いだなっ!」


「…っ」


私を隠すように立ち上がったお父様は、私を逃がそうと…時間を稼ごうとしていた。



「くくくっ…鉛弾は美味かったかぁ?あぁん!?」

「はっ!貴様も食ってみるか!?」


けど…



「…いらねーよ。オイ、お前ら…やれ!」

「「「「「イエッサー!!」」」」」


ファリフはすぐに、次の行動に出た。

騎士さん達を倒した敵兵は剣を手に、お父様のもとに集まり…



「エ、エルネスト様…」

「き、貴様らぁ…閣下に…陛下に忠誠を誓ったんじゃないのかぁ!!」

「そ、それは…」

「…無駄だよエルネストぉ!そいつ等が忠誠を誓ったのは…師父様だ。」

「くっ…き、騎士としての誇りはないのかぁ!!」

「………」


お父様の必死の説得にも…



「…おいお前ら!サッサと…」

「…エルネスト様………ご覚悟を…」

「………」


耳を貸さず、剣を振り上げ…











今だっっ!!



「ウォーターボールゥゥ!!伏せてえぇぇ…ぇ!!!」


コッソリと唱えていた水球魔法を行使!!



「なだぁっ!?」

「うをっ!?」

「なっ!?」

「にぃ!?」


全力で唱えた水球は



『バシャァァァーーーンッッ!!』

…と、大きな音を立てて!


倒れ込むようにして伏せたお父様の真上を通り抜け



「がっ!!」

「ぶふっ!!」

「ぎゃっ!?」


敵兵を吹き飛ばした!!



「ブハァッ!!」


勢いが強かったおかげか…ファリフも避け切れず、

転ばせる事に成功!


けど…



「…っくしょお!やってくれたなクソガキャぁ!!」


そこまで…だった…

林檎です!


読みやすいように行を切ったり、

足したり引いたりしました!

・・・よろしくね!

(23/10/14 13:25)

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