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Chapter 020_西門。もう一つのエヴァーナ攻城戦

「…っ………あぅ…」


その日は朝から雨で…でも私は、いつも持ち歩いている傘もささずに

周囲の物音にいちいち反応しながら…



「…す~…はぁ~…っ…」


トクトクと鳴る胸を意識しながら



「お、落ち着け…落ち着け。わた…し…」


目の前の跳ね橋を見つめてい…た…



「…団長。」

「うん?なんだい?」

「…へい…が……との…」

「…」


緊張…していた。



「…そうか。ご苦労だったね。引き続き頼むよ。」

「イエッサー!頼まれました!」


勉強の為…と連れて来られた戦場。

そこで私はお父様にくっ付いて、兵士さん達の訓練を見たり、軍議に出てみたり、

騎馬に乗せてもらったりしながら、勉強…という名の。遊び…をしていた。



「…コレット。」

「…」


お父様とお母様。そして家臣の皆や時々遊びに行く騎士団の皆が褒めてくれたから…

私は、自分の喉に自信を持っていた。


私はきっと凄いんだ!

魔法の才能があるんだ!

だって、初めての魔法行使は6歳の時!みんなより、ずっと早いでしょ!?

11歳になった今では、第3階位…つまり。中級魔法だって行使できるっ!

得意なのは水属性と土属性の…特に、防御魔法で…他の属性でも

第1階位なら全部宿しているよっ!!


…なんて。

ラエンという“箱庭”から出たことが無い、包まれ娘の私には…

綴られた本のインクと、身近な人々の言葉だけが

リブラリアの全てだっ…た…



「…コレット!」

「は、はいっ!?」

「…もうすぐ始まるそうだけど…大丈夫かい?」

「だ、だだ大丈夫で…すっ!…ご、ごめんなさい。お父さ…ま…。」


初めての魔法行使は何…歳?

・・・覚えてない。でも、魔法は・・・製紙魔法(ヴァージンリーフ)だった。

そっか…みんなそうだよね!?私も製紙魔法だ…よ!!

・・・そうなんだ。一緒だね。

うんっ!一緒だ…ね!!



…ねぇ!第何階位の魔法まで宿しているの?魔女様なんだから失伝魔法も、だよ…ね?

・・・あんまり気にしてないや。

気にしてな…い…?

・・・ん。大事なのは階位じゃなくて。その魔法をどう行使するか・・・どう唱えるか・・・だから。

ふーん…。ねぇ?

・・・う?



じゃあじゃあ!一番得意な魔法って何か…な!?

・・・一番得意なのは・・・点火魔法(インジェクション)・・・かな?

うふふっ!第1階位の、生活魔法だ…ね!私も行使できる…よ!!

・・・ん!高位の魔法は難しい。

わかるー!実はいま、第4階位の魔法を勉強中なんだけど。難しく…て。

・・・上級魔法!コレットちゃん凄い・・・ね!・・・う!?

うん?

・・・んふふっ。・・・コレットちゃんの口調が移っちゃっ・・・た!

うふふふっ!ほんと…だ!



「な、何だあれは!?」


だから私は、彼女も自分と大して変わらないんじゃないかなぁ…なんて。

そんなふうに思った…うぅん。彼女と親しくなればなるほど

その思いは強くなった。

知れば知るほどフォニアちゃんは普通の…た、たしかに普通じゃないくらい

ご飯をいっぱい食べるけど…。それ以外は

いたって普通の女の子だった。


私の初めてのお友達だった!


初めてのお友達が魔女様だなんて…まるで、お伽噺の中に飛び込んだみたい!

でも、フォニアちゃんはお伽噺の魔女みたいにイジワルでも我儘でもなかった。

故郷のラエン湖を褒めてくれた。一緒に遊びに行こうって約束してくれた!

学園では同じクラスに入ろうねって話もした。

が、頑張らないといけないのは私だけど…


お馬の乗り方を教えてくれた!馬に乗って、一緒にお散歩も出来た!!

歌とダンスは私の方が上手だった!フォニアちゃんったら…センス無いのっ!

学園では音楽とダンスの授業もあるらしいから、もっと練習しなくっちゃねっ!



「空に…ま、魔法印!?なんと巨大な…」


それは綴られたお話より、ずっとずっと素敵な出来事だった!!

私は彼女の事を好きになった。大好きになった!

彼女とお友達…それは私の、何よりの自慢になった。



「魔法印の、あの色…水属性か!?」

「と、なると…陛下では無いな。ば、万象様…か…」


フォニアちゃんが“すないぴんぐ”と呼んでいるあの魔術…魔弾…だって。

一番高位の魔法でも、第4階位だ。


それなら納得できた。第4階位なら私でも…もうちょっとすれば…

宿せると思う。


“すないぴんぐ”は魔法の運用を工夫しただけだし、

魔女に命名されたのだって本当にたまたま…運が良かったからだ…と、

彼女は言っていた。


だから…

わ、私だって。きっと…






「フォニアちゃ…ん…」


距離のある西門からでも、はっきりと見える巨大な魔法印…

それを生み出す、圧倒的な魔力を有しているのは

小さな…


魔女(おともだち)



瞬間火力最強と(うた)われる、煉獄の魔女 ローデリア様の唯一の弟子で…

殲滅戦最強と言われる、恵土の魔女 ディアナ陛下に認められ…

伝説のエルフの魔女様、森羅の魔女 スタカッティシモ様と対となる

二つ名前を命名された、正真正銘の…


魔女(まじょ)



「み、見ろ!!魔法印から…り、龍!?!?」

「しかも…に、2柱…だとっ!?」

「なんという…」


空に現れた2柱の…お、お伽噺でも読んだことの無い、虹色の龍は

エヴァーナの丘に隠れたと思ったら、沢山の悲鳴とガラガラという

モノが壊れる音を伴いながら、再び空へと舞い上がり…



「りゅう…あ、あれ…が…」


私は…うぅん。私だけじゃない…



「…なんと。美しい…」

「お、オレ…龍なんて初めて見たよ!」

「そ、そんなの…みんな、そうだろう!?存在は確認されているが、実際に見た者など数えるほどしか…」

「お、オレ達…それを、見ているんだよ…な…?」

「…つ、綴れ!とりあえず綴っとけ!!」


西門に集まったラエン騎士団の全員が

天に架かる虹に魅了されていた。


雨雲の下で絡まり合いながら

戯れるように舞うその姿。


あれがリブラリアの・・・(ことわり)



「あ、あれを…フォニアちゃん…が…」


綺麗…うぅん。美しかっ…た…



「…」


現れては消える。1柱が、もう1柱が、時には2柱同時に………

水しぶきのように…天国に架かる橋のように…



「…///」


助けを求める人々の悲鳴…あの2柱が何をしているのか…何となく、

察することが出来た。


でも、そうと分かっていても…



「す…」

「すごい…」

「あれが…龍…」

「アレが。まほー………」


気まぐれに空に架かる対輪の虹は美しかった。

ただただ。美しかった。

美しい魔法だった。



「…っ…っっ…」


気付けば…涙していた。

理に触れた歓びに…



「…コレット。良く見ておきなさい。あれが…魔女だ。」

「……っ…はっ…い…」

「コレット。あの子から…魔術だけじゃない。色々な事を学んで来なさい。ずっと友達でいなさい。彼女を大事にするんだ。お守りするんだ。…分かったね?」


そんなの…



「…もちろ…ん…」


私はその様子から目が離せず…肩に手を乗せたお父様を振り返りもせず、ずっと空を見上げていた。

大きな虹色の龍が空に舞い上がり…雄叫びを上げたと思ったら大きな魔法印が展開されて…そこからキラキラした何かが舞い降りて…沢山の絶叫が木霊し…て………



「…ねぇ。お父様」

「…なんだい?」

「私も…」

「…」

「わたしも魔女に…なれるか…な…?」


私のその問いかけに、お父様は…



「………」


沈黙の後…



「…頑張りなさい。」


唱え…た。















「お、おいっ!!」


私は舞い上がっていた。



「開門っ!!開もーーーんっ!!」

「なにっ!?全員かまえぇぇえーーーー!!」

「「「「「イエッサー!!!」」」」」

「…う、うんっ!」


私は…私も戦えると思っていた。


戦う…そうだ!戦うんだ!!フォニアちゃんと…友達の魔女ちゃんと!

同じように!!

同じ戦場で!!

同じページに綴られる!!!



「くそっ!開門は無い筈じゃ…突入した本隊が開けるはずじゃなかったのか!?」

「知るかっ!!やるしかないだろ!!」

「ま、まさか…奴ら逃げる気か!?」

「こ、この人数で…(さば)けるか!?」

「だが、ここを通すわけには…」

「えぇい、黙れ黙れぇ!!我らの任務は何だ!?上がったままの跳ね橋を見守る事か!?…違うっ!!ここを1人も通さぬことだ!!ここを守れと…死守せよと!!陛下に願われただろうガァァ!!覚悟を見せろっ!!ラエンの騎士たちよぉぉ!!!」

「「「「「うぉぉぉぉぉーーーーーーーっっっっっっ!!!!」」」」」


「来たぞォォ!!!筆に後れを取るなぁ!!!」

「「「「「フラァァァ――――――ッッ!!!!」」」」」


フォニアちゃん!

私、頑張る…よっ!



「おぉーーーーっ!!」


フォニアちゃんも頑張っ…て!!!!!

林檎です。


「改訂しますっ!」

「フラァーッ!!」

 ・・・よろしくね!


(23/10/13 23:55)

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