Chapter 014_教えて魔女様
「・・・よろしくお願いします。」
「「「「「よろしくお願いいたします!!魔女様っ!!」」」」」
ジャン騎兵隊長の号令で集まった兵は総勢40名と少し。
ノワイエ・ラエン・ラトラブール所属の騎士団員でも特に
魔法行使に自信がある強者ばかりだ。
私も…一応。金属魔法なら自信がある。
お嬢様の“あの”魔法には興味があるし…こんな機会、滅多にないもの。
ぜひ聞きたいと思い参加した。
出来るかどうかは、別として…
「・・・初めにお聞きしますが・・・今回お教えするスナイピング(初級編)を行使するには最低でも鉛弾魔法と鷹の目魔法を宿している必要があります。皆様、よろしいでしょうか?」
魔法属性には相性がある…
一般的にはそう考えられているし、現にそれを信じ切っている学者や
魔法使いも沢山いる。
しかし、最近。そうとも言いきれない…という研究が
彼のオクタシアではなされていると聞いた。
例えば、水魔法と火魔法のアンサンブルは相性が悪いとされているけど、
湯気を発生させて目くらましにしたり、熱湯を生み出して強力な
武器にする事も出来るという。
要するに、この研究というのは“何事も時と場合による”という…
従来の“属性一辺倒”な考え方に異を唱えるもの…だそうだ。
従来通りの考え方なら金属魔法と風魔法の相性は最悪。
アンサンブルしようだなんて発想はなかっただろう。
けど…その2つ名が示す通り、万象を統べるお嬢様…魔女様を見ていると、
やはりこの新説の方が正しいのでは?と思える。
お嬢様は確かに、鉛弾魔法と鷹の目魔法(実際には、纏風魔法と
点火魔法も同時行使しているとの事。けど、
それでは難易度が高すぎて誰も出来ない…という理由で、今回は
ソレは無しになった。お嬢様によると、纏風魔法と点火魔法は無くても
魔弾…じゃなくて“すないぴんぐ”は、一応、行使可能なんだそうだ。
ただ、威力と飛距離の問題があるだけで…)をアンサンブルする事で
誰も成し得なかった魔法の新境地を切り開いた。
リブラレイアに綴られるモノ…それは【結果】だ。
「も、もちろんだ魔女様!!」
「これまで散々…お前はダメだダメだと言われてきたが…今ほど緑金の瞳を持って生まれた事を感謝した時は無い!!」
「あぁ…ついにオレ達の時が来た!!」
「オレ達の夏がやって来た!!」
「緑金の夏だ!!」
お嬢様の下に大勢の者が集まったのは当然の事。だって…綴られたのだから。
あなた達の夏はどうでもいいけどね…
「おっ嬢~様ぁぁー!!ボクは鷹の目魔法しか宿していませんが…そ、それでも先輩の鉛弾魔法とアンサンブルできるんじゃないかなぁ~…と。期待しております!…だ、ダメでしょうか…」
「・・・う?」
「…ジャメル。余計なこと言うな!わ、私はお嬢様の強力な鉛弾魔法の秘密を知りたかっただけで…アンタとアンサンブルしたいだなんて思ってない!」
「えぇっ!?そ、そんなぁ~…」
私と同じようにお嬢様の強力無比な魔法の秘密を知りたい…と思い
集まった者も少なくないだろう。ジャン隊長だって、お嬢様の
鷹の目魔法の秘密を知りたいから…と言っていたくらいだ。
もともと特別なお嬢様と同じことが出来る人なんていないか、
いたとしてもごく少数に限られるだろう。
だから、私は別に…
「・・・う~」
だけど、お嬢様は唇に小さな指を当てて考え込み…
「・・・ん。」
指を離し。
「・・・デュオでの行使も不可能じゃないと思います。」
そして唱えた。
「「「「「えええぇぇぇっ!?」」」」」
「・・・ずっとソロでしていたので、ソロでするものとばかり思っていましたが・・・そうですね。言われてみれば、デュオも可能かもしれません。」
「「「「「なっ、なんだってぇぇーーー!!!」」」」」
「・・・う?うぅ!?」
この時ほど陣が沸いた瞬間は無かっただろう。
会場に集まっていた者は勿論、周囲で興味深げにこちらを眺めていた者達…
興味がありながらも諦めていた者達…からも歓声が起こり、一時騒然とした。
かくいう私も…
「あ、あの技を…魔女様の力を…わ、私も!?」
「聞きましたか先輩!!やりましたね!!」
お嬢様の、あの圧倒的な力…憧れないわけが無い。
私だって…
「やっ…た///」
私だって…私だって宿したい!
可能性があるなら頑張りたい!!
「・・・え、えぇと・・・“理論上は”可能です。けど・・・難易度はソロの時より数段上がります。それでも良ければ・・・お聞きください。」
「「「「「イエッサー!!」」」」」
「・・・私は皆様の上官ではありません。」
「「「「「ウィー、マドマゼル!!」」」」」
「・・・・・・は、始めますね。」
「は、はははじまるぞっ!!」
「綴れ!とりあえず綴っとけ!!」
「お前ら黙れっ!!」
「集中だー!!」
「一言も聞き漏らすなっ!!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
「…っ!」
皆が皆…もちろん私も…真剣な眼差しになってメモの用意をした。
そして…始まった
「・・・まず、“じゃいろこーか”の説明から・・・」
理を紐解く
魔女様の唄会が………
………
……
…
…
……
………
『クシャ…』
「…っ」
ある日のお昼過ぎの事だった…
「…だ、大丈夫?お母様…?」
「ま、ままん…?」
「こ、こっちにおいで2人とも!」
「う、うん…」
「ぱぱんっ!」
もうすぐ帰って来るはずの
お姉様から届いた1通のお手紙…
冒険者さんが届けてくれたソレを読んだお母様のお顔は、
みるみる強張り…ロティアと妹のティシアは怖くなって
お父様にしがみ付いた。
「あの子ったら…っ…まったくもぉっ!!」
「お、お父様ぁっ…」「ぱぱんぅ…」
「だ、大丈夫だから…」
お手紙を強く握りしめ、お母様は怒っていた。
「お義父様も…何を考えているのっ!」
「ひいっ!」「きゃうぁ~」
「よ、よしよし!大丈夫だ!大丈夫だから…」
めちゃくちゃ怒っていた!!
お姉様のお手紙をお母様はいつも…ハラハラドキドキしながらも…
嬉しそうに。楽しそうに読んでいた。
読み終わった後はいつも。ロティアとティシアに読み聞かせてくれていた。
だから…
「お、おいチェルシ―!フォニアは…何と?」
「………帰りが遅れるそうよ。」
「え!?そ、そうか…」
「…」「…」
だから今回もソウだ。…って。
もうすぐお姉様が帰って来るねっ!…って。
汽車に乗ったなんて羨ましいっ!…って。
そんな言葉が聞けると思っていたのに…
「………途中でお義父様に会ったそうよ…」
お姉様が…お祖父様と?
…なんで?
お姉様は家に帰って来て…一緒に小麦の収穫をして…それから、
一緒にお祖父様の所に遊びに行くんだって…
そう、聞いていたんだけど…
「えっ!?お、親父と?…なんで?」
「ほんっっと!信じられないっ!!フォニアったらっ…お義父様ったらっ!!!!」
「え゛っ!?」
「…ね、ねぇ、テオ!これっ!!ほら、コレ読んでよっ!?」
「お?お、おぉ…」
「…」「…」
お母様の顔色を伺いつつ、ティシアと一緒にお父様の手に移った
お手紙を読もうと見上げると…
「ロティアっ!あなたは読むんじゃないの!」
「ひゃいっ!!」
「ティシアは文字が読めないでしょ!!」
「きゃぅっ!!」
いったいどうしたというの!?
読んじゃダメなの!?なんでっ!?
お姉様…お手紙に何て書いたの!?!?
「そ、そんなに怒鳴るなよチェルシー!こ、この手紙だって。フォニアが頑張って…」
お手紙に目を通したお父様がそう言うと…
「なんでフォニアちゃんが頑張らないといけないのよ!!それはお義父様の仕事でしょ!?私の娘を巻き込まないでよっ!!」
「お、オレに言ってもしかt「じゃあ誰に言えばいいのよ!?」そ、それは…フォニアはきっと、オレ達の為に…」
「そんなの分かってるわよっ!!あぁ、もうっ!あの子ったらっ!!なんでっ…なhんでよぉ…」
「なっ…泣くなチェルシー!!」
「ふぉにああぁっぁ~~~っ!ああぁぁ―――っっ!!!」
「お母様…」「ままん…」
お、お姉様………
「ひぐっ…フォニアぁっ…」
「チェルシー…フォニアは大きくなったんだ。きっと…親父に言われたからじゃない。自分で…」
「なんでっ…私の…娘がっ…そんなっ……」
「………フォニアは強い。大丈夫だ…」
「…」「…」
どうして…遅刻なんてしちゃうの?
「ひぐっ…えぐっ…ふぉ、ふぉにあぁ……なんで…あなたは…どうしてっ…」
「…よしよし…ほら。チェルシー…」
「…」「…」
お祖父様と何を…?
「…っ…っっ…」
「大丈夫だから…な?……」
「ロティアお嬢様ぁ…ティシアお嬢様ぁ。ご飯ですよぉ…」
「…うん」「あい…」
ねぇ…教えて。
教えて。お姉様…魔女様…
林檎です!
チョコっと改稿!
・・・よろしくね。(23/09/24 23:25)




