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Chapter 012_カウンタースナイプ作戦

翌朝



「…帰るぞ。」

「・・・・・・はい・・・」


バニラ色の空の下に敵兵が現れることは無かった・・・



「はぁ〜…。まさか、たったの3日で看破(かんぱ)されるとはな…」

「期待が大きかっただけに…残念ね。」

「本当に申し訳ありませんでした!」「・・・ごめんなさい。」



敵はついに、私の・・・超長距離から敵を撃ち抜くスナイパーの存在に///


気付いたのだろう。


私のスナイピングは大きな音がしてしまうし、砲身が無色透明なせいで

火薬が炸裂するフラッシュがダイレクトに見えてしまう。


発射すれば一瞬で周囲のすべての人に位置がバレてしまうのだ。



取り逃した1人がその事を伝えれば・・・敵部隊は今まで以上に

丘上に注意を払うだろう。


もっとも、今は

近づくコトすら、無いんだけどね・・・



「ま、まあ…敵が対策を取ってくるのは当然。追加の策を講じなかった我々の責任でも有るねぇ…」

「その辺りはさすがジャコブ…いえ。今はファリフ…だったわね。」


昨日も今日も丘の上でジャン伯父様と粘ったのに・・・結局、

空振りに終わってしまった。


その理由は明白だ。



「…で?陛下は未着で準備は整っていないが敵は部隊を動かした。…どうするんだ?ジャン?小娘?」


“あの”斥候兵は予想通り・・・此方の陣地を監視し、戦力を把握したのだろう。

だからこその進軍だ。

斥候が来ない理由は、もう、危険を冒す必要は無いとの判断に他ならない。


ついに動き出してしまった・・・



「…」「・・・」


エヴァーナ領の偵察を終えて帰ってきた味方の斥候によると、昨日早朝。

奴隷兵を連れたエヴァーナ騎士団が領都エヴァーナを出発して

こちらへ向かって来たとの事だ。


領都エヴァーナとラエン駅の間には、騎馬なら1日。部隊移動となると

数日かかる距離がある。敵部隊は大群を率いているからいつも以上に

時間がかかって・・・到着は明後日。


決戦は3日後と見積もられている。



もう数日待てば、彼方には追加の兵が来るというのに・・・

どうして攻めて来るのか?・・・というと。6日後(正確に言うと5日後の夜)


ここに国王陛下が到着することが関係している。



彼方としては“殲滅戦最強”と(うた)われるエディアラ王国国王・・・

恵土の魔女ディアナ女王陛下・・・が来る前にラエン駅を確保して

物流の生命線である汽車路線を寸断。さらに、汽車に乗って来る予定の

陛下を足止めして、その間に補充兵と合流。最終的に路線開放を

交渉の材料にする・・・という狙いがあるらしい。


実は、陛下が6日後に到着するという情報は此方が彼方にあえて流した

情報だったりする。

本当なら彼方にプレッシャーを与えるための情報だったんだけど・・・

今回は裏目に出てしまったわけだ。


陛下さえ到着すれば此方の勝利は確実・・・らしいけど。

その時差をどうするか?そこが問題になっている。



「…フォ、フォニアは私の指示に従ったまで!彼女に責はありません!!す、全て私の…成果を焦った私の責任であります!断ずるなら私を…」

「責任の問題ではないわ!!このままでは敵部隊が到着してしまうではないか!!陛下の到着を待たずして敵部隊と衝突すればどうなるか…お前とて分からぬ訳ではあるまい!!死にたいのかバカもんっ!!!死ぬならお前ら2人だけにしろ。部隊を巻き込むな!!!」


「っ…」「ひぅっ・・・」


こ〜わっ・・・

でもお祖父様のいう事はその通りで、言い訳なんて出来ないんだけど・・・



「さ、流石に今の戦力じゃ(しの)げないからねぇ…」

「困った事になったわねぇ…」

「まったく。新しいおもちゃを手に入れた途端これだ。いつまでガキのままでいる気だ…」


「も、申し訳ありません…」「・・・ごめんなさい。」


私はまだ子供です・・・なんて。

冗談でも言える雰囲気じゃありません。はい。



「困ったねぇ~」

「…」

「どうするのよ?このままじゃ…」

「…」

「大体貴様らは…」

「…」


確かに敵が対抗策を講じる可能性を考慮しなかったのは問題だったかもしれない。

あの時、ジャン伯父様の怒声に怖がったりせず、ちゃんと状況を伝えていれば

結果は違いものになっていたかもしれない。


けど・・・できなかった。






「・・・あのっ。」


・・・ならっ



「…うんっ?」

「…あら?」

「なんだ小娘!?」


「・・・敵部隊の到着を陛下が臨御(りんぎょ)なさる日まで遅らせる策があります。」


「「「「なにっ!?」」」」


やるしかない!!






「・・・作戦はこうです。敵部隊にある程度・・・300mくらいまで近づき、騎兵を優先的にスナイプして機動力を奪います。追手が来たら即時離脱します。それを陛下が来るまで繰り返すのです。・・・敵部隊は襲撃に備える必要があるので足が遅くなり、さらに疲弊もします。指揮系統を混乱させる事もできるでしょう。」

「敵部隊の撹乱(かくらん)を狙うのかい?しかし…」

「危険過ぎるわ!」

「…バカを言うな小娘!お前のあの技にはランスと…伏せる必要があるのだろう!?どうやって見つからないように近づき、そして離脱する気だ?」

「・・・実は300m以内であればランス無し。馬上でもスナイプ可能です。・・・大所帯の敵部隊に比べ機動力のある此方は接近も離脱も容易い筈です。たしか・・・エヴァーナ領はノワイエ領に比べて丘や小さな森が多い地形だったはずです。それもこの戦術が適していると判断した理由です。最悪近づかれたら、魔法で返り討ちにします。」


「フ、フォニア卿!君はそれを6日間も続けられるのかい!?」

「・・・長期間のサバイバルは師匠にさんざん鍛えられましたから。今回は・・・此方が襲う側なので、小休憩を重ねながら好きなタイミングで仕掛けられます。負担はそこまでではありません。・・・一方、四六時中警戒しなくてはならい彼方の消耗は激しいでしょう。」



「…敵部隊は人数も多い。交代で見張りをされると…」

「・・・人数が多いという事は兵站(へいたん)の消耗も激しいという事です。もともと短期決戦のつもりでしょうから準備も不十分。精々・・・日数分しかされていないでしょう。獣人たちはより深刻だと考えられます。」

「た、巧みだねぇ…」

「でも…うん。もし出来るなら悪くないわ。もし出来るなら…だけど。」


「…お前のメシはどうする?」

「・・・ストレージバッグがあります。数日分くらいは何とでも・・・」

「…馬は?いくらお前がチビでもそんな日数動き続けられる馬などおらんぞ。」

「・・・それは・・・途中で下馬して魔纏術で逃げ回りながら・・・」

「…寝ている間に襲われたら?」

「・・・」

「…話になら…」「父上!それは私が!」

「・・・伯父様!?」

「…」

「私がフォニアを乗せて走れば身の安全はより高まりますし、移動時に休憩もさせられます。馬は、早馬を使い定期的に基地へ戻り、都度交代すれば問題ありません。夜は私が…」


エルネスト様。そしてセリーヌ様。

なにより、ジャン伯父様は私を支持してくれた。


あとは・・・






「はぁ~…それでは足りぬ…」


お祖父様は認めてくれな・・・



「………ロクサーヌとジャメルを連れていけ。」

「そ、それではっ!」「・・・う!?」


・・・くない!?


「小娘の世話はロクサーヌとそいつの侍女にやらせろ。警護はお前らで何とかしろ。補給は…」

「ラエンの駿馬(しゅんめ)を貸してあげるとも!決戦を前に興奮しているんだよ…ちょっと鎮めてやってくれ!」

「ラトラは今年豊作だったのよ!お野菜も果物もたっくさん持ってきてあげたんだから…悪くなる前にたーんとお食べ!」


「エルネスト様!ありがとうございます!」

「・・・セリーヌ様(ラトラブール騎士団の団長様。往年の戦士然とした壮年の女性)!ご馳走様です。」


「いいか2人とも。今度は絶対に失敗は許されん。…分かったらさっさと行け!」

「「(・・・)イエッサー!!」」

林檎です!


細かい修正を加えました。


読みやすくなっていれば、幸いです!

・・・よろしくね(23/09/24 22:35)

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