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Chapter 007_前線基地

林檎です。


ちょっと言い回しがクドイ部分があったので修正しました。(21/10/30 21:30)

「・・・つまり。敵勢力にこちらの状況を知られてはマズい・・・と?」

「そうだ。」

「…」

「そうなんだよぉ!いやぁ~…困った困った!」


翌日始まった軍議に参加させてもらった私は、昨日は敵状視察に出ていて会えなかったジャン伯父様(ちなみに、クロエお姉様は領地でお留守番らしい。残念。)から内戦に関する詳しい説明を受けた。それによると・・・


・相手の戦力は約3万。その9割以上は獣人・・・つまり奴隷だそうだ。

・領都に詰めている正規兵の数は約2,000人。騎兵はそのなかでも250名くらい。ただし、周辺の街から集まって来たり、逆に減る可能性もあるから流動的・・・との事。

・ラヴェンナ王国から直接的な介入があったかどうか・・・現時点では不明。しかし、奴隷の数がエヴァーナ領の規模に比べて明らかに多いことから、支援があった(ラヴェンナ王国は中立的立場であるはずの奴隷商人ギルドと裏で繋がっていると言われている。)のは間違いないだろうとの事。

・エヴァーナ領内にいる王国派の人間は軍人・文民問わずほぼ駆逐されており、僅かに残っている抵抗勢力も風前の灯とのこと。つまり・・・エヴァーナ領単独でクーデター組織の打倒・・・逆転覆を行う事は、おそらく不可能。

・残された住民は大臣も含め、騎士団長ジャコブ率いる新政権を比較的支持している。との事。理由は・・・もともと、エヴァーナ領の領主様が高慢で、嫌われていたのが原因なんだって。大臣や貴族はともかく、一般人がどこまで政治的な事情・・・つまりラヴェンナ王国の影・・・を意識しているかは分からない。けど、国境近くに住んでいるエヴァーナの民がその手の事情に無知とも思えない。ある程度は、かの国を受け入れている・・・という意味だろう。


後半の政治的な問題は・・・今はどうすることもできないから、とりあえず置いておくとして・・・


問題は敵兵の数と、その練度の問題だ。



「3万の兵が脅威なのは勿論だが、それ以前に…」

「…エヴァーナの正規兵は練度が高い。苦戦は免れまい。」

「ジャコブらも内政を整えるのに精いっぱいで、今日まで表立って動かなかったが…」

「・・・こちらの軍備が整っていない事を知られたら、襲って来るかもしれない。」


現在、この前線基地にいるのははラエン領騎士団2,000とノワイエ騎士団1,000で・・・計3,000名(従軍奴隷含む)。


圧倒的(に負けている)じゃないか!わが軍は!!



「はわわぁ…て、敵の偵察兵…は…」


そう発言したのはコレットちゃんだったりする。


戦場に大事な一人娘を連れてくるのも、平然と軍議に彼女がいるのも、あまつさえ発言が許されている事も・・・なんかすごいよね。異世界じゃ絶対に、こんな事あり得ない。

・・・ま。私もなんだけど。



「5日ほど前から敵の斥候が現れるようになった。今はまだ、防衛線(線路の向こう側エヴァーナ領にはこちらを見下ろせる低い丘があって、そこを防衛ラインとして設定している。今は落ち着いているから補給のしやすいこの場所に布陣しているけど、いざとなったら本陣を丘上に上げるとのこと。)の先で追い払う事が出来ているが、いつ越されるか分かったものではない。」

「…向うが所有しているのは重騎兵が殆どで、斥候に向いている軽騎兵の数は少なかったはずだ。だから無理をしてまで攻めてくるつもりは無いのだろう。しかし…」

「時間の問題。だからねぇ…」


エヴァーナの目的はクーデター。そして独立だろう。だから政権の転覆を果たした今、難攻不落と名高い領都エヴァーナの街に籠城するのも1つの手だ。

けど、歴史的経緯からしてエヴァーナの独立をこの国が許すはずがない。いつか絶対に攻め込まれる。それは分かっているはずだ。

だからこちらの戦力が少ないことを知れば、少しでも“それ”を削るために攻め込んでくる可能性が高い・・・



「・・・敵斥候は、それでも近づいて来るのですよね?・・・捕まえる事はできないのですか?」


追っ払うのが大変なら捕まえて数を減らせばいい。

向うの情報も得られるしね・・・



「勿論、出来るならそうしたい。しかし…」

「小娘。バカかお前は?…奴らも間合いの取り方くらい心得ている。」

「こちらの軽騎兵も無限ではないからねぇ…」

「何時、どこから来るか分からない敵兵を四六時中広範囲にわたって監視するのは…正直。今の人数ではキツイな…」


つまり。離れたところから観察されるから難しい・・・という事か。それなら・・・



「・・・とりあえず捕まえてみましょうか?そうすれば何か・・・例えば、偵察のスケジュールや正確な人数・・・を掴めるかもしれませんし・・・」


私のその発言に、この人はいらだった声で答えた



「何度も言わすな小娘!言っただろう!!奴らは間合いの先…200m以上離れたところから鷹の目でこちらを観察できる!しかも、2~3人の班単位で行動しているからこちらの接近にはすぐに気づくし、逃げ足も速い!捕まえる事など不可能だ!!…まったく。少しは成長したかと思ったらこれ…」

「・・・私なら1,000m先の敵を無力化することが出来ます。問題ないかと。」

「だかr…なんだと?」

「せ、千メートル!?」

「う、嘘だろ…」

「フォニアちゃん。しゅごい…」


魔法の効果範囲は100m程度と言われている。でも、鷹の目魔法(ホークアイ)はその魔法の特性・・・遠くのものを拡大して見る・・・によって、それ以上離れていても十分効果がある。だから、お祖父様が言った通り・・・監視だけなら間合いの外から可能。

けど・・・その常識を覆す事もまた。不可能じゃない。



「・・・それが出来る魔法は1種類・・・いえ。3つの魔法をアンサンブルした時に限ります。また、殺傷率が高すぎるので、捕える・・・というより、瀕死の重傷を負わせて動けなくなったところを確保する・・・という形になります。・・・もっとも。この問題に関しては、私が治癒すればいいだけですが・・・」


私のその言葉を最初に返したのは、ジャン伯父様



「3つをアンサンブルって…も、もしかして妹君が…一人で?」

「・・・もちろんです。」

「そんなこと可能なのかい!?」

「・・・ん。」

「…」


因みに、師匠もソロで3つまでアンサンブルできる。・・・5つまで実績がある私は端的に言って化け物・・・とのこと。

フォニアはペンタコア搭載のモンスターマシンなのだよ!



「…デメリットはあるか?例えば…魔力酔い。」


そう聞いてきたのはお祖父様。

んふふっ。心配してくれるのね・・・



「・・・魔法に集中するため動けなくなります。自分の身を守れません。」

「…そんなことは、どうとでもしてやる。」

「・・・あとは・・・大きな音がします。私の背後にも大きな衝撃が伝わります。・・・もちろん。離れていれば問題ありません。」

「それだけか?」

「・・・ん。・・・ちなみに、魔力酔いの御心配には及びません。」


魔力消費は少ない・・・いや。多くない。

500回くらいは繰り返せると思うの。



「な、何か他に条件はあるのかい?…いや。無いとおかしいと思うけど…」


エルネスト様も、とりあえず私がそれを出来る前提で話をしてくれているようだ。

やっぱり、魔女の名って大きい。

普通なら、こんな小娘が常識外れの事言ったって信じてくれるはず無いものね・・・



「・・・伏せた体勢になるので、周囲を警戒してくれる人が傍にいると助かります。」

「…よし。それは鷹の目を宿している僕がやってやろう。」


そう言ったのはジャン伯父様だった。

やらせてもらえる・・・と、思っていいのかな?



「・・・重たい発動子があると精度が上がります。できれば、チャージランス用の槍をお借りしたく・・・」

「…貸してやる。」

「・・・ありがとうございます。・・・条件としては整いました。」


エルネスト様を見つめて、そう答えると・・・



「えっ!?そ、それだけかい?」

「・・・はい。」

「…」


若干疑っている・・・といったところかな。

ま。当然だよね・・・



「…どうだろう。エルネスト卿。やらせてみては?」


しばらくの沈黙の後、口を開いたのはお祖父様だった・・・



「ベルトラン卿…」

「…なに。仮に失敗しても相手を驚かして終わるか…小娘が死ぬだけだ。大したことはあるまい。」


ちょっ!

ま、まあ・・・その通りだからいいけど。



「…っ。失礼しちゃいますっ!」


そんなこと言っちゃダメだよ、ローズさん!!

その細い腰に()いているサーベルに手をかけるのは絶対にダメだからね!!



「い、いやぁ…魔女様を亡くすのはいかんと思うが…」

「・・・死んだりしません!師匠・・・ローデリア様の元での実績があります!」

「小娘もこう言っている事だし、試しにどうか?先ほど言った通り、失敗に終わってもデメリットは少ないと思うが…」

「…」


そう言われたエルネスト様は腕を組んで考えこみ、そして私の瞳をじっと見つめ・・・



「…そう…だな。」


・・・唱えた。

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