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Chapter 001_朝

林檎です。



1st Theory いかがでしたでしょうか?


本話より

2nd Theory:新人魔女編 となります。


時は過ぎ、舞台も変わり、登場人物もグッと増えますが・・・その辺りの説明は、追々。



お楽しみいただければ幸いです

『ッ…』


細心の注意を払って扉を開けた私は

物音を立てないように注意しながら。


まだ暗い部屋に、足を踏み入れて…



『シャーッ…。シャーッ…。』


…静かに。

朝を招き入れる…



「…」


今日の天気は…うんっ。快晴っと…



「………『湧き水よ』スプリング。」


そしていつも通り…ワゴンの上でお茶の支度をする。

ケトルに水を汲んで。



「…『熱よ 命の鼓動よ』ヒート。」


沸騰させて…



「…ふむ。」


今日の茶葉は…



「お気に入りの、ディキャンで…」


愛しのご主人様が贔屓(ひいき)にしている茶園の茶葉を取り出した私は

ケトルのお湯でポットとカップを温めてから、茶葉を入れ…



『コポコポコポ…』

「…」


お湯を注いでしばし待つ。



「・・・くー・・・すー・・・」

「うへへへぇ~…///」


茶葉が開くまでの時間。私に出来る事なんて無い。

だから…その間にお嬢様の寝顔を眺めるのが私の日課であり…至福の時だ。


神童だ才女だ魔女様だと騒ぎ立てられているお嬢様が


お人形を抱っこしないと眠れない。 ということも、

いちど眠ると、触れたくらいじゃ目覚めない。 ということも、


知っているのは

私だけ…



「・・・くー・・・すー・・・」


万象を宿す瞳を開くのも、

トレードマークの亜麻色の三つ編みを結うのも


この、私…



「ふふっ…うふふふっ…」


こんな贅沢って…無いよね。



「…っと、いけないっ!」


にやけている場合じゃなかった!

お嬢様はとにかくお茶に煩い。蒸らし時間をちょっとでも間違えると

召し上がってくれない。

それでも許してくれるけど…でも、そんなの私自身が許せない。

侍女失格だ。


私を選んでくれたこの方の期待に応えるために、私は常に侍女として

完璧でないといけない。


完璧なこの方の隣に相応しいように!



「…ふぅ。これでよしっ…と。」


ご主人様の我儘に応えるのが侍女たる私の務めだ。

職務に全力を尽くさねば!


頑張り屋さんなお嬢様のささやかな贅沢くらい…叶えてあげなきゃ!



「・・・くー」


お茶との格闘を終えた私は気持ちを切り替え、ベッドサイドに(ひざまず)いて

お嬢様見学を再開した。


お嬢様は。お茶を淹れれば

自然と目覚めてくれるから…



「・・・すー」


あとはただ、待つだけでいい。

小さなお手々でキツネのぬいぐるみを抱く、その、あどけない姿を

眺めているだけでいい…





「・・・くー。」

「…」


長いまつげ

かわいいほっぺ


白い肌

天使の吐息



「・・・すー・・・」


ピンク色をした

小さな唇…



「///」


もうすぐ、

目覚めてしまう…



「・・・くー」


その…前にっ



「…んぅっ…んっ……」


「・・・んんっ・・・」


「…///」


「・・・すー・・・」


「…はぁっ、はぁ………も、もうちょっとだけ…」


「・・・くー」


「んっ…んふっ……///」







「…!」


ぴくっ…っと動いたまつ毛に気付き、慌てて顔を離したその瞬間。



「・・・・・・・・・う?」


い、いけないっ!



「・・・うぅ・・・」


ゆっくりと…



「・・・んぅ・・・ふゎぁ・・・」


リブラリアに、(ことわり)(まなこ)顕現(けんげん)し…






「お、おはようございますっ!お嬢様…」


…わ、私はあくまでも冷静に。

吸い込まれそうな夜の力に抗いベッドサイドから立ち上がり…



「・・・ローズ・・・しゃん?」

「は、はいっ!貴女のローズです。…か、カレント2,181年 金海の月11日。お天気は快晴。…改めておはようございます。…フォニア・ルィツァリ・ピアニシモ様っ!」


平静を(よそお)い挨拶をする。



「…ご、ご機嫌麗しゅうございますか?」


あ、貴女のローズはいつも通りで…な、何も…何もしてませんよ~…



「・・・ふぁ~・・・んんぅ。・・・ん。・・・・・・げんき、だけど・・・・・・うぅ~?」

「…お、お茶をどうぞっ」

「・・・・・・ん。」


…な、ナニカ…なにか?

指で唇を撫でるお嬢様にお茶を勧めて気を逸らさせる。



「…い、いかがでしょうか?」

「・・・ん。・・・今日も美味しいよ。・・・ディキャン好き。」

「それは良かったです…」

「・・・んぅ・・・・・・う~?」

「…っ…ど、どうかされましたかっ?」

「・・・・・・んーん。・・・なんでも・・・・・・ない?」


ま、マズいなぁ…まだ気にしている…


…きょ、今日はちょっと…ぺ、ペロを入れちゃったのは。さ、さすがに…

やり過ぎちゃった、、、かなぁ…?



「・・・」

「…」

「・・・・・・」


再び唇を指で撫でながら、じ~っ・・・と。こちらを見つめる

お嬢様から、目を逸らし



「…きょ、きょうも…い、いい天気。ですね…」


白々しく、そう言うと…



「・・・・・・・・・んふふふっ。」

「…っ」


黒い微笑が。そして…



「・・・ねぇ。ローズさん。」

「は、はい…」

「・・・なにか・・・いつもと違う事。・・・あった?」

「ひゃぃ!?いいいいぃえ!何も!!いつも通りです!!」


焦ってそう答えた私に、お嬢様は



「・・・ふーん。・・・いつも・・・か。」

「…」


妙に湿っぽい声でそう言うと・・・



「・・・ご馳走様。」


微笑みながら。唇を触っていた指を小さくペロッと舐めた。



「…///」


あ、あうぅ………



「・・・う?・・・お茶の話だよ?どうして赤くなるのかな?」

「っ!そ、それは…そのっ…な、何でもありませんっ!!」

「・・・ふーん。・・・んふふふっ。何でもない・・・のね?・・・んふふっ。」

「っ///」


小さくても、私のご主人様は…

やっぱり魔女だ!



………

……











・・

・・・



「・・・行ってきます。」

「「「「「行ってらっしゃいませ!フォニアお嬢様!」」」」」


ローデリア師匠の所に来て3年半・・・

今日までいろいろなことがあった。



ドワーフ王国に行ってみたり:生まれて初めて浸かった天然温泉は最高だった!


超高難度ダンジョン攻略に付き合わされたり:生息する魔物は最低でも上級・・・という恐ろしい場所。子供を連れて行く場所じゃない!


龍を討伐したり:あの時は死ぬかと思ったよ・・・。


世界中の本が集められている大図書館に行ってみたり:司書をしているエルフの魔女さんと仲良しになったよ!


皇帝陛下に謁見して叙爵(じょしゃく)(騎士位をもらった)されたり:陛下は自他共に認めるガチのロリコン。師匠が助けてくれなかったら、私は今頃・・・。



魔女に・・・命名されたり。






とにかく密度の濃い3年間だった。

そして、大きく成長できた3年間だった。

魔力も増えたし、魔法の実力も上がった。レパートリーだって増えた。

誰にも負けないって思えるくらいには・・・強くなったつもりだ。


実を言うと魔女に命名された去年、師匠から修行は終わりと言われている。

だから、そのタイミングで実家に帰っても良かったんだけど・・・


いろいろあって、そのまま1年間ほど故郷エディアラ王国の北にある

ヴィルス帝国の帝都【ゴーレ】にある師匠の別邸に入り浸っている。


そんな訳で、今の私は“居候”・・・という事になる。

ここに居させてもらえているのは、師匠の善意(ほんとに善意?

私、師匠の仕事を代理でやらされてるよね!?って。

思う節もあるけど・・・)であり、別邸のスタッフのご厚意でもある。


今では専属のかわいいメイドさん・・・ストロベリーブロンドの

ポニテがトレードマークの、キス魔のローズさんだっている。


忙しくて。時々命がけ・・・とはいえ、

楽しくて贅沢な日々だった。



「それでは参りましょう!お嬢様っ!」

「・・・ん!」


けど、そんなゴーレでの生活もあと1日。

明日の汽車で故郷に帰る予定だ。


帰郷の理由は・・・進学のため。


リブラリアにもいくつか【学校】と呼ばれる教育機関がある。

中でも一番有名なのが祖国エディアラ王国にある

“エディアラ王立総合学園”・・・通称“学園”だ。


学園はほかの学校に比べて、その名の通り幅広い知識を満遍(まんべん)なく

教えてくれる教育機関だ。

超名門だし、歴史も・・・伝説になるほど・・・長くて人気も高い。


身近な所では、お祖父様やお祖母様・・・師匠やローズさんも

通っていたらしい。


カトリーヌちゃんに至っては、現役の学園生だ!


この世界の事をもっと知りたい・・・そう、思っている私には

まさにピッタリの場所



一応、11歳以上であれば誰でも入学できるけど、入学金と授業料は

そこそこの額である。


また、比較的簡単らしいけど・・・入試もある。

そして最後に、志願するには有力者と保護者の推薦状が必要だ。


だから、お祖父様の推薦状を貰いに行く・・・ついでに、

ルボワの実家まで帰っちゃう!・・・というのが、帰郷の目的。



「お嬢様!それでは出発いたしますね!」


そんなわけで。

今日はゴーレでお世話になったみんなの所に挨拶回りをするつもり!



「・・・ん。お願いします。」

「グレゴリーさん!ルシェッツまでお願いします!」

「あいよぉ、願われた。」


顔なじみの馭者(ぎょしゃ)さんにお願いをした私は、

見慣れたゴーレの街並みをじっと見つめる。



「・・・」


この景色をしっかりと瞳に焼き付けておこう。


またいずれ、来たいとは思っているけど・・・当分の間。ここには

戻って来られないだろうから・・・

2nd Theory から 1話/1日 でのペースで投稿させて頂きます。


だんだんとストックが・・・い、いえ。何でもありません。



引き続き、フォニアを見守っていただけると嬉しいです。

ご評価、ブクマ、ご感想いただければ幸いです。


・・・よろしくね :x



読みやすいように改行したり、表現を改める

改稿を行いました!


・・・よろしくね(23/09/24 21:30)

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