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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
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Chapter 005_先生との出逢い

「【魔纏術(まてんじゅつ)】というのは魔力によって筋力や動体視力を高める技の事だ。」

「・・・魔法とは違うの?」

「魔法は魔力によって術者の周囲に現象を引き起こす技の事だな。魔力を使うという点は同じだが、呪文の要否と効果範囲が全く異なる。…もっとも、どちらもマジュツの一端ではあるがな。」

「・・・マジュツ?」

「【魔術】とは魔力を消費する行為すべてを指す言葉だ。魔法と魔纏術以外にも、例えば【錬金術】などがある。」

「・・・なるほど。つまり私は無自覚にも魔力を込めて・・・魔纏術を行使して・・・お父様に抱き着き。その結果お父様を生まれたての子鹿のようにしてしまったのですね?」

「…そうだ。テオドールは生まれつき魔力が少ないゆえ抵抗できなかったのだろう。」

「・・・そうだったのですね。・・・ごめんなさいお父様。もうしません・・・」

「は、はは…いや、大丈夫だよフォニア。」


ところ変わってご老人改めロジェス様のお屋敷。


私の瞳がモロバレして“あわや”と思ったけど、ロジェス様は誘拐するどころか人目が怖くて外も歩けない私の相談に乗ってくれると言うのだ。



「…ふむ。魔纏術を使った時は驚いたが、この理解力にも驚かされるな。これではテオドールとチェルシー殿が心配するのも尤もだ…」


我が家の大家さんであり、畑の地主様でもあるロジェス様は私が生まれる

直前に始まった戦争に出兵していたため私とは初対面だけど、

お父様の恩人で信頼できる人との事。


なんでも、実家を追い出されて途方に暮れていたお父様に、

ちゃんと管理する事を条件に家と畑を無償で貸してくれているらしい。


ボロだなんて言ってごめんなさい・・・



「この子にはいつも驚かされっぱなしで…最初の魔法行使は1歳半なんです。」

「い、1歳半だと!?幼児どころか、乳児ではないか!?」

「はい。しかも初見で…。それからというもの、新しい魔法を教えるといつも初見で宿してしまって…」

市井(しせい)の魔法使いが聞いたら卒倒してしまうな…」


そうは言っても、私が行使できる魔法はまだ第1階位・・・呪文も“ひと言”だし

効果も単純で簡単な物だけなんだけどね。



「…魔力はどうなんだ?【魔力酔い】は?」


【魔力酔い】というのは大量の魔力を消費した時に気分が悪くなる症状の事。

魔力が空っぽになったからといって、死んだりはしないけど。

気を失ったり数日間寝込んでしまうこともあるらしい。


魔法を覚えたての子供は自分の魔力がどれくらいか分からないから

よくやっちゃうんだって・・・



「それが、全然平気みたいで…」

「そうか…」


・・・でも、私は今のところ経験してない。

試しに製紙魔法を唱えまくった事があったけど、997枚目で心配したお母様に止められ打ち止めとなってしまった。

あの時は惜しかったなぁ・・・あとちょっとだったのに。


ま、それはともかく。


魔力はいっぱいある・・・って事は

間違いなさそう。






「…フォニアよ。」

「・・・う?」


お母様の話を腕を組んで聞いていたロジェス様。

今度は私の瞳を見つめ、話し始めた・・・



「…魔法は好きか?」


そんなの、答えは決まってる・・・



「・・・はい。」

「何故だ?」

「・・・興味深いからです。」

「興味深い?」

「・・・魔法は・・・いいえ、魔法に限らず。未知のモノに出遭う歓びは何物にも代え難いです。見知らぬ人は違った物事の見方を教えてくれます。見知らぬ土地は世界(リブラリア)の広さを教えてくれます。見知らぬ理論は事象の可能性を教えてくれます。そして、見知らぬ物語は・・・かけがえのない家族を与えてくれました。だから・・・」


だから



「・・・だから。・・・私はこの先も、この好奇心が望むままに貪欲に。新しい事に挑戦しようと思います。魔法・・・いえ。魔術・・・に関して言えば、魔力がきっと(ちから)をくれるから。呪文がきっと希望の(うた)になるから。理がきっと答えを導いてくれるから・・・家族の役に立てる事が誇らしくて、お父様とお母様が褒めてくれる事が何よりも嬉しいから。だから私は魔法が興味深くて・・・好きです。」


・・・

・・






「…わしがコウケン人になってやろう。元…とはいえ、キシダンコモンの身…Noyerリョウを敵に回してまで連れ去ろうなどという者、そうはおるまい…」

「「あ…ありがとうございますっ!!」」


私の話を瞑目(めいもく)しながら聞いていたロジェス様はゆっくりと瞼を開き、そう言った。

お父様もお母様も涙目になりながらロジェス様に何度も頭を下げる。


ところで・・・



「・・・コーケン人って?」


自慢じゃないけどフォニアはまだ3歳!ボキャブラリーは圧倒的に少ない!!

何言っていたのか・・・全っ然っ!分からなかったよ!



「えっと…」

「身内ではないがシンロや教育ホーシンに意見できる者という事だな。瞳に関することを含め、誰かに何か言われたりキョウセイされそうになったらわしの名を出すといい。」

「・・・はい。」


幾つか分からない言葉もあったけど、たぶん・・・後見人という意味だろう。

・・・なるほど。お金持ちっぽいロジェス様がそうなってくれるのなら

私も大きな顔が出来そうだ。


これで悩みも解決!自由なリブラリアへの第一歩!

いやっほーっ!


それと・・・



「・・・キシダンコモン?Noyerリョウ??」

「キシダン…騎士団はリョウシュのシ兵でこのリョウチの衛兵だな。…お前も門番くらい見たことがあるだろう?わしはそのコモン…顧問で、そいつらの教育やセント―訓練をしておる。」

「・・・つまり、兵士さん達の先生ですね?」

「その通りだ。…Noyerリョウはお前が住んでいるリョウチの名前だな。」

「・・・う?リョウチ・・・リョウ?地?の・・・名前??・・・リブラリアの、アドゥステトニア大陸の、ルボワ市・・・じゃないの?」

「…ほう。ルボワに加え、リブラリアとアドゥステトニアの名まで知っていたか。」

「・・・お父様が教えてくれました。」

「結構だ。…お前が住んでいるこの街の名はルボワ市で間違いない。そしてルボワ市同様、人々が暮らす集落が周囲にいくつかある。それらを纏めて【ノワイエ領】と呼ぶわけだ。」

「・・・Noyer・・・ノワイエは・・・名前?」

「“ノワイエ”は…まあ、名前に違いない。【胡桃(くるみ)の木】という意味で…」

「ちょっとあなた…。そんな小さな子にどこまで教えるつもりよ…?」

「「レジーナ様!?」」


「…お?」「・・・う?」



突然かけられた声に振り返ると、そこには呆れ顔のご婦人の姿が



「ご無沙汰しておりますレジーナ様!ご機嫌ようございますか?」

「ご、ごめんなさいレジーナ様!!お忙しい日に突然お伺いした上、おもてなしまで…」

「本当に久しぶりねテオドール君!えぇ!誰かさんの影響か、無駄に元気よ!…気にしないでチェルシーちゃん!何日も馬車に乗っていたから退屈していたところなの。お茶に付き合って頂戴っ!…そ・れ・と〜」


ご婦人・・・レジーナ様はテキパキとお茶の支度を整えながら、お年によらぬ茶目っ気のある笑顔で両親と挨拶を交わし、私にも視線を送ってくれた



「・・・はじめましてレジーナ様。フォニアです。・・・ご機嫌麗しゅうございますか?」

「はいっ。はじめましてフォニアちゃん!連れのレジーナよ!…えぇ!あなたみたいな可愛い子と会えて、いっぱい元気を貰えたわ!!…さ、難しいお話で疲れたでしょ?お菓子をお食べなさい!!」

「・・・わーい!ありがとございます!頂きます!!」


レジーナ様はそう言うと、ナッツがタップリ入ったパイを!

2つも!!

目の前に置いてくれたではないか!!


ステキやん!!



「・・・もく、もく!」

「ふ、フォニア!?そんなお行儀の悪い…ご、ごめんなさいレジーナ様!」

「ふふっ…いいのよ!子供はこうでなくっちゃ!…フォニアちゃん。お味はどうかしら?」

「・・・おいひー!!」

「そうっ!良かったわっ!…まだまだあるから、お代わりなさい!」

「・・・んっ!・・・もくもく・・・」

「レジーナ。話の途中なのだが…」


ガッつく私を見たロジェス様は苦笑いしつつお茶に口を付け、そう言った



「何言ってるのよ?まだ言葉も覚えきれていない子にあんな講義してどうするの?…それとも、剣が何かを知らない兵士にいきなり模擬戦をさせるつもり?」

「それは…」

「・・・もくもく」


なるほど。面白い例えだな・・・

それにしてもこのパイ美味しい。



「いい?この子の座学は私がやるから、あなたは体操でも教えなさいな。」

「「えっ!?」」

「・・・んっく、んっく・・・」


驚く両親をよそに、2人の会話は続く

お茶もパイに合ってる。レジーナ様・・・いいセンスだ。



「しかし…」

「なによ?文句あるの?」

「そうじゃないが…」

「むっ…かわいい孫をひとり占めしようなんて考えても、そうはいかないわよ!!」

「そんなつもりは…」

「じゃあ、いいじゃない!だいたい、この手の事は現場上がりのあなたより私の方が適任よ?例えば…そうね!…あなた、この国の領地全部言える?そもそも何個あるか覚えてる?」

「ぐっ…」

「ほら見なさい!…これでもまだ言い返せる?」

「…」

「ふふふっ!あー楽しみっ!」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

「フォニアの…教育まで!?」

「・・・もくもくもく」


ノワイエは胡桃の木という意味と言っていたし・・・

この辺りの名物なのかもしれない。



「え?だって…違うの?」

「いや、そのつもりだ。」

「し、しかし…」

「そ、そこまでして頂くわけには…」

「・・・もくもく・・・もっくん。」


他にも美味しい物・・・異世界ならではのものとか無いかなぁ!?

あぁ・・・楽しみっ!



「テオドール。後見人とはそういう事だ。」

「チェルシーちゃんもよ!ラングレ家はこの子の身の振る舞いに責任を持つって決めたの。だから…この子には、それなりの子になって貰わなくっちゃね!」


楽しみは後にとっておくとして・・・とりあえず今は



「・・・お替り!」

林檎です。


久しぶりに読み返してみたら誤字を見つけたので修正しました。

・・・よろしくね。(22/02/02 22:25)


誤字報告を頂きましたので修正させていただきました!

ご覧いただいたうえ、ご報告まで・・・ありがとうございますっ!

・・・よろしくねっ!(2022/05/10 20:45)


改行や言葉の変更を行いました。

ちょっとは読みやすくなったかな?

・・・よろしくね!(2023/09/09 23:10)

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