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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
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Chapter 043_助っ人は魔女様

林檎です。


ルボワ防衛戦。お疲れ様でした。


ここまでバトルパート続きで『ドドドッ…』と来てしまいましたが、ここから数話に渡って日常パートとなります。でもその後は…


しばし、ごゆるりと…

魔女。

リブラリアのそれは魔法使いの到達点であり称号だ。


魔法使いは数いれど、魔女(男性は魔術師と呼ぶ)と呼ばれる人は世界に数えるほどしか・・・確か、魔女と魔術師合わせて世界に8人しか・・・いない。

魔女/魔術師はヴィルス帝国にある【オクタシア】という魔法研究機関が二つ名と共に与える称号であり、1線を越えた優れた魔法使いであることの証だ。

その1線というのは、魔法への優れた適性と実績がある事。それと、それまで知られていなかった未知の魔法・・・所謂(いわゆる)失伝(しつでん)魔法を宿している事だ。

条件は厳しいけど、一度なってしまえば勝ち組となれる。

魔女/魔術師はどの国に行っても国賓級に優遇されるし、ほぼ無条件で上級貴族の爵位を貰うこともできる。わがままも聞いてもらえる。おまけにモテモテ・・・


そんな訳で、魔女/魔術師は全魔法使いの憧れであり・・・同時に絶対強者の証明でもある。






「ローデリア・クニャージ・ドゥーシ・マチェニフスカ様…煉獄の魔女様!ようこそお越しくださいました!!ご機嫌ようございますか?」

「…ふん。」


蜘蛛の襲撃から2日。

魔女様とそのお付の人達の協力もあり危機を脱した私達は、魔女様も交えて再度抗戦会議をする事になった。

本当ならローデリア様が来られ、蜘蛛の進軍も止まった当日に会議をするべきだったのかもしれないけど・・・みんなの疲労と、後始末の事を考えて今日になったのだ。



「先日は危ない所をありがとうございました。感謝に堪えません。」

「…」


ローデリア様は勿論、お付きの人達もめちゃくちゃ強かった。


でも、この人達が強いのは当然だ。

なにしろ、このローデリア様は魔物退治の専門家・・・ヴィルス帝国第3大隊大隊長様なのだ。

私が暮らすエディアラ王国の北に位置するヴィルス帝国は危険な森や山や湖を有しているため魔物被害が絶えない。もちろん冒険者も沢山活動しているけれど・・・冒険者はお金にならない仕事はしてくれないから、どうしても国民に被害が及んでしまう事がある。

そこで編成されたのが魔物退治を主な公務とする第3大隊だ。

有事の際は勿論だけど、秘境の探査や新種の調査も行う第3大隊は常日頃から魔物を相手にしているプロ中のプロ。

冒険者ランクで言うと、新人すら3級以上の実力者というから驚きだ。


苦戦を強いられた私達だったけど、ローデリア様達があっという間に殲滅してくれたお陰で無事に乗り切ることができた。

私もあの後、怪我人の救助に専念する事ができた。

そのため、今回の攻防戦での犠牲者ゼロ(怪我人は沢山いたけど、私とイレーヌ。そして助産師さん達で手分けして全員の治癒が済んでいる)という、申し分ない結末を得られたのは間違いなくローデリア様達のお陰だ。


・・・そうそう。初日に傀儡(くぐつ)からの攻撃を受けたジュリーさんも無事だよ。私が気を失ったあと、アベルさんが街まで連れて帰ったんだって。

今はお祖父様とギルマスのロドルフさんに怒られて自宅謹慎(きんしん)中らしいけど・・・何はともあれ、無事でよかった。



「…して、ローデリア様。今回お越し頂けたという事は…」

「…貴様の娘の責任をとってくれるんだろうな?あ?」

「!?ち、ちょっと!ベルトラン殿!?」


実は・・・ローデリア様が来るんじゃないか?という話は前々からあった。

冒険者は自己責任が基本だから、何か問題を起こしたら本人が責任を取らないといけないんだけど・・・今回の様に本人も被害者で、それが出来ない時どうするのか?と言うと。

どうしようもない・・・。というのが現実だ。

そういう時は地元の騎士団が出払う時もあるけど・・・集落が全滅したり別の土地に逃れる事で事態が終息する事が殆ど。リブラリアにおける魔物被害は自然災害の1つで、決して珍しい事じゃない。


けど、今回に関しては、自然災害とは少しばかり事情が異なる。

ルボワの森の最深部は立ち入り禁止になっているし、その事はペチュカさん達にギルドから知らされていた。

さらに、出発前に主について尋ね回っていた彼女達を街の道具屋さんや他の冒険者なども注意していたらしい。

それにも関わらず最深部に行った彼女達の過失は明らかだった。


ローデリア様の実の娘であるペチュカさんもそうだけど、彼女のパーティーに現役の軍人さんが混じっていたのもマズかった。

結果として・・・今回の騒動は国際問題になりかけているのだ。



「…はぁ。アラクネの討伐…引き受けよう。」


この街は田舎だけど世界的に有名な冒険者の街。その街を滅ぼしたとなれば・・・全世界の冒険者ギルドを通じてその噂は瞬く間に拡がり、ヴィルス帝国には厳しい目が向けられてしまう。

しかも、このノワイエ領は国境を預かる国王派の中堅どころ。エディアラ王国の中でも重要視されている領地だ。そこで問題を起こしたとなれば・・・



「…ふんっ。当然だな。」

「はぁ~…そうですか。それは良かった!…これで安心ですなぁ!」

「ですなぁ…。これで、ルボワを失わずに済みそうですな…」


「ちっ…」


ローデリア様は恐らく、娘と部下の責任を取るために来たのだ。

この騒動を迅速に、確実に、穏便に解決するために・・・







「…だが、条件がある。」


一瞬浮かれた会議室も、魔女様のその言葉で再び静まり返る。


「…条件…ですか?」


魔女様の出す条件・・・なんだろう?


「まず1つ。今回の件はあくまでも特級冒険者である私とオマケ共が個人的にこの街の緊急広域依頼を受けるのだという事を忘れるな。」


オマケ共って・・・仲間に対して酷い言い方だなぁ・・・。

魔女様が言っている事は、要するに。本国の命令でやるわけじゃ無いし、ヴィルス帝国は関与しませんよ・・・という事。国際問題に発展させたくない・・・という思惑があるのだろう。

でも、この言葉は裏に“魔物は討伐するけど、それ以外(ルボワ市の被害と犠牲者へ)の補償はしない”という意味も込められている。



「…」

「それは…」

「むぅ…」


今回の事件でルボワ市は冒険者の喪失と利益減。そして騎士団を派遣したことによる拠出を背負わされている。3人の責任者達としては補償を得たい所だろう。けど・・・



「…それが飲めないのなら、この話はナシだ。お前らの女王が救援を出すまで耐えるんだな。」


この街はダンジョンを一種の観光資源として収益を得ている。

それは即ち、こういった災害が起こるリスクを背負うという意味であり・・・他国がそこまで責任持てないというのは至極まっとうな話だ。

もちろん私だって、今回の襲撃で多くの人が傷つき、少なくない人が犠牲になっているのだから悔しいよ。

でも・・・



「はぁ~…。街の防衛は騎士団の責務だ。それについては何も言うまい。」

「商人たちも…まあ。何とかやりくりしているみたいですしね…」

「日が経てば冒険者達も戻って来るだろう…」


・・・でも、正直言って



「…よし。それでいい…」


これくらいが落としどころかなぁ・・・






「…2つ目の条件は物資と情報の提供だ。これは…まあ、当然だよな?」


これは・・・まあ、確かに当然だろう。

本来なら国賓として扱わなくてはならない魔女様を迎えているのに、何の配慮もしない訳にはいかない。



「…騎士団で備蓄している回復薬くらい、くれてやる。」

「えぇ、えぇ!それは勿論!!食料や道具を商人たちに工面させましょう。…もちろん、ご滞在中の宿も!」

「深部までの地図と、これまでの戦闘データを渡そう…」


他の事に比べれば、これくらいなんて事ないよね・・・






「で。最後の条件だが…」


これ以上何を望むのか・・・

ローデリア様の言葉に聞き耳を立てると、



「ふっ…」

「・・・?」


魔女様は不敵な笑みと共に、紅蓮の視線を私に向け・・・



「…そこの小娘を連れて行く。」


「「「「「はぁっ!?」」」」」

「・・・・・・う?」


ちょっと・・・意味わからない事を唱えた・・・

林檎です。


メタ連絡ですが・・・

1st Theory に続いて、2nd Theory の準備を始めました。


21/10/17-20:00-までには活動報告に上げさせていただきます。

・・・よろしくね。:)

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