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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
42/476

Chapter 040_束の間

林檎です。



本話、短めです。ご了承くださいませ。

「・・・・・・おとー・・・さ・・・ま?」


麦わら帽子、大きなぬくもり、汗のにおい、真っ赤な夕日・・・



「あぁ、オレだ。フォニア…頑張ったな。えらいぞ…」


お父様の背中で私はまどろんでいた・・・



「・・・みんな・・・?」

「みんなは残った魔物を倒してくるそうだ。…なに、フォニアが頑張ったから、あとちょっとで終わるみたいだぞ?」

「・・・・・・ちょっと・・・?」

「そう…あと、ちょっと…」


お父様の背中にスリスリしながら思い出す・・・

残りの・・・マモノ・・・あとちょっと・・・・・・



「・・・もう、おしまい?」

「そうだ。だから…頑張ったフォニアは、もう、おねんねの時間だ。」

「・・・・・・頑張った?」

「もちろんだ。今日のフォニアは…いや。今日“も”フォニアは頑張った。えらいぞ…」

「・・・んふふっ・・・褒めて。もっと褒めて・・・」

「ははっ。勿論だ。…フォニア、よく頑張った。いい子だ!えらいぞっ!!お前はオレの誇りだ!!!」

「・・・んふふふっ。・・・や、たー・・・。」


そう言って、おとーさまの背中に顔を埋めて・・・



「・・・ねむねむ・・・して・・・き・・・」

「…ほら。たっぷり眠るといい。」

「・・・でも・・・ま・・・」


「…もう…ニアは……だ。しんぱ…い…」



「・・・そっ・・・か・・・・・・・・」




「……だ…」





「・・・よ・・・った・・・」






・・・

・・





















「…お、…ねー…まっ!」

「・・・・・・・・・ぅ・・・」


「おねーさまっ!」

「・・・う~?」


「おねーさま起きてっっ!!!」

「・・・う!?」


妹にゆすられて私は目を覚ました。



「あぁ、もうっ!ロティア!!お姉様は疲れてるんだから。起こしちゃダメって何度も言ったでしょ!!」

「でもぉっ!!」

「でもじゃありませんっ!…もうっ。」


気付けば、すぐ側にはお母様とデシさんも居るではないか・・・



「・・・お母様おはようございます。デシさんもおはようございます。・・・私は大丈夫ですから、どうかロティアを叱らないで下さい。」

「おはようフォニア。」

「おはようございます、お嬢様ぁ!」

「おはよー!おねーさまぁっ!!」

「・・・おはよ。ロティア。」


「…本当に大丈夫?無理しちゃダメよ?」


そう言いながらロティアをどかしたお母様は、起き上がろうとしていた私の背を支え、ペタペタとほっぺを触り、手櫛で髪を梳いてくれた。

気持ちいい・・・



「・・・ここは・・・おうち?」

「えぇ。…どこまで覚えてる?戦っている途中で眠っちゃったらしいけど…」

「・・・なんとなく。」

「そう…。フォニアちゃんの事は…その後、兵士さんが街まで連れて来てくれてね。…お家までは、テオが連れてきてくれたの。」



お父様が・・・

そういえば、夢現(ゆめうつつ)にそんな気がする・・・かも。


「・・・今は?」

「恵土の月の39日。…戦いの次の日ね。時間は…お昼ちょっと前かしら?」

「おねーさま、おねぼーさんだっ!」

「ローティーアー!いい加減にしないと怒るわよっ!」


39日の午前中・・・ということは、丸1日寝てしまったのか。

外が暗いから、てっきり夕方かと思ったけど・・・単純に、雨が降っているだけみたい。

ロティアが言った通り、とんだ寝坊だ。



「・・・魔物は?みんなは?」

「…」


そう聞くと、お母様は視線を外してしまった。そして・・・


「…まだだよ。まだ…帰ってこないよ。」

「・・・う!?」


代わりに妹が答えてくれた。

まだ・・・帰ってこない!?1日も経っているのに!?



「・・・まだ戦ってるの!?」

「たぶん…。ときどき大きな音もするの…」

「・・・いけない!行かなきゃ!!」


そう言って起き上がろうとすると、お母様が私の手をパッと掴んで、そして・・・


「…フォニア。行くのは………‥・と。止めないわ…。。。ただ…」

「お嬢様。ご飯とお召し物。ご用意しましたよ…」

「せめて。ちゃんと食べていきなさい。」


真剣な眼差しでそう言った。



「・・・はい。」


反論なんて・・・出来るはず無かった。



「いっただっきまーす!!」

「「「(・・・)頂きます!!」」」

「おねーさまは朝ごはんだけど、ロティア達はお昼ご飯っ!」

「・・・んふふっ。・・・ほんとね。」



私は家族と、ゆっくりご飯を食べて・・・



「・・・今日もスカートなんだ・・・」

「フォニアちゃんはかわいいんだからいつだってスカートよ!ズボンなんて…母は認めないわ!!」

「・・・いいけど・・・」


ゆっくり身支度をして・・・



「…」

「・・・」

「いいなぁ…ロティアも三つ編みにしたいなぁ…」

「…うふふっ。ロティアちゃんも髪が長くなったら…ね。」

「うんっ!」

「・・・ロティアも一緒?」

「おねーさまといっしょ!!」


ゆっくりと、お母様に髪を結われて・・・



「…フォニア。」

「・・・う?」

「………なんでもないわ。」

「・・・・・ん。」

「…」

「・・・」

「大きく…なったわね…」

「・・・・・・」


今日は赤いリボンでまとめられて・・・



「…おねーさま。また…行っちゃうの?」

「・・・ん。・・・ロティアもお家を守ってね。」

「うん…。また、帰って…来てね。」

「・・・もちろん。」


「お嬢様ぁ!今日はタップリ卵サンドを作っておきましたよぉ!…お腹が空いたら食べて下さいねぇ!!」

「・・・わ!ありがとデシさん!!・・・おいしそぉ!」

「お気をつけて下さいまし!…夕ご飯もたっぷり作ってお待ちしておりますねぇ!!」

「・・・ん!・・・楽しみにしてるね!!」


「フォニア。行ってらっしゃい。」

「・・・はい。行ってまいります。お母様。」

「…無理しちゃ、ダメよ?」

「・・・はい。気を付けます。」


そうやって家族に送り出され・・・



「・・・ん!」


降りしきる雨の中、戦場へと向かった・・・

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