Chapter 021_敗者の咆哮①
りーんーごー どうぇーす!!
ひっっっさしぶりの!
着想アリのお話です!!
曲は!!
ラフマニノフ作曲!
「ピアノ協奏曲 第3番 第3楽章」
レッツ、ゴー↓
「グボア゛ア゛ァァァーーーッッッ!!!!!」
今も。
あの時も。
「アレは…りゅっ、竜!?」
「まさかっ!」
戦いの第一声は
ボルレアス卿の咆哮
「竜王…」
「ボルレアス閣下だ!!」
それ以外の選択など
あり得ない
「ふむ…。」
毒花の連中に流したのは
“ローズの里で暴動を起こす”という情報だけだ。
細かい場所もタイミングも伝えてはいない。
にも、かかわらず…
「弓兵に魔法兵まで配置しているとは…」
「閣下を警戒して…ですね!?」
急拵えでは、あるが
ヤツらは対策をしていた。
盾持ちの【べこ族】を前面に並べて
上空からのブレスを警戒。
その後ろからエルフと人間の
弓兵、及び、魔法兵が対空攻撃を放つ。
さらに…
「か…かかか、かかれぇ!!」
「ひっ、怯むな行けぇーー!!」
恐れ慄いているももの…
卿に群がったのは半人半鳥…【鳥人族】の群だった。
「あれは…“白の”鳥人族。か…」
そうか…うっかりしていたが、
このローズの里は、白の鳥人族の根城であったな…
「ッ…ごしゃぐな゛ぁぁぁ!!」
鳥人族は強い種族では無いものの小回りが利く。
体躯の大きな卿にとっては、天敵と言っていいだろう。
「ギッ…ギザマ゛ラアアァァ!!ワシに歯向かうかァ!?」
小型で飛行力に勝る鳥人族に群がられた卿は
空中で悶えていた。
もっとも、卿の体躯を考えれば
鳥人族の牙は刺さらぬし、固有魔術も効かないだろう。
ダメージは皆無に近いだろうが…
「グウゥヌッ!ぢょごまがどぉ…」
…“鬱陶しさ”は。深刻だろう。
このままでは、卿が地上に攻撃を放つことができぬ。
「…どれ…」
我輩が出る必要があるか…?
「ヤ、ヤマラージャ閣下!見てください!」
1歩踏み出した我輩にかけられた
部下の声に
「…うむ?」
上空を見上げると…
「…かぐごはい゛い゛なぁ!?」
…卿は。
大地を貫く鋭い竜目を輝かせ
「ガア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァ!!!」
全身を赤く…噴煙を上げる火山のように
鈍く燻し
「ひ、ひぃっ!?」
「にっ、逃げっ!」
異変に気付いた鳥人族が
逃れようと翼を動かした。が、
…しかし
「…死ね゛」
時、
既に遅し。
「ア、アレは…」
卿の全身を包むように…
入れ墨の様な赤灰色の魔法印が拡がり
「暗い…も、靄?」
「仄かに赤く…ま、まさかっ!?」
宵闇を暗く燻す雲…正体は”灰”なのだが…が拡がり。
そして…
「閣下の周りに落ちていくのは…」
「…火の粉?」
卿の周囲…鳥人族が飛び交っていたその場所から
赤く燃える炎がボトボトと…
「いや!アレは…」
「…”白の”。か…!?」
…卿は。固有魔術【竜化】によって。
数種類(実際のところ”幾つ”なのか?我輩も知らない)の竜に化ける事ができる。
たった今、卿が変化しているのは【熱灰竜】という
大陸北東部にある火山地帯に棲息する(らしい)恐るべき竜だ。
「お、おい…」
「あの赤いの…す、全て…なのかっ!?」
「えっぐぅ…」
熱灰竜は鈍重だが空も飛べる。
赤熱した灰の塊を投射するブレスの他、
今しがた卿が見せたような…周囲に高温の灰をバラ撒き
近づくモノを焼き尽くす…【焼灰】という
強力な固有魔術まで有している。
「グワハハハハハアァァ!!他愛ないのぉ…」
しかし…
卿が”この竜”を好む一番の理由は
“陛下の炎にも耐える”という点であろう。
【炎帝】が生み出した赤い海から現れる【竜王】…
「その程度かぁ!?まさか、その程度で竜王に挑もうと!?グヮーッハッハッハッハァーー!…片腹痛いわぁ!!」
陛下と卿…
見た身も性格も何もかも違う2人だが、しかし。
タッグを組めば
戦場を焼き尽くす赤い嵐となった。
「ふっ…ボルレアスのヤツめ。年甲斐もなく、はしゃぎおって…」
あぁ…
なんと懐かしきことか…
「グヮーッハッハッハッハァーー!…来ぬか!?で、あれば…ワシの方から赴いてやろうではないか!」
この戦い…我輩たち“陽動部隊”は
勝利を求められていない。
られてはいないが。
しかし…
「ふっ、ふふ…ふははは………」
滾るではないか…
………
……
…
…
……
………
「アレが…オレ達の。王…」
「竜王。ボルレアス閣下…」
圧倒的だった…
「グワ゛ーハッハッハッハア゛ァァーーーー!…脆い!脆すぎるぞ毒花あ゛あ゛ぁー!!」
我等の…封印されていた親王閣下が
数千年の時を経て戦場に降臨される…
ヤマラージャ様からソレ聞いたオレは…正直言って
困惑した。
竜人族は他の種族より長命とはいえ、長老ですら3,000歳を少し過ぎたところ。
オレ達の中に閣下に会った者など、当然いなかった。
ソレどころか…
かつて”天険の楽園”とまで謂れていた竜人の里…故郷の…
その、正確な位置すら現代のオレ達は忘れていた。
加えて神族から
閣下の愚行とソレによる一族の咎を聞かせられていたため…
正直。閣下にいい印象を持っていなかった…
「スッゲ…」
「…こ、これじゃあ。封印されたのも納得だなぁ…」
「さすがは。悪魔…」
今更…何しに来た?
故郷を奪われ。誇りも奪われ。名前さえ奪われる事になった
その元凶が何の用だ?
背負わされる子孫の身にもなれ!
「アンタが凄いのは分かった。」
「あぁ、強い強い。さすが竜王様だ。」
「でも、だからこそ…」
…おそらくソレが
多くの者の本音だろう。
「…オイ。」
しかし…
「…いい加減にしろ。あのお方は竜王…オレ達の父だ。貶すな。」
「「「「「…」」」」」
…オレは知っていた。
「…オレの祖父は言っていた。我等、竜人族が平穏無事な生活を送れているのは。すべて閣下のお陰だと…。閣下は御身を投じたのみならず。頑固者の晶のドワーフに掛け合い。早期に降伏させることに成功した。我等が毒花に取り立てられているのは連中が閣下の功績を評価しているからだ。他の魔族に比べ圧倒的にマシな生活を送れているのは…閣下のお陰だ。」
「「「「「…」」」」」
…そう。知っていながら
「いい印象を持っていない」などと考えていたのだ…
「…同族だけじゃない。貂子族。鱗尾族。鳥人族に天腕族。閣下に世話になった種族はゴマンと居るはずだ!違うか!?」
「「「「「…」」」」」
今更こんなことを言うのは卑怯だと分かっている。
しかし、言わずにはいられない。
他でもない、自分を戒めるために。
スベテが終わった後。閣下に許しを請うために…
「それなのに…甘い汁を啜って腑抜けたか!?尊父のご尽力も忘れてしまったのか!?!?オレは…オレは恥ずかしいぞっ!!!」
「「「「「っ…」」」」」
「お前らは違うのか!?」
「「「「「…」」」」」
オレに閣下の話をしてくれたのは祖父だった…
当時まだ子供だった祖父だが、閣下の顔は覚えていると言っていた。
祖父の記憶にある閣下は
自信と誇りに満ちており、
オレ達、竜人族が築いた歴史と文化と知識と力。
そのすべてを物語っていたと、顔を綻ばせて
語っていたっけ…
「…立ち止まっている暇は無いっ!!オレは…オレは行くぞっ!!」
そしてソレは。
この体にも…
「「「「「っ…」」」」」
今まで隠して生きてきたが…
ソレも終わりだ
「うおぉぉぉーーーっっ!」
…フードを取り去り。
竜人の誇りである角と太く長い尾を晒した俺は
固有魔術【竜化】を発現!!
「お゛お゛お゛ぉぉ…」
閣下には遠く及ばない小物ではあるが…
【炎舞竜】となり。
「尊父!露払いをさせて下さい!!」
巨大な…夢にまで見た…憧れの
空と大地を統べる覇王に
「グワアァハハハァ!…ム゛無論だ息子よ!共に戦おうぞぉぉ!!」
「っ//////…光栄に存じます!!」
翼を並べて!
「「「「「閣下ぁ!!!」」」」」
「我らも…わ、私だって!!」
「共に戦わせて下さい!!」
仲間と共に
「ガァーーハッハッハッハァー!!!」
踏みにじられた歴史を
奪われた文化を
散逸した知識を
もがれた翼を…
「よ゛ぐ言った子供たちよ!!そう…そうだ!ソレでこそ竜人だ!!誇り高き竜の子だ!!」
故郷を
誇りを
名前を
「ぞん゛ぶん゛に唱え!!今がその時ぞ!!」
取り戻すために!!
「い゛い゛イ゛グぞぉーーー!」
「「「「ヴラアァァーーー!!!!」」」」」




