Chapter 009_デイジーの里②
林檎です。
本話、少し短めです。
よろしくお願いいたします・・・
次の日。
お天気は、午後には雨になりそうな
暗〜い色の曇り空・・・
「それじゃ、」
「・・・あとはよろしくね。みんな・・・」
「…」
「い、行ってきます…」
名目上、
【知見を広げる旅】の途中である私達は
デイジーの里の里長殿の勧めで社会科見学をさせて
貰うことになった。
・・・ま。
物流拠点だという、この里の造りには興味あるし、
運が良ければ別の目的も果たせるかもしれないからね・・・
「…しっかりやれよ。」
「りょーかいっ!」
「・・・シュシュ。留守をお願いね・・・」
「にゃんですよ!願われましたです!!」
「ルクス!”ご主人様”をちゃんと御守りするのですよ!」
「…へー、へぇ〜…、と。」
「ぶぅ〜…アメちゃん。せめて、お土産お願いね…」
「お、お土産!?が、がんばるよ…」
メンバーは
①フルート
②私
③ルクス
④アミちゃん
の4人。
あとの皆はお留守番だ。
お留守番組のティシアが
行きたいと駄々をこねたけど・・・
新しく仲間に加わった。花のエルフの3人に気を使って
疲れている様子だったので置いていくことにした。
肉体的な疲労は治癒魔法で癒してあげられるけど
心の方は、そうもいかない。
今日は1日リラックスして過ごしてね・・・
「そ、それでは皆様!」
「出発いたしましょう!」
「外は風が冷たいので。お気を付けて…」
デイジーの里のエルフに囲まれたらやり辛いなぁ・・・
と、思っていたら
チューリップの里の3人が私達の世話役として
同行してくれることになった。
・・・どうやら。
デイジーの里のエルフをうまく言い包めたらしい。
「移動には馬車を用意しました!」
「お?そなの?ありがとー!」
「整備されたエルフの里は美しいですが…ソ、ソレだけでは難かと思いまして!魔族や人間の働く交易所や、彼らの市場も見学コースに組み込みました…」
「・・・ありがと。ソレは興味ある。」
「…だと、思いましたよ………」
「もちろん警備も万全です!我らの他に、数名の警備兵を付かせました!」
「…邪魔するなよ。」
「も、勿論でございます!皆様お強いですから…ちゃ、ちゃんと距離を取るよう、よく、言ってあります」
「確か…この里名産の珍しい食べ物があったハズ。帰りにお包みさせましょう!」
「…それなら。最悪。ティシアちゃんには言い訳できるね…」
ひょっとして・・・
「それでは、」
「さっそく…」
「参りましょう!」
・・・チューリップの里の3人
どっかのエロフ君より優秀なんじゃ・・・
「・・・ん!」
「「「「いってらっしゃーい!」」」」
・・・
・・
・
そして夕方・・・
『ドンッ、ドンッ、』
巨木をくり抜いて造られた
贅沢な迎賓館。
私達は、迎賓館のワンフロアを自由に使っていいと言われている。
「…ギル殿!哲学者様がお帰りです!」
大きな迎賓館の正門をくぐり、寝室として使っている部屋の扉を
(扉の前の護衛さんが)ノックすると
『キィ…』
まず、ギル様が
慎重に扉を”ちょっと”だけ開けて・・・
「ふぅー…すっかり降られちゃったねぇ〜…」
「…ヤレヤレだ。」
「ぶるるるッ…」
「・・・ただいま戻りました。ギル様。」
私・・・そして、みんなの姿を
順繰りに確認すると・・・
「…お帰り。」
半歩身を引き、
扉を大きく開けてくれたのだった
「お帰りなさいませ、お嬢さ…っ!」
そして、ドアの隙間から
びしょ濡れの私を見つけたローズさんが
「いま、タオルを!」
『トトト…』と、
部屋の奥に駆けていき
「では、ごしゅ…「て、哲学者様!」…さ、様っ!」
「我々はココで!」
世話役の・・・チューリップの里の3人も、
「か、風邪を引かぬようお気をつけて!!」
「「ご機嫌麗しゅう!」」
部屋の前で礼をして
踵を返した
「う〜い…」
「・・・ん・・・」
「…」
「ま、またね…」
その声に応えながら、
私達は部屋の扉を潜り・・・
「…さ。お嬢様。」
「・・・ありが・・・」
ローズさんから
ふかふかタオルを受け取・・・
「…それ。」
・・・ろうとしたら?
「と・・・う?ギルさ・・・」
頭の上でギル様に取られ。
「うぅ~・・・?」
『…?』
セトもろとも帽子を脱がされ。
さらに・・・
「ふわぅっ?」
タオルを被せた、大きな手の平で
「・・・う〜・・・」
頭を撫でつけられ・・・
「ちょっ!?ギ、ギル様!?ソレは私の…」
「…主人を差し置いてフィリアにタオル渡すヤツがいるか?」
まだ、扉が開いているのに・・・
「「あははは…」」
扉の外の・・・案内をしてくれた
デイジーの里のエルフの苦笑いを
タオルの切れ目からチラチラ見つつ
「わ、私…はっ!お、お嬢様の”専属”だから良いのです!」
「…良くはないだろう。良くは…」
「・・・ふ、2人とも。喧嘩しないで・・・」
頭上で勃発した
特級冒険者 vs 専属侍女
の戦火を聞きながら
「あははは…」
「…ヤレっ!ヤレ…だ。…ん。」
「おっ、ありー…」
「…ほら。お前も…」
「きゃっ!?あ、ありがと…」
ローズさんの腕から落ちたタオルを掬い上げ、
みんなに配ってくれた・・・
「…ったく…」
「・・・んふふっ。・・・ありがとルクス。優しいね。」
「ばっ///…ったくっ!」
「・・・んふふふっ・・・」
・・・照れてるルクスに振り返りつつ
「・・・では、皆様。本日はありがとうございました。ご機嫌麗しゅう・・・」
ゲオ様に頭を拭かれ、
ローズさんにマントを脱がされながら。
「えぇ!夕食の支度が整うまでごゆるりと!」
「ご機嫌麗しゅう!フィリア殿!」
扉の向こうにカーテシーをキめ、
「じゃね!ありがと」
「…」
「ま、また…」
頭を下げたまま、
フルート、ルクス、アメちゃんの声を聞き
『バダンッ!』
ギル様が閉じた、少し強めの
扉の音を聴いた私は・・・
「・・・ティシアは?」
表情を改め、
ギル様に向かい。
「…つい先程まで言葉の練習をしていたが…」
「馬車に揺られておられたので。寝室に運びました。…今は、シュシュちゃんと共に…」
「・・・ん。それなら・・・夕食前まで。そのままでいいかな?」
「…あぁ。」「はいです…」
「…何か。あったのか?」
「・・・あったよ。特大の収穫が・・・」
「じ、実はね!ゲオく…」
「・・・アメちゃん、待って。「あっ、ごめっ…」気持ちは分からなくもないけど・・・」
「ふっ…メシまでは時間がある。そぅ…焦ることでもあるまい。」
「う、うん…。そ、そう。だね…」
「・・・フルート。あなたは・・・」
「ふふふっ!もちろん…」「…静音したぞ。お嬢。」
「・・・ん!さすが。」
「お役に立てて光栄だよっ!マシェリィ///」
「・・・それじゃ、部屋着に着替えてくるね。お話は、そのあと・・・」
「…あぁ。」
「…さ。それではお嬢様。コチラへ…」
「・・・ん・・・」




