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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 008_デイジーの里①

「わ、分かりません…。」


【デイジーの里】は我ら花のエルフ最大の里(”最重要”の里は言うまでもなく、

【ベラドンナの里】である。しかし、里の”規模”はコチラが上)だ。


各地から集められた物資を集約し分配する…

交易都市としての役割を担っているため規模が大きく

人口も多い。


無論。エルフだけでなく…魔族も。人間も。



「分からない。だと…?」


我らエルフは

魔族。人間。そしてドワーフと獣人…下種ども…を支配しているが、

その(すべて)を奴隷にしているワケではない。


【隷属魔法】をかけるにしても術者の数が限られているし、

我らに比べ圧倒的に人数が多い連中全てを管理するのは

現実的ではないだからだ。


態度が悪かったり、罪を犯したり。重要な役職に就かせる者を除き。

基本的には、“下種の里”の自治を“下種自身”に任せている…



「…5日間も連中といたんだ。何か見たであろう?」


…“奴隷ではない”が故、下種共はトラブルをしょっちゅう起こす。


デイジーの里は規模が大きい故、

その数はチューリップの里とは比べ物にならないほど多いハズだ。


その殆どは下種連中が自力で解決するが、中には連中には処理しきれない問題…

施設を破壊したり、我らエルフに害が及んだり…も、少なくないらしい。


…栄えているからといって

良いことばかりでは無いようだな。


我には、

平和なチューリップの里がお似合いだろう…



「…パ、里長(パァタァ)(したた)めた手紙の通りです!」

「素性に繋がるような情報は?」

「しょ、食事の話ばかりしておりまして…」

「か、彼らの故郷の料理についてなら。多少は…」


「そんなことはドウでも良い!他には…?」

「や、奴等の戦いぶりはどうだ!?」


「ま、魔物とも遭遇しませんでしたし…」

「生活の中で点火魔法や涌水魔法を利用しておりましたが。他には…」


…わ、我のコトは

ともかく。


トラブル慣れしているデイジーの里の連中は

我らを迎えてもスグに里に迎えるようなコトはせず、


初めに、里の外…下種の里…の雑兵の詰め所に哲学者様達を(とど)め。

その間に我らに聞き取り…尋問…を始めたのだった。


…もっとも。こうなるコトは

“天使様”の「唱えた通り」だったワケだが…



「そ、そうだ!!」

「なんだ?」

「い、今思い出したのですが…フィ、哲学者(フィロソフィー)様が相当な風魔法使いであらせられるのは間違いありません!」

「そ、そう!そうでした!!た、たしか…」

「か、風属性の精霊…エ、【エウロス】という召喚獣をお宿しでしてた!」

「「「なにっ!?」」」


天使様…そう、フィリア様は

瀕死の我を救って下さっただけでなく。


奇跡の技で傷を“跡形もなく”癒して下さったのだ!



あぁ、あの時。

眠りにつく直前に目にしたフィリア様の瞳の。

なんと、慈悲深かった事か…


…あの時。

我は天使様の僕になったのだ…



「しょ、召喚獣…だとっ!?」

「風属性…と、言ったな!?間違いないか!?」

「は、はい!」

「しょ、召喚獣の力でお連れ様の周囲を包み。風の守護結界と健康維持を…」

「連れ…と、言うと。あの人間の小娘か!?」

「は、はい…」

「なんと贅沢な!!」


奇跡が起きたのは我だけでは無かった。

あとの2人も、我と同じように眠りにつき…


…目が覚めると、

いつの間にか傷と疲労が消えてなくなっており。

天使様へ尊敬と畏怖の念を感じたという。


憑き物が落ちた我らは晴れやかな気分となり、

天使様に誠心誠意、御使いしようとココロを改めたのだった…



「じゅ、呪文は!?」

「分かりません…」

「…分からない。だと?召喚するところを見たのでは…?」

「な、名を喚ぶだけで現れるようでして…」

「「「なんだとっ!?」」」


…正直。

哲学者様に思うところがあるのは確かだ。

有無を言わせぬ速攻で我を殺そうとしたのだ。何も思わぬハズがない。



「…じょ、常時発現型の召喚獣…だとぅ!?」

「そ、そんなっ…ウ、風の(ウィンド)エルフに。それ程の実力者がいた…いや、“いる”というのか…?」

「…ほんとうだろうな!?」


…しかし。

哲学者様”が”…というダケでなく

天使様”も”想っているコトも理解している。



「は、はい!」

「間違いございません!」

「この瞳で確かに!」


「ほ…ほ、本物。ホンモノと、いうコトか………」


初日に言い争っていたコトも。

今思えば仲が良いから”こそ”の我儘だったのだろう。


悔しいが、

認めざるを得なかった…



「恐れながら申し上げます。アノオカタの不好を買うのは、得策では無いかと…」


哲学者様の肩を持つのは(しゃく)だが、

「・・・私達はただ、無事にこの森を抜けたいダケなの。お願い・・・」

…と(おっしゃ)られたアノオカタの願いを

聞かないワケにはいかない。


例え、この想いが叶わぬとしても。


命の恩人であり…



「そ、そうです!ご機嫌を損ねでもされれば、どうなるか…」

「ス、スグに賓客として招くべきです!」


”ご主人様”でもある。

アノオカタの為に………



………

……





















・・

・・・



「…ベッドぉ!!」


『ボブンッ!』


上半身が蛇だったり。コウモリみたいな翼が生えていたり。

ヤギみたいなグリグリ角を生やしていたり・・・

テンプレ魔族の皆様に囲まれること 40分


ようやく迎えに来たエルフの案内で私達はようやく、

【デイジーの里】に足を踏み入れることができた。


スグに里長様と面談かと思っていたので身構えていたけど、

通された先は豪奢(ごうしゃ)迎賓館(げいひんかん)だった。

「今日は疲れているだろうから。詳しい話は、また後日…」

・・・とのこと。


案外、優しいじゃん・・・




「ふふふ…ご令妹様?服がシワになってしまいますよ?」

「だってぇ…」


花の(フラゥル)エルフの里は深い原生林に囲まれており、魔物も多く生息している。

けど、魔族や人間、そしてドワーフたち(彼らが言うトコロの”下種(ゲス)”・・・失礼しちゃう!)が狩人として常時森に入っているし、

定期的に大規模な掃討も行われているらしい。


だから、里の外も比較的安全。

さらに、エルフなら楓魔法の【駿馬魔法】を宿しているから

里から里へ、観光気分で旅行に行くエルフも多いとか。


私達が案内された迎賓館は

そういってやって来たVIP向けの施設だそうだ。



「・・・ティシア。部屋着に着替えちゃう?」

「晩餐会のお誘いを受けたお嬢様とエロフ以外は、このあと用事もありませんし…いかがします?ご令妹様?」

「う〜ん…うん!着替えちゃう!」

「ん!」


魔族、人間。そしてドワーフと獣人の技術と資源の

恩恵を受けているエルフは、ソレはもう、贅沢な暮らしをしている。



「お嬢様も。ドレスにお召替えなされます…よね…?」

「・・・ん。いちおう。ね・・・」


「マシェリィのドレス姿。かぁ………みn」

「…不用意なコト言うなチビ。後片付けさせられるボクの身にもなれ…」


エルフは文化的に”役職”を帯びているけれど、

もはや形骸化(けいがいか)しており。


実態は家でゴロゴロしたり。趣味に没頭したり。

気まぐれに旅行したり・・・

・・・そんな感じ、らしい。


・・・まんま。

異世界中世の貴族だね・・・



「ご令妹様はシュシュがお手伝いするですよ!」

「ありがとシュシュちゃん!…うんっ、しよ…」


「わあっ!?」

「…う?どーしたの?アメちゃん…」


「ご、ご令妹様!む…む、向こうのお部屋でお着替えするですよ!」

「う?なんで?」


「さ、さぁ!行きますよ!!」

「うぅ?…う、うん…?」


「・・・アメちゃんのエッチ。」

「っ///…ふ、不可抗力っ!!」


7,000年もネオニートをやっている花のエルフは多分、

(兵士さんを除いて。・・・いや、でも。チューリップの里から同行してくれた女性2人も。里の中では指折りの戦士だと言っていたような気も・・・)あまり強く無いだろう。


無力化するのは簡単だ。


でも、”災害級”魔物を日常的に相手にしている

他の種族は違う。


突然エルフを襲いでもしたら、事情を知らない彼らは

主人を襲わんとする”敵”に抵抗するだろう。


・・・ま。だからといって。

私達が簡単に負けるコトは無いと思うけど・・・でも、


ソレは私達が望むコトでは

無いワケで・・・



「…どうやらアノ3人。うまく言い(くる)めたみたいだな…」

「まったく。ヒヤヒヤさせるんだから…」

「…チビお前。マジで何もしてないだろ。むしろ面倒事増やしただけっていうか…」

「…ナンノコトカナ?」


「「…はぁ〜…」」


・・・ま。とりあえず。

第1課題はクリアかなぁ・・・

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