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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
390/476

Chapter 002_チューリップの里①

「とっ、止まっ!!」

「止まって下さいませ!!」


チューリップの里、城門前の橋に迫った私達に

警告を発したヴェルム・ウェルム大陸

第1&第2里人は



「よ…よっ、ようこそエルフ様!しかし…」

「ら、来客があるとは伺っておりません。お見受けした所。エルフ族の方のようですが…し、神族の御方(おかた)では無い…ですよね…?」

「し、失礼ですが。どちら様で…」


巨大な斧を手に門前に立ち、

私・・・どころか。ゲオ様を優に越える、

大きな半人半牛の魔族・・・ミノタウロスさん2人組

だった・・・



「やぁ、こんにちは。ご機嫌ようございますか!?ぼくはフルート・フィロソフィー・ウィンド・ファインと言うんだ。…ココは【花の(フラゥル)エルフ】の里のひとつ…【チューリップの里】だと思っているんだけど。正しいかい?」


私の身の丈もある斧を楽々と片手で持っている2人の門番さんは

フルートの言葉に



「ごっ、ご丁寧なご挨拶痛み入ります!…と、共々快調であります!」

「コ、ココは神族…フ、花のエルフの【チューリップ家】が(おさ)める。チューリップの里に間違い御座いません!」


『たじたじ』していた姿勢を正して礼をした2人に

フルートが・・・



「それは良かった!それじゃ…悪いんだけどさ。君達の主人に、ぼくのコト伝えてくれないかな?”フルート・フィロソフィー・ウィンド・ファイン”…って。この名前を伝えれば、ぼくの身元も・目的も分かってもらえるハズだから!」


と、伝えると・・・



「は、はいっ!」

「直ちに!」


「直ちに!」と言った方のミノタウロスさんは、

言うなり地面に斧を突き刺して。

門戸を押して、駈け込んでいったのだった・・・



「し、しばしお待ちを!」


残された門番さんは、そう言うと

斧を下向きにして。両手で胸の前に掲げ、

直立不動になったのだった・・・



「・・・」


あの体勢・・・

異世界ファンタジーモノのアニメで。玉座の間の前の廊下・・・玉前回廊・・・

に並んだ兵士さんが“剣”でやっているのを見たコト有るけど・・・


重そうな“斧”でソレするのは凄くキツそうだけど・・・

ずっとアレで居るツモリなのかな?


ちょっとくらい手を抜いても

誰も・・・



「…彼ら…」


なんて、

考えていると?



「…彼らは【べこ族】…ぼくの民。魔族だよ…。」


私達だけに聞こえる声で。

アミちゃん改め、アメちゃんが声をあげた



「…(ボコ)?」

「・・・『べこ』。・・・魔神語で、“牛さん”のコトよ。」

「へぇ…」


ティシアの間違いを正してから、

アミちゃんの背中に視線を向けると・・・



「…魔都【シアリア】のある【ユーラ・カーラ湖】の東岸…穏やかな草原に暮らしていた、大人しい種族だね。戦いよりノンビリ農耕している方が好きみたいだし、乱戦になると少し反応が遅れるけど…力強くて我慢強いし、大きくて迫力もあるから。門番には”うってつけ”だろうね…」


目深に被ったフードの隙間から

べこさんを見つめるアメちゃんは・・・



「大戦時は彼らに拠点防衛をお願いしていたんだ。彼らが居る…というダケで。ソコは難攻不落の要塞と化した。だから…”安心して預けるコトができた”から。兵たちは全力で戦うコトができたんだ。けど…」


表情は見えないけれど・・・



「今は…」


・・・悔しそうな

小さな背中を



「アメちゃん…」


ティシアが『ギュッ』と抱いて



「・・・」


私は、ティシアごと



「・・・大丈夫よ・・・」


2人を『ギュッ』って・・・



「…にゅっ!」


・・・その瞬間?



「ご主人様。来ます…」


放たれたシュシュの言葉に、



「「「「「!!」」」」」


私達は

お喋りを止め。



「・・・」


私は

手を伸ばし



「・・・!」


「がんばって!」というつもりで

フルートの背中に『そっ…』と触れて・・・



「…、」


前を向いたまま小さく頷い彼に。

心の中で・・・



「・・・///」


・・・頼りにしてるよ。

おーじさま・・・



・・・

・・





















……

………



「ほぉ~っ…。そんなコトが…」

「そうなんですよぉ~!…まったく。向こうの大陸の魔女と魔術師には困ったものです!」


何の前触れもなく里を訪れた同種族(エルフ)の若造…


“風のエルフ”の哲学者(フィロソフィー)であるとい若造が

はるばるチューリップの里まで来たのは【知見を広げる旅】の為であり、

同時に。アドゥステトニア大陸に渡る手立てを見つける為だという…



「ははは…しかし、フルートの(きみ)。【天空回廊】を通り彼の地へ戻るのは難しいでしょうね…」


…アドゥステトニア大陸に渡る手立ては2つある。


1つは

パド大陸経由で【ウィルトゥースの橋】の橋を渡る方法。

しかし、コチラは彼の大陸の魔女と魔術師によって崩落してしまったそうだ。


若造はコレが原因でこの地を訪れたと言っていたが、たしか…

北の(ノルウェ)エルフ】から、そんな連絡がきたと、報告書に綴られていたハズだ。


事実なのだろう…



「…やはり、そうなのかい?」

「…えぇ。当時、何度も調査隊を出しましたが、魔物に阻まれ、現地に往き付事さえ困難でして…。…今ではもう、誰もが諦めております…」


もう1つの手立ては

通称【天空回廊】…暇な穴熊が掘り抜いた

【リツェルランド・バグー】を通るコトだ。


しかし、この坑道は閉鎖されて久しく。

通るコトなど、とても…



「ソレは怖いねぇ…」

「相当、永い時間放置されておりますので。道はかなり荒れています。加えて、強力な魔物も出没するとのコト。行くのはオススメできません…」


「魔物…そんなに深刻なのかい?」

「…今ではもう、諦めて街道の定期的な掃討をしていないのです。」

「幻獣クラスの魔物がウヨウヨしている可能性すら…」


「ナルホドねぇ…」


…そう言った若造は

椅子に沈み込みながら…



「…どうしようかフィリア?君の故郷に戻るのは難しそうだよ…」


…我々の瞳など気にも留めず、

隣に座らせた人間の小娘…メモ帳か?小さな本を手にしている…に

すり寄って…



「・・・わ、私は・・・フルート様のお傍に居られるのなら。ソレだけで・・・」

「…うぅん?ふふーん…ソレはソレはぁ…」

「・・・///」

「じー…」

「//////」

「………ふぅ〜」

「ひやぁんっ!?・・・っ〜///・・・い、いじわる。です・・・///」

「あははははー!!」


「「「「「…」」」」」


っ…

こんのガキめ…



「それっ、つんっ!つーん!」

「ひゃっ///ん、ひゃぁんっ///・・・はぁはぁ・・・や、ヤ〜ぁ〜///」


哲学者のガキが彼の地を目指すのは

この人間の小娘の為…小娘を、故郷に帰すため…だと、

思われる…



「ははは!相変わらず。いい反応するなぁ、フィリアは!」

「・・・もっ、もぉ〜お〜!・・・いじわるです・・・」


この小娘の他にも、人間の女に子供2人。

獣人の娘まで連れている。


…いいご身分だな、オイ。



「…ね様楽しそぉ。ねーぇーっ。テーも混ぜてよぉ…」

「・・・ぅ、う?ティ、ティシァ・・・」

「ふふふっ…いいとも、いいとも妹ちゃん!さ、ホラ…こしょこしょこしょ〜っ!」

「キャー///」

「こしょこしょこしょ〜!!」

「ヤっ、ヤーぁ〜///」


「・・・っ、も、もおっ!フルート様!妹はまだ子供で・・・・」

「う〜ん?…ふふふ。ごめんよフィリア。欲しかったんだね?「うぅっ!?」なら…「・・・うぅ!?」それっ!こしょこしょこしょぉ…」

「ひゃぁんっ///」


「妹ちゃんも…こしょこしょこょぉ!!」

「きゃぁんっ///」



「「「「「っ…」」」」」


く、くそぉっ…

こっ…こんなコトが許されるなんてっ…



「ひゃうぅ・・・」

「きゃうぅ…」


「あははははー!」


哲学者なんて爆発すればいい!!



「…フルート様っ。お嬢様も…。お戯れが過ぎますよ?」


そーだ!人間の女…侍女と紹介された…の

言うとおりだ!


ヒトの家でナニをしているんだ!?

いい加減にしろ!!



「…あれ?ひょっとしてローズちゃんも…」

「っ///…け、結構ですっ!!」

「またまたぁ〜…」

「っ〜…ふ、ふんだっ///」


殺すぞクソガキャ!!



「・・・はぁ、はぁ・・・ふ、ふるぅ〜とくぅん・・・て、てんくーかいろぉについて。聞くんじゃ・・・」

「…え?あぁ…。…で?里長殿。結局、てんくぅ…」

「ムリですな。通行不可能でしょう。」


非公式ながら

密かに魔族に街道を整備させている…というコトも。


坑道が閉鎖に追い込まれ、(シュピッツ)ドワーフが全滅した理由は。

おそらく、坑道内に突如現れた精霊が原因だというコトも…


…そんなコトをコイツに

教えてやる必要は無かろう!!



「誠に残念では御座いますが。森へお帰りになるのがよろしいかと…」


お前なんか、さっさと砂漠へ帰ってしまえ!!



「・・・」


う、うらやましくなんて…な、ないぞ!!



「・・・・・・」


絶対に

ないんだからな!!






「・・・んふふふふ・・・・・・」

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