Chapter 018_大図書館のレキシ
り、ん、ご
でぇーす!チャオっ!
本話、ちょっと長めです!!
よろしくお願いいたしますっ!
「ふぅー…」
…さらに。
800年くらい経った後…
「…そんなに怖いのなら。やらなきゃいいのに…」
心の中の。もう一人のカルマートの囁きに頷きながらも…
…私は。
“もしかしたら…”と、いう想いに。勝てなかった…
「…うん。…ぅん………」
牢屋部屋も…ルームinルームの構築も。
問題ない…たぶん。
20年くらいかけて練習したんだ。
たぶん…問題ない。
「…」
わたし。魔法は苦手だけど…
これは【大図書館の魔法】だから、たぶん。
うまくいく…
「…たぶん。だけど…」
………
……
…
………
……
…
………
……
…
・
・・
・・・
「・・・うぅ!?この子が・・・【影の森】を沈没させた張本人!?」
「…そう。【影のエルフ】の仇敵…」
ご飯にしようと言ったカルマート様は、
その後、アミちゃんを振り払って扉を生み出し。
サッサと行ってしまったのだった・・・
私達は、優しいカルマート様の態度に違和感を感じつつ、
残されたアミちゃんを伴って食堂に向かった。
そして「いただきます」をすると、
カルマート様はアミちゃんとの出会いや、これまでの経緯を
話してくれたのだった・・・
「うぅぅ…」
「よし、よし…。いい子、いい子…」
「///…」
・・・因みにアミちゃんは今、
ティシアが面倒を見ている。
「…ほら。アミちゃん!あーん…」
・・・ナンかよく分かんないけど・・・
自分より小さいから、カワイイのかな?
・・・う?えぇっ!?
ちょっ!ソコっ!!
「お前も妹より小さいだろ…」とか言わない!!
物理的な話じゃないからねっ!・・・ぶ、物理的にも・・・
そ、そんなに差があるワケじゃないもんっ!!
「ふぇっ!?…///…ボ、ボクは…」
「…う?“タコちゃんの酢の物”キライ?…テーも。最初は苦手だったけど…でも、今は大好きだよ!」
「…」
「・・・もにもにもに・・・」
「…はい!あーん…」
「あ、あ〜…んっ…」
「…おいしっ?」
「もきゅもきゅもきゅ…ん、うん…」
「やったね!」
「…///」
「・・・もっくん。・・・・・・」
・・・妹よ。
いつの間に“ままん”ポジションに・・・?
「…アミはそんな見た目だけど。紀元前(注意!カルマート様が言っている“紀元”は、エルフ独自の暦である「ア・テンポ」のこと。今年:カレント 2,187年=ア・テンポ 32,196年)…3万2千年以上昔…から存在している…」
「・・・3万2千!?」
「…そう。さんまんにせん…」
「・・・」
見た目はティシアと同じくらいだし。
セも・・・な、なんでもない・・・
「…見た目は分からんが…コイツがこの海を作り出したというのは本当か?」
そう言ったのは“お箸”に挑戦中のゲオ様。
でも・・・ゲオ様?
さすがに、“お味噌汁”の液体部分をお箸で掬うのは、物理的に難しいのでは?
「…」
上品にご飯を咀嚼したカルマート様は
お箸を静かに置いて・・・
「…ほんと。水属性第12階位【海神魔法】は術者の魔力が続く限り水を放出し続ける超超大規模魔法…。…後にも先にも。アミしか宿していない…」
「・・・【海神魔法】・・・」
この小さなアミちゃんが。森をひとつ沈没させて
世界樹を枯らせるほどの魔法を・・・
「・・・」
「…?」
水属性。
第12階位の魔法。
か・・・
「・・・アミちゃん。お菓子好き?」
「!?…お。オカ…?」
「ね、ね様…」
そう思いながら
彼女を見つめていると・・・
「…やめた方が。いい…」
カルマート様から
お声がかかり・・・
「・・・う?」
「…海神魔法で召喚される召喚獣【ジン】は制御が効かない。アミは自ら喚び出した召喚獣に根こそぎ魔力を吸い取られて気絶して…ちょっと魔力が回復したら、また吸い取られて…を。2千年くらい繰り返し。この海を漂っていた…」
「・・・・・・はい?」
召喚獣なのに・・・制御が効かない?
回復する度に吸い取られる??
「・・・自我の薄い。精霊・・・召喚獣と言っても。“契約は無かった”・・・ですか?」
白檀の魔術師様こと、ハシムおじいちゃんが見つけた説に基づくと、
“仮初の精霊”を生み出して使役するタイプの魔法は召喚魔法じゃ、
ないんだけど・・・
でも、
こっちの大陸では“召喚魔法”だと考えられている可能性がある。
人工物である“仮初の精霊”は術者のイマジネーションが不十分だと、
言うコトを聞いてくれない場合があるので、暴走してしまうのだ。
「ま、まさか!ジンは正真正銘の召喚獣…水龍よりも強い大魔獣だよ!」
けど・・・
「…昔。大陸の一部を沈没させたり、大暴れしていたから…姉様と一緒に、本当に苦労して倒して。宿したんだから…」
「・・・そっか。それなら・・・」
・・・アミちゃんの話を聞く限り、契約は“なされた”と
考えた方がよさそうだ。でも、だとすると・・・
「…無限に近い魔力を持つ。魔族のアミですら。このあり様…。…人間に扱える魔法じゃ。ないわ…」
・・・ナニソレ?
ドユコト?
「…ほ、ほんとだよ…」
「・・・う?」
声の方をみると・・・
「…ジ、ジンは。ボクの魔力を今でも狙っているの…」
涙を溜めたアミちゃんが・・・
「な、何度よびかけても…か、還って。…く、くれないの…」
「アミちゃん…よ、よしよし…」
・・・ティシアに慰められながら。
「こ、こわい。よぉ…っ…」
ポロポロと大粒の涙を落としていたのだった・・・
・・・
・・
・
…
……
………
…
……
………
…
……
………
「おぅええ゛~…えほっ、がほっ…」
「っ………」
ヘドロの海に沈む2つの青は。
生き物であって。生き物じゃなかった…
「ごほっ…ぶふっ…ぐ、ぐえ゛え゛~…」
ドロドロとした灰色の水
原形をとどめない浮遊物
油が浮き、不快に泡立つ水面…
「ぶほっ…ごっ…ぶえぇぇ~っ」
外界から遮断された【中庭の部屋】の水は腐りきっており、
嗅いだだけで吐き気をもよおすほどの、ヒドイ悪臭がした…
「ぶふっ…ごほっ、ごほっ…」
…【牢屋部屋】に入れて。
釣り上げたソレは
「がはっ…はぁ、はぁ、はぁ…」
青くて
深くて
身の毛もよだつ
「はぁ~………ゔっ、ごほっ…ごぶっ…」
溟海の王だった…
………
……
…
………
……
…
………
……
…
・
・・
・・・
・・・夕食後も
私たちは、食堂でのお喋りを続けていた・・・
「・・・」
術者の呼びかけに応えず
魔力を吸い続ける召喚獣。か・・・
「…おい。フォニ。」
「・・・う?」
「そんな召喚獣…いるのか?」
「・・・」
ゲオ様の
その質問への答えは・・・
「・・・召喚獣には自由意志がある。例えば・・・私の召喚獣。水龍のツィーアンとツィーウーは。今のところ私の言うことを聞いてくれているけど・・・召喚中にダメージを負ったり。私のコトが気に入らなかったり。飽きちゃったりしたら。自分達の意思で湖に還ることもできる。」
「…案外。緩い繋がりなんだな?」
「・・・精霊の性格や意思の強さによると思うけど・・・水龍に関して言えば。“使役”している。と、言うより。“手伝って”もらっている。っていったところかな?」
「ぼくのエウロスやエオリカも。そんな感じだね!」
「…ボクのギロチンはナンも言わん。」
リブラリアの召喚獣は個性豊かだ。
ターン制ゲームのように。一発ドーンッ!!と撃って還っちゃう子もいれば、
ヒュドラのように。ず〜っと側に居たがる子もいる。
基本的には術者の意思を尊重してくれるけど・・・
術者の“奴隷”とまでは、言えない。
「・・・だから・・・」
もし、アミちゃんの召喚獣ジンが
とても意思の強い精霊なのだとしたら・・・
「・・・“還らない”という選択をとることは。できるかもしれない・・・」
でも、ココにはひとつ問題がある。
ソレは・・・
「…で、でも!ソレは魔力があれば…と、いう。話ですよね!?」
「・・・ん・・・」
ローズさんが言った通り・・・
召喚獣が顕現し続ける為には“魔力”が必要だ。
固有魔術を行使したり、攻撃したりする時は“もちろん”だけど。
召喚“された”召喚獣は、
“ただ存在している”だけでも魔力を消費し続ける。
フルートや私が必要な時以外、ロワノワールやエオリカちゃんを(面倒でも)毎回逆召喚しているのはこの為だし、
ルクスやフルートがギロチンやエウロスを(用がない時は)手元に置いておかないのも、魔力消費を抑えるためだ。
(召喚獣はその身に魔力が残っている限り、顕現し続けることができる。でも、術者から大きく離れると魔力を補給できなくなるので、いつか還ってしまう。≪ちなみに、この時の召喚獣はスリープモードみたいな状態なので、喚べばスグに応えてくれる。≫・・・それなら。手元におきながら魔力供給しなければいいんじゃない?というと。その通りなんだけど・・・
魔力が切れ始めた召喚獣は。「おなかへた・・・」といいながら段々元気がなくなり。更に魔力が減ると形を保持でなくなり、ボロボロと崩れ始める。見ていて切ない・・・)
そして今、
いちばん大事なポイントは・・・
「…召喚獣の意思で魔力補給…それも、術者“の”を奪う…なんて。できないだろう?」
「・・・ん。そのはず。なんだけど・・・」
ルクスが言ったコトだ。
親鳥がいないと卵は産まれないし、
親が食事を与えないと、子供は生きていけない。
術者と召喚獣の関係は。“そういう”モノだ・・・
「…でも。ジンは今この瞬間もアミの魔力を吸い取ろうとしている…」
「・・・ソレはもう。召喚獣ではないのでは?」
私のその質問に。
「…わ。分からない。よ…」
ティシアの隣で、ミルクティーのカップで
両手を温めていたアミちゃんが呟いた・・・
「…呪いかな?ね様?」
彼女を心配したティシアの問いには
「・・・分からない・・・」
治癒魔法で分かるかもしれないけど・・・
現状では、「分からない」としか答えられない。
結局・・・議論したところで。
調べてみない事には、答えなんて得られないのだ・・・
「…アミ…」
「どしよ・・・」と、悩んでいると。
カルマート様がふと口を開き・・・
「…自分で創った魔法でしょ。責任持ちなさい。“分からない”なんて許されない…」
「…うぅぅ…そ、そんな事言われても…」
アミちゃんと・・・
「…【溟王】の名が。聞いて呆れる…」
「うぅうぅ~…」
「・・・う?」
今の会話・・・
「・・・自分で創った?」
「まほー…を?」
ティシアと顔を見合わせ
首をかしげると・・・
「…そう聞こえましたね?」
「シュシュもです…」
「そ、そう…だね…」
「…いや。まさか…」
「…んなワケあるか。」
他の皆も・・・
「…」
すると、
カルマート様が
「…アミは。水属性魔法の執筆者よ…」
「・・・しっぴつしゃ?」
「…創始者…発見者と言えば分かる…?」
「・・・」
まさか・・・
「・・・魔法を・・・編んだ人。という、事ですか・・・?」
私のその言葉に
「…」
カルマート様は・・・
「…それでいい。リブラリアに綴られている水魔法はすべて。アミの瞳に見いだされ。喉から生まれた…」
・・・そう、
「・・・はい?」
唱えたのだった・・・




