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Chapter 017_大図書館のヒミツ

挿絵(By みてみん)


「…テー。離れるなよ…」

「…ん、んぅ…」


3階に上がって来たの…



「…妹ちゃん。ぼくとゲオ君の後ろにね。油断だけはしないでね…」

「分かったの…」


時刻は、夜…


茜色だった海は暗い群青に染まり。

ローソクが灯された図書館は…



『…』


…お、お化けかナニカが

出てきちゃいそうなフーイキで…



「ん…っ…ゲ、ゲオしゃま…」


静かな図書館は、いつも以上に静かで。怖くて。

ゲオ様にくっついて、歩いていたの…



『…、…パサッ…』


そして…



「!」


…音が!?

ハッキリと…



「…い、いまの音っ」


2人に声をかけると…



「…」


ゲオ様に…



「う?」


…目配せされて?



「しー…」


フルート君の仕草に!



「!」


慌てて()()()に手を当てると…



「…はぁっ…」

「ご、ごめ…」

「…い、いいから。妹ちゃん…」

「っ!…『コクコク…』」


…なんて。

2人とやり取りすると…



「…」


再び、姿勢を低くし

真剣な表情で前を向いたゲオ様は…



「…テー…」


太い腕で



「ん、んぅ…」


テーを下がらせて…



『スーッ…』


いつも使っている“剣”…じゃ、なくて。

腰にさしているナイフを鞘から抜いて…



『シュル……チッ…』


フルート君は弓矢を手にして。

矢を()がえて…



「…妹ちゃん。君は…」

「…テ、(テー)も行くのっ」


フルート君の言葉を遮って…

ね様から渡された…“お祖父様からの短剣”を手にした私は



『…気をつけるんだぞ。』

『ん、んぅ!』


ゲオ様の言葉にうなづき、

短剣の柄を『ギュッ』と握って



『…オレが先に行く。チビは少し離れてフォローを頼む。』

『…り…』

『…テー。お前はチビのフォローだ。…できるな?』

『ん、んぅ!』


『…頼んだぞ。』

『『こくっ…』』


先を行くゲオ様を見送り。


『ちょいちょい…』と、

指を動かしたフルート君に



「…」


無言で同意して。

くっ付くくらい(そば)に寄って…



『とくとくとく…』


と、

タイコを打つお胸に手を当てながら



「すー…はぁ〜…」


深呼吸を…いっかい。



「ん…」


そして、



「…」


いつの間にか先に進んで

無言で振りかえっていたフルート君に



「!」


慌てて追いつき、




「…」

『『こくっ…』』


ゲオ様の後を

静かに追いかけた…












「…」


そして…



『パサ…』


音…本のページを捲っているような

紙の擦れる音…に近づくと、



「…」

「「…」」


ゲオ様は背中で

私とフルート君を押し止め



「…」


そぉっ…っと、

棚の向こうを覗き込み…



「…、」


…次の瞬間!?



『っ!?』


急に、

顔を引き戻した!?



「なになに!?お化けでもいたの!?」


と言うつもりで。


フルート君にしがみつきながら

ゲオ様に視線を送ると



「…、、、っ!」


手を伸ばして。

私とフルート君に「…ソコにいろっ!」


と、指示を出した。



「「…?」」


フルート君と顔を見合わせたアト…



「「…、」」


ふたたび、ゲオ様の方を見ると…



『…、…!…、…、っ!』


ゲオ様はジェスチャーと口パクで、



『こくっ…』


私たちに指示を出して…



「「「…」」」


…無音の深呼吸をしてから



『『『3…』』』


ゲオ様の指先が、



『『『…2…』』』


(タイミング)を刻み…



『『『…いちっ』』』



次の瞬間!!



『ダンッ!』


…と、

ゲオ様の足が床を踏み込み!



『ビキッ!!』


…と、

フルート君の弓が引き絞られ!



「えいっ!!」


…と、

短剣をギュッと握って、飛び込んで!



「「動くなっ!!!」」

「うっ、うごくなぁっ!」


ゲオ様はナイフを!

フルート君は矢を!!


私の短剣…は、ちょっと

遅れちゃったけど!!



「っ!?」


“音”に向かって

突きつけた!!


………

……




















……

………



……

………



……

………



…はじめ。

私は彼が怖かった。



アレはもう。1万年くらい昔のコト…

思い付きで始めた【お部屋】の整理のさい中。



「…あ。れ…?」


“噴水”を造ろうとしたら失敗して…水没させてしまい。

そのまま放置していた【中庭のお部屋】が解体できなく

なっていた…



「…しかた。ない…」


中庭のお部屋は外から水を取り入れていたから…

海の生き物が紛れているのだろうと思った私が


「…お魚。捕まえなきゃ…」くらいの意気込みで

扉を開けたら…



「…」

「っ!?!?」


海の底より湧き出た【青】が。



『コポコポコポ…』


(ほの)暗く(にご)った溟海(めいかい)から…私を



『じぃっ…』


と………



『ゴポンッ…』



………

……



………

……



………

……






















・・

・・・



「…なんで。捕まっているの…?」

「カ、カルマートォ!」


カルマート様との話の途中で音がしたので。

“彼女のドア”を潜って上の階へ行ってみると・・・



「・・・う?」


真っ白な長髪を清楚な・・・き、着物!? に、垂らし。


髪のように滑らかな“片方だけ”の翼を背負った

女の子が・・・



「…、」

「やぁ、マシェリー…」


ゲオ様に剣を

フルートに(やじり)を突きつけられ、



「…ね様!」

「・・・う、うん。それより・・・ナニコレ?どういう状況?」


そしてティシアに

見守られながら・・・



「っ…、、…」


細い体を抱きしめ、ぶるぶる震え、

ポロポロ泣いていたのだった・・・



「…んぅとねぇ。分かんない!」

「・・・う?」


駆け寄って来たティシアを抱きとめ、


「お勉強してたら物音がしたから。何だろうね?って、来てみたら…」

「…見知らぬコイツが。床に本を並べていてな…」

「あまり害はなさそうだったけど…ほら。他に人が居るなんて聞いてなかったろ?侵入者かと思って捕まえたんだよ。いちおう。ね…」


3人の話を聞いていると・・



「…アミ…」


横にいたカルマート様が・・・



「…お客様がいる間は。本棚に来ない約束でしょ…?」

「…ご、ごめん…ごめんなさいっ。ごめんなさい…」


カルマート様に声をかけられた・・・青い瞳を(うる)ませたその子は

刃に怯えながら、震える手をカルマート様に向けた・・・



「・・・2人とも・・・」


と、とりあえず

ココは・・・



「・・・害はなさそうだから。“納めて”あげて・・・」


大図書館に他にヒトが居るなんて聞いてない。

ゲオ様とフルートが不審に思い、警戒したのは仕方ないだろう。


でも・・・

どうやら、カルマート様とは顔見知りのようだ。

怖がらせるのは可哀想・・・



「だね…」

「…確かにな。」


納得してくれた2人が

刃を納めると・・・



「カルマァ〜トォ〜!!」


・・・と。

彼女はカルマート様に駆け寄り



「怖かったよぉ〜!!」


抱き着いて。

わんわん泣き出したのだった・・・



「…はぁっ~…」

「・・・え、えぇと・・・カ、カルマート様?その子は・・・」


女の子は・・・ちょ、ちょっと。

まだ、お話しできそうにないので。


彼女に抱きつかれているカルマート様

(カルマート様は彼女をなだめる気が無いらしい。抱きつかれているけど、

抱き返してはいない・・・)

に、事情を求めると・・・



「…この子はアミ。今日までヒミツにしてて。ごめんね…」

「・・・い、いえ・・・でも。全然気づきませんでした・・・」


シュシュが何かを感じ取ったり、

カルマート様ひとりには広すぎる畑や田んぼが存在していたり・・・


・・・確かに、違和感が無いわけでもなかった。


でも、他のヒトが居るなんてゼンゼン・・・



「…私の魔法は。モノを隠すのに最適だから…」

「・・・」


奥の深い魔法だなぁ・・・



「…アミ。自己紹介なさい…。…アナタも。彼女にお願いがあるんでしょ…?」

「あぁ〜ん…あぁ~んっ!」

「…」


泣き続けるアミちゃんを見下ろしたカルマート様は・・・



「…はぁ〜…。」


無表情で、ため息1つ。

そして・・・



「…コレの名は。アミ・シアリア・メフィスト=アオンという…。…“こんな”だけど。コレでも最高位の魔族…」

「…魔族だとっ!?」

「…うん。魔族…」

「…悪魔さんなの?」

「…【溟王】の。異名を持つ…」

「“めーおう”って…なんです?」

「・・・“溟”という言葉には・・・薄昏(うすぐら)くて底が見えない、果てしない海。という意味がある。」

「なんか…す、凄そうですね…」


どちらかと言えば儚げなアミちゃんが・・・



「あぁ〜ん、あぁ~んっ…!」

「・・・」


“溟”の“王”・・・?



「…そうは見えんな。」

「そ、そう…だね。こんな子に。ナゼそんな名が…?」


本人には悪い(?)けど、

私も同意・・・



「…」


・・・すると。

涙を流すアミちゃんに抱き着かれたままのカルマート様が・・・



「…説明するから食堂へ行こう。ご飯を食べながら話そう…」



・・・

・・























……

………



……

………



……

………



「…っ!?まっ…」

『ダアァァーンッ!!』


私は、

勢いに任せて扉を閉めた。



「っ!」

『バァンッ!』


「っ、っ!!」

『ドゴォンッ!!』


大図書館の魔法を駆使して。

2枚、3枚…と。扉を生み出し。


“部屋”を

“部屋”に


閉じ込めて…



「はぁ、はぁ、はぁ…っ」

『ダアァンッッ!!』


…最終的に。

【中庭のお部屋】を8重の扉の底に沈めた…



「ふぅ、ふぅ、ふぅ………」


…それでも…



『ドドドドドド…』


…この胸は

鐘を止めてくれなかった…



「っ…、っ…、っ…、、、」


苦しくて…胸を押さえながら

やっとの思いで私室になだれ込んだ私は…



「っ…」


…生まれて初めて経験した“ホンモノ”の恐怖に(おのの)きながら



「…っ」

『ガチャンッ!!』


私室と…



「…ひっ…」

『バァンッ!!』


…寝室にまで。

鍵をかけて…



「kゅぅっ…っ!」



ベッドに飛び込み…そのまま。

8年くらい。


シーツに包まれて過ごした…



「…っ…っっ…」


…胸の痛みと。

どうすればいいのか分からない不安…


に、逃げ出して。

叫びたくなるような恐怖と焦燥(しょうそう)に侵されて…



「ひっ…っ…」


“部屋を生み出し、扉で仕切り、鍵をかける”以外…


壊すことも。吐き出すこともできない

自分の能力に絶望しながら…



「っ。…、た…て…っっ…。…さまっ……まぁ…っ。。。…」


…200年くらい。

ビクビクとして過ごした…

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