Chapter 011_夜は東に、日は西に①
あけおめ ことにょろっ!!
2024年 初回の投稿ですっ!!
どうぞー↓
・・・夜の大図書館は意外なほど明るい。
『…ポッ』
壁や棚の合間にに燭台(ロウソク・スタンドだよ)が並べられており、
人が近づくと自動的に火が灯るからだ。
『ジュ…』
・・・しかも、離れると消える“感応式”
「・・・なんてハイテクなんだろう!魔道具かな?」
と思って。触ったコトもあったけど、
灯火はときどき、リアルに『パチッ…』と爆ぜるのに
熱くないし、蝋も溶け出さない。
そして、
お財布にも環境にも優しい“感応式”
火魔法第2階位【鬼火魔法】以上に高性能な超魔法である。
さすが司書様。
ズルい・・・
「…み?」
・・・なんて。
「・・・う?」
「…どうしたの?シュシュちゃん…」
「いま…ふと、海の匂いがしたです…」
そうこう
考えているうちに・・・
「…海の匂いだ?」
「・・・んふふっ。私達の周りは、ぜーんぶ。海だからね・・・」
「そう…かも。しれないのです…。…あ!そ、それよりご主人様!教えてもらった、3階。37番棚はコチラですよ!」
「・・・ん!」
カルマート様が教えてくれた本棚にたどり着いたようだ・・・
「・・・ん・・・」
「下から2段目。左から8冊目というと…」
「コレなのです!」
ローズさんが魔法の燭台で照らし、
シュシュが引っこ抜いたその本は
「…タイトルもないし…ボロだな。」
「・・・【大図書館の魔法】の効果で“出版済”の本が収蔵される場合。その装丁は、原書と同じになるらしい・・・」
「つまり。表紙も背表紙にも何も書かれていない。真っ黒でボロボロなこの姿が…」
「・・・この本の。本来の姿ということ・・・」
7,080年と少し前に出版された本だそうだ・・・
「…変わってんな。」
この本は、
【黒の物語】のモデルとなった“人間の女の子の日記”を纏めた小説だそうだ。
「…だが。【黒の物語】の主人公が…実在していたにしても。アドゥステトニア大陸出身だったんだろう?なんで、その原作の作家はヴェルム・ウェルム大陸に住む魔族なんだ?」
「・・・そんなの。読んでみないと分かんないよ・・・」
「…それもそうか…」
“日記”というだけあって。読みやすい言葉で綴られているから。
言語学習の最初に読むにはモッテコイ・・・だ、そうだ。
けど・・・
「・・・それじゃあ。」
・・・どうしてカルマート様は、この物語を私に勧めたのだろう?
1億3,000万冊もの本がある大図書館だ。
他にも【魔神語】の本は沢山あったハズ。
“無関係じゃない”・・・と、言っていたけど。
その言葉の・・・
「さっそく・・・」
・・・真意は?
「ストップです!」
そのとき
「・・・う?」
斜め後ろから伸びた手が、
本の表紙に載せられて・・・
「…お嬢様。もう…お休みの時間。ですよ?」
本を取り上げ、胸に抱えたローズさんが。
優しい声で私に告げた
「・・・まだ・・・」
まだ早い時間でしょ?
そう言おうとした私の
「…いいえ!」
瞳の前に・・・
「…ご覧下さいお嬢様!時計の針は午後9:01を指しております!乙女は夢を見る時間ですよ!」
「・・・もうちょっ「だーめーでーすー!」t・・・」
私はもう、成人しているし・・・なんなら、
もうスグ17歳になるケド
ローズさんは、よっぽどのコトがない限り
夜更かしを許してくれない。
「御髪もお寝間着も。まだではないですか!」
きっと、本当なら本探し自体、
行かせたく無かったのだろう。
「館内までは貸し出し可…と、伺っております。客間部屋に持っていきましょうね…」
ローズさんのことだから・・・
強く言えば許してくれるに違いない。
でも・・・
「・・・分かったの・・・」
・・・誰よりも私を心配してくれる彼女を
「はい!」
裏切ることなんて、できない
「ご主人様!ご本を持つですよ!」
「・・・ありがと。シュシュ」
ローズさんからシュシュへ移った本を
瞳の隅に入れて
「…ヤレ、ヤレ。」
「・・・んふふっ。ありがと。」
さり気なく差し出された
ルクスの手を取って
『…』
背中で傅くローズさんの気配を背に
「コッチですよ!」
「・・・ん!」
贅沢な、海の寝床へ
向かったのだった・・・
・・・
・・
・
…
……
………
…
……
………
…
……
………
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
魔王城・・・白亜の【クリム・クルム城】は
“魔の城”と呼ぶにはあまりにも美しく、荘厳なお城だった。
王城を包む広大な【ユーラ・カーラ湖】は波もなく。
周囲の丘は、とりどりの花で埋め尽くされていた。
そして、王城を取り囲む城下街は…私達のせいで、兵士で満ち溢れていたものの…巨大な建物が並ぶ、立派なモノだった。
世が世なら、賑わいに満ちていたコトだろう・・・
【魔国 シアリア】は、まるで。
“前の物語”で読んだ。お伽噺の世界のように
美しかった・・・
「…ドゥーチェ殿。かような事…もう、止めにしようぞ…」
【魔王】と呼ぶには可憐過ぎる彼女…【カエン】は
白亜の城に似合わない“壮麗な着物”を纏い、私の前に現れた
見た目は私と、年の頃も同じ・・・けれど、
エルフと同じ【不老】で、
ついでに【不死】とのコトだから。
“年齢”なんてモノは。
なんの役にも立たないけれど・・・
「はぁ、はぁ・・・はぁ〜・・・」
「…この戦は花のエルフが始めたモノ。…まして。黒い雨も止んだ今では何の意味もない…耳長共の意地とプライドを満たすためダケの…不毛な諍いに過ぎない。…かような。下らぬコトの為に。ぬしら、彼の地の人間が血を流す必要など無いのだ。もう、止めにしようぞ…」
エルフに巻き込まれた。コノ戦争・・・
そこには、大義も何も無かった。
戦争が始まってスグは、魔族と現地人間の罠や大量破壊兵器・・・いや、魔法・・・による大殺戮など。エルフ達にも同情の余地があったらしい。
けれど、それも今は昔。
エルフだって同じ事をしている・・・ナンなら、
もっと酷いこともしているではないか。
魔王城に来るまでの間
何十という街を焼き。串刺しにし。大地へ沈め。
斬り刻み。吹き飛ばし。水没させた・・・
・・・主人の命を受けて唱えた「私」は
どうなる?
「貴殿には…此方にも…。戦う理由など無い。ゆえに…」
「っ・・・」
けれど…
「・・・理由なら。ある・・・」
「…な、なんじゃと…?め、命令され…」
「・・・そうよ!命令されたから・・・それが理由よ!」
私は【隷属魔法】で縛られた奴隷だ。
拒否権など無い。
「それは…な、ならば!此方の術者が解呪を…」
けれど・・・
たとえ、主人の命令が無かったとしても
私は魔王討伐を志しただろう。
「貴女は・・・貴女は何も分かってない!!」
「な、なにを…」
「そもそも!どうして私が奴隷に身を“やつした”か、分かる!?アドゥステトニアに攻め込んできた魔王軍の部隊・・・あ、貴女の部下が父様を殺したからよ!だから私は。奴隷になるしかなかった!」
私の家はエデラ(作者注:現在のエディアラ王国・内陸部・・・王都エディステラより東の“地域”のコトです。現代では、この地名は使われていません。)奥地の田舎。両親は貧しい農奴だった・・・
魔族軍に対抗すべく領主様が集めた兵のひとりが
私の父様・・・
「なっ!?…そ、それは!」
「・・・アノ侵略は貴女の命令じゃなかった・・・とか。勢い余った・・・人間によって“契約させられた”部下の暴走だったとか!そんなコトはどうでもいいの!・・・重要なのは、貴方の部下が父様を殺して!私と母様は身売りするしか無かったってこと!!」
「それは…」
「貧しい生活だったけど・・・それでも私は幸せだった!貴女達が現れるまでは幸せだった!!」
「…」
「昼間は喉が枯れるまで昼は唄い。夜は意識を失うまで弄ばれる・・・。・・・そんな生活を何年も続けてきた私の気持ちがわかる!?綺麗で平和で安全で清潔な。夢のようなお城で護られていたアナタに、それが分かるの!?」
「……」
「私は・・・私だけじゃない!!オマエラのせいで私の故郷には。私のようなヒトが何千何万人と生まれたんだ!!全部オマエラのせいだ!!」
「………」
『スッ…』・・・と。
主人に渡された。ドワーフが叩いたという“タマハガネの真剣”・・・
発動子である【妖刀(櫻)】・・・を構えた私は
「・・・【不死】だと言うなら。永遠に苦しめ。魔王・・・」
唱えた・・・
林檎です。
誤字と、ルビミス見つけたので修正しました!
・・・よろしくね。
(2024/01/14 10:55)
もっかい!(2024/07/06 22:20)




