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Chapter 010_不思議の海の大図書館

【大図書館の魔法】は便利だ。

いい魔法を“選べた”と思う。


ただの道楽…とはいえ、大事な“食事”を作る為の【キッチン部屋】も。


お魚ちゃんを捕まえるための【釣り場部屋】も。


海の幸を採るための【磯部屋】も。


全部、この魔法で造った

大図書館の“部屋”のひとつひとつだ。


…もっとも。“図書館”としての機能に必要な施設じゃないから

“来館者”が勝手に入ってこられないように扉を造っていない。


久しぶりの来館者である“あの子”たちも…

“アノコト”が見つかった大変…かも。しれないので…


【客間部屋】以外の部屋は、

頼まれた時しか開けていない。



特に黒目のあの子は要注意だ。

3日経った今も、2体もの召喚獣を維持している…

治癒魔法まで宿している。


【風のエルフ】の…哲学者(フィロソフィー)の男の子を

小さなお尻に敷いているし、


迫力満点のオジサマに意見もできる…



協力してくれれば嬉しいけど…

ソウで無いなら、これほど恐ろしいコトはない。


だから、アノコトはまだヒミツ。

…信頼に足ると。分かるまではヒミツ…



………

……





















・・

・・・



『お、おい!年上のアネマイ?ごKiζんうふる&4gΛますかー!?』


図書館生活2日目



「・・・ティシア。おそらく・・・「お、お姉様!ご機嫌麗しゅうございますか?」・・・って。言おうとした?」

「…ん、んぅ。…せ、正解!?」

「・・・不正解。」

「あうぅ…」


せっかく、知の殿堂【大図書館】に滞在しているのに

遊んでいては勿体ない!


カルマート様に資料を借りた私達は、社会情勢のお勉強と同時に

ヴェルム・ウェルム大陸の第1公用語だという

【古代楓語】の学習を始めた。



「・・・もっかいね。」

「うぎゅぅ…」


「え、えぇとぉ…『ご、ご機嫌ウルワシごゼーますかぁ』…?」

「…侍女君は惜しい。…『ご機嫌“麗しゅう”ございますか』。よ…」

「ご…『ご、ご機嫌麗しゅうございますか』…」


「…『ゴミクズございますか』?」

「…ゲ、ゲオ君。君の間違え方は誤解を生みそうだね。早めに覚えた方がいい…」


現状、

【古代楓語】を宿しているのは私とフルートの2人だけ。


けれど、

耳のよいシュシュは1回で覚えるし、

頭の良いルクスもスグに習得できた。


そこで、

私、フルート。そして、協力してくれるというカルマート様の3人で。

残り3人のペースに合わせた、個別指導(チートな2人は自習)を

行っているというワケだ。



「・・・ティシアは。まず、単語を覚えないとね・・・」

「はぁ〜い…」


「…侍女君は覚えが早い。次は文法を勉強しよう…」

「よ、よろしくお願いします。カルマート様!」


「ゲオ君は()ず、古代楓語特有の発声方法を身に付けないとね…」

「…はぁ〜。頼む…」



「…『苦労してんな…』」

「にゅふふふっ!『皆様がんばっ!』なのですよ!」



・・・

・・





















……

………



大図書館の司書に選ばれた私は、当然。

“楓魔法”に高い適性を持っている。


けれど、自分で行使した【大図書館の魔法】の効果で

基本的に図書館内で【大図書館の魔法】以外の魔法を

発現することはできない。


…もっとも。楓魔法は日常生活で役に立たないし、

それ以外の属性魔法は【製紙魔法】くらいしか宿していないから。

あまり影響ないんだけどね…


それはそうと、司書である私は図書館が存続している限り死ぬことはない。


何も食べなくてもお腹は空かないし。

“年単位”で読書し続けても、眠くならない。



でも、だからこそ。


毎日決まった時間に目を覚まして

ちゃんと食事を作って…食べて。

夜はベッドに潜ることにしているの。



「私はヒトなんだ!」って…そのコトを

忘れないために…



………

……





















・・

・・・



「フィーッシュッ!!」


図書館生活5日目



「やったか!?」

「がんばれフルート君っ!!」


私達の大図書館生活は


1日の半分を勉強に。


もう半分を

当初の目的である“食料調達”に()てていた。



「…大物。ね…!」

「くっ…お、重っ…わぁっ!?」

「!?お、お嬢様のお食事をとり逃がしたら、タダじゃおきませんからね!…あぁ!ホラ、ルクス!あなたも手伝いなさい!」

「んなぁっ!?なんでボクまで…くそっ!」


エルフは普通、食事を摂るものだけど、

図書館司書であるカルマート様は【大図書館の魔法】の力があるので

お腹が減るコトもないそうだ・・・



「ぐんぬっ!」「…うをりゃあ!!」


「上がったぞ!」

「なにアレェ!?」

「…たぶん。ブリ…」


カルマート様は・・・お腹は減らないけど、それでも。


できるだけ規則正しい生活を送り。

その一環として、食事を欠かさないようにしているそうだ。


朝起きて

朝ご飯を食べて

【部屋】で農業や漁に(いそ)しみ、

お昼ご飯を食べて

読書と本棚の整理をして、

夕ご飯を食べて

お風呂に入って

また読書をして、


そして眠る・・・



「はぁ、はぁ…マ、マシェリー!ホラ見て獲ったよ!君のために!!」

「・・・ん!ありがとフルーt・・・」


『『『『『リュリュー!!』』』』』』

「・・・う?」


・・・そんな生活を

1万2千年も続けてきたそうだ。


来る日も来る日も・・・


図書館が沈んだ日も

世界樹(ユグドラシル)が倒れた日も

一族…純血の影のエルフ…が、滅んだ日も。


ずっと、ずっと

この場所で・・・



「わ、わぁ…。蛇ちゃんが捕まえてきたお魚、フルート君が釣ったお魚よりふた回りくらい大きいね…」

「…たぶん。ホンマグロ…」


「ご主人様、ご主人様!!シュシュも大っきいの捕まえて来たですよ!」

「…お耳君の獲物は…ごめん。ちょっと分からない。…あの角。ユニコーン…?」

「・・・おそらく。“カジキ”という魚かと・・・」

「…へぇ。フォニア君。詳しいんだね…。…綴っておこうかな…」


「・・・マグロにカジキなんて・・・どうやって捕まえたのか、想像もつかない。すごい!すごいよヒュドラ!シュシュ!!」

『『『『『『シャアー///』』』』』

「うにゃぁ〜ん///」


白金色に輝く龍の姿も

孤独なゴーレムの物語も

不思議な図書館が沈む静かなブルーホールの景観も


彼女にとっては活字の向こう。

綴られた世界の向こう側・・・



「…マ、マシェ…リ…」

「…フルート君も。すごいすごい…よしよし…」

「い、妹ちゃーん…」

「わきゃあ!?」


・・・こんな孤独が

他にあるだろうか・・・?



・・・

・・





















……

………



いつか読んだ本に“不幸は絶対的”

という言葉があった。


…そうかしら?



私は、ここでの生活に満足してる。


何処かにいるはずの作者という名の“看守”に監視されながら

無言の本たちに奉仕し、

誰も来ない“開かれた”牢獄で

終わらない終身刑に服役できて


シアワセよ?

決して不幸じゃない。



…あなたはどうかしら?

私は。どうかしら…



………

……





















・・

・・・



「・・・」


図書館生活7日目

時刻は夜・・・



「…フォニア君。こんばんは…」


ゲオ様とフルートに

寝息を立てる妹を頼み。


私は自由に使って良いと言われた閲覧室で

読書に励んでいた・・・



「・・・カルマート様。こんばんは。ご機嫌麗しゅうございますか?」

「…うん…」


何の前触れもなく彼女が現れるのは

いつものこと・・・


数冊の本を抱えたカルマート様は

私の斜め前に座り。


挨拶以外、ひと(こと)も喋らずに

ページをめくり始めた・・・



「・・・」

「…」

「・・・」

「…」


「…カルマート様。お嬢様にお出ししたものですが、よろしければ…。ブレンドティーに葡萄の蒸留酒を垂らしたものです…」

「…ありがとう。じじょ…ローズ君…」

「っ…こ、光栄に存じます!」






「・・・」

「…」

「・・・」

「…」






「・・・んんぅ・・・さむ・・・」

「!…ご主人様、ご主人様。シュシュはネムネムなのですよ…。お膝をお借りしても、よろしいでしょうか?」

「・・・ぅ・・・んふふっ。ありがとシュシュ。・・・おいで・・・」

「にゃんですよ!…【変化】!」

「・・・んふふふっ!・・・はぁ・・・小ぎつねの“ぬいぐるみ”に変化したシュシュ。あったかい・・・モフモフ///」

「にゅふふふふ…」






「・・・」

「…」

「・・・」

「…」







「・・・」

「…ふぅ〜…」

『カチャンッ…』

「・・・」

「…」






「・・・」

「…」

「・・・」

「…フォニアくん…」

「・・・はい・・・?」

「…【魔神語】…覚えられた?」

「・・・そう・・・ですね。8割くらいは・・・」

「…もう?さすが…」

「・・・んふふっ。ありがとうございます・・・」


【魔神語】・・・というのは、

【魔族】が使う言葉のことだ。


コレから向うヴェルム・ウェルム大陸は、

魔族が暮らしているから【魔族大陸】なんて

呼ばれるコトもあるけど、


人間やエルフなど、他の種族も暮らしている。



でも・・・私達が進む道程はソノほぼ全域が、大陸で最大勢力を誇る

花の(フラゥル)エルフ】が治める土地なので


【魔族】の皆様と話す機会は、ほぼ無いと考えられる。



けど、せっかくの機会なので

勉強しているのだ・・・



「・・・ところで、この魔神語ですが・・・ひょっとして。ベースは人間語と同じ・・・いえ。人間語の起源が魔神語・・・ですか?」

「…そう。思う…?」

「・・・敬語表現とか。副詞の使い方とか。ほとんど同じなので・・・」

「…正解…」

「・・・んふふっ。当たりました・・・」

「…その昔。【天空回廊】を通ってやって来たアドゥステトニア大陸の人間が【魔神語】をお手本に作った言葉が。【人間語】…」

「・・・そ・・・そ。そうだったのですか・・・」

「…」

「・・・」

「…」

「・・・」


カルマート様は・・・無言になって。

私の顔をしばらく見つめてから・・・



「…魔神語…」

「・・・う?」

「…魔神語を読めるようになったのなら。魔神語の物語を読んでみるのもいいかもしれない…」


・・・そんな提案を

してくれた・・・



「・・・物語・・・ですか・・・」


魔神語の学習も、ある程度進んだ。


だから・・・カルマート様のいう通り、

より実践的に物語を読むというのも

手かもしれない・・・



「…【夜は東に、日は西に】という本を読むといい。…3階の37番棚。下から2段目左から8冊目…」

「・・・【夜は東に、日は西に】・・・?」


「…フォニア君。君に…無関係な話じゃ。無いから…」

「・・・うぅ?無関係じゃ・・・ない?」


「…【黒の物語】は…知ってる…?」

「・・・は、はい。お伽噺の・・・?」



「…【夜は東に、日は西に】…は。



【黒の物語】の“原作”よ…」

林檎です。


そんなわけで!

本小説の“2023年の投稿”は本日が最後になります!!


・・・今日までいろいろありましたが、

どうにかこうにか、投稿を絶やすことなく続けることができました!!


コレも何も、皆様の応援のおかげです!


重ね重ね。御礼を・・・



・・・もちろん来年も

この小説は続きますからねっ!!


どうぞ、よろしくお願いいたします!!!


2024年が皆様にとって、

素晴らしい出会いと出来事が、重ね合わせで相乗効果を生むような・・・

そんな、幸運な1年になることを

心よりお祈り申し上げております。


また来年も、その次もっ!



・・・よろしくねっ!!

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