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Chapter 005_導きのクジラ

『チッ、チッ、チッ…カチッ』


「…お時間となりました。お嬢様…」



きっかり。

1時間後・・・



「・・・シュシュ。魔物は?」


観察を続けたけど、

魔物は身じろぎひとつしな・・・



「ずうっと見ていましたが…ちょっと、お手手(ヒレのコトかな?)を動かした以外。まったく動いてにゃいです…」

「…魔法の気配も無かった。」


・・・いや。

身じろぎひとつ“しか”しなかった・・・



「…魔物の”せい”だろうか…?サメの類も近づいて来なかったな。」

「クラゲさんも、ぜーんぜん!来なかったよ!」

「私も見ませんでした…」


さすがの野生動物も

ココまで魔物に近づく気は無いらしい。


生き物で満ちたブルーホールなのに、その中心は

青い“だけ”の静かな空間だった・・・



「…安全と考えて。いいんじゃないかな…?」


フルートの提案に・・・



「そう…だな…」

「・・・私もそう思う。」


ゲオ様と答え・・・



「そうと決まれば…ご主人様!」

「・・・ん!」


シュシュと手を合わせて!



「「・・・おさかな天国 (なのです)!!」」


リブラリアには生魚を食べる習慣が無いから

お寿司やお刺し身は(ワサビやお醤油も無い)無理だけど・・・


でも、

カルパッチョにフィッシュフライ!

アヒージョにシーフードパスタ!!


あと、それと!



「・・・クジラって。美味しいのかな・・・」


食べごたえありそうなモノが・・・



『ジュルリ・・・』


「…おい。」

「マ、マシェリー…」

「…アレは警戒に値する魔物だ。」

「あ、あははは…」


・・・なんて。

海の幸に胸を膨らませていると






『…』


(とう)のクジラが



『…!』


大きな瞼を



「・・・うぅ!?」


突然開き!?



『…』


海より青い。大きな瞳が

私を・・・



「ご主人様!」


異変にいち早く気付いたシュシュはノータイムで

身を挺するように私に抱き着き



「ったく!!お前が捕食しようとしたせいだぞ!」

「うぅっ!?」


ルクスは剣を抜いて前に躍り出て!



「マシェリ!!」「お嬢!」


フルートはエウロスに

嵐のバリアーを張らせながら




「どうした!?…くっ!」


続いたゲオ様は



「テー!侍女も!!コッチにこいっ!!」

「う、うんっ!!」

「はいっ!!」


クジラの異変に気付き、

ティシアとローズさんを守るように抱え込んだ!



「ご主人様ぁ!」

「くそっ!」

「みんな!固まって!!」


「2人とも…離れるなよ!」

「ぅ、うん!」「はいです!!」



クジラの

突然の反応に


全員の警戒が突沸した



『…』


7人を乗せた星以上に大きなクジラの瞳は

『ジッ…』と


無音で私達を見つめ



「・・・」


このブルーホールより、更に深い



『…』


青い、青い。

その瞳で・・・



「・・・」


私達を・・・



・・・

・・






















緊張の睨み合いのアト・・・



『ゴポポポポォ…』


「にゅ!?」


クジラはゆっくり

大きな泡を吐き出して・・・



『キュゥーイ…』

「・・・う!?」


『クゥー…』

「鳴いて…いる?」


澄んだ・・・高い声で

鳴き声をあげた



「…お耳ちゃん。魔物は何て…」


フルートの言葉に、



「えぇと…」


全員がシュシュに注目すると。

小さな声で・・・



「…じゅ、じゅつ…しゃ…じゅ、術者…?」


唱えた・・・






「・・・う?」「…う?」

「「「「…は?」」」」


・・・術者?











『ゴポポポポ…』

「うぅっ!?」


シュシュの言葉の後・・・



「おいっ!」

「動いたぁ!?」

「お、お嬢様!」「ご主人様!」「ね様ぁ!」


クジラは・・・スグに目を伏せ

・・・回れ右?



「・・・セト!」

『!』


大きなヒレが生んだ波から避けるように。

セトを動かすと・・・



「い、行っちゃっ…た…」


私達には、もう、

見向きもせずに



そのまま・・・




「・・・」


『ゆっ・・・たり』と、

泳いでいってしまった・・・



「…おい。小狐。」

「みぃ…?」


ゲオ様がシュシュに声をかけ・・・



「…術者…と。言っていたな?…もしかして。フォニを指したのか…?」


ゲオ様の質問に、



「えと…」


シュシュは私を見つめ・・・



『・・・こくんっ』



と、

促してあげると・・・



「…にゃん。です…。え、えぇと…そ、そうかもしれませんが…ち、違うかもしれないです。「術者」…という言葉も。そ、“そう”言っている気がしただけで…」

「…“気がした“だと?…ずいぶんあいま…」

「ま、まぁまぁ!魔物の言葉を理解できるのなんて、お耳ちゃんダケなんだから!そんなコト言うもんじゃないよ!小僧!」

「…ちっ………」

「・・・」


私達を観察してひと言

「術者」か・・・



「…どう思われます?お嬢様?」


魔物・・・とはいえ。

全身に沢山の傷を負った、傍目に年老いたあのクジラの瞳には

理性・・・とまで、言えなくとも


確かな知性があるように見えた。



「・・・」


私の・・・あるいは、パーティの誰かの

瞳・・・あるいは魔力に反応した?


でも、攻撃の意志は無いみたいだし・・・



「…どうする?フォニ?」


ゲオ様の言葉に・・・



「・・・・・・」


クジラの。

小さくなった、大きな尾ヒレを見つめ・・・






『コポポポポ…』


「ぅ・・・」


クジラが一瞬。

振り向いた気がして・・・





















「・・・フルート。」

「…なんだい?」

「・・・魔力は・・・」


言い終わる前に



「もぉっちろんっ!…まだまだ行けるよっ!マシェリー!」


帰ってきた笑顔に



「んぅ」


頷いて



「・・・追ってみよう。」


唱えた、私の気まぐれに



「はいっ!」

「にやんですよ!」

「う、うん!」

「り!」

「…ったく!」


秒も置かずに、

みんな頷いてくれて・・・



「…ふっ…」


そして最後に。

ゲオ様も・・・



「…このままにしておくのもナンだろう。距離をとって。慎重に…な。」

「ん!」


・・・唱えた!



・・・

・・
















「何か見えてきたよ!ね様!」


クジラの後を追うと・・・



比較的浅い(水深は・・・2〜30mくらいかな?)、

海の中の“台地”のような場所にたどり着いた



「…アレは…」

「…は、廃墟のように見えるです!」

「廃墟?ま、まさか…」

「エルフの里の遺構(いこう)ですか!?」


焔のドワーフが調査したのは

ブルーホールの縁・・・それも、浅い場所のモノだけだった。



「遺構…といっても。かなり原形をとどめている“っぽい”ね!?」



もちろん。

その情報はナミちゃんにアクセス権が無かった可能性もあるし。

彼女が私達に、秘密にした可能性もある。


ケド・・・



「…場所が場所だ。おそらく未発見だろう…」


・・・状況的に。

ドワーフ達はココまで、たどり着いていない・・・

そう考えるのが、自然だろう。



『ユゥー…』

「にゅ?」


思わぬ発見によそ見をしていると、



「ね様!クジラさん…ナニカ言って。止まっちゃったよ?」


追っていたクジラが小さく鳴いたアト

泳ぐのを止め、



『…』


再びの沈黙を始めたのだった・・・



「お耳ちゃん。今のは…なんて?」

「わ、分からなかったです…」

「…分からない?」

「い、意味を読み取れなかったです。た、ただの“鳴き声”…だと。思いますです…」

「・・・ヒトの。ため息みたいな?」

「そ、そうかもしれないです!」

「…なるほどな。」


「クジラさん。悩んでるのかな?それとも…疲れちゃった?」

「ど、どうでしょうね…?シュシュちゃん。他には何か言ってないの?」

「だんまりです…」

「…呼びかけてみたらどうだ。」



・・・

・・






・・・その後。

ゲオ様の提案でコンタクトを試みるも、

再び瞼を閉じたクジラは、私達の声に一切反応しなかった。



「…どうする?フォニ?」

「・・・」


時刻はお昼前。

今からキャンプに戻っても、

ランチには少し時間がある。



「クジラさん。ぜんぜん反応してくれないね…」

「コレはもう…待っても無駄かもしれないね?」

「…ふわぁ…ねむっ。」

「こ、こらルクス!真面目にやりなさい!!」


それなら・・・



「・・・遺跡をちょっと覗いて。帰ろうか・・・」


折角ここまで来たんだから。ね・・・

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