Chapter 001_パス・パス地峡
9th Theory:沈没図書館編
始まり始りぃ~!!
『ザザァー…ン…』
「うーみぃー!!」
カレント2,187年 星火の月14日 天気は晴れ
「やぁっと、海だぁ!!」
「・・・んふふっ。・・・ずぅっと見えていたのに。ココまで、遠かったもんね!」
「んぅっ!」
モルタレスクを旅立って1ヶ月ちょっと・・・
「わーいわーい!!シュシュちゃーん!遊ぼーよー!!」
「にゃふっ!?え、えぇと…」
「・・・んふふっ。・・・シュシュ。ティシアと遊んであげて。」
「に、にゃんです!…ごれーまいっ、さまぁー!!」
半年以上に及ぶ、
なが〜い砂漠の旅を終えた私たちは
『『キャッキャッ!!』』
「ふふふっ…。ご令妹様。楽しそう…」
「・・・んふふっ。」
「ずっと代わり映えのない、砂漠だったからね…」
海・・・
【パド大陸】と、魔族が住まうという第3の大陸である
【ヴェ厶ル・ウェルム大陸】の境界。
2つ海(東の【アル・アル海】と、西の【高海】)によって、2つの大陸(南の【パド大陸】と、北の【ヴェルム・ウェルム大陸】)が挟まれた大地峡
(※異世界の、南北アメリカを繋いでいる【パナマ地峡】を思い出して!あんな感じの場所だよ!)
【パス・パス地峡】へとやって来た!
「…狐。魔物の警戒は…」
「分かってますでーす!魔物も、魔法の気配もなーいでーすっ!!」
「ゲオ様も、こっちこっちー!!一緒に遊ぼ〜よ〜!!」
「…ふっ、…まったく、」
久しぶりに【砂漠】以外の景色・・・
それも、イキナリ【海】だ!
子供のティシアじゃなくても、嬉しくなってしまう!
しかも、パス・パス地峡は海抜が低いので、
なっがぁ〜・・・っい、
砂浜が続いている!
「久しぶりの海…晴れてよかったですね!」
「・・・ん!!とっても、いい天気!」
日差しは熱くて・・・
「っきゃっ!ぼ、ぼうしっ・・・」
海風も強いけど・・・
「っ…と。…ホラ。」
「あ・・・あ、ありがと。ルクス・・///」
そこがまた・・・ほらっ!
【海】!!って感じで
いいでしょ!?
「マシェリー!…ほら。ぼくらも少し水に浸かろうよぉ!」
エオリカちゃんから降りて、
馬上の私に手を伸ばしたのはフルート。
「・・・も、もぉっ・・・///」
彼ってば、何度言っても
呼び方を直してくれないの・・・恥ずかしいからヤメてって言ってるし、
ソレが引き金となったローズさんとシュシュの襲撃を何度も
経験したはずなのに・・・
「ほらほらぁ!…気持ちいぃよっ!マシェリィ!」
・・・ぜんぜんヤメてくれない。
「・・・はぁ・・・」
だから、もう。諦める事にしたの・・・
でも・・・
アドゥステトニア大陸でも、そのままだと。
変な誤解受けちゃいそうで困るなぁ・・・
「…ねーさーまー!!」
・・・なんて。
考えていたら、
「・・・う?」
「ね様もおいでー!!」
浅瀬でゲオ様を引きずり回していたティシアが。
腕を大きく振って。
私を呼んでいた・・・
「ご主人様ぁー!!」
「ぶはっ…」
「気持ちーよー!!」
その声に・・・
「・・・///」
そして、
夏の鋭い日差しに。
「・・・じゃ、じゃあ・・・」
ソソられるのも、確か。
ティシアやシュシュ(ゲオ様はティシアに手を引かれて
海に『ドボンッ!』)みたいに。泳ぐつもりはないけれど・・・
「・・・ちょ、ちょっと。ダケ・・・///」
足をつけるくらいは・・・い、いい。
かも・・・?
「…ルクス。お嬢様の手を引きなさい。」
私の言葉を耳にした途端『パッ!』と
ロワノワールから跳び降りたローズさんは、
「失礼しますね。お嬢様…」
「・・・ん、んぅ///」
既に私の靴を脱がし終え、
さらに、靴下に取り掛かろうとしていた・・・
「へーへー…っと。」
『フブッ…』
ルクスはルクスで、
ロワノワールの足を止めて飛び降り・・・
「…」
・・・無言で。
さり気なく。
手を差し出してくれて・・・
「・・・あ、ありがと・・・///」
その手をとった私は
「…さ!お嬢様…」
「・・・ん、んぅ///」
裸足で。
ローズさんの肩に1歩目を
「・・・しょっ・・・」
差し出された彼女の両手に2歩目を
「さぁ…」
「・・・ご、ごめんね///」
膝立ちしたフルートの手に3歩目を
「ふふふっ!もっと踏んでいいんだよっ!!」
「へっ、変態っ!!・・・っ///」
彼の膝に4歩目を・・・
「・・・っとぉ・・・」
そして・・・
『ピチュ…』
・・・と、
足先に触れた生暖かい海水に
「ひゃっ///」
驚いて
「ぅ・・・」
バランスを・・・
「「!?」」
・・・でも、
「っ…」
ルクスが上から
手を『グッ』っと引いてくれて、
「よっ」
フルートが下から
脚を『ギュッ』と支えてくれて。
「・・・・・・わ・・・」
声を上げた時には
「…怪我は?」
「・・・だ、だいじょぶ・・・」
「ごめんよマシェリ。痛く…なかったかい?」
「だいじょぶ・・・」
夏の渚は
『ザザァー…ン…』
瞳の前で・・・
「・・・んふっ・・・」
んふふふふっ!
「・・・えいっ!」
「おいっ!?」「あ、ちょっと!」
2人を置いて
砂浜に駆け出した私は
「・・・ヒュドラ!」『ルッ!』
ロワノワールの鞍になっていた
蛇ちゃんを指に絡ませて
「・・・セト!」
『…!』
ロワノワールの背に置いてきた
帽子のお星様を呼び寄せて
「・・・ロワノワール!」
『ヒュハァッ!!』
お馬ちゃんに。
「いい子にしてて!」と、お願をいして
「・・・ローズさんっ!」
「お任せ下さい!」
パラソルを取り出した
薔薇に後を任せて
「っ・・・」
波打ち際で急停止!
『クルッ!』
太陽を背にターン!
「・・・すー!」
お口の前に
両手を添えて!
「・・・2人ともっ!
早く来ないと置いてっちゃうよっ!」
唱え〜るっ!!
・・・
・・
・
…
……
………
「…ゲオ様、ゲオ様。」
「…なんだ?」
「ね様の。アレ…“あざとい”っていうヤツだよね?」
「………ドコでそんな言葉を覚えた?」
「う?ドコでって…ローズさんが貸してくれたショー説で?」
「…あの侍女め…情操教育に悪い奴だ。」
「…う?」
「…その小説には何と書いてあったんだ?…碌でもないコトしか書いてなかったんだろうが…」
「う?…え、えぇと…あざと可愛いく誘って。“ホンバン”?はお預けするのが、賢い女の子の…」
「…テー…」
「…う?」
「………その本は燃やせ。」
「うぅ!?」
………
……
…
・
・・
・・・
「…これでよしっ…と…」
「・・・ありがと。ローズさん。」
夜・・・
「ふふふっ!…お嬢様のオメカシは。私だけに許された無上の悦びでございますから!」
砂漠の装いも今日でおしまい・・・
明日から始まる
【夏の渚で追いかけてコーデ】の準備として、
ネイルを整えてもらった私・・・
「・・・大袈裟だなぁ・・・」
「ソンなことはございません!他のヒトには渡せない、私だけのご褒美でございます!」
「・・・も、もぉ!・・・んふふっ。・・・仕方のない薔薇ちゃんね?」
「お嬢様ぁ…」
次の目的地までは
薄着で過ごす、海岸線の旅が続く・・・
「・・・んふふふっ!・・・それじゃあ・・・魔女の魔法で。貴女を、私のモノにしちゃう!」
「をぉっ!?お、おりょぉひゃまぁ!?」
「・・・私だけの薔薇に、な〜あれっ!・・・えいっ!」
「はうっ!はぁ、はぁ…///…お、お唱えの。通りに…///」
「・・・んふふふふっ!」
楽しい渚の旅ぃ!・・・と、言いたいところだけど
現実は、そんなに甘くない。
人間が過ごしやすい気候・・・と、いうことは。
人間より頑強な魔物にとっては【楽園】という事だ。
砂嵐や熱の心配がいらない一方で、魔物との遭遇を覚悟しないといけない。
しかも場所は
凶悪な海洋性の魔物が住まう海沿い。
さらに、
これから向かう先は未知の大陸【ヴェルム・ウェルム】
さらにさらに!
パス・パス地峡は遮るものがない平原だから、空からの攻撃にも弱い。
「はんにゃぁ~…おじょ…まっ…」
「ロ、ローズ…さん?」
「…はっ!?ご、ご令妹様!?」
「ん…。そ、それより…だいじょ…ぶ?…ね様のマホーに当てられちゃった?」
「だ…も、もちろん大丈夫ですよ!何の問題もございません!」
「…ほんと?」
「本当ですとも!お嬢様から呪を頂いて、元気八百倍でございます!」
「…つまり。手遅れってコトだね…」
明日からの旅は、これまで以上に
厳しいものになるだろう・・・
「…あ、あれ!?お嬢様!何処へ…」
「ご主人様…?」
これからの事・・・
「・・・ゲオ様たちとおしゃべりしてくる。ローズさんとシュシュはティシアをお願いね。・・・ティシア。お着替えさせて貰ったら、いい子にねんねするのよ?」
・・・作戦。
練っておかないとね・・・
「「わかりました(です)…」」
「いってらっしゃい、ね様!…おやーみー!」




