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Chapter 022_ゴーレムは夢をみない

「バイバーイ!」


カレント2,187年 金海の月1日



「また、どうぞー!」


午前5時49分

天気は…快晴



「…」


魔女様とお仲間様は行ってしまった…



「………」


私“たち”を

砂漠に残して………



「…」


お優しい魔女様は「また・・・」と。


「・・・また来るね。」…と、

唱えてくださった…



「…」


…“昔の”主人達が為す術無く滅ぼされ、

あれ程栄えていたモルタレスクの郷を跡形もなく崩したアノ精霊を

理論整然と打ち倒し


あろうことか。その身の糧にさえ、した

“あの”魔女様の事だ。


きっと、去り際の“あの言葉”だって

“唱えた通り”に。してしまう………



「………ノンビリは…して。居られませんね…」



………

……






……

………




「………おや?アレは…」


魔女様を送り出す前…陛下と殿下の薨御(こうぎょ)を確認した。

ヒトが寝静まる深夜の事… 



「遺体……アレは。鞄…?で、しょうか…?」


主人達の遺体を前に途方に暮れていた私の“色無き”瞳が、ふと。

思いもよらぬ物を捉えた…



「中身は………潰れていますが。薬瓶と、解体用具一式…」


陛下や殿下。その他側近と思われる方々の遺品のずっと後ろ…

聖域の入口付近にあった。遺体…と、思われる赤黒い塊。


そして、遺体が羽織っていたと思われる…

ボロボロの白衣…



「この本は…日記。そして、観察記録帳。壊れたモノクル…」


その側に落ちていた遺品を調べてみたところ、

生前“あの方”が持ち歩いていた品々が現れた…



「…間違いありません。この遺体はヴェアーラ様の…」


【ヴェアーラ・フレイム】様…


輝かしくも恐れられていた【ヴェノム工房】のオーベル・マイスター様

(作者注:“複数”のマイスターが居る工房における、

“筆頭”マイスターのコト)


生化学分野においては並ぶもののいない錬金術師と謳われており、

同工房でも数千年ぶりの逸材と評判だった。


家畜の品種改良や病気への対処。そして

“生体合成”の専門家…



「しかし、何故このような場所に…」


モルタレスクでも輝かしい功績を残した4つの工房の

オーベル・マイスター達は

王に次ぐ絶大な権力を持っていた。


…しかし、そうは言っても“専門家”である錬金術師…それも、

生化学が専門のヴェアーラ様が聖域・精霊・秘宝…そして、王位継承

が絡んでいたこの訪問団に「付いて来い」と言われるだろうか…?


…もちろん。

こっそりと付いて来た可能性も無くはない。

だが…



「…ヴェアーラ様は専門外には無頓着であられた。このような場に(ろう)して訪れる方では…」


…なかったハズだが?



「…」


疑問に思った私は、遺品となる彼女の荷物…日記…を

漁る事にした



「いったい、ナゼ…」


“背表紙”を開き



「…ここ。か…」


最後に綴られたページを

読み進めると…



「聖域に近づくに連れて高まる。魔力ポテンシャル…」




「…ソレを利用した…こ、高エネルギー研究施設群!?」




「そ、ソコで研究していた…

べ、べ…ビー………たち?」



「そ、そんなモノが…この坑道に在る。と、いうのですか………?」



………

……





















「…こ、このような場所が………」


聖域に入る少し手前…


往路では気に留めなかったが、ソコには

岩の扉が設けられていた



「…同士よ。」


扉には私と同型のゴーレムが門番として立っていたようだ。

ガスの為か分からないが…動かなくなって久しいらしい。

門の前、立ったままの姿で朽ていた…



「…失礼する。」


おそらく。守衛のため…と、言うよりも。



「ぐっ…くっ、、、」

『ガッ…ゴゴゴ…』


この、重い扉を開けるために

配置されていたのだろう…



「…」


扉の向こうは…面影さえ失っていた地上と異なり、

当時の姿を保っているように見えた…



「ガスも検出できません…。あの、重厚な扉のおかげですね…」


坑道の中とは思えないほど、よく整備された通路は

私たちゴーレムが通過することも想定された縦にも横にも広い

モノだった。



「…次世代型ゴーレム研究施設。……循環型社会研究施設。食糧問題研究施設………」


通路の両側は広い間隔をもって部屋が仕切られており、

入口には施設名と、ソレを任された工房名が掲げられていた



「…」


闇に覆われた施設には主人の影も。

稼働しているゴーレムの姿も無かったが…しかし、



「…こんなにも。遺して下さっていたのですね………」


主人たち…焔のドワーフの。

その栄誉を語るには十分過ぎる遺産が遺されていた…



「僅か数ヶ月で。ココまで…」


ヴェアーラ様の日記によれば、

ベヒーモスによってヌチルデンの門が閉じられてから

18坑道の掘削を急ぎ。聖域を見つけ出すまでに3ヶ月。


ソコから、慎重に協議を重ね。

晶棍アゾートに手を出すと決めたのが

更に1ヶ月後のコトだそうだ。


この施設は天然の空洞を利用した…とのコトだが。

聖域にもほど近いこの場所が、掘削を始めてスグに造られたとは考えられない。

恐らく、聖域と同時か…せいぜい1ヶ月前に見つかった場所だろう。


…と、いうことは。

この施設群はひと月か…長くて2ヶ月で

整備されたという事になる。


もっとも、



「主人の技術力をもってすれば…」


…“理のまま”

では、あるのですが…






「………ここ。ですね…」


暫く歩いたのち…



「………【創生】研究施設…」


文字通り【創生】を研究するための施設…



「…」


足を踏み入れると、

施設は無言で(あかり)(とも)した…



『…』


施設は…生きていた


すぐ隣の【増幅研究施設】で増幅された焔山の魔力は

この施設の焔を300年間。維持し続けていた…



『キイィ…』


同士…とは、呼べない。

ごく単純な作業をするための小さなゴーレムが

主人と私の見分けも付けずに操作盤に魔力を通し。


設備を照らした…



『クポポポポ………』


“宮”を模した硝子瓶…アレの中には、

“海”を模した半透明の液体が満たされているらしい。


おそらく…いや、間違いなく。



300年間変わらぬ品質で。

創生以来変わらず有機物に寛容な“その水”を維持し続けている…



「ヴェアーラ様。貴方様は【聖母様】だったのですね…」


父なる山の守護がある

母なる海の水面も残されている



「あと、必要なものは………」



(コード)】………



「…殿下たちの。完全なソレを燃やされてしまったのは…失敗。でしたね。」


主人達も“やっていた”事だったため

止めなかったが…まさか。こんな事になるとは…



「陛下達のアレでデキるでしょうか…?」


地下深く…強力な魔力ポテンシャル空間であった為か…腐敗は

していなかったものの。損失は激しい


だが、しかし…



「…いいえ、きっとできます。他でもない、焔山の中心で護られてきたのですから…」


…と、なると当然。

魔女様に遺体を預けるワケにはいかない…



「この施設のコトは…」


魔女様は錬金術にご興味あそばされるから、

知らせたところで問題無さそうな気もするけれど…



「【治癒術の理】には…反しているかもしれませんね。だとすれば、魔女様はよくてもアノ天使がナニカ言うかもしれません。伝えないのが懸命でしょう…」


キメラ然り。ベヒーモス然り…

主人たちは錬金術で生み出した生物群(植物や家畜を除いて)を

他の種族に伝えていなかったと記録されている。


ゴーレムの私では、その理由までは理解できないが…


種族間で価値観の差があるのかもしれない。

それに…



「時間はかかるかもしれませんが、聖母様が遺してくれたこの施設と知識が有れば…」


危険を冒す必要はない…




「…私にも。できそうですからね…」


時間はたっぷりと…ソレこそ。


無限に ある。



「…そうです!魔女様には目眩ましとして…もはや無価値の“石ころ”でも渡して。大人しくしてもらいましょう!」


どうせなら当時、最も価値があると言われていた…

王女殿下に渡るハズだった“アノ石”がいい。


遺産が減るのは遺憾だけれども…なに。

あの方はそれくらいの仕事(タスク)を熟したんだ。


ひとつやふたつ。褒美として渡しても

やぶさかではあるまい。


過去に主人たちがソウしたという記録もある。

そして何より、


【晶棍アゲート】に比べれば…





「できる…できるぞ!」


故郷(モルタレスク)の復興…

ソレは、ヒトが見る朧気(おぼろげ)で曖昧な“夢”などという幻ではない。


論理的で整然とした1つの【解】だ



「待っていてくださいね…主人!」


いま。あなた様の夢を…

林檎です!


【8th Theory 滅びの焔山】編


・・・なんだか、不穏な雰囲気ではありますが、しかし!

本話にて、紐を結びます!!




本編は引き続きフォニアたんの旅を追うことになりますので、

焔山のお話は、いったんお終い!


続きが気になる方は、今後に期待してねっ!!

ご評価いただけると今後が近づくかも!?


よろしくねっ!

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