Chapter 012.5_ヌチルデンの門<閑話>
ベヒーモスを倒した後のお話です。
お気軽に読んでくださいね!!
「・・・う?この門・・・外開き?」
【ヌチルデンの門】は
【焔のドワーフ】の郷
【モルタレスク】を護る
荘厳で堅牢な巨大な城門だ。
「左様でございます!」
「・・・珍しいね?」
「…はい?」
「・・・外開きの“城門”なんて・・・珍しい。」
【城門】というものは、
関所やお城。街や要塞などの【城壁】と共に築かれ。
内部への出入りも可能にしつつ、
有事の際は敵の侵入を防ぐ“壁”の一部とするための“設備”だ。
「…そうですか?」
「・・・外開きじゃ。中から開閉の自由が利かないでしょ?」
「外側から押さえつけられてしまうと、開けようがないですからね…」
「…ベヒーモスに閉じ込められたのは、このセイだろ。」
ローズさんが説明してくれた通り。
“開き扉”は、扉を“開く側”を押さえつけられたら
壊す以外、出る方法が無くなってしまう。
ルクスが言った通り。
ベヒーモスに閉じ込められてしまったのは、この構造が原因・・・と、
言えなくもない・・・
「…内開きであれば開くのは自由。逆に、閉めたい時は。扉の前にバリケードを敷くだけで、より堅牢にする事もできる。…加えて。開放時に門外の視界を制限される事もない。」
「・・・デメリットと言えば・・・内側のスペースを制限されちゃう事と。開けた時に、扉と壁の間に死角ができちゃう事くらい・・・かな?」
ゲオ様が説明を続けた通り、内開きの城門は有事の際にもメリットが多い。
私が言ったデメリットも。間取りと、兵の配置で対策できるからね・・・
「「「へぇ~!」」」
関心の声を上げたのは、ティシアとシュシュとフルート。
ティシアとシュシュはともかく。
フルートは・・・アノ環境ゆえ、知らなかったのかな?
「ちょっ、ちょっと待ってください!えぇとぉ…」
私達の話を聞いたナミちゃんは、
慌てて顎に手を置き考え始めた。
「えぇとぉ………」
「・・・」
ナミちゃんには膨大なドワーフの歴史のかなりの部分が
“記録”されているらしいんだけど・・・
私達と出逢うまで、あまり参照してこなかったから
内容によっては、“よび出す”のに時間がかかるんだって・・・
「………は、はい!」
少し経って、
顔を上げたナミちゃんの
「えぇと…ヌチルデンの門が“外開き”である理由ですね!それは…」
「・・・それは?」
その答えは・・・
「火山ガスの為です!」
火山ガス・・・?
「えぇと、ですね。モルタレスクの郷は…」
ナミちゃんの説明によると!
・知っての通りモルタレスクは火山内部にある!
・火山では時々、有毒ガスが発生する。
・モルタレスクはエネルギー確保のためマグマ・火山ガス、その“熱”と“流動性”と“物質”全てをエネルギー源として利用しているものの。ごくまれに、処理能力を上回る内部噴火が起きてしまう。
・処理しきれないマグマやガスは基本的に、山の中央に造られた超巨大なパイプを伝って山頂から外部に排出されるんだけど・・・“ガス”は制御が難しいため。郷に漏れてしまう可能性が否定できない
「…そこで!イザという時。高圧のガスを外に逃がす仕組みが必要だったのです!」
「・・・それが。城門が外開きの理由?」
「はいっ!そう、綴られております!!」
・・・との、コト・・・
「へぇ~!」
「上手くできてるねぇ!」
「…考えたな。」
・・・と、みんな感心しているみたいだけど・・・
「・・・」
単純に考えて、
「・・・外開きの“窓”じゃ、メだったの・・・?」
あんな分厚い扉を【排気口】にする必要
無いと思う。
それ以前に、
あの巨大な扉を開けちゃうほど内部のガス圧が上がったら、
既に死人が出ていると思うんだけど・・・
「「「「「…」」」」」
私のツッコミを受けて、全員の視線がナミちゃんに向かった。
「え、えぇと!」
すると・・・
「ほ、他にも!外開きの方が“カッコイイ気がする”とか。“威圧的”とか。“勢いつければ扉を武器にできるんじゃね!”とか。“スペース取られるのイヤ”…とか。…そ、そういう意見があったみたい。です…」
「「「「「…」」」」」
最初のふたつは“気のせい”
みっつ目は荒唐無稽な思いつき。
よっつめはワガママ・・・
と、
当時のドワーフにツッコんで
あげたい・・・
「・・・ナミちゃんはどう思う?」
「えぇっ!?え、えぇと…わ、私は主人の僕ですので。意見など…」
「・・・非論理的で非合理だと思わない?」
内開きだったら・・・例え、目の前にベヒーモスがいたとしても。
閉めた扉を開けられるのだから・・・中からベヒーモスを叩くとか。
隙間から追加戦力を送るとか。外に出たモノを避難させるとか・・・
・・・やりよう。
あったんじゃないかな?
「お、思い…ま…」
論理的で合理的な結論を出せるゴーレムを創れる一方、
こんな初歩的な誤りで300年も閉じ込められてしまうなんて・・・
「…テーも。そー思うの…」
「シュシュもです…」
・・・ドワーフ。
不思議な生き物だ・・・




