Chapter 011_嶺獣 ベヒーモス⑤
林檎です!
本話はちょっと短めです。
ご了承くださいませ・・・
「…見えてきましたよ!!」
フルートの風が、砂を彼方に
運び去ると・・・
「ぶはっ!はぁ~…」
「・・・ナミちゃん!・・・ヒュドラ、お願いね!」
『『『『『ルルゥウ!』』』』』
大きく優しいゴーレムさんが、
姿を現したのだった!!
・・・
・・
・
「魔女様…エルフ様。この度は、助けて頂き本当にありがとうございました!砂の中では身動きも取れず、一時はどうなることかと…」
砂だらけのナミちゃんは、
フルートの魔法で砂を払ってもらってから
私達に深い礼をしてくれたのだった・・・
「・・・そんな・・・助けてもらったのは私の方。こちらこそ、どうもありがとう・・・」
「ふふふっ!…ぼくのフォニアを守ってくれてありがとう!」
「ありがとですよ!」
『『『『『ブシュルルルッ!』』』』』
助けてくれたのは彼女の方!
みんなでお礼を返していると・・・
『ダダダダダダダダンッダダダダダダダダンッ!…』
タイミングよく!
『ヒュブブブブゥ!!』
「きゃっ!?・・・って、ロワノワール!?お帰りなさいっ!!」
『ブフフッゥ!!』
時を同じく。
ロワノワールとルクスも戻ってきたのだった!
「はぁ~…ヤレ、ヤレ。だ…」
「ルクスも無事でよかった。「お、おぅ…」・・・ロワノワール。彼を守ってくれてありがと。」
『ヒュハッ!!』
ベヒーモスの魔術は、
現象のスピードも速くはなかったみたいだけど、
何しろ規模が大きかった。
空中に逃げられるフルートは別として、
ロワノワールの脚力でも、ルクス1人だけならギリギリ逃げ切れる・・・
というホド、シビアだったみたい。
みんな無事で
本当に良かった!!
・・・
・・
・
「さてと!」
そして・・・
「…あぁ。」
みんなの無事を喜んだ
あと・・・
「にゅう…」
私達は・・・再び
「はいっ!」
高く昇った陽を隠し、
『グルッ…』
『クルルゥ』
『フリュリュ』
『ピリュウ!』
『『『『『ブシュルルッ…』』』』』
『ヒュフッ…』
『ヒュンッ…』
巨大な影を生み出す
『ズゥ゛ブヴオォォーーッッッ!!!」
砂漠の秀嶺と・・・
「・・・みんな。いくよ!」
「おうっ!」
「あぁ!」
「にゃんです!」
「はい!!」
『『『『グクルリュリュウ!!』』』』』
『『『『『ブシャアァァー!!』』』』』
『『ヒーヒュヒュンッ!!』』
・・・いざ!
尋常にしょーぶ!!
・・・
・・
・
…
……
………
『ブ…ヴォ………』
そして…ソレは。
「にゅぅ…まだ生きてるですか…?」
「・・・でも、もう。ホントにあと、ひと突きだと思う・・・」
夕暮れ時になってからの
コトでした…
「…しぶと。」
「だね…フォニアが見つけてくれた心臓や、太い血管。全部破壊してもまだ生きているなんて…」
…この場所で
赤く染まった砂漠を見るのは何度目だろう?
何千、何万回も瞳に映した光景のはずなのに、
今回ばかりはいつも以上に紅く。
そして、ちょっぴり名残惜しいのは
何故だろう…?
「・・・ま。まだ心臓残ってるしね。」
「…まだ、あったのかよ…」
「・・・ベヒーモスは心臓を6つ持っている。」
「え!?そ、それって…。み、3つ潰したんだから…ま、まだ。半分…?」
「に、にゃあ~…あんな大きな心臓が。あと、3つも…」
「・・・そうなる。でも、3つともかなり深部にあるから・・・諦めて。動脈切断に切り替えたの。」
「…っん、だよっ!?そのせいで時間かかったんじゃねーのか!?」
「・・・もう、血みどろ掘削工事はしたくないかと思って切り替えたんだけど・・・迷惑だった?」
300年…
そう。300年だ。
モルタレスクが誇る大戦用ゴーレムと守衛用ゴーレム総数224機。
ドワーフの術師38名。
騎士104名
が戦い…破れ。
傷ひとつ付けられなかった秀嶺が。今…
「………いや。…いい判断だ。」
「にゅうっ!ご主人様に謝れです!!」
「…すまん。」
「・・・いいけどね。ルクスが頑張ってくれたのは事実だし。・・・それに、動脈斬った時。結局、血みどろになってるから・・・」
たった4人の手と喉によって
僅か1日で崩されようとしている…
「あっはっはっはっはー!!小僧が魔物に開けた穴から出てきた時は笑ったなぁ!!」
「…思い出させんなよ…」
「にゅふふっ!ご主人に唱えられてやんのー…ですっ!」
「・・・ご、ゴメンね!あの時は・・・び、ビックリしちゃって・・・」
「…お陰で。ボクの腹にも穴が開いたケドな…」
「ホントにゴメンね!」
あの、閉ざされた門の向こうにいる主人達は、
この人達に何を思うだろうか?
…きっと、驚くに違いない。
そして、300年かかっても魔物一匹、処分できなかった
私共を嘆くことだろう。
私の記録を全て洗い。
部品単位に分解し、
改善点を見出し。
次の一歩を踏み出す…
「さて…お喋りはこれくらいにして…」
「…あぁ。」
「にゃん!」
「・・・ん・・・」
…その。技術の到達点に
私は“いない”だろうけれど…
この人たちの瞳には、その光景が映るだろうか?
…主人たちに、
協力してくれるだろうか…?
「トドメは…」
きっと、この人達ならば…
「・・・ナミちゃん。」
「…」
「・・・」
「…」
「・・・う?・・・・・・ナミちゃん?」
「…へ?あっ!ハ、ハイ!!」
思考に耽っていた私に声をかけた
フォニア様は…
「・・・大丈夫?」
心配そうに
私を見上げていた…
「ご、ごめんなさい!!はい!大丈夫です!!」
「・・・ほんと?」
「も、もちろんでございます!ちょっと…しゅ、主人達のことを。思い出しておりまして…」
私のその言葉に
「・・・・・・そっか・・・」
長いまつ毛を下げたフォニア様は
しばし瞑目し…
「・・・ん・・・」
「…」
大きな夜に私を映し…
「・・・トドメは・・・アナタが刺して。」
「えっ…」
「・・・この戦いはアナタ達が始めたモノ。300年戦ったアナタこそ。紐を結わくに相応しい。」
「で、ですが…」
他の方々に意見を求めても…
「「「…」」」
『『『『『…』』』』』
魔女様のお仲間様は黙り込み
ただ、トリドリの瞳に“光なき”私の目を映し…
「・・・衛兵用騎乗型ゴーレム:Nam-il-kins型 SN:01-017-01036号機殿。」
…魔女様は
「…は、はい…」
「・・・戦ったのがアナタなら。勝ったのもまた、アナタよ。」
「そ、それは…」
「・・・どうか。胸を張って凱旋して。そして主人に報告してほしい。勝ったのは焔のドワーフだ!と・・・」
「っ…」
西の空に夕日を沈め…
「・・・さぁ。300年続いた物語に・・・」
終わりの夜を顕現し…
「・・・紐を結わこう。」
…唱えた。




