Chapter 010_嶺獣 ベヒーモス④
林檎ですっ!
着想は、
「ところてんっ!が。たべ・・・」
じゃ、なくて!!
ホルスト作曲
組曲【惑星】より【火星】
「フォニア!?」
彼女の蛇は、彼女とお耳ちゃんを
銀色のボールに呑み込み沈黙した
「ば、ばかっ!?逃げるんだよ、チビッ!!」
彼女の事が心配…なのは間違いないけど。
蛇はこの事態を察知して彼女を守護するために動いた。
最強の魔女様が導き出した解ならば、
何の憂いもないハズだ!
しかも…
「エルフ様!ここは私めが!」
その彼女を守護すべく!
ドワーフの大盾まで出張っている!
だから。今は、
ぼくがすべきは!
「エオリカ!ロー!!全速反転!!」
『『ヒーヒュブブブゥ!!』』
ベヒーモスめっ!
まさか、こんな技…魔術…を宿していたなんて!!
「うをっ!?チ、チビてめっ」
「喋ってる暇があったらローを応援しろ!!」
巨大な分…緩慢に見える動きで
両足を持ち上げたベヒーモスは、巨木程もある後ろ足と尻尾で立ち上がり
空の半分を覆い尽くし…
『ドグオォォーン!!!』
…その山を落とした
『ヒュブッ…ヒュブブ…』
「そ、そんなコト言わずに頑張れ!エオリカ!!」
『ブフ…』
「…そ、そう…」
「…ぁ?なんだ?」
…もっとも。そのまま“のしかか”られた訳じゃない。
ベヒーモスは巨大…とはいえ。ぼくらも十分、距離を取っていたからね。
問題は…その後。
「このままじゃ追いつかれるって…」
「…マジかよ」
砂は…確かに、
この砂漠の砂はサラサラで踏み込むと足が埋まってしまうし、
砂漠を泳ぐ魚のような魔物も存在する。
知らない人は…水と同じように考えるのかもしれない。
「…小僧。君はこのまま行きな。ローの足なら逃げ切れるだろう。」
「…は?お、お前は!?」
「ぼくには空がある!」
…だが。
砂と水は全く異なるものだ。
水みたいに“まとまら”無いし。浮力もない。
砂の上を走る船が登場するお伽話もあるケド…
あんなのはタダの夢物語。
現実は違う。
現実の砂は…熱く冷たく。渇きをもたらす
極小のナイフだ。
「エオリカ!また…後で頼むよ!」
『ヒュフ…』
「はは!そんな声だすな!ぼくの馬は“君”なんだから!」
ベヒーモスが、
持ち上げた両手を地についた瞬間!
地震と共に
円を描く砂の…
特大の波紋が拡がった!
『ズザザザザアァーーーッッッ!!!』
ベヒーモスの巨体を、さらに上回る
砂の津波…
アレはヤツの
固有魔術だ。
「エウロス!」
エオリカを還したぼくは、
上空で見守っていたエウロスを呼び寄せた!
「あぁっ!」
自由自在に風を操る風神魔法…東風であっても。
風を使っての飛翔は難しい(”飛ぶための魔法”というワケではない)けど…
…いちおう?
ぼくはコレでも風魔法には自信がある!
「・・・フルートの方が風をよく知ってる」
って!彼女に言わせたくらいなんだ!
自信を持て!ぼく!!
「ふぅ…さすがに。この高さなら大丈夫だろう…」
十分な高さまで飛び上がり、
「小僧は…」
エウロスとともに
見下ろすと…
「あーっ!くっそっ!!…おい、ロー!!全力襲歩!!」
『ヒュフ…』
操っているのは…主人ではない“小僧”…とはいえ、
ローはフォニアが生み出した精馬。
賢く。大きく。力強く…
そして、速い。
「しっかり走らねーとテメーの主人に言いつけるぞ!?このヤロー!!」
『ヒュブブ…ヒュハッ!』
精馬は他の召喚獣に比べ、忠誠心が高いという。
主人の命令には、絶対服従。
“主人が手綱を預けた”小僧の命令を
無碍にするハズがない…
「…はは。案外うまいじゃないか。…アレなら、大丈夫そうだな。…さて。フォニアは…」
彼女がいた場所は既に砂の海に呑まれ
姿はまったく見えないが…まぁ、アノ様子なら、無事だろう。
残るは…
「…エウロス。妹ちゃん達は見えるかい?」
尋ねると…
「ちょっと、まて…よし!どうやら…全員無事のようだ!」
「そぉ!はぁ~…」
エウロスの声を受け…
「コレで、なんとか。彼女に失望されずに済みそうだ…」
…ようやく。
息をついたのだった…
………
……
…
・
・・
・・・
「・・・ぷはぁっ」
「にゃはぁっ!」
真っ暗なヒュドラプールの中で過ごす事・・・
1分くらい?
「みんなは!?」
ワケも分からず、されるがままに。
ヒュドラに匿われた私だったけど、
今はヒュドラと。そして4柱から
何があったのか?教えてもらっている。
そして・・・
『グルッ!』「クルルゥ!!』『フリュウ!』!『ピリュリュゥ!』
「そう・・・よかった・・・。」
ルクスとフルート。そして
ティシアをはじめ、後ろの3人も!
みんな無事だってコトも!
「・・・ありがとヒュドラ!」
『『『『『ブシャアァァー!!』』』』』
「・・・シュシュもね。守ってくれてありがと。」
「にゅふふっ!とーぜんなのでーすっ!」
魔法は、
発現するのに【詠唱】が必須。
発現時には【魔法印】が現れる。
けど、【魔術】はそうとも限らない。
例えば・・・私の召喚獣に関して言えば。
水龍達は鳴き声で“外側”に発現させるタイプの固有魔術だから
魔法印が現れるけど、
ヒュドラは“そう”じゃない(ヒュドラは“形態変化”に魔力を消費
しているけど、コレはシュシュの【変化】に近い)から現れない。
ベヒーモスの先程の魔術は・・・たぶん。
身体を持ち上げた“あの動作”(私はソレを見る前にヒュドラに
包まれちゃったから。見ていないけど・・・)と叫び?が起点となる
固有魔術なのだろう。
そして。
外側に効果を現す魔術だから魔法印が現れた。と・・・
・・・ん。
セオリー通りだ。
「フォーニアー!ぶじー!?」
「・・・んーっ!・・・フルートも。無事でよかった!」
「もちろんさ!」
「・・・う?あれ?エオリカちゃんは・・・?」
「上に逃げるために逆召喚したのさ!あとで喚び戻すよ!」
「・・・そっか。」
・・・ま。それはともかく。
「・・・フルート!ナミちゃんを掘り起こすの手伝って!」
「ガッテン承知!」
「シュシュも手伝うですよ!!」
『『『『『ブシャァァーーッ!』』』』』
私を護ってくれたナミちゃんは
まだ、砂の中だ。
「で…フォニア。どうやって掘り起こす?」
「・・・【竜巻魔法】のユニゾンは?」
「う~ん…(ソレ)でも、いいけど…。フォニアなら、土魔法の方が効率いいはずだよ?」
土魔法?
・・・なるほど。さすがフルート・・・
「・・・ソレもそっか。なら、【砂嵐魔法】っていうのが、ある。・・・名前の通り。砂嵐を発現する魔法。」
「おっ、ピッタリじゃん!…その魔法で、フォニアが巻き上げてくれた砂をボクが遠くへ飛ばす…ってのは、ドウ?」
「・・・ん!ソレでいこう!」
行使することは“ない”だろうと思っていた【砂嵐魔法】を
まさか、ゴーレム発掘のために使うなんてね・・・
「おっけー!じゃぁ…お耳ちゃんはゴーレムちゃんの居場所を見つけてくれないかな?ぼくらじゃ、場所が分からないからね…」
「・・・お願いね。シュシュ。」
「にゃんですよ!スンスン…」
「・・・ヒュドラは私達が見つけたナミちゃんを砂の中から引き上げるのを手伝ってね。」
『『『『『ブシャァッーッ!!』』』』』
みんなの準備が整い
「…ご主人様、ご主人様!この下からナミちゃん様のニオイと音がするですよ!」
「・・・ん!」
シュシュが見つけた“ポイント”に狙いを定めた私は
「・・・みんな離れて!」
「り!」
「にゃんですよ!」
『『『『『シャッ!!』』』』』
みんなとの距離を確認して
『グクルゥ!』『リュリュウ!!』
魔術の反動の為か・・・
まだ、ベヒーモスが動き出す様子はない!
・・・というコトを、4柱から教えてもらい。
『ブフルッ!(“剣の君”と全速で向かってます!!)』
・・・という、ロワノワールの心の声を聞きながら
「・・・すー
・・・ん!」
唱えますっ!




