Chapter 006_嶺獣 ベヒーモス①
林檎です。
本話。けっこう短いです。
ご了承ください・・・
因みにタイトルは、
嶺獣→れいじゅう です!
・・・よろしくねっ
「・・・すー・・・」
300年・・・
「はぁ〜・・・」
300年もの長きに渡り
攻撃を受け続けるというのは・・・
どういう気分だろう?
「・・・『この手は何を成せるだろう』」
相手は魔物・・・理性無き獣だ。
魔物はヒトと相容れない存在。
リブラリアにおいては“絶対悪”・・・と、言っていい。
「『この力は誰が為』
でも・・・そんな魔物にも「心」はある。
仲間を・・・そして、子や家族を想い。
守ろうとする魔物もいる。
暑さ寒さも。痛みも恐怖も感じる。
知性が高くイタズラに獲物を弄ぶ種もあるけど、
大抵は食べる為・生きる為にする事だ。
この子だって・・・
ソウだったんじゃ、ないかな・・・?
「『小指に薬を』」
戦意を削いじゃうかなぁ・・・と、思って。
みんなには話してないけど、
このベヒーモスは、端的に言って“被害者”だ。
ワケも分からず捕まって。
命と体と心を弄ばれて。
6つを掛け合わされて。
持て余されて。
捨てられて。
彷徨って。
死ねなくて。
なのに、
また捕まって。
自分とは何の関りもない目的のために、ひとつの“兵器”として呪いを受けて。
我を失い。
何処かもわからず。
何の為かも知らず。
呪いのせいで苦しんで。
でも、やっぱり死ねなくて。
彷徨って、
彷徨って、
彷徨って、
彷徨って・・・
呪いの為に、彷徨う事を強要されて。
・・・そして、辿り着いた。
弄ばれし山に。
・・・そして、発現した。
呪いの唄が・・・唱えた通りに。
「『人差し指に毒を』」
数千年前にドワーフがやった事・・・ベヒーモスの“創造”は・・・
倫理的に言えば、大罪だろう。
でも、
対象となった“生き物”が絶対悪の・・・まごう事なき“魔物”だったことも
また、事実。
この世界に“動物愛護法”なんてモノが存在しないのも
また、事実。
創ったドワーフが悪か?
呪いを綴ったエルフが悪か?
・・・あるいは、
そう“せざるを得ない”事情が彼らにあったのか?
・・・当時を知らない私に、分かるはずがない。
「『祈り込めて・・・』」
だから、
この戦いは・・・
・・・そう。
ただの魔女のワガママだ。
生死を賭けている訳でも、
使命を帯びている訳でもない。
ただ、温かなベッドと、美味しいご飯と、元通りの生活を取り戻したいという、
利己的な欲望の為だ
だから、気兼ねなく
魔女に万感の敵意を向ければいい。
300年の痛みも恨みも悔しさも、
全てを吐き出してしまえばいい
悪いのは、
魔女
「『・・・払い清め』」
今。ラクに・・・
「・・・ディスペル」
瞳に映して
あげるから・・・
「っ」
効果を確認するコト無く振り返った私は
『ヒュー…ブヒュルルルゥ!!』
駆け出したロワノワールから
「お嬢様っ!!」
伸ばされたローズさんの
「んっ!!」
その腕に捕まり
「ツィーアン・ツィーウー・フーウェン・フーシェン!」
2x2輪の虹に
「水あそび!!」
『『『『グクルリュリュウ!!!』』』』
唱えるっ!!
『…グ』
けど!
『ッ』
水玉フィールド発現前に!?
「みにゃ!?」
頼れる最速の耳が
「キます!!」
誰よりも早く攻撃を察知し
「エウロス!!」
「魔女様!!」
すれ違いざまの
嵐と盾に
「お嬢様っ!!」
そして薔薇に
護りを頼み
『ズッ…』
重い
『ズブオオオオオオオオオオオオォォォォーーーーーー!!!!!!』
憤怒の震を・・・
『ヒュ…ブフッ…』
「おじょっ…っ!!」
「っ、、、」
ただの雄叫び 目覚めの欠伸・・・
それは、この砂漠で遭遇した
いちばん酷い砂嵐よりももっと強く。烈しいモノだった
霊馬の王の足を止め
音をかき消し
風のバリアを払う
純粋物理の咆哮だった。
これまで聴いたどんな声より、
強く
大きく
重かった
でもっ・・・
「・・・負けないよっ!!」
筆を手にするのは
私だ!!




