Chapter 005_山崩し
翌朝・・・
「すー・・・」
・・・
・・・
・・・
ケンタウルスさん改め、ナミちゃんの案内で
ベヒーモスの側にやってきた私達。
生物・・・と呼ぶには大き過ぎる威容に驚きながら
とりあえず。
その周囲を回って眺めてみたり。
「・・・アレが?」
「はい!モルタレスクの城門…荘厳なる【ヌチルデンの門】に御座います!」
「おっきいねぇ!」
「・・・ね」
ベヒーモスと断崖の間にホンのチョットだけ見えた都市の断片に思いを馳せたり。
「…冷たいね?」
「ですね…」
「…死んでいる…と、いうのは。本当かもしれんな…」
「・・・」
当のベヒーモスに、
ペタペタ触ってみたりした。
・・・
・・・
・・・
「・・・『祈り込めて擁する』」
そして最後に・・・
「ダイアグノーシス!」
「「「「「…」」」」」
“結論”を得るために
診断魔法を試すことに・・・
「・・・」
「い、今のは…ち、治癒属性魔法…ですよね!?」
「…はい。そうです。でも今は…」
「ご主人様は集中しておられます!お静かにーっ!…です!」
「あっ!ご、ごめんなさぃ…」
そんなやり取りを背中に感じながら、
瞳の前の“物語”を読み進めていくと・・・
「・・・」
・・・なるほど。
ね・・・・
「・・・ふぅ・・・」
閉じていた瞼をゆっくり開けた
私に
「…そ、それで…」
「…結果は?」
問われた問の
「・・・この。ベヒーモスは・・・」
解え。を・・・
「・・・生きている。」
「「「「「えぇっ!?」」」」」「にゅっ!?」「ほっ…」
「でも・・・」
「で、でも…?」
「・・・【石化】の呪いに罹って。“不滅”状態にある。」
「「「「「…………は?」」」」」
「せ…」
「…石化だぁ?」
・・・うん。
「セキカ…って?」
「…言葉通りなら…”石になる”。という意味だな。」
「石に…なる?生き物が?…うぅ?」
「時間が経って…か、化石になったという事でしょうか?」
「・・・違う。」
みんなの言いたいことは
よー・・・く!分かる!
石化?ナニそれ美味しいの?
生きながら不滅?…あれ?最強じゃね?
非論理的に過ぎるよ!!
・・・とかって、言いたいんでしょっ!?
「その上。ふ、“不滅”…ですか?…“不滅”はたしか。普通、生物には適用されない…」
ソレはこっちのセリフだよ!!
私だって、わけわかんないんだよ!!
「…お嬢様がおっしゃっているのですから!きっとその通りなのです!」
「にゃんですよ!!」
だって、そう綴られてたんだもん!!
しょうが無いじゃん!!!
「・・・【石化】っていうのは、ベヒーモスの存在に綴られていた言葉なの」
「存在に綴られている…って、どういう意味なの?ね様??」
「・・・対象が呪われていると、術者には呪いの詳細が“文字列”として認識されるの。」
・・・ま。文字列といっても“暗号”に近いから。
読み解くのは、物凄く大変なんだけどね・・・
「…それが、“存在に綴られている”…という意味か?」
「・・・ん。」
と、とりあえず!
みんなに説明をしないと・・・
「…治癒属性使いにしか分からない事をボクらが知ってもどうしようも無い。それより…その石化ってのは、具体的にどういう状態なんだ?」
「・・・体が石みたいに硬くなって、生理活動の一切が止まる。当然、動けない。」
「そ、それって。死んで…」
「・・・でも、生きてる。動けないけど・・・意識はある。」
「「はぁっ!?」」
まさか、ゲームでお馴染みの状態異常【石化】を。
現実のものとして瞳に映す日が来るなんて
思ってなかったよ・・・
「…それは…“無敵”ということか?」
「・・・少なくとも破壊はできない。外からも・・・内からも。」
「す、すごいね…」
私の言葉を聞いた
「で、では…」
ナミちゃんは・・・
「…わ、私達がしてきたことは…む、無駄だった。…と、いうコトですね…?」
門の正面・・・最初にナミちゃんが立っていた・・・を見つめ。
呟いた・・・
「「「「「…」」」」」
「・・・」
「…お、お嬢様!」
沈黙を破ったローズさんの
「お嬢様なら…そ、その呪いも。解けますよね!?」
その問には、
もちろん・・・・
「・・・ん。」
「さすがお嬢さ…」
「・・・でも。」
「でも…?でも、何かあるのか?」
「・・・たぶん。ほぼ確実に。呪いを解いた瞬間・・・」
分からないことだらけだけど・・・
でも、1つだけ確実な事がある。
それは・・・
「・・・襲ってくる」
「「「「「…」」」」」
誰が?何のために?
ベヒーモスに呪いをかけたのかは分からない。
(ま。状況的には犯人はドワーフ!・・・と、考えるのが自然だろうけど・・・でも、ちょっと不自然なんだよね・・・)
けれど、
300年もの長きに渡り、身じろぎひとつ許されずに
(ダメージを負わないまでも)攻撃され続ければ、
ヒトも獣も等しく正気を失う。
不滅のその身の内側で
ストレスを貯め続けたベヒーモスの心は
既に崩壊しているに違いない。
解き放った瞬間、
退かず!
媚びず!!
顧みず!!!
命尽きるまで
暴れ回ることだろう・・・
「…時間はある。」
沈黙を破ったのは、
「…作戦を立てるぞ。」
ゲオルグ様の力強い声・・・
「はいっ!!」
秒を置かないナミちゃんの声
「ん、んぅ!」
そして、優しい妹の声
「「「「…」」」」
私を待ってくれる
みんなの視線に・・・
「・・・」
私も!
「・・・ん!」
もちろん!
「「「おー!!!」」」
「ヤレ、ヤレ…」
やるぞぉっ!!
・・・
・・
・
・・・
・・
・
・・・
・・
・
3日後
『ブフフフッ…』
『ヒヒュンッ!』
時刻は・・・夜明け直前。
「・・・ごめんねフルート。こんな危ない役をお願いしちゃって・・・」
「なぁ~に言ってるのさ!?愛するフォニアの為だもの!命くらい張るさ!!」
「「はぁっ!?」」
「・・・そ。ま。頑張れ。」
「あ、あれ…?なんか冷たい…」
「・・・ナミちゃん。作戦の最終確認を・・・」
「あ、ちょっと!?フォーニアァ〜!?」
今回の相手は超大物!
ひとりじゃ対処しきれないので。
みんなと力を合わせて総力戦をすることになった!
「・・・ナミちゃん。・・・どうか、気を付けてね。」
「は…はい!ご協力を賜ったうえ、温かいお言葉まで…。ぜ、全力でやらせていただきます!」
作戦はこうだ。
ベヒーモスの呪いを解いた私は、ロワノワールとそれを操作するローズさん。
そしてシュシュと共に急いで離脱!
囮役のフルートとナミちゃんにベヒーモスの気を引いてもらって・・・
「…ですが、御心配には及びません!門さえ開けば私の代わりなど幾らでもおります!皆様にご面倒は、おかけしません!!」
・・・その隙に私は、離れた砂丘でみんな
(ティシア・ゲオ様・ルクスの3人)と合流。
遠距離から、高出力魔法でベヒーモスを撃つ!!
・・・と、いった感じ
「・・・それじゃ、メだって言ったよね?ナミちゃんが壊れちゃったら、妹が・・・もちろん。私も。他の皆も。・・・みんな、悲しいよ。」
「フォニア様…」
「・・・たとえ、ナミちゃんが他のゴーレムと見た目が一緒で・・・記憶まで共有できるとしても。私達が出遭ったのはナミちゃん・・・Nam-il-kins型 SN:01-017-01036号機さんなの。・・・この広い砂漠に紛れた、ひと粒の麦を見つけるような奇跡的な出逢だったんだから・・・この出逢いを大事にしよう?・・・ね?」
「はぁ…」
「・・・一緒に。勝って帰ろうね!!」
「…は、はい!!」
あぁ!それと・・・
「・・・それじゃあ・・・」
今回は大物相手というコトで・・・久しぶりに!!
「・・・ツィーアン『グルルゥ!』ツィーウー『クルルゥ!』」
仲良しドラゴンの2柱・・・
「・・・と」
と!
「・・・フーウェン!『フリュウ!!』フーシェン『ピリュウ!!』」
200年以上かかるハズの孵化までの時間を、
謎の理由で僅か4年で済ませた赤ちゃん水龍
(赤ちゃんと言っても、既に私より大きい(長い)。く、悔しくなんて・・・)
2柱を加えて!!
「・・・4柱とも、お願いね!!」
「「「「グクルリュリュウ!!!!」」」」
久しぶりの幻獣討伐っ!
「・・・唱えるよ!!」
「「「おーっ!!」」」
「「「「グクルリュリュウ!」」」」




