Chapter 004_“造られし物”の矜持
矜持→きょうじ
です!
「じゃ、じゃあ…門番さんは。ずっと…ひ、ひとりぼっ…ち…?」
それは・・・私達、人間には
とても真似できない事だった・・・
「仕事が未完ですからね!」
「・・・補給も受けずに。って、言っていたけど・・・そんなに長い期間。稼働できるものなの?」
「…あぁ!それは…ま、まぁ。詳しい説明は省きますが…。簡単に言うと。焔山から直接。魔力を受けているため。山がある限り、半永久的に稼働できるのです!」
「・・・う?もうちょっと、くわs・・・」
「よ、要するに!ドワーフの錬金術…ということだろう?」
「まぁ…そうでございますね!」
「…魔力はいいとして。もし、壊れたらどうする?」
「その時は、“共喰い”機能でパーツを補います!」
「と、共喰い!?」
「はい!…もし損傷してしまった場合。周囲の“存続確率が低い仲間”からパーツを奪い。付け替える機能の事を言います」
長きに渡り。
たった1つで。
自分ではない誰かの為に。今は聴こえない唄に従い。
戦い続ける・・・
「っ…正に。“共喰い”ということか…」
「ベヒーモスの激しい攻撃により殆どの仲間はパーツ取り“さえ”できない程に粉砕されてしまいましたが…中には、攻撃の余波で吹き飛ばされ。落下時の衝撃で中枢神経回路基盤が破壊されていただけの…殆ど無傷の…個体もありましたので!」
・・・ソンナコト。
有限の体に無限の心を搭載しているヒトには、
とても無理だ。
「…そのお陰で。私は今でも仕事に従事できております!!」
・・・なるほど。確かに。
門番さんは・・・
“物”だ。
「・・・焔山の入口は、その門1つしかない・・・ん。だよね?」
声を上げると、門番さんは私を見下ろして・・・
(因みに。お話の途中でロワノワールから下馬している)
「はい!」
「・・・ドワーフなんだから。地下坑道(?)とかは・・・ないの??」
「無論。坑道は数多ありますが…私の知る限り。その全てが火山内部で完結しており、外に通じる道はありません。」
因みに。
焔山は活火山(噴煙は見えていないけど・・・)らしいから、
山頂のカルデラに突入・・・という方法は自殺行為です。
「ま、窓は無いんですか!?」
ローズさんの問には
「…マド?主人達の家には有りますが…」
「ま、まさか…太陽の明りを中に取り入れてないんですか!?」
「…」
門番さんは、ローズさんの問に
しばし考えてから・・・
「…内部は流れる岩漿(マグマのことだよ!)で“それなり”に明るいですからね。特に必要無かったのではないでしょうか…?」
「「「「「…」」」」」
「・・・」
う、う〜ん・・・
どうやら、小山に隠された門の向こうには溶岩ステージが待ち構えているようだ。
クーラードリンク持ってたっけな?
・・・ま。
魔法でいいか・・・
「はぁ〜…」
…すると。
ここまで黙っていたルクスが大きなため息を突いて
「じゃあ…アレか?アノ山を退かす以外。中に入る方法は無いってことか?」
最適(?)解を・・・
「・・・」
こやま小山コヤマ・・・とは、言っているけど。
すぐ後ろに1.2万メートル峰があるから小さく見えるだけで・・・
このベヒーモスの亡骸(?)
高さだけでもタワマンくらいある。
縦横も、
異世界島国の首都にある“巨大メロンパン”より大きいと思う。
コレを退かすなんて
Xレベルの“プロジェクト”なんじゃないかな!?
「も、申し訳ありません…」
「・・・う?」
遥かな高みに思いを馳せていると・・・
「お、お客様に…ご不便、ご迷惑、ご心配をおかけし。誠に申し訳御座いません!重ね重ねの謝罪をココに…」
・・・と。
門番さんは体ごと、大きく頭を下げたのだった
「し、仕方ないよ!」
「・・・」
「ま、魔物さんのせいなんだし…も、門番さんのせいじゃないよ!」
「・・・」
「お、お姉様だってそう思うよね!?」
「・・・」
「…お姉様?」
差し出された頭と両の手の平をじっ・・・と、
黙って見つめていた私を訝しんだティシア。
「・・・」
「…う?お、お姉…様…?」
そんな妹に
「ティシア様…」
ローズさんが『そっ・・・』と、
寄り添い・・・
「…お嬢様は。全て分かっていて…その上で。門番さんの謝罪をお受けになろうとお考えなのですよ…」
「………」「・・・」
その声を背中で聴きながら・・・私は、変わらず。
差し出された両手を見つめ
「でも…」
「…テー。」
「ゲ、ゲオさ…」
「…いいから。ここは【沈黙】するんだ。」
「ぅ…」
「…大きくなればお前も分る。今は…従うんだ。」
「むうぅ………。…はぃ」
「………」「・・・」
妹の成長を祈った・・・
・・・
・・
・
夜・・・
「フォニア様…」
星の光を隠す、三角形のお山の影を
ぼんやり眺めていると、
「・・・う?門番さん・・・」
カシャカシャと音を立てて門番さんがやってきた・・・
「「「…」」」
『…』
「・・・ごめんね。」
・・・隣のルクスと、斜め前のフルートと、
少し離れたシュシュと、私を包むヒュドラが
警戒してしまった事を詫びると
「いえ!そんな!」
門番さんは
槍の穂先が“届かない”程の距離で立ち止まり…
「と、当然の事と思います…」
・・・そう言って。
薄く笑ったのだった・・・
「え、えぇと………お、お話を…と。思ったのですが…」
「…何のようだ?」とでも言いたげなルクスの
鋭い視線に触れた門番さんは
「じゃ、邪魔なら去ります!」
少したじろいで。
一歩後ろに下がった
「・・・んしょ・・・」
・・・私は、
ヒュドラソファから立ち上がり
「…?」
「・・・おさんぽしてくる。」
『ルッ!?』「おいっ!?」
「門番さん。案内と護衛をお願い」
「えっ!?…は、はい!!」
「フォニア…ぼ、ぼくも…」
「・・・みんなはメ。」
『ルゥウゥ!?』「…ったくっ!」「えぇっ〜…」
みんなの不満気な声を背に聴きながら
「・・・」
「え、えぇと…えぇと…」
戸惑いながらも付いてた門番さんと共に
静かな夜の砂漠を歩いた・・・
「・・・そう言えば・・・」
「はい…」
「・・・ケンタウルスさん・・・門番さん。なんて、呼んでたけど。固有名は、えぇと・・・Nam-il-kins型 SN:01-017-01036号機さん・・・だっけ?」
「よ、よく。ご記憶で…」
「・・・んふふ。記憶力には自信があるの!」
門番さんを連れ出したのは・・・もちろん。
何か、話したいコトがあるらしいから。と、いうのもあるケド・・・
「・・・それはともかく。いつまでも“ケンタウルスさん”・・・“門番さん”・・・なんて呼んでいたら。あなたと、あなたの設計者に失礼よね?」
「えっ!?え、えぇと…」
「・・・Nam-il-kins型・・・ナミルキンス・・・ナミちゃん!かな?」
「えぇと…」
「・・・ナミちゃんて呼ばれるのは・・・ヤ?」
「い、いえ!そんなコトは、」
「・・・なら、ナミちゃんで!」
私が彼(彼女?ゴーレムだから、どっちでも無いのかな?)に興味があったから・・・と、いうのも大きい
「…は、初めてお会いした人間様にこんなに親しくしてもらえるなんて…こ、光栄。です…」
心を持っている・・・少なくとも。私の瞳にはそう映る・・・モノが。
300年間も故郷から閉め出され。たったひとりで、
終わりの見えない仕事に従事していたんだ。
「・・・んふふっ。私は別に・・・ちょっと魔法を宿しているだけの。ただの農家の小娘よ?」
「え、えぇと…」
「・・・普通に・・・モルタレスクの市民にしていたように接してくれると嬉しいな。」
「っ………は、は…い…………」
何も感じて・・・いや。違うか。
何も“認識”してない
ハズがない・・・
「…」
「・・・」
「……」
「・・・」
「………あ、あの…」
「・・・う?」
「…」
「・・・」
「その…」
「・・・」
「…」
「・・・心配?」
「………」
「・・・ごめんね。」
「えっ…」
焔のドワーフは、高度に発達した技術を持っていたらしい。
だから、もしかしたら今も
火山の中で平穏無事に暮らしているかもしれない。
けど・・・
「・・・それでも私は。あの門を潜らないといけない。彼らに・・・大事な用事があるから。」
「主人たちに。大事な…」
「・・・直してもらいたいの。」
「直す…?」
・・・けど。
私は思うんだ。
「・・・そう。私の大事な“翼”を・・・」
「つばさ…?」
「・・・魔法核に使っていてね。ちょっと複雑な事情があって、“元通り”に直さないといけないの。難しいコトだけど・・・でも、ソレがあれば、早く故郷に帰れそうなの。」
「そう…だったの。ですね…」
いくらドワーフが長寿(ドワーフの平均寿命は300歳くらい)で
頑強な体を持っていたとしても。
人間に近い体を持った生物である以上、
定期的に日光に当たる必要がある。
そうでないと、病気になる。
そして、どんなに頑強であったとしても、
彼らは【不老】でも【不死】でも無い。
それに、もし・・・
「・・・ん。だから・・・確認。しないといけないの。どんな結果が、待っていたとしても・・・」
「っ…」
それほど高度な技術を
持っていたというならば・・・
なぜ。
“もうひとつ”門を築かなかったのか?
そんな簡単な答えを出さなかった・・・“出せなかった”理由は・・・
「・・・あなたにはツラい思いをさせてしまうかもしれない。だから・・・」
・・・きっと、
「いいえ!」
「う・・・」
門があるハズの断崖を見つめていた私に
力強い声が投げかけられた
「主人達は必ず生きております!…先程は、ソレをお伝えしたくて声をかけたのです。」
「・・・」
「お疑い…ですか?…では、私を見て下さい!…私が“動いている”という事は、主人達もまた、生存しているという事なのです!」
そう言ったナミちゃんは
槍を高く、力強く
掲げ
「主人の盾となる…それが!私の
存在理由なのですから!!」
唱えた・・・
林檎です!
投稿日(9/24)はフォニア生誕祭!
と、いうわけで
閑話を用意しました!!
本編とは少し離れるので。
飛ばして頂いても結構ですが・・・ご興味あれば!
「次へ>>」を
どーぞー!!
(ちょっとキワドいかもしれないので・・・“天の声”聞こえて
消すことになったらごめんなさい!)
たぶん・・・だ、大丈夫。だと、
思いますが・・・




