Chapter 019_支配の塔
林檎です!
本話、ちょっと短めですが・・・ふふふっ!
よろしくお願いいたします!!
「・・・役立たず。」
「ご、ご…ごご…ご、ごめん。な、さぃ……っ…っ…」
私はてっきり、
フルートが既に帰り道を聞いているものだと思っていた。
ソレくらいのコトは、してくれている(そもそも、
自分から提案したのだから)と思っていた。
だから、
無視しても良かった修羅場に突撃し。
ドルチェお姉ちゃんの“あられもない”姿を目の当たりにし。
乙女の敵フルートを3回ほど生物学的に殺し。
その度に治癒して反省させ。
「嘘つき!」といいながら付いて来たテヌートちゃん(私の魔法を見てから黙り込んでいる。そして今は、震えながらドルチェお姉ちゃんと抱き合っている・・・)の相手もしたんだ。
なのに。コノ男・・・
「・・・無能。」
「仰る通りで…」
肝心の帰り道を
まだ聞いていないと言うではないか!?
私が空腹で喘いでいる間、私の事なんて忘れて
女の子とイチャイチャしていただなんて信じられない!!
「・・・もっかい死んどく?」
「っ。。。。。。お、お赦ひを…」
こんなダメ男
殺されて当然だ!
ドルチェお姉ちゃんもテヌートちゃんも。
他を当たった方が良いよ!!
「・・・はぁ〜・・・仕方ない。族長様と、クレシェンド様の所に行くしかないか・・・」
「「はっ!」」
『りゅ!』
テヌートちゃんの協力を取り付けてからは早かった。
彼女と“お話”をした翌日。
ようやく魔力を感じた私は、先ずヒュドラを召喚
テヌートちゃんの協力をより強固なものにして
(決して脅したワケじゃないよ。ただ、5頭揃えたヒュドラを背に。お願いしただけ・・・)荷物を返してもらった私は
ストレージバッグの保存食を全部食べてエネルギー補給!
「ま、待ってフォニア!ぼくも…」
「・・・必要ない。」
サリエルに検査と解毒をしてもらって。
ウリエルにお化粧を。ヒュドラに髪を。サリエルに服を整えてもらって
(※身だしなみは大事なのだ!)
「そ、そう言わず…」
『パッ…』
「っ!?」
・・・そして。
この里の全エルフへの威圧と
イザという時の為に・・・
「・・・余計な事しないで。」
「っ…」
最強・・・と謳われた
火属性
第9階位・・・
「次は・・・寸止めじゃ、ないよ?」
「っ…ッ……」
【燐塔魔法】を唱えた・・・
「・・・ばいばい。フルート。2人を大事にしてあげてね・・・」
「「「…」」」
燐塔魔法は・・・
背の高い炎の【塔】を建て。
“塔が見える”任意の座標に、任意のタイミングで、
ノータイムで【炎柱】をうち立てる 中規模魔法だ。
(※ちなみに、塔自体にも攻撃判定がある。【塔】も【炎柱】も、温度は1.2万℃くらいかな。・・・あ、もちろん。調節は可能だけど。)
中規模・・・とは、言うものの
ソレは塔の大きさ(太さ)のコトでしかなくて。
塔を臨む全ての地点が攻撃範囲となるため、事実上、超超大規模魔法となり得る
反則的な魔法だったりする。
この魔法の前宿者・・・陛下の祖先・・・
バスチアン元国王陛下の燐塔は、
夕陽のように赤く。
極太で背の高いモノだったそうだ。
その塔でもって
敵陣のど真ん中に、イキナリ炎柱をうち立て、
初弾で大将を討ったとか・・・なんとか。
「・・・さて。族長の家は・・・?」
「ロード。先日、我々をお喚び頂いた建物でしたら…」
「…あちらでございます!」
『ルルゥ!』
一方、私の燐塔は定番の空色。
とても背が高いから、この森全てが効果範囲となる。
逃げ場なんて・・・ない。よ?
「・・・ん!」
でも、ま。
“召喚獣”ってワケじゃないから炎柱を立てるには
座標を指示してあげないといけない。
「と、ところで…ロード?」
「・・・う?」
使いこなすには、
燐塔の位置を常に意識し。塔からの距離と方向を正確に把握しておく必要がある。
炎柱の威力とか、大きさも調整してあげないといけない。
「や、病み上がりにこんな同時行使をなされて…。お体は大丈夫ですか?」
「そ、そうです!!蛇と塔と…わ、我々まで!?」
強力無比・・・では、あるけれど。
繊細さと冷静さが要求される
火魔法“らしい”火魔法なのだ!
「・・・んふふっ。大丈夫よ!この魔法は・・・見た目ほど。魔力を消費しないから。」
「なら、いいのですが…」
・・・
・・
・
「お、おのれ魔…」
道すがら現れ、私の進路を妨げようとするエルフの兵士さんには・・・
『パチィンッ!』
指パッチンで!
「じょっ…………」
チリの一粒まで
“昇華”してあげて・・・
「くっ…は、背後をねら…」
「せあぁっ!!」
隙を突こうとする兵士さんも
「せいっ!」「はぁ!!」
『ブシュルルルゥ!!』
頼れるお供がなぎ払い!
「ロード。例の建物は…」
「あのツリーハウスですね!」
「・・・ん・・・」
コチラを見下ろす建物も
「・・・登るの面倒。」
『パッチィンッ!』
炎で
『ドグオオオオォォォォォ――――ンッッッ…!!!!!』
支柱の枝を焼き尽くして!
『ガガガガッ!!』
瞳の前まで、滑り落とし・・・
「・・・あ・・・」
って・・・
「・・・うー・・・思ったより脆い。バラバラになっちゃった・・・。」
「ま、まぁ…」
「木組みですからね…」
『るぅ~…』
途中まではうまくいったのに・・・
地面に激突した衝撃で
族長宅はバラバラ・・・
・・・ま。建築基準法もない世界だし。
空に浮かんでいるエルフの里じゃ、
“耐震性”や“防火”なんて考えてないに違いない。
仕方ないか・・・
「・・・」
目的の2人は・・・さ、さすがに無事だとは思う(仮に無事じゃ無くても、どうとでもなる)けど、何処に居るんだろう?
探すのメンドウだなぁ・・・
『『『『『『る〜る〜っ!』』』』』
と、
「・・・う?」
思った途端・・・
『るるー!』
『りゅ!』
『るるるいるい!』
『る〜る〜』
『ぶしゃあっ!!』
首分けしたヒュドラ(ヒュドラは幾らでも細かく分裂できるけど。思考と感覚のある〈頭〉は5つしか無い。また、頭から離れた分裂体は、ダメージを負ったり長時間別れたままでいると“ただの水銀”に戻ってしまう。)が探してくれる・・とのコト
「・・・いいの?」
流動性の体を持つヒュドラなら、
どんな隙間にだって侵入できる・・・
『『『『『りゅ!』』』』』
確かに・・・
ヒュドラに頼むのが、最適解かも
「・・・んふふふっ。お願いね。」
『『『『『『フシュルルルゥ!』』』』』
「・・・助かっちゃうな。」
『『『『『ルーッ!!!』』』』』
元気いっぱい返事をしたヒュドラは
5つに別れて飛び出し・・・
『『『『『ブシュルッ!!!』』』』』
・・・振り返り?
「い、言われなくても分かってる!」
「余計な心配だ!さっさと行くがいい!」
「・・・んふふふ」
2柱に威嚇してから
「・・・いってらっしゃい!」
『『『『『りゅりゅぅ〜///』』』』』
フリフリと体をくねらせ
瓦礫の山に向かったのだった・・・




