Chapter 017_わがまま魔女様
「・・・うぅぅ・・・コ、コレだけ・・・?」
風の森に来て12日目・・・
「…食べられるだけ有り難いと思いなさい!!」
テヌートちゃん(昨日から私の世話をする係がテヌートちゃんに変わった。理由は聞かされてないけど・・・フルートが“とっかえひっかえ”しているのかもしれない。今度会ったら、物理的に爆破してやろうと思う。)から渡された“今日のごはん”は
レンバス(エルフの主食で、トウモロコシの粉に木の実を加え。薄く伸ばして焼いたモノ。異世界のトルティーヤに近い。)ひと切れだけ・・・
「・・・栄養価の偏りがヒドい。そもそも量が・・・」
「イヤなら食べなくていいのよ!」
「・・・・・・い、いだきます・・・」
ココのエルフ達は数百年間。
野菜と果物とレンバスで食べ繋いできたらしい。
炭水化物と食物繊維。あと、ビタミンは豊富だろうけど・・・それだけだ。
(因みに、森の中に“小鳥”がいるので。「食べればいいのに・・・」って、言ったら。「信じられない…」「…鬼畜」「コレだから魔女は…」という顔をされた。私、何か間違っていただろうか・・・?)
そりゃあ、栄養失調にもなるよね・・・
「・・・もく・・・」
ひもじい・・・
「・・・もく・・・」
この状況下では贅沢も言ってられない。
究極の栄養補助食品が欲しい。
具体的に言うと、“熱量の友達”的なナニカが・・・
「・・・もっ・・・くん・・・・・・」
せ、せめて。
野菜か、果物でもいいから・・・
「・・・ご、ごちそう。サマ・・・」
具なしトルティーヤを
数口で食べ終えると・・・
「…ん。」
目の前に
例のお茶が置かれた・・・
「・・・」
「…」
「・・・」
「…」
効能に気付いてからは
飲まないようにしているんだけど・・・
「はぁ~…。できれば、私“は”やりたく無いんだけど?」
「・・・」
ほら。
エルフは熟練の木魔法使いだから・・・
「…諦めて、自分で飲みなさい。そのほうが楽よ。…お互いに。ね…」
「・・・・・・」
テヌートちゃんはけっこう優しい。
一方、ドルチェお姉ちゃんはというと・・・
さ、察して・・・
『くぅー・・・』
飲まない分の魔力を調整するためか知らないけど、
食事量も減らされてしまった。
当然、ご飯が入ったままのストレージバッグは取り上げられている。
フォニアはただいま、
状態異常“飢餓”に喘いでいます。
頭を分け与えてくれる正義のミカタはドコに?
タスケテココヨー・・・
『くひぃー・・・』
はぁ~・・・
鏡がないから分からないけど。
お肌荒れたり、枝毛になってないかなぁ?
・・・心配。
「アンタも強情ねぇ…」
・・・なんて思ってたら
「…こんな我儘娘のドコがいいのかしら?…!そ、そういえば、あの時の小娘も…」
テヌートちゃんが
なにやらブツブツと・・・
「・・・フルートのこと?」
「!?」
途端、「しまった!」という顔となり
「…ち、違うわよ!!」
後ろを向いて腰に手を当てた
彼女に・・・
「・・・私はフルートのコト。別に何とも思ってないよ。」
フルートには下心から“リップサービス”までしたけど・・・ま。
ソレだけで。
特別な感情は万に一つも無い。
「…」
王子様ラブ!な彼女に分かってもらうために、
「…なによ。ソレ…」
唱えたつもりなんだけど・・・
「じゃあ…ナニ?フルート様は片想いの相手に名を告げた…とでも、言うの?」
「・・・う?」
テヌートちゃんは、勢いよく振り返り。
語調を強めてそう言った
「アンタさぁ…フルート様の名前を聞いたんでしょ?」
「・・・ナマエ?」
「シンメイのことよ!」
シンメイ・・・
「・・・」
あの時の。もうひとつの名前のコト?
でも、確か。秘密にしてほしいって・・・
「…他種族に対しては秘匿してるけど…エルフ同士なら。“名前そのもの”以外は、秘密じゃないわよ。…全員。持ってるからね…」
「・・・そ、そうなんだ・・・」
「…」
私の言葉に・・・
「っ〜…」
テヌートちゃんは急に表情を変え、
耳まで真っ赤に染めて・・・
「ほんとっ…なんだっ…」
な、涙。。。を!?
「・・・ぅえ!?え、えぇと・・・」
「なんでっ…なっ、なんでアンナなのよぉ〜。。。わ、私の方がずっと。ずっと…」
「・・・うぅ!?」
「なんでっ…こ、こんなに愛してるのに!なんで?ねぇ、なんでよっ!?…ど、どうして。どうしてよぉ…」
「・・・」
え、えぇと・・・あの時。フルートからは
“もうひとつの名前”と、“誰にも言わないで欲しい“という願いを聞いただけで。
ソレがどういう意味なのかは聞いていない。
彼が。その・・・わ、私に。
“そういう”感情を抱いているの“だろう”とは、思っているし。
「秘密にして」と言ったくらいなのだから。
その名前がとても大事なモノだということも察している。
けど・・・
「こっ、こんなっ…。こんな人間の小娘に“あげちゃう”…って…な、なんでよぉっ。っ…。」
「・・・」
「お、お父様とっ…お母様も…ア、アッサリ認めちゃうなんてっ…ど、どうしてよぉ…」
「・・・」
「ず、ずっと…ずっと想ってきた私の立場が無いっ…じゃ、ないっ…。こ、こんなの…コンナノ…こ、こんなのって無いよぉ…っひぐっ…ひ、ひどぉいよぉっ…」
・・・あげる?認める??
よ、よく分からないけど・・・フルートを“奪った”って思われてて。
ソコが問題って・・・
そ、“そういうコト”だよね・・・?
「・・・フルートとは、この森でお別れだよ?」
本人からは何も聞いてないけど・・・
たぶん、彼はこのまま里に残るんだと思う。
でも、私はルボワに戻るから・・・
「っ!!」
すると、
バッと立ち上がったテヌートちゃんは
お茶のカップを掴ん・・・
「ふざっ」
うぅ!?
「けんなぁっ!!!」
投げっ!?
「きゃあっ!?」
ふえぇっ!?
『パシャンッ!!』
うぅ!?
ナニ!?ナニこの展開!?
「コノッ!ドロボウ猫がぁ!!」
お約束までっ!?
「・・・あ、あうぅ・・・」
びしょびしょぉ・・・
あ。でも、お茶が冷めてて助かっ・・・
「ふざけんなふざけんなふざけんなー!!フルート様の決意がそんなっ…そ、そんな軽い気持ちで【告白魔法】を唱えたとでも思ってるのか!?」
ゔぁ、ゔぁ〜る・・・???
唱えるって・・・フルート、唱えたの?
あ。ヴァールっていう魔法名なのか。
・・・楓魔法??
「アンタはなにもっ…な、なにも分かってない!!フルート様はっ…っ〜…!!!」
え、えぇと。えぇと・・・
「・・・た、確かにフルートから“もうひとつ”の名前は聞いたけど・・・そ、それだけで!それが何なのか?とか。なんで教えてくれたのか?とか。そういう話は・・・き、聞いてないの!」
「っ!?っ〜…!!!」
「・・・と、とにかく!私はフルートのコト何とも思ってない!むしろ。彼はこの森に残った方がいいとさえ思ってる!」
「え…」
感情が大きく揺れたせいか、
私の言葉にテヌートちゃんは少し“たじろ”いだ
よ、よし!
コレなら・・・
「・・・だってそうでしょ?彼を利用した私より。愛してるテヌートちゃんと、この森に居たほうが彼も幸せに決まってる!」
「あ、愛っ!?しょっ、しょんにゃこと…///」
「・・・あるんでしょ?」
「……………はぃ///」
思った通り!
この子、ぴゅわぴゅわガールだ!!
世間知らずで思い込み激しいくて影響受けやすい!!
もう、ひと押しっ!!
「・・・そ、ソレに。私には紙を介した約束をした人がいるから!」
「えぇ!?そ、それって…」
「・・・も、もちろん!フルートじゃなくて・・・ア、アドゥステトニアにいるの!!だから!彼の気持ちには応えられない。・・・ソノ気は一切ないの。」
「そ、そ…そうなの!?」
「・・・ん!正直いえば・・・」
「…」
「・・・こんなコトで捕まって。ひもじい思いをしないといけないなんて。迷惑って言うか・・・」
「…」
「・・・それに・・・ほ、ほら!私は人間だから!エルフのフルートとは、いつまでも一緒にいられないでしょ?」
「っ」
「・・・も、もうひとつの名前に。何か意味が・・・魔法的な意味があるなら・・・私なら。と、“解ける”から。」
・・・たぶん。
だけど、ね・・・
「そ、そっ…か…」
すると彼女は
口元を・・・
「そっか…うん。ソウよね…」
・・・弛めて
「…か、彼!そういう…ほ、惚れっぽいトコあるし!?」
「・・・」
「き、きっと!もう、何年か…な、何十年も経てば彼だって心変わり…し、してくれるし!?…そ、そうよ!エルフ“らしく”時間をかければいいのよ!どうせ、“時間はある”んだから!!」
「・・・」
「コイツさえ居なくなれば…」
「・・・・・・」
「王子様にはナイショにしておけばいいし…。お姉様が相手する事になってる今なら…うん。5日間は有るから…」
「・・・・・・・・・」
彼女の独り言は、
“あえて”聴こえないフリをして・・・
「…あんた。」
「・・・う?」
「呪い…解けるのよね?」
んふふふ・・・
「・・・詳しく教えてくれる・・・よね?」
「………いいわ。ただ、問題は…」
「・・・大丈夫。痛みはない。」
「ほんと!?」
「・・・ん。ちょっと触るだけで、あとは・・・唱えた通り。」
「そ、そう…な、なら!イケるわね!?」
「・・・もちろん。」
・・・もちろん。
「…フルート様は“あなた”に呪われているわ。」
「・・・私に?えぇと・・・」
「…楓魔法。第1階位【告白魔法】の効果は…」「・・・ま、まって!」
「…うん?」
耳長達の秘密も・・・
「・・・治癒“魔法”だから。その・・・」
「え?…あぁ!ソ、ソレくらいの食事は許してあげるわよ!」
・・・私の目的も。
「・・・ありがと!」
ぜぇ~・・・・んぶ
「わっ!?ちょっ!!アンタ濡れてっ」
「・・・だってぇ・・・」
「も、もぉっ!…布巾用意してあげるから離れなさい。」
「・・・ん!」
・・・魔女の
「…あと。食べ物も…ね…」
「・・・んっ!!」
瞳に・・・
ピンチはチャンス!?
フォニアたん。相変わらず悪い子ね・・・




