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Chapter 015_役に立つ

「存外役に立つじゃないか…」

「…そうかしら?」


フォニアが里のみんなに食事の重要性を説いてくれた日の夜…



「…フォニアは魔法以外の知識も豊富で…そ、そう!聡明(そうめい)なんだ!」


母様と父様に呼び出されたぼくは、

応接間で2人と向かい合っていた…



「…結局。料理そのものは他の者にやらせてたじゃない。娘のくせに、人に指図するなんて…」

「それは…ほ、ほら!エルフの調理場なんて初めてだから。勝手が分からなかったんだよ…き、きっと!」

「どうだか…?単にお料理をしたことが無いか…あるいは、苦手なだけじゃないの?」

「そういえば、身の回りの世話を鶏にさせているんだったか?」

「自分の着替えもできないなんて…まったく。人間達はどういう教育をしているのかしら…?」

「…」


話題は勿論。彼女のコト…


きっと…いや、間違いなく。

2人はぼくに話があるんだ。


フォニアに関して

話が…






「…で。だ…フルート。」


…それはもちろん。

覚悟していた。



「はい…」


ぼくも2人に話がある



「アノ小娘の事だがな…」


唱えなければならない…



………

……





















……

………



「・・・う?」

「…ど、どうかした?」


ごめんね。フォニアちゃん…



「・・・今朝までと。香りが・・・違う?」

「…」


…最初こそ。

アナタの事を疑い。警戒もしていたけれど…



「…そう?う~ん…。お茶の素材は、特に栽培しているワケじゃなくって。自然に生えているモノだから…お天気とかで風味が変わっちゃうことがあるかも…」

「・・・なるほど。品質管理された農産物じゃないなら仕方ないか。ナチュラルスローライフとは、このこと・・・」

「ひ、ひんしつ?なちゅらる…?」

「・・・こっちの話。」

「そ、そう…?」

「・・・ん。」



今は、力を尽くしてくれたあなたを

本当の妹みたいに思っているわ…



「…嫌い?」

「・・・んーん。ちょっと違ったから気になっただけ。」

「…ふふふっ。毎日飲んでる私でも気づかないくらいなのに…そんな小さな違いに気づけるなんて。あなた、この森で生活する才能あるわよ!?」

「・・・んふふっ。ど~しよっ、かなぁ・・・」


本当よ…



「ふふふっ!…さ。冷めないうちに…」

「・・・ん!」


だから…


「んっ・・・っく・・・」

「…」


本当はこんなコト。



「・・・・・・ぅ・・・」



したく…



「・・・ぁ・・・れ・・・」

「…」


…なかったの






「・・・ぅ・・・あれ・・・?」

「………どうしたの?」

「・・・な、なんで・・・も・・・」

「体調が悪いなら…ゆっくり休んだ方がいいわ…」


でも…。族長(おとうさま)の命令で


…そ、それに!

もし、あの時みたいに、また。フルートちゃんを

攫って行かれたら。困っちゃうし…



「・・・だ、だいじょ・・・あぅっ!?」

「む、無理しないで!」


だから…



「こ、ここは“(した)”とは、いろいろが違うから…。疲れが出ちゃったんじゃないかな?」

「・・・う〜・・・・・」

「…今日はゆっくり。休んだほうがいいよ…ね?」

「・・・で、でも。フルート。が・・・みんなが・・・」

「…」


…そう。



「…フルートちゃんには、私から伝えておくわ…」


“あなた”が悪いんだから…



「…“下”のコトなんか気にせず。今は休みなさい…ね?」

「・・・ぅ・・・」

「そう…いい子ね………」

「・・・」

「…」


「・・・くー・・・」

「…」



「・・・す〜・・・・・・」

「………コレが、理なのよ。フォニアちゃん」


………

……
















……

………



「お母様の“お茶“を…ですか?」

「えぇ…」


フォニアちゃんのお世話をしていた私に指示をだしたのは、

お母様…巫女様…クレシェンド様だった。



「そ、それは。つまり…フォニアちゃんを“迎え入れる”と…?」

「はぁ〜…フルートちゃんが大層お気に入りみたいでねっ。ソレくらいの事はしてあげないと。納得してくれそうに無いのよ…」

「そ、そう。なん。ですね…」

「…趣味で作ったものが、こんなところで役に立つなんてねぇ…」


お母様は昔…最近はめっきり無くなってしまったけど、300年くらい前までは

頻繁に交流のあった…ドワーフから錬金術を学んだことがある。



「知っての通り。アノお茶を飲むと魔力の巡りが変わって…初めの数日間は体調を崩して寝込む事になるわ。その間…世話をみてお上げなさい」

「あ…で、ですが…」

「…」


含みのある私の言葉に

一息、(もく)したお母様は…



「…なに?」


鬱陶しそうな瞳に

私を映し…



「その…フォ、フィニアちゃんは治癒術師ですから!気付いてしまうのでは…」

「…」


私の懸念に



「はぁ~っ…。たしかにぃ!?“そうじゃない”お茶と比べると、少し風味が違うから疑問に思う可能性はあるけど…。でも、それだけよ。成分は“普通のお茶”と全く同じだし。飲んだところで“魔力の巡り”にしか影響がないから“理論上、治癒術に引っ掛からない”って。穴熊(※ドワーフの蔑称(べっしょう))どもも言っていたわ。」

「そ、それは…」

「それに、あの。食べる事しか考えてなさそうな小娘のこと。少しくらい風味が違ったって気にしないに違いないわよ。」

「そ、そうでしょうか…?」

「はああぁぁ~…」


再びの…今度は、呆れた…ため息をついた

お母様は…



「…そう思うなら。あなたがなんとかしなさいよ。」

「うっ…」

「その為の風見鶏(ヴェーン)でしょ?…たまには仕事なさいな。」

「ご、ごめんなさい…」

 


アノお茶は、この森に自生する植物を巫女であるお母様(お母様はドワーフから暇つぶしに錬金術を教えてもらい。薬草栽培や薬作り(錬金術師の中でも、お母様みたいに“薬”関係の錬金術をする人のことを【薬師(くすし)】というらしい…)に数千年間ハマっている…)が、独自に開発した薬…いや。


毒だ。



原料は、ありふれた植物なんだけど…

薬師であるお母様が、森の奥にあるヒミツの薬草園で育て。

お茶(ハーブティー)に加工すると【魔力下し】という特別な薬になる。


効果は名前の通り。製法はお母様しか知らない。


同じ原料を使ったお茶は、この里で一般的。

しかも、“ただのお茶”と“薬のお茶”は、ほんの少し、風味が違うだけだから…



「え、えぇと…す、スグに…?」

「とーぜんでしょ!?」


…突然すり替えられたら。

里の者だって気付かないだろう…



「…まっ!そんなワケだから。あの小娘のお世話…ちゃんとしてあげなさい。」


フォニアちゃん…



「…」


あの子に同情して逡巡していた私に



「…、」


無言のため息を突いたお母様は…



「…いい?ドルチェ」


…たっぷりと。

含んで…



フルート(あのコ)






…唱えたらしいわよ。」

「と、となえ…?」


「名を。」

「っ!?」


「よりにもよって。あの小娘…そう。

“人間”に。」










「ぅ…そ………………」


私にそっ…と。

近づいたお母様は…



「いづれ…。他でもない、あのコのために。あの小娘にはアノ実を渡すことになるでしょう。」

「…そ、そんな…だ、だって!?」

「…仕方ないでしょ?あのコを失うわけにはいかないもの…」

「で、でも…」

「…族長も同意しているわ。」

「っ…」


「コレで分かったでしょ?」


耳元で



「魔女は…」


囁くように



「…敵よ。」


…唱えた




………

……

















「ぅ・・・ぅ〜〜・・・」

「…」


ねぇ…

私の王子さま…



「・・・ふぅ・・・・ふぅ・・・」


…どうして?

私の気持ちを。名を…知りながら。


どうして…



「・・・に・・・」


コンナコト。許されるはずがない。


「や・・・ご・・・い・・・」

「いいから…」



ホントウなら。

今すぐ、ソノ細い首を締め上げてやりたい…



「で・・・」

「ほら…ね………?」

「・・・・・・にぅ・・・・」


はぁ~…………





「・・・ふぅ・・・・・・・・・ふぅ・・・」

「………」


…それすら。

許されないと言うのなら………


「・・・・・・」

「サッサと…」

「・・・」











「…寝てしまえ………」

林檎です!


「夏休み!」と、いうワケで。

今回は特別に、もう1話。

夏休み“らしい”短編を用意させて頂きました!!



お時間よろしければ、

「次へ>」を、どーぞっ!!

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