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Chapter 012_呪いとエルフと魔女と見返り

林檎です


本話から【楓語】を標準語とし、

セリフを『』ではなく「」で表記します!


・・・よろしくね。

「・・・コレは呪いじゃない。タンパク質、炭水化物。それとミネラルの欠乏が原因の・・・栄養失調よ。」


フルートのお母様

クレシェンド・シビラ・ウィンド・ファイン様


お父様である

リュート・ガーデナー・ウィンド・ファイン様


その他、“呪われている”と思われていた全てのエルフさんを診断したところ、

その全員が【栄養失調】に陥っていることが判明した



「えーよーしっちょー…??えぇと…び、病気ってことかい?」

「・・・正確には違うけど・・・ま。そう思ってもらって構わない。」


【栄養失調】は特定の栄養素が不足した“状態”を示す言葉であって、

“症状”でも“病名”でもない。


強いて言うなら【〇〇欠乏症】になるんだけど・・・

エルフさん達はいろいろな栄養素が欠乏して、影響が複合的に現れている


そんなわけで、

一括りに【栄養失調】と呼ぶことにする!



「い、いったい…」


私に、そう訊ねたのは

ベッドの上で(からだ)を起こしたクレシェンド様


(よわい)2,500歳オーバーというご高齢な彼女はとても弱っており。

ここ50年くらいはずっと、ベッドの上で日々を過ごしているという。


・・・ちなみに、数字の“桁”は間違ってないよ。

エルフスペックだからだよ・・・



「・・・原因は調べてみないと分かりません。」


栄養失調の原因はほぼ間違いなく【食事】にあると思うけど、

(ココ)に着いたばかりでエルフ達の暮らしぶりが分からない。


いい加減なことを言って混乱させたくないからね・・・



「な、治せるかい?フォニア…」


フルートの質問には



「・・・原因を取り除かない限り“根治”にはならないけど・・・差し当たり。不調は治せる。」


もちろん、そう答える。



「さすがっ!」

「「「「「おぉ!」」」」」


50年も寝室で過ごすのは辛かったはず

(さすがに“寝たきり”というワケでは無かっただろうけど・・・)

患者様と、見守っていた多くの人から歓声があがった



「・・・けど・・・」

「けど?」


けど、今回は

唱える“だけ”では・・・




「・・・皆様の不調を治すことはできます。でも、そうなった原因を突き止め、改善しない限り。スグにまた同じ状況になってしまうでしょう」

「「「「「…」」」」」


私の言葉にエルフさん達は押し黙り。



「そ…」


今度はフルートのお父様であるリュート様が・・・



「その原因というのは…?」

「・・・先程申し上げた通り、調べてみない事には分かりません。」

「…」


栄養失調の原因はほぼ間違いなく彼らの食生活にあるだろう。


「バランスの良い食事を!」と言うのは簡単だけど。

でも、、、



「・・・いかがしましょう?」

「いかが…とは?」

「・・・調査するとなると、皆様の日常生活をこの瞳で見せて頂かなければなりません。調査結果次第では、助言をさせて頂くコトになるかもしれません。よそ者の私にそんなコトをされるのは・・・お嫌ですよね?」


エルフはとても保守的な種族でヨソ者が嫌いだ。


自分達の生活を覗き見されたうえ、

「ああしろ、こうしろ」と指図されるなんて、たまらないに違いない。



「「「「「…」」」」」

「・・・」


エルフは不老の種族だから、栄養失調だからといって死んだりはしないはず。

人間の小娘にとやかく言われるくらいなら、ちょっとくらい苦しい方がマシ!

・・・と、言うかもしれない。

そうなれば、私の出る幕はない。


助けた後で「無用だ」・・・・なんて言葉。

もう、聞きたくないからね・・・



「我らは…」


沈黙を破ったリュート様は・・・



「…我らはこの呪い…や、病だったか?…この病に数千年前から苦しめられてきた。人間の治癒術師や獣人の呪術(じゅじゅつ)師。ドワーフの薬師などに相談し。治癒や(まじな)いを受けたこともある。それにより、一時的に改善したことも有るのだが…」


・・・あ。過去にも治癒術を受けたことがあるのか。


ま。原因・・・【栄養失調】という診断結果・・・に、辿り着けなくても。

エルフ達の“症状”は“体調不良”や“体力低下”だから。

とりあえず下級内科処置魔法(ケア)をキめて改善できるからね・・・



「・・・」


・・・あと。今【ドワーフ】って言った?

パド大陸にドワーフって・・・いるの?聞いたこと無いんだけど。


・・・コレはコレは、ぜひとも。

【お話】を聞かせてもらいたいね・・・



「…だが…」


・・・ま。

ソレは後で聞くとして・・・



「しばらくすると、また同じ苦しみに見舞われ…」


体調が改善しても根本的な原因を取り除かなかったから、

一時的なモノになってしまったのだろう・・・



「…も、もし!この苦しみから解放される術があるのなら。是非とも頼みたいと思う!」


そういったリュート様はクレシェンド様と共に

ベッドの上で起こした身体を曲げて

頭を・・・



「ぞ、族長!?」


その様子を見守っていた、エルフさん達は・・・



「相手は憎き人間ですぞ!!」

「小娘に頼みなど!?」


その言葉を聞いたリュート様は



「…静まれ。」

「「「「「…」」」」」


さらに、

クレシェンド様が続けて・・・



「確かに…あの時の女児は私の“大切なもの”を盗んでいってしまいましたが、この娘は逆に“返して”くれました。私は…ちょっとくらいなら。信じてあげても良いのではないか?と、考えております…」

「・・・」


大切なもの・・・フルートのこと・・・だよね?

フルートってば、女の子と駆け落ちでもしたのかな・・・?



「…うむ。我らの意志を尊重し、治癒を押し付けなかった点は評価できたしな。」



・・・ま。ソレはどうでもいいや。それより・・・


帰り道を教えてもらうためには、巫女であるクレシェンド様(彼女のミドルネーム“シビラ”は、異世界島国で言うところの“巫女”や“預言者”の意。)と、族長のリュート様(リュート様のミドルネーム“ガーデナー”は、直訳すると“造園家”だけど、エルフの場合は“森人”という意味で。“この森の管理人”・・・すなわち【族長】ということ。)の支持を得られたのなら、大きい。



「不調を治せると言っているのですから…とりあえず治させてやって。ソレがうまくいけば、しばらく里で自由にさせてやる…というのは、如何です?」

「そう…だな…」


治癒だけさせられて。後は知らない・・・と、

言われるリスクもあるけれど。


でも今は、とにかく2人の信頼を得ないと・・・



「…みなもソレでよいか?」

「「「「「…」」」」」


「沈黙は同意…良いな?」












「…うむ。…では、人間の娘よ。若年者から頼む。」

「・・・はい。」


・・・でも、



「・・・ところで・・・リュート様。クレシェンド様。」


“天使”じゃない私は。


この治癒を“ただの親切”にするつもりなんて、

毛頭ない。



「…なんだ?」

「・・・はじめに申し上げた通り。私はアドゥステトニアまでの“道の在処(ありか)”を求めてこの森にきました。」


慈善行為をして結局、裏切られる

正統派【悲劇のヒロイン】なんて“魔女(わたし)”には似合わない・・・



「・・・皆様をお治ししたら。その報酬として・・・」


・・・でしょ?



「…あぁ。いいだろう」


リュート様がオーケーしてくれたと思ったら、



「ただし!」


すかさずクレシェンド様が間髪入れず



「…病の根治を含めた“完治”の後…ですよ?」


と・・・



「・・・分かり・・・ました。」


・・・ちゃっかりしてますね。

もっとも・・・



「・・・では、今の内容で紙を介した契約をさせてもらいます。」

「なっ!?」

「か、紙を介した…だと!?」


「・・・『理の願い』ヴージンリーフ。っと・・・」

「「!?」」


ソレはお互い様だけどね・・・



「・・・ウリエル。」

「イエス、マイロード!」


プレッシャーを与えるために、



「「「「「なぁっ!?」」」」」


(いなくてもいいのに)“あえて”喚んだ

ウリエルを横に立たせて



「・・・では・・・リュート“様”?」


綴りたての契約書をリュート様の瞳の前に



「・・・ご確認を」


『ピラッ』と掲げて



「・・・んふっ・・・」


余裕の笑みを浮かべて



「っ…」


たっぷり間をあけて・・・



「・・・お唱え下さいませ・・・」


唱えるっ!

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