Chapter 011_風の森の入り口で
森が浮いている・・・
「ようこそフォニア!風の森へ!!」
私の2つの瞳には
その言葉通りの景色が広がっていた
「・・・」
フルートの話を聞いたときは半信半疑で。
某・天空の城みたいなモノを想像していたけど・・・
ぜんぜん違った。
「…フォニア?」
「・・・///」
ソレは正に【森】だった。
宙に・・・数えきれないほどのシャボンを纏った・・・1本の巨大な
世界樹が浮かんでいて。
木の根を籠のように拡げて他の木々や草花、そして土を包み。
小さな森を支えていた。
「…ははは。好きなだけ見ていってくれよ…」
森の中では見たこともない鮮やかな鳥達が歌い
色とりどりの花畑で、蝶たちが、風に負けじと羽ばたいていた。
目の前では雲が駆け抜け、青葉キラめく露を授けた。
纏風魔法が低酸素に抗うために、魔力を消費していなかったら・・・
ココが空の上だなんて。信じられない・・・
「・・・・・・きれい・・・」
・・・ここは、そんな。
美しい森だった・・・
「…なにをのんびりしているのですか?早く、患者の元へ…」
景色に見惚れていると、パッシオナート様が声をかけてきた。
「ま、まぁまぁ〜…パッシオナート様!」
けど、フルートがソレを遮って・・・
「体調が悪い〜…って言っても。急を要する事態じゃないんだろ?…いつも通り。」
「ソレは…」
「なら!少し彼女に里を案内させてくれよ!!ぼくだって久しぶりの故郷を見て回りたいし…。ソレくらいの時間は取ってもいいでしょ?」
その言葉にエルフさん達は
「「「「…」」」」
呆れた顔をしたあと・・・
「…ドルチェ。」
私達を待ち構えていた
小さなエルフちゃんに声をかけ
「は、はい!」
「王子と…その術者を案内してあげなさい。」
と、言ったのだった・・・
「…じゅつしゃ?」
「その人間の小娘…治癒術師らしいわ。」
「ちゆ?ちゆ…ち、治癒!?治癒術師様!?」
「くれぐれも…ね?」
「は、はい!!」
“ドルチェ”と呼ばれたエルフちゃんは
緊張した面持ちで視線を移し
「で…では!オキャクたマ!!『不肖』ドルチェ・ヴェーン・ウィンド・ファインが風の森をごアンにゃひさせていただきまひゅ!」
長い銀の三つ編みと、素朴なスカートを風に靡かせて
「よ、よろしくお願いいたしミす!!」
健気に、
「頑張ります!」
といった雰囲気全開で・・・
「・・・か、」
「…か?」
・・・って!
「・・・かわいい!!」
「きゃぁっ!?」
ナニコレ!?
ナニコノお人形ちゃん!?
異世界転生モノに登場するエルフちゃんくらい可愛いいよ!
って。その通りか・・・
「・・・かわいい!!ドルチェちゃん可愛い!!」
「うわぅうわぅうぅ〜」
あぁぁ・・・ちっちゃい!!
ちっちゃ可愛い!!
ティシアもシュシュも私より大きくなっちゃったから、
自分より小さい子を抱くのは久しぶりっ!
「・・・かわいい!かわいいよぉ!よ〜し、よしよしよ〜し!」
「むぅ、にぃ…」
フルートから風の森のエルフは“ちっちゃい”と聞いていたのに
お迎えに来てくれたエルフさん達はみんな大きくて。
ちょっとガッカリしてたんだよね・・・
「ちょっ、ちょっとフォニア…」
甘々ドルチェちゃんを胸に抱き
ナデナデしていると・・・
『む、むぅ!なんですかコノ子は!息ができないじゃないですか!』
「・・・う?」
胸の間から、くぐもった・・・楓語?
『フルートちゃん!!アナタ…さては、おっぱいで女の子を選んだんでしょ!!だからこの子を連れてきたんでしょ!?そうなんでしょ!!」
『へっ!?違っ!!』
『いーえ、違いません!!おねーちゃんには分かります!!思い返してみれば、アノ小娘もそこそこ大きかったし…』
え、えっと・・・
『オージのバカッ!!私という婚約者がありながら!!』
『あいたっ!!…テ、テヌート!?』
『まぁ…フルートちゃんは男の子だから。大きい方が好きなのかもしれないケド…でも。コレはタダの脂肪の塊なのよ!夢も希望も浪漫も魔力も詰まってないんだからね!』
じょ、状況を整理すると、
要するに・・・
「・・・フルート。私の体が目当てだったんだ・・・」
「っ!?!?…ち、違う!?違うよフォニア!!」
『わ、私だってちゃんとアルもん!!』
『えっ…』
『あぁっ!?フルートちゃんったら、ジッと見ちゃって!ヤラしいんだから!!』
「ちょぇっ!?」
「・・・フルートのヘンタイ!」
『オージのスケベ!』
『フルートちゃん、ヒドイわっ!』
フルートはドイヒーエロフ
「なんでだー!!」
ソレは間違いない・・・
・・・
・・
・
『か、楓語(エルフの公用語。単語や表現が多いので、一般に難しいとされている。けど・・・ま。日本語よりは簡単だしね。)をマスターしているなんて…フォニアちゃん。凄いんだね…』
『・・・恐縮です。』
話を聞くと、ドルチェちゃんはフルートの直接(エルフは家族[親戚含む]単位で里を築く。)のお姉様とのこと。
『でも…いくら女の子同士でも。初対面のヒトに抱きついちゃダメよ?ビックリしちゃったわ…」
「・・・ごめんなさい。」
彼女が小さいのは生まれつきらしい。
2人のお母様がとてもちっちゃいヒトだから、その遺伝だとか。なんだとか・・・
あと、カタコトだったのは単に
人間語の勉強を疎かにしていたのが原因なんだそうだ。
風のエルフは大昔から獣人や人間と交流があったから、全員が人間語の勉強をしていたんだそうだけど・・・
永久隷属法の発布以来、人間を受け入れていなかったから忘れちゃったんだって。
・・・ま。220年も話さないでいれば当然だよね。
むしろ、流暢な人間語で話してくれた
他のエルフさん達が凄すぎるという・・・
『それにしても…ふふふっ!フルートちゃんは隅に置けないなぁ~。相変わらずモテモテなんだからっ!』
『お、お姉ちゃん…』
「・・・」
私が楓語も宿していると知るやいなや
『それじゃあ!里を案内してあげるわ…楓語で!
…あ、私のことは“ドルチェお姉ちゃん”って呼んでね!』
と言ったドルチェお姉ちゃん。
里の案内・・・と言いつつ、
実際はお喋りしながらお散歩しているダケである。
道すがら見かけた
飛竜が繋がれた納屋とか、
意味ありげな(“水見”とかやっちゃいそうな)水盆の置かれた東屋とか、
ユグドラシルに続く長い階段とか、
水源不明の川とか・・・
気になるランドマークを全部スルーして。
お散歩は続くのだった・・・
『婚約者が何人もいるっていうのに、また女の子連れてきちゃうなんて…フルートちゃんの浮気者ぉ!』
『お姉ちゃん!余計なコト言わないでよ!!』
・・・ま。
ランドマークのコトはこの際いいや。
それより・・・
『テヌートちゃんもだけど…わ、私にも///あ、後でちゃんと。“お話し”して貰いますからね!!』
『お話しって…』
『でも…まあ。前と違って、今回は“役に立ちそう”な子だから許してあげるわ。ちゃんと謝ってくれたら、ね…』
コレは・・・アレかな?
フルートにはジャスティスが必要ってコトかな?
「・・・ふ」
よろしい、ならば粛清だ!
と唱えるつもりで口を開きかけた
『止めてよお姉ちゃん!』
・・・その時
『フ、フルートちゃ…』
『ぼくはそんなつもりでフォニアを連れてきたんじゃないよ!ぼくらの呪を解いてほしいっていう下心があったことは、認めるけど…』
あ。下心はあったんだ・・・
でも、ま。そんなコト言ったら
「帰り道を教えて欲しい」と思っている私も
ヒトのコト言えないんどけどね。
だからこそ。「呪いがなんだ〜・・・」って、話が出たあとも
大人しく付いてきたんだし・・・
『…じゃあ。どういうつもりで帰ってきたのかしら?』
フルートの言葉を聞いたドルチェお姉ちゃんは
笑顔を引っ込め。
『…』
フルートと・・・
「・・・」
・・・そして私を。
厳しい顔で見つめ
『…母様達のところで…話すよ。』
フルートのその言葉に
『ふ〜ん…』
と、だけ答え。
それきり、
『…』
黙り込んだのだった・・・
・・・あ、あれ?
案内・・・してくれないの?
次回以降カナ・・・?
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そ・れ・とっ!
活動報告うpりました!!
本章についての・・・ちょっとした裏話?と、
次章以降の執筆状況についてです!!
ご覧あそばせ、よろしくね!




