Chapter 010_天空の森
「はぁ~…死んだかと思ったよ」
「・・・“思った”じゃなくて。生物学的には死んだのよ・・・」
3人の乙女からジャスティスを受けたフルートを
蘇生させたのち
「ち、治癒魔法だと!?小娘。貴様いったい…」
「そんなっ!?…み、見て下さい!コイツの瞳…」
「まさか…く、黒色!?」
残り2頭の飛竜から降り立った3名のエルフさんは、
私達を警戒しながらそう言った
その中でも、一番最初に声を上げた
年長っぽいエルフのお姉様に向かって・・・
「お久しぶりです。パッシオナート様…」
・・・フルートが。
「この子はフォニア。人間達が言うところの魔女です。」
「・・・」
私の肩を抱きながら・・・
「魔女…?」
「彼女の腕前はご覧の通りです。瞳を見れば予想が付くと思いますが…治癒術も。他の属性も。…風属性はぼくと同等だし、木魔法も途轍もなかったですよ。」
「お、王子と同等ですって!?」
「ぼくの隷属魔法を解いてくれたのも彼女なんです!」
すると
「えっ!?」
「んなっ!?」
「お、王子!!あ、貴方様は。その…ど、奴隷に!?」
パッシオナート様と呼ぼれたエルフさんはじめ、
他のエルフさんも驚いてフルートに瞳を移した
「うん…あ、あれ?知らなかったの?」
「知らなかったの?…ではありません!!知らせの1つも寄越さないのでは、知りようがないではありませんか!!」
「奴隷だったんだから。手紙なんて書けるはずな…」
「ご自慢の召喚獣を寄越すとか!やりようは幾らでもあったではありませんか!?」
「そうです!それがあればお助けする事だって…」
「…」
もっともな意見に黙り込んだフルート
ソレをみたテヌートちゃん(丸見えエルフちゃん)は
「ど、どうせ!あの小娘に唆されて奴隷にされたんでしょ!フルート様のアホー!!」
・・・と言って
泣き出してしまったのだった
「・・・あの小娘?」
「あっ…。う、うん…。ちょっと昔ね…」
「・・・ふーん」
・・・訳アリ?
ま。
言いたく無さそうだから。
これ以上は聞かないけど・・・
「そ、それより…」
事情はよく分からないけど・・・
女の子を泣かせたドイヒーエロフのフルートはテヌートちゃんを横に
(テヌートちゃんカワイソ。でも、事情が分からないから
声をかけてあげる事もできない・・・)
「…母様と父様に会いに来たんだ。」
パッシオナートさんと
会話を再開した
「えっと…」
すると・・・?
「…お、おふたりとも。今は体調が優れなくて…」
「えっ!?あぁ…例の?」
「はい…。お歳がお歳ですので…」
「そっか…で、でも!ここには、ホラ!治癒術師がいるだろう!フォニアにかかれば、部族にかけられた呪いもあっという間に解いてくれるよ!!」
フルートは、そう言って私を示した
そんなフルートに向かって小声で・・・
「・・・そんな話。聞いてないけど?」
と、たずねると
「い、今は話を合わせて!」
「むぅ・・・」
・・・ま。
ご家族が病気?呪い?で、
苦しんでいるみたいだから・・・
「・・・・・・わかった・・・」
「ふぅ…」
・・・とりあえず。
私が“折れる”ことにして・・・
「で…」
フルートと共に
顔を戻すと・・・
「「「「…」」」」
エルフさんたちは、胡散臭げな表情・・・
「…か、彼女の実力は見た通りだよ!」
「「「「…」」」」
「こんなチャンス、もう二度と訪れない!それは…わ、分かるだろう!?」
「「「「…」」」」
「・・・」
私の知っているエルフはアドゥステトニア大陸に暮らす
【北のエルフ】に限られている。
少なくとも、北のエルフは人間を・・・嫌っては、いないらしいけど。
里への来訪については、快く思わないらしい。
風のエルフも同じなのかもしれない・・・
「…で、では…」
私がそんなコトを考えていると、
「術師の小娘。ひとりだけであれば…」
・・・なんてコトを言ったのだった。
「えっ!?えっと…ほ、他のみんなは彼女の身内だし。ぼくもずっと一緒に旅をしてきた仲間なんだけど…」
と、フルートが反論したものの
「いくら王子の言葉でも、ソレはなりません!!」
「何故人間を里に招かなくなったのか…他でもない。王子がいちばん良くご存知でしょう!?」
「貴方様は“また”人間の小娘を連れてきたんですよ!!少しは自重してください!!」
「オージは乙女ゴコロが分かってない!!」
「懲りて下さいませ!」
フルート・・・一体なにやったの?
・・・女の子連れ込んでヤンチャしたとか?
「し、仕方ないじゃないか…」
「「「ナニがっ!どオッ!?」」」
普通に見損なう・・・
「・・・」
・・・ま。でも。現実もあるから、
だまっとこ・・・
「えっと…ど、どうする?フォニア…」
「・・・オージが決めて」
そういえば、フルートって王子様だったんだ・・・
北のエルフは王政じゃなかったハズなんだけど、風のエルフは違うのかな?
王子様のイメージないんだけどなぁ・・・
「お、お嬢様のお世話のために私は行きます!生活能力が無く、お一人ではお着替えもできないお嬢様には私が必要なのです!」
と、ローズさん。
「・・・」
生活能力が無い事は自覚はしているけど・・・
あ、改めて言われると危機感を覚えるね。乙女的な意味で。
「シュシュは護衛だからいつも一緒なのです!それに…シュ、シュシュは獣人だから問題無いのです!!」
と、モフモフアピールのシュシュ
シュシュも成長したなぁ・・・
「わ…わ、私はお姉様の妹だから一緒に行きたいです!け、決して!!エルフの里を見てみたいからなんて理由じゃありません!!」
マイシスターはジバk・・・い、いや!
素直でカワイイと思っておこう。うん!!
「…おっさんはどうする?」
「テー次第だな。…お前はお姫様を守らなくていいのか?」
「おひ…ほ、本人がいいってんならいいだろ!」
「…素直じゃないな。」
「っせー!」
残る男性陣は・・・様子見?
「…っ」
ソレを見ていたパッシオナートさんは・・・
「八百歩譲って術師の小娘を許すのです!他の者を許すはずがありません!!」
・・・と、オコである。
「わ、私がいないとお嬢様は…」
粘るローズさんには
「着替えが必要になるほど長く滞在させません!!」
さらに・・・
「シュ、シュシュは…」
「人間の息がかかっているなら同じ事です!」
「テ…」
「里は遊び場じゃありません!」
「いや、子供のエルフの為の遊び場もあるじゃn…」
「王子は黙ってて下さい!!」
取り付く島もないね・・・
「はぁ〜…」
深いため息をついたフルートは
「…ソレでいいかい?フォニア?」
・・・と、
私を見つめて言ったのだった。
もっとも、「いいかい?」と聞かれても・・・
「・・・仕方ない。」
と、答えるしか無いんだけどね・・・
・・・
・・
・
「お嬢様。どうかお気を付けて…」
「・・・ん。大丈夫。」
その後・・・
「ご主人様ぁ…し、心配です!」
「・・・んふふっ。大丈夫だから・・・いい子に待っててね、シュシュ。」
必需品を入れたポーチ(もちろん、ストレージバッグ)をローズさんに渡され、パッシオナート様に武器(ま。武器と言っても剣を預けただけで、ヒュドラ含め指輪は無事なんだけどね・・・)を取り上げられた私は、飛竜に乗り込む前に
留守のお願いをしていた・・・
「・・・ゲオ様。妹を・・・みんなを。お願いします。」
「…あぁ、願われた。…任せろ。」
みんな強いから、私がいなくてもナンともないだろう。
けど・・・
「・・・ルクスも、みんなをお願いね。」
「…ふんっ。自分の心配をしろ。」
「・・・んふふふっ。ありがと、気を付けるね。」
けど、やっぱり。心配は心配だ。
アノ時みたいに強力な魔物が現れるんじゃないか?とか
誰かが病気になっちゃうんじゃないかとか・・・
・・・そんなコトばかり考えてしまう
「お姉様いいなぁ…。私もお空の森に行ってみたかったなぁ…」
「・・・ごめんねティシア。お土産、持ってくるからね・・・」
「きっとだよ!!」
いろいろ失って。すっかり弱虫になっちゃったなぁ・・・なんて。
思ったりなんか、したりなんかして・・・
「えぇと…そ、それじゃあよろしく頼むよテノール…」
「ツーンッ!」
「・・・よろしくお願いします。パッシオナートさん。」
「はぁ…。振り落とされないように、しっかり捕まっていて下さいね…」
「・・・ん!」
天空の森へ飛び立った!!
「「「いってらっしゃーい(です)!!!」」」
飛竜に乗って。
上へ、上へ・・・
憧れちゃいますね!!




