Chapter 008_昨日の魔物だけど・・・
林檎です。
本話“も”短めです。
ご了承ください・・・
「・・・ね。ルクス」
明けて翌日“何事も無く”
ロワノワールの背中にて
「…あ?」
「・・・昨日の魔物だけど・・・ヘンじゃなかった?」
夜通し走ってくれているロワノワールの背中で目を覚ました私は
・・・
先に目覚めたシュシュは斥候に向った・・・と説明され。
「お着替えしましょう!おめかしも!!」と、整えられ。
「今日の朝食はトマトとチーズとローストビーフを挟んだバケットサンドです!」「わーい!」と、施しをうけ・・・
・・・今に至る
「…ヘン?」
「・・・造り物染みているというか・・・完璧すぎるというか。」
青い空と砂色の大地がどこまでも続く
代わり映えのない大砂漠の旅は退屈そのものだった
魔物が現れても、みんなが処理しちゃうから私の出番なんて無い。
砂嵐が迫った事もあったけど、ロワノワールとエオリアちゃんが安全なルートに迂回しちゃったから何とも無い。
もちろん。ソレはいい事なんだけど・・・
「“中身”の事なんてボクに分かるわけ無いだろう?」
「・・・“外身”だってヘンだったでしょ?」
・・・やることが無い私は
シュシュを呼んで撫で回したり。ローズさんに髪型を変えてもらったり。
ルクスのお耳に「フー」して遊んだりしていた。
「…魔物なんて、あんな物なんじゃないのか?ヒュポグリフだって似たような物だったろ?」
「・・・それは・・・ソウかもしれない。ケド・・・」
そして今日は、
ちょっと気になった事について話しをすることにした。
「…まぁ。戦った感想しか言えないが…強かったな。“人と”戦い慣れていたな。」
「・・・人と?」
「…あぁ。間合の取り方が絶妙だった…」
・・・き、昨日のアレを。
忘れちゃったわけじゃない。
「・・・ほぼ無人の砂漠なのに?」
「…」
けど・・・
「そう…だな。…確かに妙な話だ。」
「・・・むぅ・・・」
みんな。
何も言わないでいてくれるので・・・
「気になったといえば…」
「・・・う?他にもあるの?」
「あぁ…ヤツの放つ魔術。『メェー』とかフザけた声で発現させてたが、現れたのは火球魔法と棘魔法に酷似していなかったか?」
「!・・・そ、そうだったかも・・・」
・・・素直に。
甘える事にした・・・
「案外。おま…フォ、フォニアが。言った通りかもな…」
「・・・う?」
「“造り物”だったりしてな…」
「・・・」
「…気になる事でもあったのか?」
ルクスのその質問に・・・
「・・・実は・・・」
答えようとすると・・・
「何の話しだい?フォニア!!」
エオリカちゃんを並べたフルートが
声をかけてきた
「魔物がどうとか言っていたな?」
ゲオルグ様も話に乗ってきた。
大きな声で話していたワケじゃ無いけど・・・聞こえていたのかな?
「…ふえ?まー…の?」
ゲオルグ様の外套から首だけ出したティシアは
瞼を閉じたまま声をあげた。
「…テー。お前はまだ寝てろ。」
ゲオルグ様に言われて
「ふゎ…?………ふー…ゎ~…」
ふたたび。ウツラウツラと外套の中へ・・・
「・・・んふふっ。」
すっかりゲオルグ様に懐いている妹の安心しきった寝顔と、
有袋類のような可愛らしい仕草に笑顔してから・・・
「・・・えと。昨日の魔物の話・・・」
ルクスにしたのと同じ話を
2人にもする事にした・・・
・・・
・・
・
「う〜む…。ナカナカ面白い話だねぇ…」
そう言ったフルートは
続けて・・・
「まー…本当のところは分からないけど。ぼくら風のエルフの間では、2,000年以上前からあの魔物の存在は知られていたハズだよ。その時代の書物に、恐るべき魔物…とか。書いてあったと思うから…」
「・・・」
ということは・・・あのキメラは、2,000年も生きている?
それは・・・恐るべき生物だね。
細胞の代謝とか、どうなっているんだろう・・・?
・・・別個体?
イヤ、でも。生殖能力なかったし・・・
「…何か。そう思う根拠でもあったのか?」
ゲオルグ様のその言葉には
「・・・さっき話した通りかなぁ・・・。」
「決定的なモノは無い…ということか?」
「・・・そうなる。」
「ふむ…、っと…」
ティシアを抱き直したのか・・・ゲオルグ様は
小さく身じろぎをしてから
「…治癒術師としてはどうなんだ?“名前の通り”多数の魔物をかけ合わせたのキメラを作るなど…可能なのか?」
・・・と、聞いてきた
「・・・」
その問いに・・・
「・・・少なくとも。“今の”私なら、できる。」
・・・と、
答えると
「………そうか。」
と、ゲオルグ様は静かに答え
「は、はは…。で、できちゃう…の。か…」
フルートは引き攣った笑顔で
そう言って・・・
「こっわ…」
ルクスの呟きには・・・
「・・・自分でもそう思う・・・」
正直に答える
「だが…当然だが。誰でもできるワケでは無いのだろう?」
ゲオルグ様の言葉には
「・・・ん。・・・そもそも。私が“できる”と思ったやり方は高位の治癒魔法と契約魔法のコンボだから。その2つともを宿しているのが条件になる。でも、現状。その2つを宿しているのはリブラリアで私1人だけらしい。」
「フォニアだけ?…どうしてそんなコト分かるんだい?」
「・・・天使たちが“そうだ”って言うから。」
「なら。間違いないな…」
「…他の方法は?」
あんな不安定そうな生物を2,000年も生き長らえさせるなんて
並大抵のコトじゃない。
契約魔法で理付けて。治癒魔法で摺合せて。
やっと、できるかなぁ・・・?といった所なのだ。
ソレを他の方法でする
となると・・・
「・・・分かんない。でも・・・」
「でも…?」
「・・・未知の魔術や魔法なら。あるいは・・・」
私のその言葉には
「はぁ〜…」
ルクスが・・・
「…ンなこと言ったら、何でもアリじゃないか。」
それは・・・
「・・・んぅ・・・」
・・・そう。なんだけどね・・・
短い話が続いてしまったので、
今回は3話(Chapter 007&008&009)同時投稿します!!
ちなみに、次話は長めです :)
・・・よろしくね!




