Chapter 006_忌み子
林檎です!
本話。ちょっと長めですが次話が短いので、
2話でバランスとってます!
よろしくねっ!
「・・・シュシュの事。覚えているのね?」
私が口を挟んだ途端・・・
「「「「「…」」」」」
砂狐族のみんなは
おし黙ってしまった・・・
「・・・私たちが奴隷商人に見える?たまたま、進路上にあなた達がいただけよ。シュシュはむしろ、あなた達と出逢うことを拒んでいた。瞳に誓って、あの子の案内じゃない。」
「「「「「…」」」」」
「・・・それに、砂漠にいたあなた達は、まだ知らないかもしれないけど・・・永久隷属法は破棄された。ウィルトゥースの橋も崩落した。今後、奴隷商人が来るコトは無い。もう、怯える必要は無いの。」
「「「「「…」」」」」
私の言葉に彼らは何の反応も示さず
ローズさんとゲオルグ様が作ってくれた栄養満点スープにも手を付けず
ただ、グッと堪えるように下を向いていた・・・
「っ・・・」
私は・・・そんな彼らに、腹が立った
命をかけて魔物と戦ってくれたルクスとゲオルグ様に瞳も合わさず、
感染症のリスクを背負って清めてくれたローズさんとティシアにお礼も言わずっ
かなり優しく接して、気遣ってもくれたフルートを無碍にし!
私のシュシュを“忌み子”などと呼んだ!?
彼らが!!
「・・・何とか言いなさい!!」
とても不満だった
「で、では………」
長い間を空けて
「…にゃにが。狙い…なのです?」
彼らは話し始めた
「わしらを助け…ど、どう。にゃさる…?」
・・・かわらず。下を向いたまま
小さな手を震わせて・・・
「・・・別に、“どう”もしない。・・・「保護してほしい」と言うなら守ってあげるし。「放っておいて」と言うなら・・・心配だけど。ココでバイバイする。」
「た、助けて頂いたお礼は…」
「・・・必要ない」
「「「「「…」」」」」」
「・・・なら、聞くけど・・・何か。払える物があるの?」
厳しいコト
言うようだけど・・・
「わ、我々には、もう。この身しか…」
「・・・砂狐族の仲間は・・・“間に合って”る。」
「「「「「…」」」」」
「・・・・・・それとも・・・その身に魔女の呪いを宿すのが、お望みかしら?」
「「「「「っ…」」」」」
「・・・んふふふっ・・・」
もちろん。これは冗談だけど・・・
「フォ、フォニアッ!そんなコト言って…。タダでさえ怯えているのに。無用に脅しちゃ可哀想じゃないか…」
「・・・だって、この人たち。私のシュシュを・・・」
「だからって…。も、もうっ!ココはぼくが引き受けるから。フォニアは…」
「む、むぅっ!お嬢様に近づきすぎよ色ボケエロフ!もっと離れて…」
フルートとローズさんと、
話していると・・・
「…た、助けなど不要だったのです!何故このような仕打ちを!?」
砂狐族の人達の中でも、特にお年を召した
男性のご老人が
「あ、あの時…仲間の犠牲で生まれた隙を突いて、我々は逃げ出すところだったのです!!助けなど不要だったのです!!」
「やはり、呪いにかけるのが目的だったのではありませんか!?」
「なんと卑怯な…」
「・・・ソレについては・・・ごめんなさい、言い過ぎました。ホントに、そんなツモリは無くて・・・」
「どうだかっ!」
「ぼ、ぼくからも謝るよ…」
「エルフ様…といえど。人間…そ、それも魔女などと行動を共にしている方の言葉など、とても信じられません!」
「あー…」
しまったなぁ・・・
「きっとエルフ様は、魔女に呪われたか…籠絡されているんです!」
「ひ、否定できない…」
「・・・否定しなさい!フルート。」
「う、嘘はよくないだろう?フォニア。」
「・・・呪いはもちろん。誘惑なんて、したことなんてないでしょ!」
「え゛…」
すると
先程のご老人が・・・
「い、忌み子を奴隷として連れてるような人間が信じられるか!」
む・・・
「い、今すぐココを…」
子供たちに向かって説くご老人に
「・・・」
「…離れ…ヒッ!?」
歩み寄った私は
「な、なんじゃ!?」
「・・・」
その瞳をじっ、と
覗き込み
「・・・・・・イミコ・・・というのは。私の大事な家臣のことを言ってる?」
「…」
私の質問に答えようとしないご老人を前に
「・・・ウリエル。」
『パチィンッ!』
「はっ…」
断罪の天使を喚びだし
「・・・この天使は相手の心が読める。」
「なっ…」
「嘘も沈黙も・・・無意味よ。」
「っ…」
「・・・質問に答えろ。」
すると
“説得”が功を為し・・・
「…そ、そう………と、唱えた通りだ!」
「・・・なぜ?」
「ナゼ…だと!?あ、あんな気持ち悪い毛色とデタラメな瞳の獣が…」
「ヒュドラ」
老人の話の途中でヒュドラを呼び出し
『ブシュルルルッ!』
「ぐむっ!?」
口を閉じさせ、
「・・・聞くに堪えない」
「ロード。いっそのコト…」
天使が老人の首に添えた斧の・・・
「・・・まだ殺すな」
「はっ…」
・・・その柄に
『そっ…』と触れて、止めてから
「っ…っっ…」
「・・・あの美しい毛並みと瞳が見えていないなんて・・・」
腰に刺したナイフを抜いて
「・・・お前に瞳は必要ない。」
「っ!?!?」
『ピッ…』
と・・・
「「「「「きゃあぁっ!!??」」」」」
後ろのウルサイ獣たちは
『ブシュルルルゥ!!』
「ひいっ!?」
「あ、あぁ…」
「魔女様がお話になっているのに…うるさいぞ!獣がっ!!」
「「「「「っ…」」」」」
ヒュドラの睨みと
サーベルを抜いたローズさんの言葉で黙らせて・・・
「・・・ヒュドラ。獣を・・・」
『ルルゥ!』
ヒュドラによって顔を上げさせられた獣は
「っ…」
首の後ろにちょっと斧の刃が当たり、
皮膚が斬れて血が滴った程度で泣きべそをかきながら・・・
「ひっ…ッ……」
跪き
血と恐怖と涙でグチャグチャになった顔を
私に向け・・・
「・・・んふふふっ・・・」
いい気味・・・
「・・・次は・・・余計なお喋りしかデキない。その喉を落としてあげようか?」
「っ…ッッ…」
「・・・う〜?そんな情けない顔して・・・さっきまでの。勇ましい態度はどうしたの?」
「ッ…………」
「・・・んふふふっ!・・・ほらっ、悔しいなら言い返してみなさいよ!」
そう言って、こころの中で
ヒュドラに口の拘束を解くよう
命令すると・・・
「………………………っ…ブブッ…………っ…」
老人は咽ながらも、
「・・・う?」
ブツブツと・・・
「っ…ゲホッ…せっ………」
「・・・うぅ?なんて・・・」
「ご…ゴボセッ!!」
「・・・・・・・・・」
「ゲホッ、ゴホッ…ご、ご…」
「・・・ヒュドラ。」
『ル』
「ぶぶっ!?」
ほんとーに
余計なお喋りしかできない口を閉ざした私は
「・・・“アナタの生死”を決めるのは、わたし・・・気まぐれな魔女よ。」
「…っ…ぐっ………」
ヒュドラに強く首を締めさせながら
そう言うと・・・
「ひっ…せっ…せ!せめて子供達だけでも!!」
残された大人の獣達が
震える子供達の前に立ち
「どっ、どうか…わ、私達はどうなっても構いません!!ですから!どうか…」
魔女に・・・
「・・・どうして?」
「………は?」
「・・・どうして・・・シュシュに。その愛情を向けてあげなかったの?」
「「「「「…」」」」」
「・・・毛の色が違って。瞳の色が違って・・・だから、なに?」
「・・・この子は。たった一人で。見知らぬ土地で。見知らぬ人に頼らないと生きていけないほど・・・追い込まれていたのよ?」
「なのに・・・なによっ!!どうしてその子達の事は命がけで守れるのに。シュシュの事はアッサリ捨てられたのよ!?おかしいじゃない!!同じ家族でしょ!?」
「ご、ご主人様…」
「・・・“違う”から・・・って!そんなの当然でしょ!!ここにいる全員!!顔も瞳も名前も違うじゃない!!ソレと何が違うっていうのよ!?」
「「「「「…」」」」」
「こんな簡単な事も分からないあなた達がケモノでなくて、。ナンだというのよ!!ふざけないでよっ!!!!!」
泣きながら叫んだ私は
「ご、ごしゅ…」
少し離れた場所で見守っていた
シュシュの元に駆け寄り
「っ!」
強く引き寄せ
「ふにゃっ!?」
抱きしめて
「っ・・・あなた・・・んーん!お、お前らナンカにこの子は返してあげないっ!!この子は、私のモノだ!!」
「ご主人さま…」
「・・・何も・・・人の心すら持ってないお前らから貰うモノなんて何も無い!!理不尽で下らないコダワリに呪われたまま。砂漠を彷徨っていればいい!!」
「「「「「…」」」」」
「行くよっ!ロワノワール!!」
『ヒーッ、ヒュブブブゥ!!」
シュシュを抱いたまま
ロワノワールに跳び乗ると
「お、お嬢様っ!?…置いてかないでぇー!!」
「はぁっ…ったく!ヤレヤレだっ!!」
駆け出したロワノワールに
ローズさんと、ルクスが慌てて跳び乗ってきた
「はぁ~…。行くぞ、ロー。」『ブフッ!』
パカパカと歩き出した
ロワノワールの上で
「ルクスのバカ!ばかばかばか!!」
砂と返り血で汚れた彼の背中を
ポカポカ叩きながら・・・
「あーあ〜…ハイハイ。そうだよバカだよ。バカですよぉ〜、っと…」
星の光を反射するオアシス・・・という名の
水溜りを横目に
「ご主人様ぁ…」
小さくて大きな温もりを感じながら
「・・・砂漠なんてっ、大っきらい!!」
夜の砂漠を駆けた・・・
・・・
・・
・
…
……
………
「フォニアァ…。また、ぼくを置いて…」
打ちひしがれるフルート君の横で…
「…持っていけ。」
ゲオ様は砂狐ちゃん達の前に
ドサッ…と荷物を落として言ったの…
「こ、コレは…」
「…水と食料。武器防具。僅かだが薬も入っている。お喋りなジジイもスグに対処すれば…まぁ。死にはしないだろう。」
「み、水…。」
「しょくりょ…」
「…見た目は小さいがストレージバッグ。ヤリクリすれば半年くらいは食っていけるハズだ。」
「え、えぇと…」
「…必要だろう?」
「…」
「…気にするな。ただの“落し物”だからな。お前らが持っていかなければ、砂に埋もれるだけのこと。」
そこまで言ったゲオ様は
狐ちゃん達の言葉など待たず
クルッと振り返り
「…チビ。いつまでそうしてる気だ?」
「あうっ…」
フルート君の首根っこを掴んで持ち上げ、
側で見ていたエオリアちゃんに乗せ
「…行くぞ。」
大きなお手手をテーに…
「わきゃっ…」
腕に抱えられたテーはそのまま、
ゲオ様の前に座らせられ…
「うぅ〜、フォニアぁ~…」
「はあぁ〜…エオリカ。フォニを追うんだ」
「ヒュルルッ!」
…そして、
情けない声を上げるフルート君の代わりに
エオリカちゃんに指示を出したゲオ様は
「「「「「…」」」」」
コチラを見上げる狐ちゃん達には
振り返えらず…
「駈歩!」
『ブヒュルルッ!』
夜の砂漠を駆けたの…




