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Chapter 004_旅路

「・・・それじゃ、早速・・・」


しゅっぱーつ!


そう思って、みんなに声をかけると



『ブフッ!!』

「わ!」


ロワノワールは駿馬の名に相応しい瞬速で目の前に迫り、

足を曲げてしゃがみこんだ。

更に・・・



『ブフッ…ヒュブ…』


しゃがんでも私の背よr・・・せ、背と

同じくらい!の位置にある背中に乗せるため



「・・・んふふっ。ありがと」

『ヒュブブッ!』


回された首にしがみつくと・・・



「・・・わー!」


ロワノワールは首で私を持ち上げながら立ち上がったのだった!!



「・・・高ぁい!」

『ヒュハッ!!』


眺めのいい大きな背中は・・・さ、さすがにコートの下はスカートだから、跨ぐことはできなくて。横座りだけど・・・安定感もある!



「良かったですね!お嬢様!!」

「さすがご主人様です!」


・・・と、

そうだ。



「・・・ロワノワール。ローズさんたちも乗せてあげて。」

『ヒュ…』


私が言うと、ロワノワールは足の一本を上げて足場にしてくれた。


皆のことも乗せてくれるようだ



「え?えぇと…よ、よろしいので?」

「・・・もちろん」

「そ、そうですか!では、失礼して…んしょっ…と。ふぅ…。た、確かに高いですね!」

「・・・ん!」


ロワノワールをよじ登ったローズさんは、私の後ろ(横座りだから。後ろというか・・・横?)にやってきた



「でも…」


ローズさんは私に摺り寄り、ロワノワールの背中をポンポン叩き・・・



「…さすがに。この高さでスピードも出るとなると…(くら)(あぶみ)もないのは危ないですね。」

「・・・う?・・・そ?」

「そうですとも!」


そう言うと



「後ろは私が支えるとして…ルクス!あなた。お嬢様の前に座って支えになりなさい!矢面に立ちなさい!」

「げっ…」

「早く乗りなさい!」


ローズさんに言われたルクスは・・・



「…」


じー・・・と、コチラを見上げ。

そして、




「はぁ〜…。はいはい…っと、」

「わ!」


私の前に跳び乗った



「…イヤか?」

「・・・や、ヤじゃないけど・・・」

「…今は良いが。走り出したら掴まれよ」

「・・・ん、んぅ・・・」

「ったく…」

「・・・お願い・・・ね?」

「ね、願われた…っ///」


すると・・・



「…お嬢様に火の粉のひと粒でもかかったら、どうなるか…分かっているわね?」


後ろからサーベルの視線と声が・・・



「へいへい…」

「あ゛ぁ~ん!?」

「う…ウ、ウィー、マドマゼル…」

「…鼻の下伸ばしてないで仕事なさい。奴隷!」

「………はい…」


ろ、ローズさん。怒ると恐いね・・・


そ、それはそうと!



「・・・シュシュは・・・」


尻尾をフリフリ。私を見上げる狐ちゃんに声をかけると・・・



「シュシュはイイです!」

「・・・う?でも・・・」

「砂漠を走るのには慣れていますし。それに…そ、ソコからだと魔物の接近に気付けないので…」


シュシュは、五感と魔感(魔法行使や魔力の…気配?感覚??)と天性の勘をフルに使って魔物の気配を探っているらしい。


高さのあるロワノワールの背中からだと

確かに。影響はあるかもしれない。

でも・・・



「・・・ロワノワールは。たぶん、凄く速いと思うけど・・・」


馬に併走しようなんて、無茶なんじゃ・・・



「シュシュだって負けません!」

「・・・でも・・・」

「そ、それに…」


するとシュシュは

小さな腕をいっぱいに伸ばして・・・



「…砂漠には“ロー”をひと呑みにしちゃうくらい、おーー…っきな!!魔物もいますです!だから。絶対っ!!シュシュはお役に立つですよ!」


頬を染めて。尻尾をびゅんびゅん振って

そう言った



そして・・・



「…お嬢様。ここは…シュシュちゃんに、好きなようにやらせてはいかがでしょうか?」

「・・・ローズさん・・・」

「彼女はこの土地をよく知っています。今、言った事も本当のことでしょう。それに…」


そこで視線をシュシュに向けたローズさんは

再び私に視線を戻し

座ったまま頭を下げて・・・



「恐れながら申し上げますが…斥候はアレの仕事。貴女様に仕える“理由”にございます。取り上げてしまうのは些か…酷かと。愚考致します…」

「・・・」



ローズさん・・・シュシュも・・・






「・・・分かった。」

「にゃっ!」


そこまで言われちゃうと・・・ね



「・・・ただし!」

「に…」

「・・・荷物はロワノワールの背に括ること。定期的に休憩すること。水分補給はコマメに!・・・それが条件。・・・いい?」


「はい!です!!」




・・・こうして!

新たな仲間。ロワノワールを加えて

私達の砂漠越えが始まったっ!!




・・・

・・・

・・・



「ゲオ様、ゲオ様っ。」

「…なんだ、テー?」

「私達はエオリカちゃんに乗ってあげようよ。ほら、見て…。フルート君。エオリカちゃんと一緒に。凄く寂しそうな顔でお姉様の背中を見つめているよ…?」


「…そうだな。」



・・・

・・・

・・・




















「ご主人様!507m先。スナナマズが大きなお口を開けて待っていたです!」


時速60kmくらい出ているであろう、ロワノワールを軽々と追い越し先行するシュシュは数時間おきに魔物を見つけ、報告に戻ってきた。



「・・・すななまず?」

「えっと…砂に潜み。上を通った獲物を丸呑みして生活している魚の魔物だね。砂に潜って気配を殺し、ほぼ完全に“砂漠と同化”するから見つけ出すのは至難の業。加えて、獲物を飲み込むと一瞬で砂の奥深くに潜っちゃうから…被害者の救出は絶望的だね。」

「・・・なにそれ恐い」


獲物の少ない砂漠に順応し、生き延びた魔物はどれも(したた)かで、

そして、巨大だった。


シュシュはロワノワールを先行しつつ、そのすべてを見つけ出していった。


そのおかげで私達は常に先手を打つことができたので・・・

ただの一度も、危険な目に遭うことは無かった。



その才能にフルートは舌を巻き。「自分だって魔物の気配くらい分かる!」と豪語していたロワノワールさえ、押し黙るほど。


・・・・ほんとに、

シュシュは役に立ってくれた。



「…魚だと?砂漠に魚がいるのか?」

「・・・ありえない。魚のエラは砂の中はもちろん。大気中で呼吸する能力がない」

「えっと…魚の“形”をしているだけで。あくまでも魔物だから…」

「・・・なら、どうやって呼吸しているの?」

「エ、エラ…かな?」

「・・・だから。エラじゃ、できないんだってば。・・・もしかして・・・ラビリンス器官を持っていたり。あるいは・・・肺魚?」

「ラ、ラビリンス?ハイ??」


砂漠に生息している魔物は、私やゲオルグ様が知らない特殊な魔物がほとんど。

名前や生態、能力に関しては

シュシュとフルートの知識が頼りだった



「・・・調べる必要が有りそうね。」

「ご、ご自由に…」

「・・・ルクス。倒したら解体よろしく。」

「あぁ?またかっ!?ギロチンの…“斬りたい物”以外は“斬れない”性質を…都合よく利用して。“腑分け”に使うのはヤメ…」

「こら、ルクス!お嬢様の唱えた通りになさい!!」

「はあ゛ぁ゛〜…ヤレ、ヤレ。だ…」

「あ゛ぁ゛〜んっ!?」

「はいっ!!っ…たくっ!!」


そして・・・



「にゅ…ご、ごめんなさいです!」

「・・・う?」

「魔物…。シュシュひとりでも対処できそうだったので、魔法で串刺しにして。ナイフでぶつ切りにしちゃったです…」

「「「「「…」」」」」「・・・」

「ご、ごめんなさいです!!」


・・・そして。

私の仲間は頼もし過ぎた。



「・・・あ、謝らなくていいの!むしろ、ありがと。シュシュ」

「にゆ…」

「・・・ほら、こっちおいで。ナデナデしてあげる・・・」

「にっ!?…にゃんですっ///」


魔物が現れてもルクス(たまにゲオルグ様も)が瞬殺しちゃうし・・・

それ以前に、シュシュが単独で撃破した“後”の事も多かった。


私の仕事といえば、エアコンの稼働と

みんなの健康診断だけ・・・



『ヒュ…』

「・・・ロ、ロワノワールも。ずっと走ってくれて凄いね。いい子、いい子・・・」


『ル…』

「・・・ヒュ、ヒュドラも鞍になってくれてありがと。いい子、いい子・・・」


「むぅ…」

「・・・ろ、ローズさんも外套を整えてくれてありがと。なで、なで・・・」



危険な砂漠を進んでいるハズなのに、

和やかムードで・・・ぶっちゃけ、暇。


・・・なんだコレ?




・・・

・・・

・・・






「…」

「フ、フルート君も…よし、よし。いい子、いい子…」

「い…妹ちゃぁーん(涙)!!!」

「わきゃあっ!?」


「ふっ…。ほら、チビ。さっさと行くぞ!」

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