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Chapter 002_初めての楓魔法

「・・・それにしても。半年、か・・・」

「砂漠って広いんだね。お姉様…」

「・・・ね」



リブラリアは広大だって分かっていたけど・・・さすがに、

半年も歩くのはシンドイ。


しかもソレが、暑くて歩きづらい砂漠だなんて・・・



「砂漠には魔物がいるですよ!」

「…砂嵐もあるんだろう?」

「水鳥の月で、この暑さ。にも関わらず夜は氷点下まで冷えこむ。未踏破なのも頷けるな…」

「ここから先は殆ど無人だよ。加えて、里までの間にオアシスが有るかは…運次第?」

「オアシスにも魔物がいるです!!」


“軽く”じゃなくて、

“深く”絶望する案件だった。


着替えたのはいいけどれど・・・・



「・・・」


目の前に広がる現実に

打ちひしがれている私に



「ふふふ…」


怪しげな笑い声?



「…お困りのようだねフォニア!」

「・・・う?」


フルート?



「「どうしたチビ?」」

「「…」」


声が揃って、見つめ合う

ルクスとゲオルグ様はいいとして・・・



「ソンな君に、手を差し伸べようじゃないか!!」

「・・・??」


あれ以来、スッカリ

アカ抜けたフルートが



「馴れ馴れしくお嬢様に近寄るな。色ボケエロフ…」

「にぃ…勘違いのクセに…」


2人の威嚇にもたじろぐことなく



「見てて!」


そう言うと・・・



「すー…『一陣の風』」

「うっ!?」


楓語・・・?




「『遥か目指してただ走る (えにし)手繰(たぐ)りし旅路の() 耳に届くは 草原の唄』」


と、唱えた!?



「スレイプニル!!」


完唱すると



「黄緑色の魔法印!?」


初めて見る色の、初めて見る魔法印が地面に現れ

その中央に・・・



「おいで!エオリカ」

『ヒュブブブッ!!』


「・・・うぅっ!?」

「お馬さんだ!!」


一頭の白馬が

現れたぁっ!?



「ほおぉ…楓魔法か?」

「そぉそおっ!」


楓魔法っ!?



「あの、伝説の!?」


伝説の魔法【(かえで)魔法】


【魔法】と名前がついているけれど、

正確にいうと【魔術】である。



「・・・フルート。楓魔法、宿してたんだ・・・」

「そりゃあ、いちおう。エルフだし!?…スゴイ!?見直した!?!?惚れ直した??」


魔法と同じように“唱えて現す”奇跡だけど、

エルフ族“しか”行使できない。と言われているため、

エルフ族の【固有魔術】に分類される。


あと、

呪文も効果もエルフたちが秘匿しているから・・・

だから、“伝説の魔法”なのだ。



「・・・ん。すごい。」

「いよっしゃぁー!」


「ちっ…」「にっ…」

「え゛…。ろ、ローズちゃん。お耳ちゃん。その舌打ちは…」


グランドマイスター【錘】様も、大図書館の“森羅ちゃん”こと

【スタカッティシモ様】も純血のエルフだから、


楓魔法を宿していた可能性が高い。けど、

なんて言うか・・・不可侵領域(アンタッチャブル)だから・・・

もちろん。興味はあったんだけど、聞けずにいた。


だから、楓魔法を瞳に映したのはコレが初めて。




「このお馬。チェスちゃんと違う…」


フルートと向き合っていると、

現れた馬を眺めていたティシアがそんな事を言い始めた



「・・・う?」


チェスと違う?

・・・ま。確かにチェスよりずっと大きいし。

毛の色も白いけど・・・



「この馬…」

「足が!?」


って!?



「・・・8本足!?」

「そそ!」


なんとこの馬、4対の足を持っているではないか!?

哺乳類とは祖先が違う!?



「スレイプニルで喚び出すのは普通の馬じゃなくて。精霊馬なんだ!」

「・・・せいれい・・・」


哺乳類どころか、“生物”ですら無かった・・・



「普通の馬より速くて頑強だし。魔力を与えればどこまででも走ってくれるけど…目立っちゃうからね。だから、獣人王国では唱えなかったのさ。」


8本足なうえ、大人3人が余裕で乗れるほど大きな馬が疾走していたら・・・



「「確かに…な。」」

「「………」」


ソレはそれは、

()える”ことだろう。



「・・・でも。ココから先は砂漠よ?馬は砂地が苦手なはず・・・」


パッセ砂漠はかなり粒子の細い砂砂漠(すなさばく)(砂漠にも種類がある。その中でも、砂礫(されき)でできた砂漠のこと)だから足を取られて歩きづらい。


人間でもそうなのだから、

速く走るために細長い足と(ひづめ)に進化した“馬”という種族にはツラいハズ。


現に、砂漠のお供として有名な“ラクダ”は砂地に適応して表面積が広い足裏構造に進化しており・・・



『ヒュフ…』

「・・・う?」


なんて、

考えていると・・・



『ヒュフ。ヒュフフフフ!』

「えっと…姫様。私は坊っちゃんの精馬なので砂漠の歩行には慣れております!」

『ブフッ!ヒュブブゥ…』

「不安な思いなどさせません!どうかよしなに…。と、言ってるです!」

「・・・」


精霊・・・とはいえ“馬”でしょ?なんで人の気持ちを(おもんばか)っているのさ!?とか、

どうしてシュシュは馬の言葉を理解できるんだろう・・・?

なんてツッコミは、今更だからパスで。


ソレより・・・



「・・・私はお姫様じゃない。」


どこまでいっても私は農家の小娘です。ハイ。 



『ヒュハッ!』


すると、お馬さんは私とフルートを交互に見やり・・・



『ヒュフヒュフ、ブフフッ…。ヒュブ!ブヒュヒュヒュヒュ…』


何やら、お喋り



「・・・???」 


ナンテ言っているんだろう・・・?

そう思ってシュシュに顔を向けると・・・



「あらあら、まぁまぁ…。ふふっ!坊っちゃんったら…」

『ヒュブ!フヒュヒュ…』


「に…。こ、こくは…」

「ちょ、ちょっとぉっ!?」


・・・と?


「エ、エオリカ!余計なコト言わないの!!…お、お耳ちゃんも!訳しながらナイフに手をかけないで下さいお願いします!!」


慌てたフルートがお馬の前に立ち。

更に、何故か抜刀しようと構えたシュシュに頭を下げたのだった




「・・・う?」

「にゅう…ご主人様!コイツ…」

「わーわーわー!!!」


なになに? 



「・・・う?うぅ?」


ぜんぜん話が見えないんだけど・・・



「お、お耳ちゃん!ぼくは、そ、そそ。ソンなツモリは無くて!!」

「にゅう!なら、お馬様が言ったことはウソだと言うのですか!?」

「そ、それは…」

「てんちゅー!ですっ!!」

「わぁーー!!!」


じ、事情は分からないけど・・・



「・・・シュシュ。剣を仕舞いなさい。」


シュシュが本気になれば

フルートを殺しちゃうかもしれない。


そんなコトはシないと思うけど、

いちおう・・・



「みぃ…で、でもっ!!」

「メ」


良くも悪くもシュシュは素直・・・“まっすぐ”だ

だから直情的で極端な解を導いてしまいがち。


だから・・・



「・・・シュシュ。フルートが・・・フルートに限らず。“仲間”に刃を向けちゃメよ。」


こう言っておけば・・・



「に…」

「・・・お馬さんが言っていたコトは、フルートが私の“敵”になるようなコトだった?」

「………“敵”じゃ、ない。です…」

「・・・それなら・・・ね?」

「うみゅう…。はい、です…」


現状。

私の身内ではないフルートとゲオルグ様は

シュシュにとっては微妙な存在なハズ。

だから・・・



「・・・ん!いい子!フルートも・・・他のみんなも。一緒に旅する仲間!だから協力しなくちゃね?」

「にゃん…です………」


融通がきかない・・・と言えば、そのとおりだけど。


でも、

どこまでも素直な所はシュシュの魅力のひとつだ。



「・・・んふふっ。いい子いい子・・・」

「にゅふ…」


だから、気をつけてあげないとね・・・






「さぁ、フォニア!!早速エオリカの背に…ぼくの背においで!!」


シュシュとの会話が終わるとフルートは勇み足でお馬ちゃんの背に飛び乗り、手を伸ばした



「・・・ところで・・・フルート。」


でも、

その手を取る前に



「うん?なんだい??」

「・・・今の魔法・・・駿馬魔法(スレイプニル)?召喚魔法なんだよね?なら、そのお馬ちゃん・・・エオリカちゃん?くん?と、契約したの?」


“ちょっと”だけ・・・



「そうだよ!…もっとも、契約って言っても。この魔法を初行使した時に術者と相性がいい馬が選ばれて。以降、ずっと同じ子が応えてくれるんだけどね!…あ!ちなみにエオリカは牝馬(ひんば)で…」

「・・・ふーん・・・特別な契約条件は無いのね?」

「えっ?えっと…エルフで。しかも、古代エルフ語で唱えないと行使できないんだけど…」

「・・・それだけ?」

「………ま、まぁ…」


・・・なら



「・・・すー」

「え゛…」

「・・・・はぁ〜・・・」

「も゛…もしかして…」


今こそ甦れ!



「・・・『一陣の風』」


この身体に流れし

 


「『遥か目指してただ走る 縁手繰りし旅路の途』」


1ppm未満のエルフの血よ!!



「『耳に届くは 草原の唄』!」


唱えます!!



「スレイプニル!!」

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