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Chapter 010_後始末

「・・・もう、いいかな?・・・クローズゲート。」


説明するまでもないだろうけど、

水門魔法は水の奔流で全てのものを押し流す・・・


物量にモノを言わせた

超大規模魔法だ。



膨大な魔力が必要なのは

もちろんだけど


ゲートのオープンとクローズが必要で発現するにも・止めるにも時間がかかる。

そして、発現途中で魔力切れを起こしてしまうと堤防“だけ”が消えて、頭の上から

”湖”が落下してくる危ない魔法だったりする。


この魔法で生み出された水は発現を止めても消えない(もっとも、水門魔法が特別なワケじゃなくて。魔法で生み出された(ほとんどの)物質が“そう”なんだけどね)から、効果範囲の水捌けが悪いと甚大な浸水被害を齎す。

地形次第では都市を水没させる事だってできる。

衛生環境を悪化させるのは言うまでも無い。


ヒト相手に唱えていい魔法じゃ無いし、

異世界でこんなコトやったら環境団体に猛抗議されちゃうだろうけど・・・


ココは“綴られし世界”だからね



しかも、人命の為にやった事なんだから

情状酌量の余地がある・・・ハズ


・・・ま。

コレまでさんざ大虐殺をしてきた私が、今更

自己弁護したって無意味だろうけど・・・



「・・・みなさん。水が引くまで、しばしお待ちを」


奔流を止めて水位が下がったことで、

だんだんと森の様子が明らかになってきた・・・



「は、はは…」

「これほどの魔法を数十分も継続するなんて…」

「こ、これが。魔女…」

「魔物…どころか。木ぃ1本すら無くなっちゃったじゃない…」


この魔法はちょっと。ちょ〜・・・っと。

いちピコグラムくらいだけ、

“やり過ぎ”てしまう()()()がある。


膝丈まで水が減った視線の先に魔物の姿はなく。

鬱蒼としたジャングルの木々は根こそぎ押し流されて跡形もなく。

地表の土まで流出してしまった。


残った物といえば、硬い地盤と大きな岩だけ・・・



「ココが数十分前まで緑生い茂る密林だったなんて。とても信じられない…」

「オ、オレたちの仕事が…」

「分け前が…」

「…っつか。もう、当分ココで狩りはできないんじゃ…」


い、いったい何があったというの!?

どうしてこんなコトに・・・


水は“命の揺り籠”なんて形容されることもあるけど・・・



「にゃぁ~、すぅっ…ごい、です!さすがご主人様です!!」

「・・・お腹へた」


・・・水ってコワイね



「は、はは…は………」

「はぁ~…まったく。度し難い…」


・・・

・・






「あぁー!アレは…」

「エ、エレファントタイガー…」

「…の。水死体…」


「あ、あっちは…エ、エルダー…トレント!?…よ、よね!?」

「お、おそらく…」

「さ、災害級と災厄級の魔物が…」


その後・・・

パッと見、スタンピードは殲滅できたっぽいけど。

いちおう、確認のため・・・


と、いうことで湿原(元密林)の奥へ足を踏み入れた私達。


さすがの水門魔法でも距離が離れれば水の勢いも衰えるから

先へ進むにつれて巨木や、よく分からない塊が現れはじめた



「・・・もにもにもに・・・」


エレファントタイガーに・・・エルダートレント?

知らない名前だ。たぶん、パド大陸の固有種なのだろう。

”タイガー”って言うのだから、虎の魔物なのだろう。

・・・あの、泥まみれの塊が?


それと、トレントというと・・・大きい古木の魔物だったよね?

・・・・無印(ただ)の“トレント”は中級魔物だったはず。

・・・あの、流木の塊にしか見えないグチャグチャが??


と、いうか。

あんな遠くにある塊が魔物だって分かること自体すごいコトなのに、

その種類まで分かるなんて皆凄いね

流石はライセンス持ちのプロハンター・・・



「まーじょー!!あの獲物、私達が貰ってもいい!?」

「ちょっ、ちょっとマニュエラ!?なにを…」

「・・・ふぁふぁふぁはいほ」

「ご主人様は「・・・構わないよ」と、仰っておりますです!」


「えぇっ!?」

「ホ、ホントにいいの!?」

「・・・Φ。」

「「・・・はい。」だ、そうです。」


「いよっしゃぁー!!さっすが魔女サマ!!ふとっぱらぁ!!」

「・・・ふぃんふぁほへほほほふひゃっひゃっひゃはら、へんふはへる・・・ハフハフ。うまうま・・・」


因みに私は、イザという時に備えて

パド大陸の主食“(ふか)しバナナ”を咀嚼中・・・



「ご主人様は「・・・みんなの獲物を奪っちゃったから、全部あげる・・・アツアツ。うまうま・・・」と、仰っております!」

「・・・」


・・・ねぇ、シュシュ

訳してくれるのは嬉しいんだけど、

「アツアツ。うまうま」のトコロはいらなかったんじゃないカナ・・・?



「「「「「なん…だとっ!?」」」」

「魔女様マジ大物!」

「マジ天使!」


でも、気にしてないのか・・・

冒険者の皆は「わっ!」と盛り上がり



「よ、よし!オレたちも行くぞ!」

「オコボレに預かるぞ!!」


一斉に走り出したのだった・・・



「ギョフれっ、ギョフれぇ!!」

「貪れ!弱者よ!!」

「ハゲタカのように…って!オレ、ハゲてねーし!ちょっと薄いだけだし!!」

「ハエのように屍肉に(たか)るなんて…ふっ。オレたちにはお似合いだな…」


「・・・」


テンションのベクトルがおかしな人が何人かいるみたいだけど・・・ま。

ソレはいいか。



「…オイ。いいのか?」

「貴重な魔物も多いみたいだけど…」

「・・・いいの。」


せっかく倒した魔物を他の冒険者に渡しちゃうのは勿体無い・・・

と、思うかもしれないけど


私達は旅の途中で荷物を増やせないし、

特別、お金も必要ないからね。


それに・・・



「・・・あーんっ、もにもに・・・」


今は、



「・・・ハフハフッ、うまうまぁ///」


ほんのり甘い

ほくほくバナナに夢中なの!



「お、おねーちゃん…」

「全くもって度し難い…」


みんなの瞳が獲物に向いてる

今がチャァ〜ンスッ!!


・・・

・・











……

………



「…お?」

「水が引いてきたわね!」


調査班のオレたちは昨夜のうちに密林に入った。

遠くの動乱を感じながらも、静かな夜の森を走り

日が昇り始めた時…ふと、

斥候を任せているシドが慌てて駆け戻り、告げた



「旦那!みなさんも…ス、スグに高い所…そ、そうだ!木に登ってくれ!急げ!!」


…なぜ?

そう思ったのは確かだが、気配察知に優れた獣人(しかも、虎属…)であり、長年パーティーの危機管理をしてきたシドの言葉を疑う余地はない。


木登りが苦手なガドを手伝いながら密林の巨木によじ登った…直後



「魔女…あ、あの女の子の仕業…ですよね!?」


数え切れない程の流木と魔物を浮かべた

死の奔流が…



「…だろうな。」

「で、でも!密林の入口からココまで、数十kmも離れているのよ!?」

「オレとて信じられないが…他におるまい。」


魔法の効果範囲は(“超”大規模魔法であっても)100mが限界と言われている。


しかし、水魔法はその名の通り“水”を生み出す魔法であるため

生み出した水が周囲に流出する事もある。

保有魔力量が無限であれば、理論上は…


“海”を作り出すコトだって

できるだろう



「け、けど…あ、あの小さな体のドコに、これ程の魔力(みず)が蓄えられてるって言うのよ!?」


…エスの言う通りだ。

水魔法は制御が楽な分、魔力効率が良い(魔力というリソースを“制御”ではなく“創造”にさえ充てれば良い)…とはいえ。

同い年の少女と比べても小さい、あの小娘が…



「…やっぱりアレ?魔力はアレに入ってるっていうの!?アレで決まるっていうの!!??」


何を言い出だすかと思えば…



「…いや、違うだろ。」

「だってそうじゃない!!アノ恵土の魔女だって、爆発すればいいのに!重力に従え!!ってサイズだったし!森羅ちゃんだってエルフにしては大きいし!あの子も身長にみ見合わないたわゎ…」

「…落ち着け。」

「コレが落ち着いていられるか!魔法使いとしても、女としても負けたのよ!!コレじゃ特級冒険者の名折れ…」


男はどうなる…と、

“よく”言われる言い訳を喉に控えて、



「エス…」


彼女を宥めようとした…





「…っ!?」


その時だった






「にげっ!!」


シドが叫んだ

焦りと恐怖に満ちた声で!?


「「「っ!?」」」


次の(しゅん)か…




『ダガガガガガァァァーーン!!!!!』


………

……

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