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Chapter 009_いのちの奔流

「お嬢様…本当に参加されるのですか?」


カレント2,186年 恵土の月9日。

お天気は快晴 時刻は日の出間近・・・



「・・・ここで補給しないと砂漠越えができないでしょ?」

「で、ですからそれは!フルート様が言うには。手持ちでもギリギリ…」

「・・・ギリギリじゃ、心もとないでしょ?それにスタンピードを無視しても、旅のドコカで影響を受けるかもしれないし・・・」

「それは…」


総勢52人の冒険者と、集落の有志68人・・・戦えるヒトほぼ全員・・・

ギルドに集結した


ルボワと違って参加率が高いなぁ・・・と、思ったら。


「逃げるって…ドコへだよ?」

「今から逃げても間に合わないし…」

「生活かかっとんねん!」


・・・という

現実的な背景があるそうだ。


冒険者も多いけど、現地住民・・・獣人さん・・・も多い。


パド大陸も奥地では自分達の安全と生活のために昔から人間と一緒に魔物と戦っていて。

永久隷属法が成立したあとも、その文化がそのまま残っていたんだって・・・



「ね様…気を付けてね?」

「・・・んっ。・・・いい子に待っているのよ?」

「うん…」


「・・・ローズさんも。ティシアをお願いね。」

「む、むぅ…。」

「・・・お願い。この子を・・・お願い。」

「っ…ね、願われ。ました…」


集落のコトはともかく・・・

今は、こんなところで魔物退治なんてやってる場合じゃないって・・・

帰る事だけ考えていればいいって・・・


それは分かってる。

けど・・・



「おねーちゃん。そろそろ…」



ローズさんに説明した通り

スタンピードを放っておくと旅路に影響が出ちゃうかもしれないし、

可愛い妹を不安にさせたくない。



「・・・ん。・・・みんな行くよ。」


だから・・・



久しぶりの冒険者稼業


「おー!」「にゃーん!」「ヤレ、ヤレ。…だ。」

「・・・おー!」


頑張らなきゃ、ねっ・・・


・・・

・・
















そういえば、

昨日の打ち合わせでギルド員さんから


“幻獣が!?”なんて話があったけど。

現状、それを裏付ける証拠は(過去の記録との符合、以外には)何もないそうだ。


調査員の冒険者さんがギリギリまで粘ったらしいけど、結局

スタンピードの原因は掴めなかったとか・・・



「…ご主人様。魔物の気配が…ス、スゴイ数です…」

「・・・ん。・・・スグそばにいてね。シュシュ。」

「に、にゃんです!もちろんです…」


「おねーちゃん。頑張ってね!」

「・・・ん!フルート君も、その後はお願いね。」

「あぁ、もちろんっ!願われたよ!」


「…後が面倒だ。やり過ぎるなよ。」

「・・・んふふっ。心配してくれてありがとルクス。ほどほどにするね。」

「ホントかよ…ったく。」



スタンピードには必ず原因がある。

それは天変地異だったり、強力な魔物だったり・・・いろいろだ。


原因が何であれ、それに遭遇したら

全力で逃げるか、全力で殲滅するしかない。



けれど・・・同時に。原因を取り除かない限り

この広大な密林から魔物が無限湧きするという現実もある



「まぁーじょぉー!調子に乗るんじゃないわよ!!あの獲物は私たちの…」

「ちょっ、マニュエラ…」

「魔女さまぁー!この子の言葉なんて無視して。どうか殲滅を…」

「何なら全滅でも!」


だから私達は策を練り、冒険者を3つの“班‘に分けて対処することにした。


第1班(調査班)・・・ゲオルグさん率いる冒険者パーティー【白狼】が昨夜のうちに密林へ向かい。原因究明を行う


第2班(殲滅班)・・・私とマニュエラちゃんのパーティー。そして、5つの2・3級パーティーがスタンピードの殲滅を行う


第3班(サポート班)・・・それ以外のパーティーとギルドの皆様。あと、集落の皆様が補給線の維持や伝令などのサポートを担当


・・・という作戦。



「・・・んふふっ。・・・“全滅”は難しいかもだけど・・・頑張るね。」


そして“殲滅班”である私は

全会一致で戦いの初弾を仰せつかった。


得意の超大規模魔法で“出来る限り”スタンピードを削るのが

私の仕事。



「はぁっ…。協力戦…なんて言っても。結局“おいしいとこ”は魔女と魔術師が持ってっちゃうんでしょうねぇ…」

「そう言うなって。マニュエラ…」

「超大規模魔法なんて、私たちは宿して無いじゃない!」

「それは…」


「気持ちは分からなくもないけど…。でも、それが一番確実だって。皆で決めたろ?」

「そーそー!ギルドが、倒した魔物の買取を約束しただろ!?オレ達にも充分、旨みがあるって!!」

「そ、そーカモだけどぉ〜!…みんな、もうちょっと野望を持とうよ!若い冒険者らしい野望を!!」


スタンピードの最中(さなか)にある魔物は“ナニカ”から“逃げる”のに必死で

特別、攻撃を仕掛けてこないのが普通と言われている。


だからある意味(バーサーカー状態ではあるものの、攻撃しても反撃は少ない)

“狩る”のは簡単だ。



問題は、スタンピードの“規模”と“構成”だ。


事前調査によると、

スタンピードを構成する魔物の数は 数万~数十万頭

種類は“劣級魔物”から“災害級魔物”まで、多種多様だという。


規模が大きいから攻撃を継続しないといけないし、

魔物の強さにムラがあるから中途半端な攻撃では取り逃したり、効果が見込めない可能性がある。

範囲攻撃をするにしても、密林の中だから“点”や“線”、“面”じゃなくて。

“空間”攻撃をしないと取り逃がす可能性が高い。


つまり、

攻撃力の高い“空間掌握”超大規模魔法を長時間持続しないといけない。ってこと!



「っ…ご、ご主人様!木々で見えませんが…も、もうスグソコです!」

「音も近付いてきたね…」

「ヤベェな…」


ソレ。なんて無理ゲー!?って・・・

異世界にいた頃なら思ったかもしれないけど・・・



「・・・すー・・・」


ほら。

私、いちおう・・・



「・・・はぁ~・・・」


・・・魔女だし。











「『リブラリアの理第2原理 綴られし定理を今ここに』」


「水属性…だね?」

「なるほどな…」


水魔法は土魔法以上の“物量”魔法だ。

細かい制御が難しい半面・・・



「『(つつみ)よ そなたは命の分水嶺(ぶんすいれい)』」


「確かに…うん。この状況で水属性は最適ね。」

「べ、勉強になるなぁ…」

「…全属性使いって。やっぱり反則だね…」


・・・その物量でもって、広範囲に効果を齎すことができる。


ルボワでタランテラの大群を相手にした時も水魔法を使ったし・・・

大群相手には持ってこいだ!


問題があるとすれば・・・



「『生を讃えた奔流(ほんりゅう)もって 海の彼方へ連れ去らん』」


「けど…あ、相手が相手だし!?」

「水魔法は大規模展開できる反面。魔力消費が激しいと言われている。いつまで維持できるか…」

「さ、さすがに厳しいんじゃ!?」


・・・水魔法は自然6属性(治癒と契約を除いた魔法属性のコト)魔法の中でも

ダントツ1位の魔力消費量を誇る“大消耗”魔法だ。

高位の水魔法を使いこなすのは“難しい”と言われるのも、

大体はコストのせい。


・・・要するに、

リブラリアの水魔法は【物量(チカラ)こそパワー】な魔法ってこと。

“スマートさ”重視の【煉獄の魔女】の弟子には似合わない・・・



「『流天(るてん)の波間でいずれも攫い 永久なる(あお)で大地を(そそ)ぐ』・・・」


・・・けど。ま。

物量戦は・・・



「・・・ん!」


・・・と、とくい・・・では、

無い事もないワケではナイんじゃ無いのかもしれないっ!



「ウォーターゲート!!」



今回のチョイスは

水属性 第8階位 【水門魔法(ウォーターゲート)】!!



「ナニコレ!?」

「透明な…か、壁!?何メートルあるのよ!?」

「でっけー…」

「し、失伝…だよな!?」


水門魔法は・・・

簡単に言っちゃうと“ダム”創造魔法だ。


初登場の魔法だけど、魔導書を手に入れたのは数年前。

森羅ちゃんにノエル君の新作チョコクロワッサンを送ったら、その見返りに大図書館の禁書庫から・・・以下、乙女のヒミツ



「でかっ…」

「人間技じゃねぇな…」


目の前に現れたのは

半透明で青みがかった、巨大な(因みに、高さ30m幅500m厚さ10m)堤・・・

堤防を生み出し



「で…でぇ!?な、なによ!?この壁で…ま、魔物の侵入防ごうっていうの!?」

「で、でもこの壁…な、中に入れるぞ!?」

「密林の木もそのままだし…と、透過できるんじゃないか!?」

「何よソレ!?意味無いじゃない!?」


・・・んふふふっ。

皆が言う通り、この魔法で生み出した堤は“魔法で生み出した水”以外の全ての物質を透過してしまうの。




「・・・オープンゲート!」


水“以外”は・・・



『パチィンッ!!』


・・・ねっ






「「「「「なっ!?」」」」」

「「「「「えぇっ!?」」」」」


指パッチンと同時に

『ダァンッ!』と音を立てて

堤上部のゲートが開放!!

すると・・・



『ドドドドドッッ・・・!!』


・・・爆音と共に(いのち)の奔流が溢れ出した!!



『ドドドドドッッ・・・!!』

「「「「「…!っ…」」」」


シュシュやフルート君はじめ、みんなが何か叫んでいるけど・・・



『ドドドドドッッ・・・!!』

「・・・?」


水音のせいで

ぜんぜん。聞き取れない・・・



『ドドドドドッッ・・・!!』

「「「「「…」」」」」


けれどスグに

みんなもその事に気付いて沈黙し。


そして・・・



『バギバギバギッ!!』

『ズゾゾゾォ…』


奔流に飲まれた木々が容赦無く

押し流されていく光景と・・・



『ドドドドドッッ・・・!!』


・・・濁音と



『グオォォ…』

『ギュォォ…』


微かに聴こえる獣達の断末魔が

辺りを支配した・・・











「・・・んふふふ・・・」


唱えた、通り・・・

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