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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
30/476

Chapter 028_初勝利

林檎です。



ちょっと見返していたら誤字を発見してしまいました・・・申し訳ございません!!

修正しました!! (21/12/20 08:00)

「・・・ロジェス先生。昨日はお世話になりました。その・・・母に伝えてくれて。」


カレント2,177年 恵土の月 17日。 天気は晴れ。



「なに。ありのままを話しただけだ。…ふっ。怒られただろう?」


昨夜も、いつも通りお布団でお父様とお母様に抱きしめられて、いつも通りその日あったことをお話して、いつも通りいつの間にか眠ってしまい、いつも通り早朝に目が覚めて・・・そして、いつも通り朝練だ。



「・・・それは、もう・・・。」


おじいちゃんと朝練している間、いつも好き勝手やっているチェスは今日もエディアラの大草原を疾走している。水たまりもぬかるみも、あの子にとってはアスレチック!

自由だねぇ・・・



「はははっ!チェルシー殿は気が強く厳しいからなぁ!…わしも怒鳴られてしまったわ!」

「・・・えっ!?母がとんだ失礼を・・・ごめんなさい先生!」


準備体操を終えて、日々の基礎訓練を終えるとロジェス先生は私と距離をとって向かい合った。

いつも通り、模擬戦だ。



「なに、構わん構わん!!子を思う親はああでないとな!」

「・・・」


けれど昨日。

私は思い知らされた。いつも通りの“いつも”なんて無いという事を。



「さて、…それはそうとフォニアよ。わしが昨日お前を送り出す時に何と言ったか…覚えているか?」


私を取り巻く環境は気付かぬうちに変り、いつもはいつもでなくなって・・・きっともう、元には戻らない。

きっと・・・それが理。



「・・・はい。もちろんです。」


私達はその変化に嫌でも付き合わされて、そして順応しなくてはならない。

「このままでいい。」だなんて思っていたら、すぐにおいて行かれてしまう。絶滅した古代種たちがそうであったように・・・容赦なく。



「フォニアよ。お前は…成長したか?」

「・・・はい。それを今日、証明してみせます。」


私も変わった。

いつの間にか大人と肩を並べるようになって、大人と肩を並べていると思われるようになっていた。

もう、後戻りはできないし・・・するつもりも、ない。

昨夜お母様から願われたばかりだけど・・・



「ほぉ…それは楽しみだな。」

「・・・はい。楽しみにしていてください。・・・それでは・・・」


フォニアは今日。

また一つ、大人の階段を昇ります。



「・・・行きますっ!!」

「来い!!」


ごめんなさい・・・






「・・・すー『鳥の願い 翼に孕みて 影の森を往く』アシスト!」

「『鳥の願い 翼に孕みて 影の森を往く』アシストォォッー!!」


先生と私の最初の選択は同じ!

けど、僅かに早く完唱した私は短剣を手に先生の懐に飛び込む!!



「やー!!」


そのまま剣を振るう・・・けどっ



「おっとぉ!」


私の動きを呼んでいた先生は難なく攻撃をかわし、そのまま…



「そぉりゃぁ!」


手に持ったグレートソードを横()ぎにした!

危ないっ!こんなときは・・・



「『芽の願い』フェンス!!」


木属性第1階位 柵魔法(フェンス)

完唱すると同時に私と先生の間になん十本もの蔦が芽を出し、絡まりながら一斉に天を目指した!!



「ぐぬっ!速いっ!!…相変わらず魔法は逸材だな!」

「ありがとうございますっ!」


木属性魔法は威力と範囲で他の魔法に劣るものの、圧倒的にスピードで優るというメリットがある。

イマジネーションがしっかりしていれば、それこそノータイムで!


けど、先生の判断は早かった。

剣先が蔦の柵に阻まれる直前、すぐに剣を引き後ろに下がった!

剣を蔦で絡めとる隙も、まして追撃する余裕なんて全くない・・・



「・・・っと。」


先生が下がったのを見た私も後ろに下がる。

目の前に出来た大きな柵のせい(自分で作ったんだけどね)で前が見えないからだ。

その場で立ち止まり、先生の姿を探す・・・と!



「どこを見とるかぁ!!」


声は・・・斜め上から!



「!!『火だ・・・』」


慌てて剣を持たない左手で指パッチンの姿勢をとり、上に突き出す。

点火魔法(インジェクション)で急場をしのぐのだ!!



「その手に乗るかっ!!」


私の行使する火魔法の威力をその身をもって体験している先生は空中で急にスピードを緩め、私の手前に着地した。

・・・ちなみに、空中でスピード変化・・・なんて理に反した動きが出来たのは援風魔法のお陰だよ!



「ね』・・・」

「ふんっ…。そう何度も燃やされてたまるかっ!」


その様子を見て詠唱を止め、左手を下げた私に先生はそう言った。

緩慢な私の動作と、着地直後の隙のせいで武器を構える事も無い・・・


・・・今がチャンス!



「『林の願い 北の森を往く』ブレス!!」


私の狙いは最初っからこっち!!



「なぁっ!?ぐはっ!!」


風属性魔法の速度限界であるマッハ1で放った空気の塊は寸分違わず先生の胸に直撃!

鎧・・・とはいえ軽装であった先生の肺を圧迫して一瞬呼吸を奪い、そのまま吹き飛ばす!!



「がはっ!」


飛ばされた先の蔦の壁にトラップされた先生は悲鳴を上げる。

だ、大丈夫!ダメージが無いように蔦は細くて柔軟な・・・ゴムみたいな素材にしてあるから!・・・って、そんなこと心配してる場合じゃない!!



「や、やってくれる…」


マズいっ!

もう起き上がろうとしてる!い、急いで唱えなきゃ!!



「すーっ『春を願い 北の森を這う』ハーベスト!!」

「なぁっ!?」


木属性第2階位 贋春魔法(ハーベスト)

植物を急成長させるという特殊な効果を持つこの魔法で蔦を無理やり目覚めさせ、前も見えない程の蔦の海を生み出す!!



「くわっ!!面倒な事をっ!!」


先生は周囲で大繁殖を始めた蔦に剣を振るい、必死になっているけど・・・頭の上を含め、全方位から伸びてくる蔦にかなり苦戦しているようだ。少しでも手を止めると、あっという間に手足に絡み付いて動けなくなるのが分かっているのだろう。


・・・余談だけど、こんな便利な魔法があるなら農家いらないじゃん!って思うかもしれないけど・・・この魔法で成長した植物は実を結ばないし、栄養価が無いし、食べても美味しくなかったりする。だから農家は必要なのだ!食べるために!!

全異世界の農業従事者に感謝!!



「・・・んふふっ。・・・せーんせ?大丈夫?」


草を刈る音と気合の入った叫びがする緑のもじゃもじゃを前に先生に呼び掛けてみる・・・と



「えぇぃ舐めるなぁぁ!!」


先ほどより草刈り音が激しくなって聞こえ始めた。



「・・・あらら・・・」


先生の頑張りは本当に凄くて・・・緑の合間から剣の(ひらめ)きが見えるほど。



「ふ、ふふふ…あと…少しっ!!」


そして・・・ついには先生のお顔が見えるほどまで蔦は刈られてしまった。

このままでは蔦ゾーンが破られてしまう!

どーしよー!!




・・・なんてね。


「・・・すー、はぁ〜」


後ろに跳んで、距離をとって



「くっ…これだけ立て続けに行使して、まだ余裕があるか…」


息を整えて



「・・・」


ポッケから取り出した小さな金属の球を、伸ばした右手の人差し指と短剣の間に挟んで。

親指も立てて。

腕を伸ばして。

後は・・・



「な…何をする気…」


唱えるだけ

















「・・・『老い()らし囚人 大地の(かせ)を外してやろう』」

「な、なにっ!?上級魔法だとっ!?」 


金属性



鈍光(どんこう)散らして敵を砕け』

「…はっ!いいぞフォニア!」


第4階位



(ひらめ)け』

「こいぃっ…!」



「・・・レド・バレット!!」







鉛弾魔法(レド・バレット)はその名の通り、魔法核となる鉛弾を撃ち出す魔法だ。

死人が出る危険な魔法だけど・・・それでも気合を入れてる先生には、普通の攻撃じゃ勝てない!

だから・・・



「…っ!?な、なんだっ!?それは!!??」


魔法を完唱した瞬間、指で押さえた鉛球は魔法印に包まれ、発動子である短剣の先端に移動!

普通ならこのまま発射なんだけど・・・

私の魔法はふた味くらい違う!!


まず弾の形が異世界銃弾の弾頭よろしく、円錐形に変形。

魔法核は鉛だけど、材質は・・・か、硬くしちゃうと先生死んじゃうから、ゴム弾並に柔らかくする。

そして・・・



『キュイイイィィィッーーッ…』

「くっ…耳障りなっ!?」


そして・・・バレルが無い代わりにダイレクトに高速回転させる事でジャイロ効果を生み出し、直進性を高める!

これで威力も命中率も段違いなのだ!!



「・・・せ、せんせ・・い・・・ちゃ、ちゃんと防いでください・・・ね!!」

「なっ…」



では・・・しゅ、集中力がっ・・・限っ界っ・・・なので!



「ふぁいあーーっっ!!!」


異世界の銃を撃つようなイメージで短剣の先から銃弾を撃ち出す!



「なぁっ!!がはぁぁぁっっっ…!!!」


枷を外して打ち出された小指の爪ほどの弾頭はマッハ1のスピードで、一瞬の間もおかず先生のロングソードに直撃!!大きな金属音を散らして刃は宙を舞い、同時に先生の体は蔦の海深くに押し込められた!!

威力は絶大・・・というか!



「・・・先生!!大丈夫!?」


大急ぎで先生の所に向う!



「…って、てて…。」

「・・・ほ。」


幸い・・・と言うか計画通り。先生は無事だった。

グレートソードの一番耐力のある刃の根本に直撃した鉛弾はその衝撃で砕け、先生のお腹には刺さっていない。

けれど衝撃は先生の体に伝わり、その体を蔦の海深くに、何mも押し込んでいた。



「ほ…ではないわ!これが大丈夫なように見えるのか?」

「・・・後で診断させてもらいますが・・・出血もないし、意識もはっきりしているので大丈夫なはずです」

「ぐぬぬ…。老人にこのような仕打ちをしおって…」

「・・・先生はいつも、殺す気でこいと仰います。」

「本当に殺す気だったな!?」

「・・・まさか!」


蔦のクッションにもたれかかったままの先生は、恨み言を言ったかと思ったら急に・・・



「…はっ!はーーーっはっはっはーーー!!」


そのままの姿勢でお腹に手を当て、柄だけとなった剣を捨て、空に向かって大笑いを始めた。

驚いて傍に寄ってきたチェスと一緒に目を丸くしてその姿を見ていると、先生はこちらを振り返り・・・



「よくやったフォニア!!お前の勝ちだ!!」



そう言ってグーの手を伸ばしてくれた!

私もそれに応え・・・



「ありがとうございました!!」


恩師からの初勝利に笑顔した!

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