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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
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Chapter 026_第2ラウンド

「ジャ、ジャイアントタランテラだと!?」

「・・・あれが・・・」


焼野原の向こう。木々の間から姿を見せたのは、取り巻きを連れた巨大なタランテラの上位種。ジャイアントタランテラだった。

まだ距離があるけど、周囲のタランテラの数倍の大きさがある。

間近に迫れば見上げるほど大きいだろう・・・



「…くそっ!どうする!?」

「ままままずいよぉ!あんなのと戦えないよぉ!!」


ジャイアントタランテラは普通、マザーを守る為に巣から離れる事は無い。

けれど私達が今いるのは、森の浅部・・・巣からはかなり距離がある場所だ。

こんな所まで上位種が追ってくるなんて、どうして・・・



「…逃げる?」

「それしかない…か?」


東門のみんなは及び腰だ。

でもそれは仕方ない。何日も蜘蛛に追われ、精神的に追い詰められているのだから・・・怖いに決まっている。

でもっ・・・



「・・・迎え撃つ!」

「えっ…」

「・・・ここで引いたら街まで追ってくるかもしれない。・・・排除しないと!」


こんな魔物が街に入ったらどうなるか・・・想像したくない。



「…確かにな。」

「そ、そうだ…っ、そうだな!…いよっし!やるぞ!!」

「えぇっ!?ほ、本気なの…?」

「ったりまえだ!!だいたい、フォニアちゃんが止めてくれたのに戦うって言ったのはオレたちだろ!?今更後には引けない!!」

「ジュリー、やりましょう!大丈夫よ、きっと!!だって…私達には強い天使ちゃんがついているじゃない!?」


みんなはそう言って私の方を見た。

・・・恥ずいんですけど///



「…そ、そう…だね!………うんっ!フォニアちゃんに、お姉さん達のカッコいいとこ見てもらわないとね!!」

「うっし!東門(ポルテエスト)やるぞーー!!」

「おー!」「オウッ!」「うんっ!」


どうやら話もまとまったようだ。

相変わらず仲よくて、素敵だね!






「で、でかいっ…」


そうこうしているうちに、蜘蛛は私達の目の前にまで迫った。

作戦を考えたいところだけど・・・そんな時間は無さそうだ。



「・・・ナタリーさん!突風合わせて!!」

「えっ!?あっ…わ、分かったわっ!!「(・・・)せーのっ!『林の願い 北の森を往く』ブレス!!」」


風魔法が得意なナタリーさんと共に突風魔法(ブレス)をユニゾン!



「きゃぁっ!」

「ぐっ…」

「…くっ」


2人の力で暴風を生み出し、周囲の灰も、死骸も・・・もちろん蜘蛛も。一掃だ!!



『ギッ!ギギッ…!!』

「わー…す、すごい威力…」

「・・・ナタリーさんのお陰!」


これでレッサーや、普通のタランテラは排除することが出来た。

この魔法で倒しきることは出来ないだろうけど・・・かなり遠くまで飛んでいったので、時間は稼げるはず!



「ナイスっ!フォニアちゃん!」

「…さすがだナタリー!!」

「あ、あはははぁ…ほとんどフォニアちゃんの力だけどね…!」

「・・・2人の力!」



「いよっし!これで…」


『ギギギギッ…』


これで、飛ばされなかった1匹に集中できる!!



「よ…よぉし!やってやるぅっ!!『茎の願い 天を目指して 原始の森を這う』ウィップぅ!」


最初に唱えたのはジュリーさん。木属性第3階位の鞭魔法(ウィップ)だ!

魔法印が現れた地面からボコっと出てきた(しな)やかな(つる)は、シュルシュルとジュリーさんの手の平に触れ、さらに伸びて・・・



「てりゃぁぁーー!!」

『パシーーンッッ!!』


彼女が手に握り腕を振るうと、大きな破裂音をさせて蜘蛛の足を打ち据えた!!



『ギュギュ…』

「う、うわぁ~…ノーダメージかぁ。硬いなぁ…」


衝撃でたじろいだものの、蜘蛛はダメージを受けなかったみたい。

でも!



「うをぉっっ!」


アベルさんがその隙を見逃さなかった!



「でぇりゃぁぁーーー!!」

『ギッ!?!?』


アベルさんが振るった剣が蜘蛛の歩脚を節から切り落とした!!


あれ?でも・・・アベルさんの剣は確か、



「あ、あれ?アベルの剣。ボロボロだったはずなのに…」

加熱魔法(ヒート)使ったんだよ!」

「なるほどぉ!」


アベルさんの剣は鋭利化魔法(シャープネス)を受け付けないくらいボロボロだったけど、加熱魔法で高温にすることで蜘蛛の硬い外殻を焼き切ったみたい!

流石です!!



「ぜりゃっ!」

『ギュギッ!?ギギギ…』


さらにジルさんが、アベルさんが切り落としたのと対になる歩脚を突き刺し切り落とした!!

この攻撃で蜘蛛は大きくバランスを崩し、慌てて後退っていく。



「フォニアちゃんに借りた槍…すっげー使いやすい…」

「・・・あげたいところなんだけど・・・」


金属魔法で生み出した武器や盾はとっても強力なんだけど・・・術者が対象から意識を離した瞬間、魔法核の姿に戻ってしまうという欠点がある。

だから、使い続ける事が出来ないのだ・・・



「いや、それは仕方ない!もうしばらく…借りるぞ!」

「・・・ん!」


だから最後まで使ってあげて下さい!!



「すー…『船の願い (はん)に孕みて 大海へ 彼方を見据え 青き森を往く』ドライブ!」


ナタリーさんが剣を掲げて唱えたのは・・・私の知らない魔法だ。

5節だから第5階位・・・王級魔法!?



「…うん。成功!…みんな!援風魔法(ドライブ)かけてあげたわよっ!やっちゃって!!」


ナタリーさんが呪文を完唱すると、一瞬、球形の魔法印が私達5人全員を包んだ。・・・複数人数に効果をおぼす魔法なのかな?



「うんっ!ありがとー!!いっくよぉー!!」

「ま、待ってくれぇ!加熱には時間が…」

「…ふっ。置いてくぞ!」


この魔法・・・見た目には何も変わらないけど、鞭で蜘蛛を威嚇するジュリーさんも、隙を狙うアベルさんとジルさんも、かなり動きが軽快になっている。

私も身体が軽くなった!!

詳しくは分からないけど・・・たぶん複数人の動作をサポートする魔法だろう。


呪文は覚えたけど・・・効果の理解が至らないから私が発現するにはリスキーに過ぎる。

後で教えてもらえないかなぁ・・・



『ギゲッ!?!!』

『ズズゥ―ン!!』


「いよっし!」

「やったやったぁ!」

「上手いぞアベル!」


私がちょっと考えていた間にアベルさんがジャイアントタランテラを追い込み、もう1本の歩脚を奪い去った!!

バランスを失った蜘蛛は音を立てて地面にお腹を着き、慌てて後ずさる。



『ギッギギギギギ…』


残った足で立ち上がったものの・・・かなり不安定そうだ。



「いける…いけるぞ!!」

「うんっ!」

「…あぁ!1本1本、削ってやろう!!」

「私もサポートするわ!!」


さすがベテランさんだけある。

最初は不安を口にしていたたけど・・・その戦いぶりは安定そのもの。

これなら、ここはみんなにお願いして・・・



「・・・みんな。ここはお願い。私は残りを倒してくるね!」

「お、おうっ!」

「願われた!!」

「…頼んだ!」

「無理しちゃダメよ!!」

「・・・ん!」


私は1人、みんなから離れて再び集まり始めた小蜘蛛のもとへ向かった!







「・・・ん!」


小蜘蛛から少し距離をとって急停止。

ナタリーさんの魔法のお陰で動きが軽いから、息を上げる事も無かった。これならすぐに唱える事が出来る!



『ギギギギィ!!』


魔物の数は少しだけ減って十匹ちょっと。

さっきみたいに火魔法で炙ってもいいけど・・・1匹1匹が離れてバラバラだから範囲攻撃は効率が悪い。・・・ならっ!



「・・・『雨粒よ そなたは虹の使者 天から地へ 地から天へ』ウォーターアロー!」


水属性第4階位 水矢魔法(ウォーターアロー)!!

完唱すると私の周りには24個の小さな魔法印が展開し、その中から揺らめく水球が現れた。

そして・・・



「射貫け!!」


おじいちゃんから借りた短剣を振り下ろした瞬間!水球の半分、12個が一斉に蜘蛛へ向かった!!



『ギュッ!?』

『ギ…!?』

『ギチッ…』


私の水矢は本物の“矢”よりもずっと高速・・・マッハ1もあるし、しかも直径1mmほどの極小サイズに超高圧縮している・・・ウォータージェットだ。

金属だって貫くことが出来るんだから、蜘蛛なんてイチコロ!



「・・・二矢(にのや)、射貫け!」


この水矢魔法(“水”に限らず、“矢”の名が付く魔法)のいいところは、最初に生み出した“装填済み”の矢を任意のタイミングで射る事が出来る点だ。


最初の投射のタイミングではまだ遠くにいた蜘蛛に、二矢を放った!



『ギッ…』

『ギュ………』


強力な水矢魔法を受けた蜘蛛は1矢で体を貫かれそれきり動く事は無かった。



「・・・ほっ。」


無事にすべての魔物を倒す事が出来た・・・かな。

これで、レッサーと普通のタランテラの心配はいらない。



あとは・・・



「どりゃぁぁ!!」「ぜりゃぁぁーーー!!」


4人はどうしているかな・・・?と思って振り返ってみると、まさにアベルさんとジルさんがジャイアントタランテラに止めを刺しているところだった!!



『ギグッ!!ッ………』


アベルさんは飛び上がって蜘蛛の眉間に赤熱した剣を刺し込み、

ジルさんはその顎に深々と槍を突き刺し、更に引き抜いていた


『…ッ…ッッ……』



体が大きくて体力があるジャイアントタランテラといえども、全ての生物が弱点とする頭に2方向から同時攻撃なんて受けたらひとたまりも無い。

2人が離れたと同時に地に倒れた巨大蜘蛛は、頭から煙を上げ、口から深緑色の血を溢れさせ・・・短くなった手足を小刻みに動かした後・・・



『………』


沈黙した・・・






「やった…?」

「やった!!」

「うしっ!」

「ふぅっ…」


蜘蛛が動かない事を確認した4人は、私に振り返り・・・



「フォニアちゃーん!」

「終わったぞ!」

「そっちは…って、聞くまでも無いか。」

「あははっ。フォニアちゃーん!!帰りましょー!」


大きく手を振って合図しくれた。



「・・・んー!」


これでようやく、本当に終わりみたいだ・・・

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