Chapter 018_夜の理
林檎です。
本話。いつもの半分にも満たない短いお話となります。
ご了承くださいませ。
着想は:
ラフマニノフ作曲
「前奏曲 嬰ハ短調 Op.3-2 【鐘】」
「お、お前は!?」
「・・・どけ。」
『パチィンッ!!』
「ま、魔女っ!?なぜここに!?」
「・・・死ね。」
『パチィンッ!!』
・・・
・・
・
夜。
星のない夜。
空色の炎が揺らめく夜・・・
「・・・う?」
リブラリアの大地を理が染め、下弦の月が銀の影を灯す
私の夜・・・
「ま、ままま魔女っ!!カクg!!」
『ブシュルルルッッ!!』
『ガボッ!!…ゴボッ………』
「・・・」
農家の朝は早い。
妹たちはまだ幼い。
普段ならとっくに眠っている時間の。はず。
なのに・・・
「・・・灯りが・・・点いている?」
『シュルルルッ…』
おじいちゃんにもらったお屋敷の、
2階の一室に灯りが見えた。
あそこは確か・・・主寝室。
「・・・///」
お、お父様とお母様ったら!
仲がいいのは結構だけど・・・今日はなんだか騒がしくて、
知らない人がいっぱいの怖い夜。
い、妹たちも・・・と、特にロティアは
小説をいっぱい読んでるみたいだから、瞳年増で感づいちゃうかもしれない。
「お姉様。ひょっとしてお父様とお母様。いま…あ、アイしぁ…///」
・・・なんて聞かれちゃったら、どう答えればいいの!?
わわわっ///
「・・・っ///・・・ そ、それとも・・・」
ひょっとして・・・
私が帰ってくることを知って。起きて待っていてくれたとか?
「・・・んふふふっ!」
だったら嬉しいなぁ・・・なんて
・
・・
・・・なんて、ね。
「・・・『礫よ 穿て』グラベルアロー!!」
『パチィンッ!!』
「がっ!?」
「ぎゃっ!!?」
「・・・んふふふっ!!どうだ痛いか!?石英の礫は鋭利だから血が噴き出して・・・んふふふふふふふふふっ!!まるで噴水ね!!おかしいのっ!!」
命を溢して死ぬがいい!!
「・・・ただい・・・」
半開きの玄関を開けると、ソコは暗くて、濃密な死の香りで満ちた空間だった。
窓から差し込む銀の光に照らされた床にはベチョッとした、どす黒い・・・
・
・
・
「・・・」
「あぁ!?誰だおめぇ!?」
「ちっせぇ影だな?ガキ…上のガキが逃げ出したのか?」
「・・・ヒュドラ」
・・・
・・
・
『ギッ…ギッ…』
・・・
・・
・
「・・・う?」
階段で2階に登ると、主寝室の扉は開けっ放し。
主寝室からは中から灯りが漏れていた。
「・・・?」
そして、隣の部屋に続く、黒っぽい何かを引きずった・・・跡?
・・・なにあれ?
デシさんは綺麗好きだから、あんな汚れを見逃すはず無いんだけど・・・
それに、階段を上ってからずっと感じている・・・
腐臭と・・・生臭い悪臭。
昔嗅いだことがあった気がするけど・・・記憶は瞳の底に沈み
思い出せない。
思い出してはいけない。
・・・とにかく気持ち悪いニオイ。
欲望の・・・ニオイ。
「ご、ご主人様!!この先は…」
「・・・どきなさい。」
「でもっ…」
「・・・命令。」
「っ…にゃん…ですっ…」
自分の家で、なにを止めないといけないというのか・・・?
道をふさぐシュシュを黙らせ、前に進もうとすると・・・
『ギィッ、ギィッ…』
ベッドのきしむ嫌な音。
そして・・・
「あぐっ…ヤっ…もうっ…嫌ッ…」
可愛い妹の、か細い悲鳴。
「ロティア!?」
駆け出し、扉を開け
「あ゛ぁっ!?」
「ひっ!?」
「ロティ・・・」
部屋の中を瞳に映った・・・
「ア・・・」
の・・・は・・・
「お、おめぇはっ!?」
「っ…み、みないっ…でぇっ………
おねぇ様…いやっ………」




