Chapter 017_魔女の街②
ルボワの街は東西の門を起点とした潰れた楕円の形で、
大きな通りはすべて中央広場で合流している。
中央広場は冒険者ギルドが面しているし、朝市も開かれる
出店が立ち並んだ賑やかな場所っ!
「・・・『火種よ』イグニッションッ!!!」
『パチィンッ!!』
「ぐああぁぁっ!!」
特に夕方は・・・
狩りを終えた冒険者たちがギルドから溢れ、
広場や通りにも椅子やテーブルを持ち出して
ワイワィがやがゃ!
「・・・『礫よ 穿て』グラベルアロー!!」
『パチィンッ!!』
「がはぁっ!?い、いでっぇっ…!!」
おすすめは串焼き肉!!
ココだけの話・・・裏メニューでチリソースがあるんだよ!!
裏メニューのハズなのに、何故かみんな知っていて・・・
人気もあるからスグに完売して、なくなっちゃうの!
だから・・・みんなには、内緒ね!!
「・・・やれ。ヒュドラ。」
『ブシュルルルゥッ!!』
「がっはっ!…ごぼっ…ガボッ……」
・・・う!?
今日の狩りは大成功!?おめでとぉー!!
今夜は仲間と一緒に、美味しいご飯とエールで
かんぱーいっ!!
「・・・『林の願い 北の森を往く』ブレスッ!!」
『パチィンッ!!』
「ぎゃぁっ!!」
でも、あんまり遅くまで騒いでいると・・・
怒ると恐〜いギルマス様に唱えられちゃうから、
ホドホドにね!
「『老い錆らし囚人 大地の枷を外してやろう 鈍光散らして敵を砕け 閃け』レド・バレット!!」
『パチィンッ!!』
「ぐぎゃっ!?」
・・・うっ!?ケガしちゃったの!?それは大変!!
スグに教会に向かわなきゃ!!
大丈夫!門番のボドワンさんは迫力が有るけど優しいし、
プリモのイレーヌの腕は確かだよ!
・・・ま。ちょぉ~・・・っとだけ
痛いかもだけどっ。
「・・・はぁ、はぁ・・・ん、んぐぅっ・・・すー・・・し、『雫よ 天の恵を』ウォータァーボールゥ!!」
『パチィンッ!!』
「ぐべっっ!!…がはっ…っ………」
新人のシュゼットちゃんは頑張り屋さんで恋人募集中・・・だったはず!!
彼女に素敵な出会いがあるといいなぁ・・・
・・・なんて。
「…うん?こども…?」
「・・・はぁ、はぁ・・・」
「オイ、ガキ!てめぇ、逃げ…」
「はぁ~・・・・・・すー!『茨の願い 森を往く』ニードル!!」
『パチィンッ!!』
「がっ!!…ぐがっ…ゴボッ………」
それが、
あるべき故郷の姿だ
「・・・っ・・・・いっ・・・えぐっ・・・・・・ひゅっ・・・すー
『慈雨・・・よっ・・・
そっ・・・
そ・・・そなたはぁ・・・は、春の告げっ・・・人っ
あ、蒼き・・・空・・・より・・・・・
降り注ぎ
葉先に下りて碧を染めっ・・・
だっ・・・
大地に下りてぇっ・・・ひぐっ・・・あ、青っ濡らぁ・・・し・・・
ただ、春を・・・
告げる』
っ・・・
スプリング・・・シャワァー・・・・・・ひぐっ・・・っ・・・」
『パシッ…』
「・・・っ・・・っっ」
道中見かけた敵は全て殺した。
救える人はできるだけ救った。
罵りは甘んじて受けた。
でも、それは・・・
“救えなかった人がいる”事に比べれば、どうという事もなかった
「・・・っ・・・っっ」
辿り着いた中央広場の真ん中には
大きな櫓が組まれており、火が焚かれていた。
火の番をしていた敵は警戒される前に殺した。
忌々しいボヤは魔法で消し止めた
「・・・・・・・っ・・・ご、ごめんな・・・さいっ・・・」
焼けた柱が残り、その下には・・・
「・・・・・・ゴメンね。ごめんなさい。・・・・ご、ごめんなさいっ!ごめんなさい!ほっ、ホンとに・・・」
まっ黒な・・・
「・・・本当にごめんなさいっ!!」
「オイ!アレ…」
「んあっ!?…まだガキが残ってたか!?」
「ご、ご主人様に近づくな!?」
「うをっ!?なんだテメェ!?」
「随分物騒なモンをもって…」
「せにゃぁ!」
「お、おい来るぞ!?」
「ヤロッ!!」
「止めなさい。」
許さない
「にゅ!?ご、ごしゅ…」
「『業火よ』!!」
「じん…」
許してなるものかっ!!
「さ…ま……っ…」
「『炎をもって火の粉を払い 熱を持って熱を奪う』」
絶対にっ!!!
「『焦熱の獄炎』バーン!!」
『パチィンッ!!』
「「んなぁ!?」」
まだだっ!!
「『茨の願い 花の森を這う』
『パチィンッ!!』ニードル、ニードルっ!!」
「ガバッ!?」「ぐぎゃぁぁ!!?」
苦しむがいいっ!!
「痛い!?ねぇ、痛いでしょ!!いい気味よっ!!」
ざまぁみろ!!
「炙られながら磔にされる気分はどうだっ!?魔女に狩られる気分はどうだコノヤロォ!!簡単に殺してやるものか!!」
カーボンナノチューブは熱伝導率が高い
熱源と肺を直接繋いでやればどうなるか・・・思い知れっ!!
「息をするたびに喉が溶け落ちるほど熱いだろう!!」
熱と痛みと絶望を、とくと味わうがいい!!
「でもっ!!まだ・・・まだだっ!!彼女の痛みはこんなもんじゃない!!蹂躙された痛みを知れ!!そんなに魔女が嫌いならっ・・・この瞳の前に来いっ!!」
・・・
・・
・
「・・・っ・・・ご、ごめんね・・・ゴメンねっ。・・・あっ、後で・・・かっ、必・・・ずっ・・・h、ひっ・・・ヒナ、しゃまっ・・・の元っ。に・・・か、還して。あ、あげ、る・・・からっ・・・待っていて。」
宵闇を照らす蒼い炎の中で泣き喚く鬼畜共を無視して
家路を急いだ・・・
・・・
・・
・
「『礫よ 穿て』」
ここは私の家だ
コイツらは一体、
何の用があるというのか・・・?
「ま、魔法っ!?」
「このガキっ!?」
でも、そんな事・・・
問いただす必要すらない
「グラベルアロー!!」
『パチィンッ!!』
ただ、唱えればいい。
「ぎゃぁぁっ!?」
「がっ!?」
「がはっ!?!?!」
「こ、コイツっ!?」
「やれっ!!やれぇぇっ!!」
さすれば現れる・・・
「『火種よ』イグニッション!!」
『パチィンッ!!』
さすれば消せる。
「がぁぁっ!?」
「あ゛づっ…がひゅっ…あ゛っ………っ…」
それが魔法というものだ
「で、出たぞっ!?」
「魔女っ…ま、魔女だっ!!」
「に、逃げ…」
逃がすとでも?
「『果実の願い 愛し子守りし 花衣 影の森を這う』スティンガー!!」
『パチィンッ!!』
「くっ、クソがぁっ!!」
「な、何でこいつがここにいるんだ!?」
「話が違うぞっ!?」
そんなの・・・
魔女だからに決まってるでしょ?
「射貫けっ!!一人も逃がすなあぁぁっ!!」
バカじゃないの




