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Chapter 012_ラエンの悲劇

林檎です。


本話、短めです。

ご了承ください。

「お嬢様。そろそろ…」

「・・・」

「お(ねむ)の時間…ですよ?」

「・・・・・・」


ラエンの被害は甚大(じんだい)だった。



「黒天様!あとは…あとは私達にお任せ頂けないでしょうか?」

「も、もう魔力は残っていませんし…黒天様のような治癒を行う事なんて出来ませんが。でも…」

「で、でもっ!あとは見守るだけなんですよね!それなら私達だって…」

「…魔女様。私共が交代で夜番を務めます。ですから、ここは…」

「・・・」


ラエン領主は王家とも所縁(ゆかり)の深い公爵様ということもあり、この土地に生きる人々は愛国心が強い。



「…ロード。もう私達にできることは有りません。それは…誰よりも、貴女がいちばんよくご存知ですよね?あとは(とき)に任せましょう…」

「・・・・・・」


加えて、自分たちはこの国の南方を守る【壁】であるという意識が高く。騎士団は元より、市民、農民、奴隷に至るまで侵入者に対して抵抗を・・・



「ふぁ~…。シュシュもネムネムです…ご主人様ぁ…」

「・・・・・・・・・んぅ。」






領主様は家族と家臣を含めて皆殺し。

騎士団の生存者はたったの5人。それも、その全員が重度の傷を負っていた。

男性は子供と老人を除いてほぼ全滅。

女性はほぼ全員が、その・・・ぼ、暴力を振るわれており。半数以上の人が奴隷印を綴られていた。

市民が所有する獣人たちがどうなったのかは・・・分からない


城門をくぐった時に感じた“死”の気配は本物だった。



敵部隊は進軍をつづけている・・・ということは。

この先に目的地があるというコト。

この街に時間をかける必要なんて、なかったはず。

そのはず。なのに・・・


ラエンの街は、ほぼ全滅したと言っていい有様だった。

この街で起きた殺戮は明らかに常軌を逸している。


まるで“ラエンの虐殺”が目的であったかのように・・・


敵は、一体。何を考えて・・・



「・・・分かりました。あとを・・・お願いします。」

「「「「「願われました!!!」」」」」


残念ながら。街の人たちはその理由を知らなかった。

敵部隊が攻めて来た時。2日間、騎士団が抵抗した末、城門が破られ。

そこから一気になだれ込まれ。


侵略され、虐殺された・・・と。



「・・・エルネスト様。アンリエット様。ご機嫌麗しゅう・・・」

「「…」」


「・・・・・・」



残された敵部隊の隊員に自白を迫っているはずだけど、

事情を知るには、もう少し時間がかかりそうだ。


それ以外に、

詳しく知っているはずの騎士団員は・・・重傷で。

スグに話を聞ける状態じゃない。


特に、騎士団長たるエルネスト様は・・・



「…さ。お嬢様。」

「ご主人様!」

「・・・・・・・・・ん。」


エルネスト様は過度な拷問を受け、四肢を・・・全損・・・していた。


それでも生きているのは外科治療や傷薬。そして痛み止めの麻薬を多用された為。

もちろん治癒で取り戻したけど・・・


高位の治癒魔法には体を治すと同時に、心を癒す効果がある。

だから恐怖やストレスによって強いショックを受けた人の緊張を(ほぐ)し、平常心を取り戻させる事もできる。

薬の副作用や依存症だって“抜く”事が出来る。


けど・・・それは、あくまでも“その場限りの治癒”でしかない。

心に負った傷を治すことも、瞳に刻まれたトラウマを消す事はできない。


それが理で・・・

結局。心の傷に対してできる事なんて

異世界と大差無いってことで・・・



エルネスト様が社会復帰出来るかは、本人の意思と周囲の励まし次第・・・






「・・・『理の願い』バージンリーフ・・・っと。」

「お嬢様?何を…?」

「・・・オルソート領のギヨーム閣下とノワイエ領のピエール閣下に手紙を書かないと。」

「お手紙…です?」


「・・・ん。・・・・・・ラエンのみんなをお願い・・・って。」

「お嬢様…」「ご主人様…」


エルネスト様のご婦人・・・つまり、コレットちゃんのお母様・・・であるアンリエット様は、体の傷は大した事無かったし本人も気丈に振る舞っていたけど・・・


心の傷は深刻だった。



大衆の前で辱められ、多数の人に穢された痕があって・・・


「大丈夫」という言葉とは裏腹に、なんの前触れもなく恐慌状態に陥る事がある。

恐怖から逃避するためなのか、二重人格が形成されてしまった様子・・・

今は治癒魔法で寝かしつけているけど、暫くはこの状態が続くだろう。


今後は睡眠薬も併用して、落ち着くまでゆっくりと

数か月から、数年をかけて・・・



「・・・・・・」

「…お茶。置いておきますね。」

「ショコラも有りますよ!」

「・・・んふふっ。ありがと。・・・頑張るね。」


エルネスト様とアンリエット様。

生存者の中でも特別、傷の深い2人には治しと癒やしと同時に

心を整理する時間が必要だ。


けれど、ラエンの人達を連れて歩く余裕

今の私達には、ない。


敵部隊が戻ってくる可能性はほぼ無いし、街に残った敵兵は無力化した。

でも、進軍は止まっていない。


陛下から部隊を預かっている以上、この状況で私のすべき事は・・・






「・・・」


コレットちゃんは私を恨むだろうか・・・?

林檎です!!


4th Theory お楽しみいただけてますでしょうか?



活動報告に近況をUPしましたので、よろしければご覧ください!!

ではではっ


・・・よろしくね :)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 大きななにかを見落とした、、、なんだろうなー とても不穏な雰囲気になってますね。 ふと思ったですけど、獣人の件から推測すれば、隷属魔法は隷属先(主人)にがなくても成立するですね。なん…
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