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Chapter 005_パンを咥えて戦地を目指す

『グルゥ…』『クルッ!!』

「・・・・・・ふゎ?」


2柱が頑張ってくれたお陰で予定より早く。10分ちょっとで王都上空に辿りついた私。


・・・そんなに急がなくてもヨカッタンダケドネ。



「・・・あ、あの辺・・・」

『『グクルルワァ!!』』


王城に降りようか?とも、思ったけど・・・


敵の攻撃と思われても困るので、とりあえず市街地から離れた郊外の川原に降り立つ事に。



「・・・おなかへたー・・・」

『グルルゥ?』

『クルワァ!』


灼熱サウナと猛烈な空腹でヘロヘロになりながらも2柱とともに、近付く地面を見下ろすと・・・



「…ぉーぃ!おーい!!おーいっ!!!」

「・・・・・・・・・ぅ?」


目標投下地点に元気な声と、ピョンピョンと跳ねる小さな影・・・?


あれは・・・



「・・・しゆしゆ?」

「にゃーんでーす!!」


モフかわ幼女だった。

なんでこんな所にいるの?


・・・水遊びかな?



「おかえりなさいませご主人様っ!」

「・・・ただいま。シュしゆぅ・・・。」

「だ、だいじょーぶです!?」



途中からしんどくなって座っていた私は、地面に着いた虹玉が『パチンッ』と弾けたあともそのままの格好で小石ひしめく川原に座り込むことになってしまった。

シュシュはそんな私の様子(彼女は数メートル以内なら私の心音や呼吸もモニター出来ると豪語する。)を心配し、そのまま「テイクオフ!」できそうなほど振り回していた尻尾を『シュン…』とさせて駆け寄って来た。



「・・・だ、だいじょぶ。お腹空いてるだけ・・・」


初対面のハズのツインドラゴンに驚きもせず、ナチュラルに話すシュシュにそう答える。

(シュシュが驚かないのは、2柱の魔力から私の召喚獣だと気付いているためだろう。擬態しているヒュドラにも気付いているみたいだしね・・・)



「にゅっ!?それは大変です!!えぇとぉ…」


シュシュはそう言うなり背中の大きなリュックを地面に下ろしてゴソゴソ。

そして・・・



「…はいですっ!実は…こんなこともあろうかと!ご飯を持ってきましたですよ!!」

「うぅ!?」


ハムとトマトとチーズを挟んだ白パンを取り出した!?



「ご主人様がお帰りになると分かって、クリストフ様が大急ぎで用意して下さいました!!」


な、なんだってー!?

この幼女・・・できる!!



「・・・た、食べていいの!?」

「もちろんです!!」


空腹な子供に食べ物を分け与えてくれるヒーローは異世界にもいた!!

助けてーシュシュ!!お腹が空いて(魔)力が出ないの!


と。いう訳で・・・



「頂きまーす!!」


特性サンドにかぶりつくっ!


「召し上がれ〜です!」

「もっくもっくもっく!!」


おぉいひぃー!!



「にゅふふふっ!…ローズ様特性のアイスティーもあるですよ!」

「んっく、んっく、んっく・・・」

「デざぁ〜トはベルタさんが育てたイチゴを使ってノエルさんが作ったアイスクリームです!れーとーストレージバッグぅに入ってるからヒエヒエですっ!」

「わーい!!」



真夏の午後のひととき。閑散とした郊外の川原にて・・・


「もくもくもく」

「にゅふふふっ…」

『グルルゥ…』『クルルゥ…』



龍とモフ幼女に見守られながら

燃料補給をする(まじょ)なのでした・・・


・・・

・・
















「もくもくもく・・・」

「にゅっ!…ご主人様、ご主人様っ!」


暫く後・・・

「にゅぅ…ゴメンナサイです。パンはいっぱいあるのですが、トマトに限りがあってサンドはこれが最後…でもダイジョーブ!!」

そう言ってシュシュが取り出したチョコクリームをタップリ乗せたパンを頬張っていると、側で見守ってくれていた私のヒーローが不意に声を上げた


因みに、ツィーアンとツィーウーは湖に帰ってもらった。

降り立った時は人影が無かったけど・・・騒ぎになっちゃうからね。

2柱とも、ありがと!



「・・・もくぅ?」

「ローズ様がご到着ですよ?」


ローズさん?

あ。シュシュの後を追って来てくれたのか・・・



「・・・ふぉっひ?」

「あっちです!到着まで…あと7秒!」

「・・・もっくん。」


ろーく・・・ごー・・・

と、心の中でカウントダウンをしていると・・・



「…っーー!!……ぉーじょーさーまぁぁーー!!」


ローズさんの叫び声と、土ぼこりを上げながら爆走するチェスを確認。



「・・・んー!」


チェスもローズさんも元気そうで良かった!

それにしても、これまでに何度か乗せたことがあるとはいえ、チェスが私以外を単独で乗せるなんて珍しい・・・仲良しになった?それとも・・・興奮してるだけ?


・・・なんて。

呑気に考えながら手を上げて応える。



「わーわーわー!!ホントにお嬢様だぁ!!どうされたんですか?どうやってここまで?お腹空いてませんか!?ご機嫌麗しゅう御座いますか?」

『ブフッ!!ブフフフフッッ!!』


目の前にやって来た一人と一頭はシュシュに負けず劣らず、熱烈歓迎してくれた。

ちょっと気圧されながらも・・・



「・・・ん、んぅ。ただいまローズさん。元気。・・・チェスもただいま。」

「お帰りなさいませ!!」

『ヒーヒュブブフッ!!』


ローズさんの抱き付きと頬擦り、チェスのペロに応える。


んふふっ

くすぐったいよ・・・


・・・

・・

















『カッポ、カッポ…』


「そうですか…ご祖父様、ご祖母様にお会いできたのは宜しかったですが、そんなことが…」

「・・・・・・もっくん・・・」


ローズさんによると・・・

エディステラの街はいつも通り。強いて言えば兵士さんをよく見けるかも・・・?といった感じらしい。


まだ一般には開戦の報せがないようだ。


エヴァーナ蜂起の時も、たまたまラエンでお祖父様と出くわしたから気付いたというだけで、それが無ければ「・・・そんなことあったの?」で終わっていたに違いない。

現代異世界の“戦争”はメディアがライブで伝えるし、大規模になりがちだから“国民戦争”のイメージが強いけど・・・



「この国にそんな事が起きていただなんて…全然気づきませんでした…」

「シュシュもいつも通りです!」

『カッポ、カッポ…』


ドワーフがオーバーテクノロジーの産業革命をヤラかしているものの、それを除いたリブラリアの文明レベルは異世界中世後半くらい(たぶん)

その頃の戦争と思えば、


庶民の現実は“こんなもの”かもね・・・



「ですが…お嬢様にお呼びがかかったという事は、おそらく“そういう事"…なのでしょうね…」

「・・・もくもくもく・・・」


街の様子に変化は無いものの・・・一昨日の夜更け。

畔邸に陛下の使者が来て、帰宅次第すぐに投城せよと告げたらしい。



「…お使い様は詳しい話をして下さいませんでしたが…おそらく、その事でしょうね。」


まだ私が帰らない事を知っているのに使者を使わせるなんて、よっぽどに違いない。


急いで帰って、正解だったかも・・・



「それで…」

「・・・もくぅ?」


背中でチェスを操るローズさんは、パンを食む私におずおずと尋ねてきた



「…万象を司る魔女様は、いかがなさるおつもりですか?」

「にゅ…」

『ヒュブッ…』


ここで「参加する」と答えれば、この2人と一頭は間違いなく一緒に来るだろう。

みんなの命を左右してしまう以上、安易な事は言えないけど・・・



「・・・もくん。」


でも



「・・・戦うよ。」


だって・・・



「はいですっ!何処までもついていきます!!」

「にゃんです!シュシュも頑張りますです!!」

『ヒーヒュブブブッッ!!』


おじいちゃんとおばあちゃんに言われているんだもん。


「魔法使いよ!唱えろ!!」


・・・って!

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