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Chapter 002_答え合わせ

「やぁ、魔女様!そんなに急いで何処へ行くんだい?」


お祖父様に別れを告げて侯爵邸から飛び出した私を待ち構えていたのは・・・



「・・・ルクス・・・君・・・」






「ずいぶん慌てている様だけど…何かあったのかい?…うん?」


急いでるのに・・・

面倒なのに捕まっちゃったなぁ、もうっ!



「・・・関係ない。」

「いやいやいや…関係大アリだろう?だって…ほら。聞いただろ!?…誰が“橋渡し”をしたか…。ふふふふ…」


お祖父様によると、彼の国からやってきた使者は私と同い年くらいの1人の少年だったという。


名乗った名は・・・



「・・・ルキウス・・・コープルー・・・」

「せーかいっ!くくくくくっ…ずいぶん苦労して探りを入れていたみたいだけど…結局。最後の最後になってようやく答え合わせ出来たねっ!!…ほんと。魔女って奴はバカでノロマだね!」


魔女・・・か。


実は、ラヴェンナ王国には“魔女狩り”という伝統行事・・・慣習・・・が、ある。


ラヴェンナ王国で信仰されている【師父(しふ)教】は血統を重んじる宗教で、利権や財産、そして仕事も。親から子・・・嫡男へと相続される。

・・・ま。単純に世襲制って事。

氏族制で養子縁組が盛んなエディアラ王国よりシステムとしては分かりやすいし、想像もしやすいよね。


要するに、ラヴェンナ王国は男性中心社会。かつ、“親ガチャ”ってこと。


因みに、女に生まれると何の権利も与えられない。

学校に通う事も、働く事も、何かを所有することすらできない。

結婚は父親に一任され、逆らうことは許されない。

一生、家の中で家事と子育てに従事することが良しとされている・・・らしい。


こんな言葉は使いたくないけど・・・要するに。

彼の国において“女”とは、“家政婦”であり“産む道具”だ。


・・・っと。ここまでは異世界と大差ないからいい(もっとも、私は女だから。それが“良い”だなんて、とても思えないけど・・・ま。世界によらず“よくある話”では、あるよね・・・)んだけど・・・問題はこの後。



生まれてきた子供の“魔法の実力”は“ガチャ”・・・というところは、リブラリア人の性質であって国や地域差があるわけじゃない。

だから、当たり前だけど・・・ラヴェンナ王国の女性も魔術を行使できる。


けど、ラヴェンナ王国ではソレが禁止されていて・・・

行使した瞬間“魔女”として認定され、奴隷落ちさせられる。


狩られた魔女たちの人生は・・・それはもう、悲惨なものだそうだ。

使役させられ、晒し物にされ、暴力を振るわれ・・・最後は見世物のように公然と、惨たらしく処刑される・・・


特に酷い目に遭ってきたのは治癒術師。

治癒魔法使いは出生率が低いけど、逆に、銀色の瞳であればほぼ確実に治癒魔法を行使できるから・・・

瞼を持ち上げた瞬間、狩られてしまうそうだ・・・



「ふふふ…魔女を生み出す裏切者の一族に相応しい、ステキなシチュエーションだったろぉ!?お膳立てしてあげるのに結構苦労したんだよ?感謝してくれよ!!」


魔法が当たり前にある世界に、どうしてそんな文化を持つ民族がいるのか・・・実は、よくわかっていない。

ラヴェンナ王国がその歴史を明かそうとしないから、分かりようもない。

とりあえず、確実に言える事としては・・・



「…全く。どうしてボクが魔女なんかの為にここまでしないといけなかったんだろ?…ホント。勘弁して欲しいよ。」


彼の国の人は魔女を人と思ってない。だから平然と魔女がいる他の国が大嫌い。

まして、その魔女が国を動かしているなんて許し難い。


先のエヴァーナ蜂起では“そんな魔女”にしてヤられたから、なおのコト・・・



「・・・言いたい事はそれだけ?私、急いでるの。」


内戦では私も多くの人を殺した。今更、言い訳なんてできない。

だから、恨まれるのは・・・巻き込まれるのは・・・


覚悟・・・していた。



けど、私にも守りたいものがある。

沢山ある!


だから・・・



「えぇ?あっはっはっはーっ!い、急いでるって…む、向うつもりかい!?」



彼・・・ルキウス・・・は、金色の瞳をした金属性魔法の使い手(本人曰く、金属性以外の魔法は・・・最低位の【製紙魔法】すら、宿す事ができない。)で、魔法の実力もさることながら・・・


剣の腕は、これまでに出逢った誰よりも上だ。


できれば戦いたくない・・・



「今更間に合うとでも…思っているのかい!?」


コイツさえ何とかできれば・・・

そのあとは、もののひと唱えで数時間以内にエディステラに辿り着く自信が有る。


だから今は・・・



「・・・それは・・・や、やってみないと分からない!・・・急いで行くしかないの!」


こう言った方が、きっと・・・



「ははっ!あひゃっ!あっははははは〜っ!!ひーっ、ひっー…わ、笑わせないでよぉ!!…そ、そんなに行きたいのなら好きに行くとイイよっ!そ、それでっ…あ、在るべき姿に書き直された王都の姿を…ぷっ…くくくくっ!」


何がそんなに可笑しいというのか・・・?

とりあえずムカつく。


いくらイケメンでも、その顔は幻滅だし。


でも、言った甲斐はあって・・・




「…さ、さぁ!無駄だとは思うけど…い、急ぐんなら早馬がイイよね!!う、厩は…アッチだ!!」


・・・んふふっ。

道を空けてくれるのね?






「・・・すー」


・・・唱えた通りよ。



「くくくくっ…あ、援風魔法(アシスト)でも唱えるつもりかい?…はっ!それはイイね!!加速できるし…ちょっとだけ。あっはっはっはっは〜っ!!」

「・・・はぁ〜・・・」

「ひーっ、ひーっ!!な、何を唱えるつもりか知らないけど…ま、魔女様のみ技。トクと見せて貰おうじゃないか!!」


時刻はお昼前。

ちょっぴりがお腹が空き始めているから魔力がギリギリになっちゃうだろうけど・・・



「・・・ん!」


・・・ま。なんとかなるだろ。



「さぁ、何が現れるのか…楽しみだね!!ぷくくっ…」


コイツに見せるのは、癪だけどね






「・・・『リブラリアの理第2原理 綴られし定理を今ここに』


「くははは…って。…え?まさか…し、失伝…?」


『虹よ そなたは光の化身

水空繋いで 天地繋ぎ

万色紡いで 万里越え

対輪重ねて 対橋架ける』


「ま、まさかまさ…あ、あの時の!?」


んふふふっ。

せーかい。



「・・・フラーテーション!!」


久し振りに唱えたのは

虹色ドラゴンを召喚する失伝魔法


虹魔法(フラーテーション)】!



「おい!なんだアレは!?」

「魔法印だとぉ!?…なんて巨大な!」

「あ、あの子が唱えたのか!?」

「おい!あの子の…あ、あの髪!あの瞳!?」


領主邸の前・・・

お昼の市街地でこんな魔法を唱えたら騒ぎになるのは当然。

しかも今は、領主様(おじいさま)に会う為にイミテーショングラスを外してきたから余計だ。


道行く人々は私に気付き、空に現れた巨大な水面(みなも)に目を見張る



「んあぁっ!?こ、こんなところで何やってるのよ!フォニア!?」

「えぇーっ!?フォニアちゃん!?あ、あの魔法印…ま、まさか!?あの時…の!?」


クラスのみんな(因みに、今日は実地訓練開けの休養日。学園のみんなはお宿で休んだり、街でお土産を買ったりしていた。)も、



「龍ぅ!?あの時って…ま、まさか…エヴァーナ攻城戦で唱えたっていう…」

「…失伝…魔法………」


誰もが。


夏空に現れた2柱に瞳を奪われた



「に、2柱の…ドラゴン!?こ、これが…。だ、だか!この魔法で何が出来るってんだ!?」


さすがのルキウスも驚いたのだろう。2柱に向ってそう叫んだ。

すると・・・



『グルワァ!!』

『クルワァ!!』


「うわぁっ!?」


ツィーアンとツィーウーは術者である私の気持ちを汲み取れるから・・・

ルキウスに牙を剥き威嚇し、鋭い視線をおくった。



「・・・ツィーアン。ツィーウー!」

『…グルゥ?』『クルゥ?』


・・・けど。今は!



「・・・虹越え!!」


こんな奴に構ってる場合じゃ、無いよ!!

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